映画紹介

選択された映画にスクロールされるまでしばらくお待ちください。
このページから出る場合は、ブラウザの「戻る」ボタンを使用してください。



ハーヴェイ


Harvey
1950 米

出演:ジェイムス・スチュワート ジョセフィン・ハル ペギー・ドウ チャールズ・ドレイク
監督:ヘンリー・コースター

ハーヴェイ
 ジェイムス・スチュワートらしいコメディ。人気舞台劇の映画化だそうですが、舞台では当初はジェイムス・スチュワートではなかったようです。でも、彼のいい人そうなとこと、寂しげな面が良く出ていると思います。

 ただ本作以降、彼のヒューマンな映画はなくなって行くのは残念です。グレン・ミラーやリンドバークの伝記物の中にそれを見出すことが出来ますが。

 叔母役のジョセフィン・ハルは舞台劇でも出演していたそうですが、この映画でアカデミー助演女優賞を獲得してイます。彼女は「毒薬と老嬢」にも出演しています。

 伝説上の動物のプーカだという、見えないハーヴェイは実に示唆的であると思います。ハーヴェイは何を意味しているか考えてみるのも面白いかもしれません。見えると言ってしまうと狂人扱いされる。だが、見えると信じれば幸福感を得られる。それは、かつてジェイムス・スチュワートが「スミス都に行く」や「素晴らしき哉、人生」で体現してみせたアメリカの良識にあふれた理想であり良心なのかもしれません。

 オリバー・ストーン監督・ケヴィン・コスナー主演の「フィールド・オブ・ドリームス」にて女の子がテレビでこの映画を見ているシーンがあります。


白鳥


The Swan
1956 米

出演:グレイス・ケリー アレック・ギネス ルイ・ジュールダン
監督:チャールズ・ヴィダー

白鳥
 ほろ苦くブルジョワジーなロマンス。グレイス・ケリー演じる貴族の娘が、自分に思いを寄せる弟の家庭教師とは結ばれずに(おそらく)皇太子妃になるという大筋。

 まさに彼女のその後を思わせる話です。私の義母は、グレイスというと最初にこの映画を思い出すそうです。ちょうどモナコ国王との結婚が大ニュースだった頃にこの映画が封切られたためだそうです。

 皇太子役のアレック・ギネスはお茶目でありながら威厳も感じさせる。グレイスの家族もキャラクターが明白で、実はキーパーソンの神父の叔父さんやただアタフタするだけの伯母さんが面白い。また、レオ・G・キャロルが執事役として凄いモミアゲをつけて顔を見せてます。

 もちろん主役のグレイスの美しさは白眉。首筋や鎖骨の美しさを堪能できます。

 子役(弟の一人)として、あのヴァン・ダイク・パークスが出演しています。これには驚きました。ご存知でない方に説明すると、彼はビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンとも交流が深いミュージシャンズ・ミュージシャンです。ロック史の伝説の一つであるビーチ・ボーイズの幻の作品「スマイル」は彼が制作に深く関わりながらも完成に至らなかった逸品です。


裸足の伯爵夫人


The Barefoot Contessa
1954 米

出演:エヴァ・ガートナー ハンフリー・ボガード エドモンド・オブライエン ロッサノ・ブラッツィ
監督:ジョセフ・L・マンキーウィッツ

裸足の伯爵夫人
 マリアというスペイン女性が踊り子→ハリウッド・スタア→富豪の情婦→伯爵夫人と、シンデレラになりそうになる話。マンキーウィッツ監督お得意の、野心あふれる女性が主人公の心理ドラマ。

 同監督の「イヴの総て」や「三人の妻への手紙」のように回想のリレー方式で話が進む。方法が同じためか、ちょっと前半は話が少々ダレ気味で、以前の頃のような鋭さはない。前述のマンキーウィッツ作品をよりワールドワイドに、そしてカラーにしたような作品

 エヴァ・ガートナーは本作の主人公にまさにぴったし。肩幅広いし、肉感的で、頬骨が出てて、いかにも野性的で押しが強そうです。

 対する男の方は、ボギー演じる映画監督は進行役というか、中立的でマリアの保護者的な役どころ。レインコートで墓の前に立ちつくす姿は彼のパブリックイメージそのもの。しかしその他のマリアと付き合う男達は、映画プロデューサーも、富豪も、貴族も容赦なく否定的にシニカルに捉えられている。特にロッサノ・ブラッツィ演じる貴族の苦悩は印象的。「旅情」でもそうですが、彼が出てくると一気にヨーロピアン度が高まり、そのパートではエヴァ・ガートナーの存在すら薄くなってしまう程です。


花嫁の父


Father Of The Bride
1950 米

出演:スペンサー・トレイシー エリザベス・テイラー ジョーン・ベネット レオ・G・キャロル
監督:ヴィンセント・ミネリ

花嫁の父
 娘が嫁に行くまでの一家に起こったささやかな騒動を描いた、お茶の間向けホームドラマ。生活感を強く感じさせて、1950年頃のアメリカ家庭生活を垣間見せるような作品。映画作品というよりはTVドラマのような佇まいです。続編が「可愛い配当」。

 この作品が封切られた頃、エリザベス・テイラーが私生活でも最初の結婚をしたそうです。でもこの映画ではテイラーはおばさんパーマのような髪型。現代から見ると魅力を著しく損なっていると思います。むしろ母親役のジョーン・ベネットの方が、往年の美人女優の面影が残っています。

 また披露宴の仕切屋でレオ・G・キャロルが出演していますが、長身でステッキを持って家を吟味するとこあたりは颯爽としていてカッコ良い。

 でもこの作品はやはりスペンサー・トレイシーの一人舞台とも言えるかもしれません。わがままでしゃべりすぎながらも程よく人間的で、威厳がありそうな父親のおかしさや哀れさをよく体現しています。


パリの恋人


Funny Face
1957 米

出演:オードリー・ヘップバーン フレッド・アステア
監督:スタンリー・ドーネン

Funny Face
 モードな映画。ストーリー展開よりもいかにグラビアのような映像を見せるかに重点を置いてると思います。

 オードリーが尊敬するパリの教授が、実はただの女たらしだったという展開は、アメリカ人のフランスに対する劣等感を晴らした事でしょう。

 煙いパリのカフェで、オードリーが「これが芸術なのね」とばかり、前衛的(!)で思いっきり変なダンスをするのシーンがありますが、「オードリー・ヘップバーンが好き!」という日本の普通のOLの理解にあり余るエピソードでしょう。このシーンを見ると、彼女らの困惑した顔が浮かぶようで微笑ましく思います。


バルカン超特急


The Lady Vanishes
1938 英

出演:マーガレッド・ロックウッド マイケル・レッドグレープ ポール・ルーカス
監督:アルフレッド・ヒッチコック

バルカン超特急
 ヒッチコックのイギリス時代の最高傑作の声もある作品。老婦人が消失する列車ミステリーもの。後半は冒険活劇風でもある。日本で公開されたのは戦後だいぶ経ってからで、長らく幻の名作だったそうです。

 ミステリー作品としても大変おもしろいですが、それよりヒッチコックらしいユーモアや茶目っ気が随所にみられます。暗号が歌とはしゃれてますが、その歌を忘れて結婚行進曲を口ずさんでしまう主人公や、貨車内での敵とのもみ合いも、奇術のからくりや小物が出てきたり、ヒロインがキャッキャとはしゃぎながら、間違って味方の主人公を蹴ったり、そのヒロインが敵に眠り薬を飲まされたので必死に体操していたりとかが、面白い。

 また登場人物も、事件そっちのけでクリケットしか頭にない英国人コンビやら不倫カップルやら味方へ寝返る敵もいたり、様々。マイケル・レッドグレープはヴァネッサ・レッドグレープの父親だそう。医師役のポール・ルーカスも良い。この作品の背景には暗雲たなびく当時の欧州情勢が感じられます。また列車に乗り込むまでの異国情緒は旅行好きだったというヒッチコックの趣味だったかもしれません。

 そういうヒッチコック臭さが濃厚な作品。本作品はヒッチコックにとってイギリス時代では最後から2番目の作品ですが、この後のハリウッド時代ではしばらく製作者や映画会社から制約を受けていたのに比べると、この頃は好き勝手にやっていたのでしょう。インタビューでヒッチコック自身も、本作品を撮っているときは楽しくてしょうがなかったと、述懐しています。


犯人は21番に住む


L'Assasin Habite An 21
1942 仏

出演:ピエール・フレンズネイ スージー・デラー ジーン・タイザー
監督:アンリ=ジョルジュ・クルーゾ

 ジョルジュ・クルーゾ監督の処女作でもある、コメディタッチの犯人当てミステリー。

 フランス映画というと芸術的でナルシスティックで結果として退屈な作品が多いという偏見を勝手に持っているのですが、これはなかなかエンターテイメントな作品で面白かった。フランス流のユーモアというかウイットというかエスプリが滲み出ている作品。昨今の三谷幸喜のテレビドラマにも通じる軽妙さが感じられる。

 まず、冒頭のシーンから見せてくれます。ぬめぬめと濡れた夜の石畳の道で殺人者が迫ってくる場面は白眉。

 その後はキャラクターがはっきりした登場人物によりテンポよくコミカルに展開しますが、ファニーフェイスでトラブルメイカーなヒロインの、素っ頓狂な高音と破天荒な行動が楽しませてくれます。有名になる為に恋人で刑事の主人公に無理矢理協力したり、人形を置いて記者会見の練習をしたり、犯人が分かる時の慌てふためく場面が面白い。

 また、人懐っこさと不気味さが同居する怪しいマジシャンも印象的。このマジシャンと主人公の刑事によるスリ合戦や逮捕される時に手錠をスルのが面白い。

 戦前の映画なのに冗談的ですが性的な台詞が出てくるのは少し驚きです。倫理基準の厳しい当時のハリウッドでは考えられないものでしょう。

 映画の内容には関係ないですが、某衛星放送で観たこの作品の字幕といったら、読みにくさは今まで観た中で一番でした。


ヒズ・ガール・フライデー


His Girl Friday
1940 米

出演:ロザリンド・ラッセル ケーリー・グラント ラルフ・ベラミー
監督:ハワード・ホークス

 新聞記者達の特ダネ合戦を描く、過剰なしゃべくりまくりの、てんやわんやコメディー。セリフのオーバラップぶりが凄い。まさにハワード・ホークスお得意のスラップスティックでスクリューボールな作品。

 ビリー・ワリルダー監督作品「フロント・ページ」と同じ原作だが、本作品では主役2人が男女になっている。三谷幸喜氏も本作品が好みだとか。

 過剰なキャラクターのケーリー・グラントよりもロザリンド・ラッセルの方が主役か。彼女の男勝りだが女ぽさもあるキャリアウーマンぶりは現代から見ても迫力がある。ローレン・バコールにも通じる、愛嬌よりもカッコ良さがあるヒロインはハワード・ホークス監督の好みだったのでしょうか。また、何度も逮捕されてしまう善人なラルフ・ベラミーも笑わせてくれます。

 ところで、タイトルの「ヒズ・ガール・フライデー」の由来がさっぱりわかりませんでした。


火の女


Keeper of the Flame
1942 米

出演:スペンサー・トレイシー キャサリン・ヘップバーン オードリー・クリスティー
監督:ジョージ・キューカー

 キャサリン・ヘップバーンとスペンサー・トレイシーのコンビによる戦時色強いミステリー。ロマンティック・コメディーではない。崇拝者の多い政治家が事故死、その死に不審を抱いたヨーロッパ戦線帰りの記者スペンサー・トレイシーが死んだ政治家の妻キャサリン・ヘップバーンに接触し、その謎に迫る。

 同僚の女記者、タクシーの老運転手、門番の子供など、キャラクター設定はしっかりしてるし、ミステリーとしてはよい構成だが、オチがいかにも戦時色強すぎ。最初と最後に民衆シーンにアメリカの旗が出てくる。キャサリン・ヘップバーンってスーツ姿がやたら似合う。


媚薬


Bell Books And Candle
1958 米

出演:キム・ノヴァク ジェイムス・スチュワート ジャック・レモン
監督:リチャード・クワイン

媚薬
 冬のNYを舞台にしたファンタジー風ラブロマンス。原題は魔法を消す呪文。キム・ノヴァクが魔女を演じてます。「ミステリアス・キム」と言われた彼女、ハスキーな声やシャム猫が似合う。彼女を見るための映画とも言えるでしょう。また、雪のNY風情やクラブの様子、ジャック・レモンの軽妙さがこの作品に大変垢抜けた印象を持たせてます。

 ヒッチコックの「めまい」と同じ年に、同じ主演男女優の組み合わせで発表された作品。当時キム・ノヴァクはコロンピア映画のスター女優でしたが、パラマウント映画である「めまい」にはヒッチコック監督やジェイムス・スチュワートが特に懇願して出演が実現したそうです。この「媚薬」にジェイムス・スチュワートが出演しているのは「めまい」の件の返礼なのかもしれません。

 そんな訳でその2つの作品をつい比較したくなりますが、「めまい」がシスコを舞台にした悪魔的ともいえるミステリーなのに対し、こちらはNYを舞台にした軽くおしゃれなロマンス。「めまい」ではケバかったキム・ノヴァクもこちらではナチュラル・メイク風。一般的に「めまい」の方が彼女の代表作といわれてますが、現代から見ると「媚薬」の彼女の方が素直に美人だなと思います。


百万長者と結婚する方法


How to Marry a Millionaire
1953 米

出演:ローレン・バコール マリリン・モンロー ベティ・グレイブル ウィリアム・パウエル
監督:ジーン・ネグレスコ

百万長者と結婚する方法
 オーケストラによる序曲シーンが長くてなかなか始まらない、3女優競演のシネマスコープ作品。それぞれ金持ちをねらうが、結局好きになった普通の男を選ぶ。シネマスコープを生かして3人を並べて撮るシーンも特に前半が多い。シネマスコープ第2作ということで宣伝にも力を入れたのか、1953年の興行収入成績では、本作品は「ローマの休日」を上回る年間5位の成績。

 3人の中ではバコールが主役か。その時点でのキャリアを考えると、序列で彼女が一番だったからと思われる。でも、コメディにしては彼女はドスがききすぎ。ズボン姿は決まってるけど。グレイブルは特に印象に残らないし、結局不似合いな眼鏡(フォックス型というらしいが)をかけたモンローのボケ振りが一番印象に残る。すっかり脂気の抜けたウィリアム・パウエルが魅力的な初老の紳士役で出てくる。


拾った女


Pickup On South Street
1953 米

出演:リチャード・ウイドマーク ジーン・ピータース セルマ・リッター
監督:サミュエル・フラー

 NY舞台のサスペンス。あと1回捕まると終身刑になるスリの主人公にスパイが絡む。スリより共産主義者が悪いという、冷戦ならではの話。

 低予算映画だそうですが、良く出来てると思います。地下鉄、川港、埠頭にある主人公の住居など、NYの下町の臭そうな匂いが漂って来るような映像です。

 主人公のリチャード・ウイドマークもヒロインのジーン・ピータースも一癖ありそうな俳優で、この犯罪映画には適役だと思います。

 また、タレコミ屋のセルマ・リッターが印象的。ネクタイを売りつけるエピソードや共同墓地の件など、逞しさと悲哀を感じさせます。

 53年の映画ながら、暴力シーンも多い。ヒロインも思いっきり殴り飛ばされてました。最後の格闘シーンは迫力もの。


フィラデルフィア物語


The Philadelphia Story
1940 米

出演:キャサリン・ヘップバーン ケイリー・グラント ジェイムス・スチュワート
監督:ジョージ・キューカー

 階級を超えそうになるラヴコメディ。一般的にはミュージカル風に改変したグレイス・ケリー主演「上流階級」(1956)が有名かもしれません。こちらは台詞中心の舞台劇風な作り。

 「上流階級」の方が評判が良いようですが、やはりヒロインの差でしょうか。結婚引退直前の、フェロモンが匂うようなグレースと比較されるのはキャサリンに分が悪い。でも、「弱さを認めない高飛車な」ヒロインのキャラクターはキャサリンの方が適していると思います。

 また、お気楽な「上流階級」には無い、階級間の対話が面白い。ハイソ(キャサリン・ヘップバーン)とインテリ(ジェイムス・スチュワート)が対立しながらも惹かれて行く過程がテーマの主要な一つだと思います。

 ジェイムス・スチュワートがこの映画でアカデミー主演男優賞を受賞しています。酔ってケイリー・グラント邸に真夜中押しかけるシーンは面白かった。彼は受賞時、第二次大戦に従軍中だったそうです。

 ヒッチコック映画が好きな私からすると、ケイリー・グラントとジェイムス・スチュワートが同じ画面に収まっているのは奇妙な感じがします。ヒッチコック映画に出てた頃よりだいぶ若いですが。主役級の二人が並んでいるのは、まるで正月の特番を見ているような気分になってしまいます。


舞踏会の手帖


Carnet de Bal
1937 仏

出演:マリー・ベル 第1話:フランソワーズ・ロゼ 第2話:ルイ・ジューヴェ 第3話:アリ・ホール 第4話:ピエール=リシャール・ウィルム 第5話:レーミュ 第6話:ピエール・ブランシャール 第7話:フェルナンデル
監督:ジュリアン・デュヴィヴィエ

 マリー・ベル扮する未亡人が、かつての舞踏会でのパートナーを訪ね歩くオムニバス物。ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の代表作ともされている名作。

 さりげなく狂った演技が素晴らしいマリー・ベル。過去の自分のことを三人称で話すアリ・ホールの無常感。憎めない仕切屋親父のレーミュ。人情味あるコメディアンなフェルナンデルなど、当時の名優達の競演が見物。

 そんな中で、まるで「カサブランカ」でのボギーのようなルイ・ジューヴェが特に際立っていると思います。ヒロインと思い出を交互に、詩を呟くように話すシーンや別れのセリフは背筋が寒くなるほどカッコ良すぎ。

 全体的には小津映画にも通じるわびさびや暖かい人情や無常感が漂ってます。現在でも友情に溢れている男性達の人生を狂わせた主人公のヒロインは、かなりの悪女なんじゃないのと思ってしまいます。


ふるえて眠れ


Hush, Hush, Sweet Charlotte
1964 米

出演:ベティ・デイビス オリビア・デ・ハビラント ジョゼフ・コットン
監督:R・オルドリッチ

Hush, Hush, Sweet Charlotte
 60年代モノクロ恐怖映画のひとつ。だが見事なサスペンス描写や余韻を残すエンディングなど、恐怖映画で片付けてしまうには惜しい、魅力的な作品。

 往年の大スターたちが老醜比べをしていて、名画ファンの興を殺ぎ夢を壊すような映画でもあります。特にベティ・デイビスの醜さが出色。かつて人形のお姫様のような女優だったとは思えません。このあと彼女は老醜女優として活躍してしまいますが、女優として随分と自虐的な身の処し方だと思います。

 オリビア・デ・ハビラントも、この映画を見た後に「風と共に去りぬ」を見直すとメラニー(オリビアの役名)がひどく不気味に見えてくるでしょう。


僕は戦争花嫁


I Was A Male War Bride
1949 米

出演:ケーリー・グラント アン・シェリダン マリオン・マーシャル
監督:ハワード・ホークス

 ケーリー・グラント主演でハワード・ホークス監督によるコメディ作品の一つ。

 前半はハワード・ホークスらしい主演男女優によるスラップスティックなコメディー。後半はヒロインの影が薄くなり、男の「戦争花嫁」という奇妙な立場のケーリー・グラントが寝る場所も困るほど右往左往する展開。

 彼の女装姿がこの作品の見物の一つ。また彼が、ヒロインが運転するバイクのサイドカーにこじんまりと座るのもおかしい。そういえば、後の「誇りと情熱」でも彼が小さなロバに乗っていたのを思い出します。

 この作品の撮影中にケーリー・グラントは肝炎を患い死線をさまよっていたそうですが、この作品以前のグラントは少々ふっくらしていて、この後は少々痩せているのはそのせいでしょうか。彼は歳を取るに従って洗練されていった印象があります。


北北西に進路を取れ


North By Northwest
1959 米

出演:ケーリー・グラント エヴァー・マリー・セイント ジェームズ・メイスン ジェシー・ロイス・ランディス レオ・G・キャロル
監督:アルフレッド・ヒッチコック

北北西に進路を取れ
 ヒッチコックお得意の一般人巻き込まれ美女絡みサスペンス。冒頭から目もくらむ急展開とスリルの連続で、まさにヒッチコックエッセンスのフルコース。次作「サイコ」よりこちらの方が彼の代表作としてふさわしいと思います。ソール・バスのタイトルバック、アーネスト・ハーマンの音楽も実にスタイリッシュでカッコ良い。

 ジェシー・ロイス・ランディスは「泥棒成金」でも母親役でした。教授役レオ・G・キャロルはヒッチコック映画最多出演者でもある。ジェームズ・メイスン演じるダンディでソフトな悪役はヒッチコック映画ではよくあるパターン。

 エヴァー・マリー・セイントのタバコが良く似合うブロンド美女ぶりも見物だが、メイクや髪型が当時(60年代目前)としてはそろそろ古く、大時代がかっていたのでは。ファッション関係には詳しくありませんが、前作「めまい」でのキム・ノヴァクやその後のティッピ・ヘドレンにもそう感じます。


誇りと情熱


Pride And Passion
1957 米

出演:ケーリー・グラント フランク・シナトラ ソフィア・ローレン
監督:スタンリー・クレイマー

 19世紀スペインを舞台にした、三角関係と特大の大砲をめぐる戦争スペクタクル大作。キャスティングのわりにはまじめな内容。殉教的でアメリカ的な愛国心も伺える。音楽も壮大で宗教的ですらある。

 そんな、堅苦しい話の中で、唯一ユーモラスなのは羊(山羊だったかも)のエピソード。それまでの大砲の峠越え運搬シーンが迫力あるだけに、気が抜けて腰が砕ける思いです。

 見所の一つは風車脇での決闘シーン。実に緊迫した撮り方です。もう一つは若いソフィア・ローレンのフラメンコシーン。胸毛を剃った(?)ケーリー・グラントの上半身裸のシーンも見逃せないでしょう。


慕情


Love Is A Many-Splendored Things
1955 米

出演:ジェニファー・ジョーンズ ウイリアム・ホールデン
監督:ヘンリー・キング

慕情
 「旅情」と邦題が紛らわしく、しかも同年製作の作品。「旅情」はベニスでしたが、こちらは香港を舞台にしたお涙頂戴のロマンス。純粋な恋愛ものなので、サスペンス度ゼロ。なよなよした主題歌も有名。「旅情」と同じようにテクニカラーが映える風光明媚な作品。物語上の重要なポイントでもある病院の裏にある、丘の頂上に1つだけ生えている木の風景が実に印象的。

 同時期の同じウイリアム・ホールデン主演による「トコリの橋」(ヒロインはグレイス・ケリー)と同じく朝鮮戦争が絡んだ戦争悲劇ものでもあります。ただし、男の世界が描かれている「トコリの橋」に比べて、こちらは極めて女性的な作品。

 また、ジェニファー・ジョーンズを見るための作品でもあると思います。チャイナドレスも黄色い水着を良く似合ってます。エキゾチックな容姿は英中混血という役どころにぴったりです。また、スリムで品が良さそうなとこは黒髪のグレース・ケリーとも形容できると思います。


ボストン物語


The Late George Apley
1947 米

出演:ロナルド・コールマン ヴァネッサ・ブラウン ペギー・カミンズ エドナ・ベスト
監督:ジョセフ・L・マンキーウィッツ

 本作品での監督マンキーウィッツが脚本を担当した「フィラデルフィア物語」を連想させる邦題からも判るように、ボストンの上流階級一家を舞台にしたホームドラマ風の作品。ロナルド・コールマン演じる当主の、息子と娘の結婚騒動をめぐる顛末記。

 先の「フィラデルフィア物語」、または同監督の「素晴らしき休日」のように上流階級の窮屈さや、それを感じていながらそこで生きてゆくしかないエスタブリッシュメント達を軽く上品に揶揄したような作品。いかにも上品なコールマンがNYを訪れるシーンがありますが、近代的な街の中で浮きまくっているのが印象的です。しかし1947年当時としてはもう古いスタイルの作品だったかも知れません。

 また、息子の許嫁役のヴァネッサ・ブラウンと当主の妻役エドナ・ベストはマンキーウィッツ監督の次作「幽霊と未亡人」にも出演しています。