映画紹介
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青髯八人目の妻
Bluebeard's Eighth Wife
1938 米
出演:ゲーリー・クーパー クローデッド・コルベール デビット・ニーヴン エドワード・エベレート・ホートン
監督:エルンスト・ルビッチ
ビリー・ワイルダーの先輩格であるルビッチ監督の代表作ともいえる、洗練と酔狂のラヴ・コメディ。冒頭のパジャマの上下を男女で分け合う話が有名。
コメディには少々無理のあるゲイリー・クーパーですが、彼だからこそ、えげつなさが軽減してると思います。クローデッド・コルベールの優雅なコメディエンヌぶりも見事。とぼけた父親役エドワード・エベレート・ホートンも軽妙。まだ若手だったデビット・ニーヴンが間抜けな役で、その後の彼が演じた気品ある英国紳士ぶりを思うとおかしく感じます。
前半は避寒地リヴィエラで後半はアメリカが舞台ですが、前半の結婚するまでの方が面白い。後半はルーチンな展開に思えます。でも最後の精神病ネタはおかしい。
赤ちゃん教育
Bring Up Baby
1938 米
出演:キャサリン・ヘップバーン ケイリー・グラント
監督:ハワード・ホークス
「赤ちゃん」という名の豹をめぐるコメディ。
この映画はやはりキャサリン・ヘップバーンの独壇場でしょう。最後まで徹底してトラブルメーカーでケイリー・グラントを振り回すし、警察署でギャングのふりをする演技も凄味がありすぎる。まさに演技派女優の面目躍如。当時の女優は殆ど鬼籍に入られてしまいましたが、彼女には長生きしてほしいものです。
あのケイリー・グラントがまったくの三枚目役で、お堅い研究者を演じているのが面白い。彼は後のマダム・キラーの頃より少々太りぎみか。
悪魔のような女
Les Diaboliques
1954 仏
出演:シモーヌ・シニョレ ベラ・クルーゾ ポール・ムーリス チャールズ・バネル
監督:アンリ・ジョルジュ・クルーゾ
犯罪ものサスペンス。不協和音だらけのテーマソング、最初と最後以外は音楽なし、セリフも後半はかなり少なくて緊張感にあふれたスリラー。
パチンコの少年が不気味。また、道徳的である筈の全寮制学校での、あまりにも不道徳的な行為なので、欧米人から見れば、なにやら宗教的な強迫観念を呼び起こすのではないのでしょうか。
そんな中でも同僚の男教師や実家での下宿人夫婦がコメディリリーフになっているのも印象的。
シャロン・ストーンとイザベル・アジャーニ主演でリメイクされた事や、映画化権をヒッチコックと争った事でも有名ですが、ヒッチコック監督によるこの作品も見てみたかった。当時のハリウッドの制約やヒッチコック作品の特性を考えると、多分プロット以外はかなり脚色したことになっただろうと勝手に想像しています。
明日は来らず
Make Way For Tomorrow
1937 米
出演:ヴィクター・ムーア ベラ・ボンディ フェイ・ベインダー トーマス・ミッチェル レイ・メイヤー
監督:レオ・マッケリー
小津安二郎の「東京物語」にも影響を与えたという、老いと親子関係をテーマにした作品。とにかくハリウッド映画なのに老夫婦が主人公というだけでも異色なのに、日常の生活感が溢れるてるのも珍しい。「我が道を往く」などの、他のレオ・マッケリー監督作品にも繋がるホームドラマのような感触。
陽気な「MOTHERの歌」で始まるが、その後は老いた親と、独立して自分の生活を営んでいる子供達との距離感が強調されるエピソードが続く。
老夫婦が(おそらく)永遠の別れの前に、かつて新婚旅行で宿泊した豪華ホテルを再訪するなど、残酷な話ながらも情感も溢れている。バーのカウンターでの会話や、ワルツを踊るシーンは感動もの。この作品を老いの悲劇とみるか、哀歓に富んだ人情劇とみるかは観る人によって大きく異なるでしょう。
レオ・マッケリーは同年のスクリューボール・コメディ「新婚道中記」でアカデミー監督賞を獲得していますが、それよりもこちらの作品でオスカーを受賞したかったという逸話も納得の、国境や時代を超越する生命力を持った作品だと思います。
貴方なしでは...
Made For Each Other
1939 米
出演:ジェイムス・スチュワート キャロル・ロンバート チャールズ・コバーン
監督:ジョン・クロムウェル
製作:デビッド・O・セルズニック
「風と共に去りぬ」の大製作者、デビッド・O・セルズニックによるホームドラマ。後世に残る名作「風と共に去りぬ」と「レベッカ」を製作するかたわらについでに作った小品か。
キャロル・ロンバードはコメディエンヌだそうだが、金髪も眩しい生活感を感じさせない都会的で洗練された女優で、交通事故による顔の傷(映画ではほとんど見えない)が無ければ大女優になれたのでは。
兵役に就く前のジェームス・スチュワートはボンボンで青臭い理想に燃えてそうな青年役が良く似合う。
荒馬と女
The Misfits
1961 米
出演:マリリン・モンロー クラーク・ゲイブル モンゴメリー・クリフト セルマ・リッター イーライ・ウォラック
監督:ジョン・ヒューストン
行き場の無いはぐれ者(Misfits)達がうだうだする話。一般的にはマリリン・モンローとクラーク・ゲイブルの遺作として有名な作品。
どこかずれてる登場人物達が野生馬を狩る話ですが。人間に狩られ街に送られる野生馬に彼ら自身を見たのだと思います。
モンローはちょっと太めか。紐がずれやすいワンピースとか、水着のシーンなどのサービスカットはお約束なのでしょうか。クラーク・ゲイブルはこのあとすぐ死にそうには見えません。前半のみですがセルマ・リッターも口さがないモンローの同居人のおばさんを演じてます。
アラスカ珍道中
Road To Utopia
1946 米
出演:ビング・クロスビー ボブ・ホープ ドロシー・ラムーア
監督:ハル・ウォーカー
クロスビー・ホープ・ラムーアのトリオによる冒険活劇コメディ、「珍道中」シリーズ第4作。今回はアラスカで金脈地図を奪い合うという展開。たまに解説者のツッコミが入る。
本シリーズの特徴でもある、映画業界の内輪ネタや楽屋オチが楽しい。雪山でパラマウント映画のマークが出てきたりとか、クロスビーの歌でコンクールで優勝を逃したときに、「次回からシナトラを呼ぶぞ」とホープに言わせたりとか。
ヒロイン(ドロシー・ラムーア)の取り合い、財布のスリ合い、動物ネタ、などのコメディのルーチンワークをきちんとこなしています。往年の名シリーズというには、おふざけにみちていますが、このあたりはあたたかい目で見てあげる必要があるかもしれません。
アラベスク
Arabesque
1966 米
出演:グレゴリー・ペック ソフィア・ローレン アラン・バデル
監督:スタンリー・ドーネン
「シャレード」第二幕。同じ監督による同じようなモードとスリルが混じった巻き込まれ型サスペンス。音楽も同じヘンリー・マンシーニ。
タイトルバックや収録曲は第一幕(「シャレード」)同様のかっこよさ。また、1966年ということもあって、グレゴリー・ペックが泥酔して自転車で高速道路を逆送するシーン等プレサイケな画面効果も見られます。
この映画の見所の一つはグレゴリー・ペックの大根ぶりでしょう。ケイリー・グラントなら3枚目的な立ち回りやサーカス出身だけあって軽快な身のこなしができますが、グレゴリー・ペックのソフィア・ローレン相手のしゃれっ気ある会話の似合わない事。また、アクションシーンでの妙にもっさりした動きも笑えます。
複雑なストーリーや、妙に凝ったカメラアングル(反射物から撮るなど)等、技巧を織り込んだ手が込んでいる作品の割には見終わった後はそんなに印象に残らないのが残念。
この監督は足フェチのようで、第一幕にもこちらにもヒロインがブーツを脱いで足をもんでもらうシーンがあります。
或る夜の出来事
It Happened One Night
1934 米
出演:クラーク・ゲーブル クローデッド・コルベール ウォルター・コノリー
監督:フランク・キャプラ
名匠フランク・キャプラに最初のオスカーをもたらせた作品で、作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞と主要部門を独占した名作。
そんな作品ですから、当然ストーリーや人物設定もしっかりしていますが、バスの運転手やヒッチハイクのエピソード等、本筋に関係ないどうでもいいシーンまで面白いのはさすが。
階級を越えた恋愛が成就するという話ですが、反対していた父親は最後には娘の味方になるというのはハリウッド映画ではよくあるパターンですよね。
クラーク・ゲーブルは「風と共に去りぬ」よりもこちらの作品の方がガラが悪そうでヤクザな男臭さがよく出ている。
ところでクラーク・ゲーブルの髭を見て思うのですが、口髭は30年代には壮年2枚目男優の必須アイテムだったのでしょうか。ローレンス・オリビエやロバート・ドーナットもそうでした。
暗黒街の顔役
Scarface
1932 米
出演:ポール・ムニ ジョージ・ラフト
監督:ハワード・ホークス
後世にも影響を与えたギャング映画の古典的有名作品。ハワード・ホークス監督らしい、登場人物に感情移入せず突き放した描写。冒頭の口笛を吹きながら親分を殺すシーンから実にクールな感触。
戯画的な主人公ポール・ムニより、その子分でガムをかみながらコインを玩ぶ無口なジョージ・ラフトが怖い。
また、電話の取次ぎに失敗してばかりの男秘書のエピソードだけは喜劇的で、その後の同じ監督が作る喜劇を思い出させる。
当局の意向によりエンディングがに変更されたのは有名。本来は警官隊との打ち合いで主人公が死んでおしまいだったが、無様に逮捕→裁判で死刑判決→死刑執行で主人公が死ぬ展開に。その死刑執行シーンで死刑を受ける主人公の視点で目隠しされるシーンが怖すぎる。
暗殺者の家
The Man Who Knew Too Much
1934 英
出演:レスリー・バンクス エドナ・ベスト ピーター・ローレ ノヴァ・ピルビーム
監督:アルフレッド・ヒッチコック
ヒッチコック自身が渡米後リメイクした「間違えられた男」の方が有名か。ヒッチコックものでは、日本で最初に公開された作品だそうです。もちろんまだ戦前のころですが。また、この作品の成功でヒッチコックがアメリカからも注目されるようになったそうです。
アルバート・ホールでのエピソードが有名ですが、歯医者になりすます場面や教会でメロディーに合わせながら喋る場面など、サスペンスながらユーモアのあるエピソードも多い。
誘拐されて、眠らされ連れ去られるノヴァ・ピルビームの撮り方はまるで人形のようで、ヒッチコックの隠れたあぶない側面を窺わせる。ピーター・ローレはここでも主役を食ってると思います。最後の死に方もカッコよすぎる。
最後に銃撃シーンがあって、悪役が死ぬのは、イギリス時代のヒッチコック作品によくあるパターンなのでしょうか。「バルカン超特急」や「間諜最後の日」もそうでしたし、「三十九夜」もそれに近い。
イヴの総て
All About Eve
1950 米
出演:アン・バクスター ベティ・デイビス ジョージ・サンダース セレスト・ホルム ヒュー・マーロウ ゲイリー・メイル セルマ・リッター マリリン・モンロー
監督:ジョセフ・L・マンキーウィッツ
ほぼ同時期の「サンセット大通り」と同じく業界内幕もの。「サンセット〜」は映画界(ハリウッド)で、こちらは演劇界(ブロードウェイ)が舞台。
野望に燃えるヒロイン役アン・バクスターも良いが、その主役が霞むほど脇役が豪華。彼女の実生活とダブってしゃれにならぬベティ・デイビスや、「裏窓」でもここでも付添い婦役のセルマ・リッター、「上流社会」で落ち着いた大人の女性を感じさせたセレスト・ホルム、そしてこの映画でアカデミー助演男優賞を獲ったインテリやくざ風のジョージ・サンダース。
ジョージ・サンダースはヒッチコックの「レベッカ」で一癖あるレベッカの従兄弟役で、「海外特派員」でも主人公をバックアップする頼り甲斐のある相棒役で、印象深い演技を見せてくれます。一歩引いたところから偉そうな事を言ったりして、あつかましいけど憎みきれない。
閑話休題、キンクスの「セルロイドの英雄」という名曲がありまして、要するにハリウッドに対するオマージュなんですが、その歌詞には7人の俳優・女優が歌い込まれています。内訳は
グレタ・ガルボ
ルドルフ・ヴァレンチノ
ベラ・ルゴシ
ベティ・デイビス
ジョージ・サンダース
ミッキー・ルーニー
マリリン・モンロー
その中の3人がこの映画に出演しています。キンクスのレイ・ディビスはこの映画がお気に入りなのではないでしょうか。
また、上記の7人は、著名な主役級ばかりですが、ジョージ・サンダースだけは脇役格の俳優です。この事から、レイ・デイビスはこの俳優がお気に入りなのだと思います。レイのシニカルな視点とジョージ・サンダースの演じた役柄は実に相通じるものがあり、ジョージ・サンダースに自分を見るような思いがしている事でしょう。
映画の話ではなく、音楽の話になってしまいました。ついでに80年代にオール・アバウト・イヴという、イギリスのゴシックかかった女性ボーカルのグループがありましたが、この映画のタイトルからバンド名をつけたのでは。
刑事コロンボでもアン・バクスターは、この映画のヒロインが歳を取ったような女優を演じていました。この映画のせいで、彼女は野望女というレッテルを貼られた事でしょう。
五つの銅貨
The Five Pennies
1959 米
出演:ダニー・ケイ バーバラ・ベル・ゲデス ルイ・アームストロング
監督:メルビル・シェイブルソン
コルネット奏者レッド・ニコルスの伝記映画。二部構成のような作品で、前半はダニー・ケイの芸達者ぶりが印象的。ルイ・アームストロングも絡んだ演奏シーンも盛りだくさん。バーバラ・ベル・ゲデスの美人ではないが堅実な奥さん役もいい。
前半の軽躁ぶりから一転して後半は家族愛の物語に変化。前半に感じられる冗長さも後半の感動の準備になっていると思います。小さい頃は聞き分けがなかった娘がすっかり分別のついた少女になってます(母親似か)。憔悴したダニー・ケイの演技も見事。カムバックのコンサートでいまいち盛り上がってないとこに、ルイ・アームストロングが突如登場してくるところは実に感動的です。「ビリー・ミリガン」の歌を上手く使ってます。
ウィンチェスター銃 ’73
Winchester '73
1950 米
出演:ジェイムス・スチュワート シェリー・ウインタース ダン・デュリエ スティーブン・マクナリィ
監督:アンソニー・マン
製作:アーロン・ローゼンバーグ
映画タイトルにもなっている、千に一本の名銃をめぐる娯楽西部劇。同じ製作者・監督・主演で「怒りの男」、「裸の拍車」、「ララミーから来た男」といった西部劇や「グレン・ミラー物語」も製作されてている。
この監督・主演の西部劇はジェイムス・スチュワートが苛められながらも耐えて復讐する話が多いそうだが、この映画では銃を奪われるだけで、さほど酷い目にはあっていない。それよりもダン・デュリエのクールで卑屈な悪党ぶりが印象的。またチョイ役でロック・ハドソンやトニー・カーティスも出ている。
荒野に雲が流れるシーンなど、白黒ながらも(白黒だからか?)映像がきれい。ここでのインディアンの悪党ぶりや白人に対する拷問の陰惨さは、今の映画では絶対に描写できないでしょう。
裏町
A Thousand Clown
1965 米
出演:ジェーソン・ロバーズ バーバラ・ハリス マーティン・バルサム
監督:フレッド・コー
NYが舞台の(たぶん)低予算映画。監督はTV界の出身。父も母も消息不明の少年と、元放送作家でユーモアに富んだ無職の叔父が気ままな共同生活を過ごすが、叔父が定職について経済的に安定しないと少年を施設に送ると、当局から通知されてからのひと騒動を描く。下町の人情喜劇かと思いきや、貧乏くささや湿っぽいところは少なくてNYの持つ狂躁さや躍動感に溢れてた作品。音楽の使い方などはいかにも60年代風。登場人物が少なく、舞台劇風なとこもある。
マーティン・バルサムがアカデミー助演男優賞を取ったことで本作品は割と知られてますが、主役で叔父役のジェーソン・ロバーズがやはり印象的。みじんも暗さがなく、都会の自由人、吟遊詩人という感じが良く出ている。ジェームス・スチュワートのように長身で飄々としていて、ハンフリー・ボガードのようなクールさがあるなと思ったら、彼はローレン・バコールと結婚してた事があったそうです。もちろんボギーの死後しばらく経ってからで、すぐ離婚してますが。
また、ヒッチコックの「ファミリー・プロット」でお茶目なインチキ霊媒師を演じたバーバラ・ハリスがここでヒロインとして出てきますが、全然美人じゃなくてこの作品には適役。これが映画デビュー作だそうです。
裏窓
Rear Window
1954 米
出演:ジェイムス・スチュワート グレイス・ケリー セルマ・リッター
監督:アルフレッド・ヒッチコック
ヒッチコックのアメリカ時代では一番の名作だと思います。また、サスペンス、美女(グレイス・ケリー)とのロマンス、他のアパート住民の人生の悲哀、結婚生活への嫌悪等いろんな切り口で楽しめる作品でしょう。
また、彼のちょっと変態的な無意識が上手く映画的に昇華された作品だとおもいます。上手く言えませんが、他人の生活を覗くのはヒッチコックの密かな願望かも知れません。足の怪我で車椅子生活の主人公の不自由さは、肥満に劣等感を持っていて女性に言い寄ることが苦手っだったというヒッチコックの不自由さと相通じるものがあると思います。
犯人の風貌がヒッチコックと仲違いした大製作者(「風とともに去りぬ」を制作したあの)デビット・O・セルズニックに似ていると思うのは勘ぐりすぎでしょうか?
麗しのサブリナ
Sabrina
1954 米
出演:オードリー・ヘップバーン ハンフリー・ボガート ウイリアム・ホールデン ジョン・ウイリアムス
監督:ビリー・ワイルダー
一種のシンデレラものラブ・ロマンス。オードリー・ヘップバーンの2作め、サブリナパンツの件としても良く知られていますが、ビリー・ワイルダー監督、有名俳優揃いの良く練られた安心して見ていられる作品です。
遊び人なホールデンはともかく、ボギーが堅物の企業人というのも変ですが、企み好きで女性には縁がない人物を意外と好演していると思います。本来はケイリー・グラントが演じる筈だったそうです。ボギーは撮影中ヘップバーンを大分苛めたそうですが、彼から見れば、彼女は色気のない小娘に映ったことでしょう。ヘップバーンの父親役、また運転手役としてジョン・ウイリアムスが出ていますが、本当に堅気そうな役が似合う人です。
ボギーとヘップバーンがヨット上でレコードを聴くシーンがありますが、そこでかかるのが「YES,WE HAVE NO BANANA TODAY」。古いノベルティソングということですが、詳細を知りたいところです。
駅馬車
Stagecoach
1939 米
出演:ジョン・ウェイン トーマス・ミッチェル クレア・トレヴァー
監督:ジョン・フォード
ジョン・フォード監督の有名作品。西部劇というよりはワゴンものと言った方が適切かもしれません。
これほど有名な作品にコメントするのも何だか恥ずかしいですが、ともかく、狭い馬車内に乗り合わせた老若男女の人間模様が面白い。有名なインディアンとの戦闘シーンよりも、駅馬車が無事終点についてからのローゼンバーグでの決闘が印象的。夜の酒場や街の風景が決闘前の緊張感もあって美しく描かれてると思います。
ジョン・ウェインの出世作ですが、飲んだくれの医者役のトーマス・ミッチェルも光っていると思います。彼はこの年(1939年)の他の名作にもよく顔をみせています。「風と共に去りぬ」ではスカーレットの父親役だし、「コンドル」では主人公の相棒、「スミス都に行く」にも出演していて、どういう撮影スケジュールだったのか不思議です。
また、乗客の中ではコメディリリーフだった、酒の売人を演じた俳優は「我が家の楽園」にも出ています。
エデンの東
East Of Eden
1955 米
出演:ジェームス・ディーン ジュリー・ハリス レイモンド・マッセイ
監督:エリア・カザン
ジェームス・ディーンの初主演作として有名な作品。テーマ曲もスタンダート。第一時大戦参戦前後の北カリフォルニアを舞台とした親子の断絶、兄弟の断絶の悲劇。キリスト教的倫理観と近代との軋轢もテーマですが、日本人にはピンと来ないかもしれません。
暗い話ですが、舞台となった北カリフォルニアの景色が綺麗。エリア・カザンお得意の、美しい風景と美男美女による社会的題材を扱った作品。
首をすくめて上目遣いなジェームス・ディーン。子供っぽく卑屈なところもある彼のキャラクターは確かに当時としては、それまでに無い斬新なものだったと思います。
父親役のレイモンド・マッセイはフランク・キャプラ監督のブラックコメディ作品「毒薬と老嬢」ではスカーフェイスの悪役でした。
M
M
1931 独
出演:ピーター・ローレ
監督:フリッツ・ラング
サスペンスの古典。ドイツぽい暗くてゴシックな映画。高層だが低所得者が多そうなアパートや地下裁判のエピソードが当時のドイツを思い起こさせます。
主人公は幼児殺人鬼ながら、追われるシーンでは彼に肩入れしてしまうのは、演ずるピータ・ローレにどこか愛嬌があるせいでしょうか。彼はその後にイギリス時代のヒッチコック作品やあの「カサブランカ」、フランク・キャプラ作品等でも好演した名優の範疇に入れていい個性派俳優だと思います。
お熱いのがお好き
Some Like It Hot
1959 米
出演:ジャック・レモン マリリン・モンロー トニー・カーティス ジョー・E・ブラウン
監督:ビリー・ワイルダー
禁酒法時代を舞台にしたテンポの早い艶笑喜劇。ジャック・レモンとトニー・カーティスの女装や、最後の名セリフでも有名。
ビリー・ワイルダーの演出が冴え渡っていた頃の作品。その演出のテンポに乗って、ジャック・レモンの軽妙さも普段よりスピードと鋭さを感じます。女装して口にバラくわえてタンゴ踊るとこには爆笑してしまいます。ウクレレ弾きながら歌うモンローも強烈。どこかおかしくも愛嬌あるコメディエンヌぶりは見事。ニの腕が太いけど。何があっても平然としているジョー・E・ブラウン演じるおじいさんもおかしい。
当時の流れに反して白黒ですが、映像から品位とノスタルジーをも感じさせてくれます。カラーだと女装を含めて当時にしてはえげつない作品になったかも知れません。
また、TV放映ではジャック・レモンを愛川欽也が、トニー・カーティスを広川太一郎が吹替えてますが、そちらも最高。特にキザぽくもオカマっぽい広川太一郎の暴走ぶりが凄い。
オズの魔法使
The Wizard Of Oz
1939 米
出演:ジュディ・ガーランド バート・ラー ジャック・ヘイリー
監督:ビクター・フレミング
ライマン・フランク・ホーム原作によるファンタジーの映画化。というより映画の方が有名かもしれません。原作には続編もありますが、映画化はされていない模様。
パートカラー作品としても有名ですが、白黒とカラーの落差が凄い。とにかくカラーになったとたんに始まる小人達のパレードが強烈で、目も眩まんばかりの原色の氾濫には圧倒されます。魔女が死んで消滅するシーンも見事。ブリキ男の素朴な造形が味わい深い。
そういえばELTON JOHNの「GOODBYE YELLOW BRICK ROAD」やPINK FLOYDの「黒と緑のかかし」もこの作品出てくる黄色い道や案山子のことだと思います。映画の1シーンがELOのアルバムジャケットに使用されていました。
監督のビクター・フレミングは、本作完了後にすぐ取り組んだのがあの「風と共に去りぬ」だったそうです。
オペラハット
Mr Deeds Goes To Town
1936 米
出演:ゲーリー・クーパー ジーン・アーサー ライオネル・スタンダー
監督:フランク・キャプラ
ラブコメディーのようで社会派な映画。原題が「スミス都へ行く」とそっくり。田舎の純朴な青年が都会で酷い目にあうという大筋も同じ。ディーズをジェイムス・スチュワートがやっても良かっただろう。
故郷を後にするエピソードや裁判のエピソードなど、本当にこの監督は、子どもや群衆の使い方がうまいと思います。そして、コップ(世話役)、ボディガード、老姉妹、カメラマンなど本筋とあまり関係の無い脇役ですら魅力的に描かれています。
この映画や前述の「スミス都へ行く」あるいは「我が家の楽園」、「素晴らしき哉、人生」などにみてとれるフランク・キャプラが描いた世界は、現代の日本から見ると楽天的で朝日新聞のような戦後民主主義的な理想や良識に満ちていると見えるかもしれません。でも、これらどの映画でも主人公は何とか身の破滅を逃れただけで、ハッピーエンドの形は取ってますが、彼の望みが叶えられた訳ではありません。彼らは勝ったのではなく、何とか大負けしなかっただけです。このあたりにキャプラの実は苦渋に満ちた社会観や政治観が垣間見れると思うのですが、どうでしょうか。
ところで、この映画の邦題が何故「オペラ・ハット」なのかはよく分かりませんでした。