元MAMAS&PAPAS、フラワー・ムーブメントの象徴的キャラクターである彼女が1968年に発表したファースト・ソロ。2001年に日本で世界初CD化されました。
ソフト・ロック的にはバブルガム路線のセカンドが有名ですが、こちらはコーラスが少ないし、プロデューサのJOHN SIMONらしいSEをとりまぜた華麗なるグッドタイム・ミュージック絵巻といったところ。JOHN SIMON自身やMFQのCYRUS FARYARが曲を書き下ろし、JOHN SEBASTIAN、JOHN SIMON絡みのTHE BANDのRICHARD MANUELやLEONARD COHEN、SPANKY & OUR GANGを手がけたSTUART SCHARF、GRAHAM NASHなどの曲などを取り上げてます。JOHN SIMONにプロデュースを依頼したのは、彼女がTHE BANDの「MUSIC FROM BIG PINK」を聴いて感銘を受けたからとのエピソードも納得。
特に6曲目「YOU KNOW WHO I AM」から9曲目「JANE,THE INSANE DOG LADY」の流れが気持ち良い。MAMAS&PAPAS時代はコーラスに混じっていたので彼女の声の印象が少ないですが、ルックスはともかく、低めながらも伸びやかで程良く通るいい声質です。
CD化に際して、JOHN SIMON、およびジャケットに写っている彼女の娘のコメントが掲載されてますが、特にJOHN SIMONの「ミニ回想録」が当時の業界模様を垣間見られて興味深い。音質も良い。ジャケットに掲載された写真類も貴重。しかしそこにあるシングル用宣伝ポスターには唖然。(2002/02/17)
フラワー・ムーブメントの象徴的存在にして、フォーク出身ながらソフト・ロック界で数多くのフォロワーを生んだオリジネーター。パブリック・イメージとはあまりに違うインサイド・ストーリーを持つあたりはBEACH BOYSと共通。有名すぎるヒット曲を持っているせいか、ベスト盤は何種類も出てますが、オリジナルアルバムのCDはあまり見かけません。その中ではこのファーストは割と良く見かけます。あまりにも周知のメジャーなグループなので今まで縁遠かったのですが、ソフト・ロックであまたある二番煎じよりもオリジナルの方が出来が良いはずと考え直し、聴いてみました。
男女が渡り合ってハーモニーを構築するのが当時としては斬新だったそうですが、まだフォーク・ロックが流行だった1965/1966年頃にこの厚みのある華やかなコーラスは衝撃だったのでしょう。
耳タコの「MONDAY MONDAY」「CALIFORNIA DREAMIN'」は無視して(ヒット当然の良い曲ですが)、フォーク・ロック風演奏の2曲目「STRAIGHT SHOOTER」からソフィスティケートな3曲目「GOT A FEELIN'」への場面展開は見事。彼等のフォロワーのひとつ、FIFTH DIMENTIONが取り上げた6曲目「GO WHERE YOU WANNA GO」、英のTWICE AS MUCHが完コピした10曲目「HEY GIRL」、どれもJOHN PHILIPSが曲作りに絡んだオリジナルですが実に瑞々しい。それらと比べるとカバーものは、玄人臭いというか、大手レコード会社が手堅く作ったプロダクションという印象もあります。4曲目「I CALL YOUR NAME」のラグタイム調というか、SPANKY AND OUR GANGも思わせるオールド・タイミーな味は悪くない。
(2003/06/08)
彼等のサード・アルバム。67年2月発表。グループ名表記はファーストではアポストロフィがあったのに、ここでは無くなっている。誰も気にしなかったのでしょうか。あれだけの特大ヒット曲を持っているのにグループ名表記があやふやなのは、まるで彼等の存在価値のようです。ただの深読みですけど。私が持っているのは4TH「THE PAPAS AND MAMAS」と2IN1の、BGOから1999年に出たCD。
A面にあたる部分はシングル曲や有名曲のカバーが多く、ほぼ彼等のマス・イメージ通りの作品集。2曲目「MY GIRL」は大した事無い演奏だが、イントロのコーラス部分だけは印象的。アルバムオンリーのオリジナル6曲目「FREE ADVICE」は珍しくサックスも入りグルーヴ感もある演奏。
B面にあたる部分はすべてオリジナル曲。一転して内省的でダウナー、そしてそれなりに実験的な曲が目立つ。7曲目「LOOK THROUGH THE WIND」はシングル曲でもあり、メロウ程度でまだ華やかさもある。8曲目「BOYS & GIRLS TOGETHER」は陰鬱な歌にサイケ・ポップ調なホーンセクションが絡む。9曲目「STRING MAN」はメリハリのあるアレンジと演奏でこれも佳作。10曲目「FRUSTRATION」は意味深なタイトルのインスト。半フィル・スペクター、半PET SOUNDSな演奏。歌を入れても良い曲だったかも知れませんが、そうすると従来通りの明るい曲想になってしまうので、わざとインストにしたのかもしれません。11曲目「DID YOU EVER WANT TO CRY」はこれもダルめの曲ですが、バンジョーが印象的。12曲目「JOHN'S MUSIC BOX」はオルゴールそのもの。
後半部分は彼等にとっての「PET SOUNDS」だったのかも知れません。商業的大成功に飽きた頃のアーティスティックな方向への転換という意味で。当時「PET SOUNDS」が(英以外では)評価されず売り上げもさほど芳しくなく、以降のBEACH BOYS作品は著しくセールス・ダウンしましたが、それは本作そして彼等も同じ境遇だったようです。現在「PET SOUNDS」は名盤として崇められてますが、本作はそこまでいかなくても、その1/10ぐらいの栄誉は与えてもいいように思えます。そしてTHE MAMAS AND THE PAPASというグループについても。(2003/06/15)
SPANKY AND OUR GANGの「SUNDAY MORNING」やCLAUDINE LONGETの「THINK OF RAIN」「I DON'T INTEND TO SPEND CHRISTMAS WITHOUT YOU」の作者でもある女性シンガーソングライター。これは彼女の、1968年に発表された唯一のアルバムにボーナス曲をプラスしたCD。雨模様を眺めるジャケの彼女は陽気の良かった、楽しかった日を回想しているよう。
まず耳につくのは彼女のウイスパーな声。まるでCLAUDINE LONGETのようです。ただ、あどけないCLAUDINEの声に比べるとお利口さんというか、淡白な知性を感じます。これは正規の音楽教育を受けていたとか、ポップスの世界に入るまではジャズ・サークルの中に身を投じていたという彼女の出自が聴く者にそう感じさせるのかもしれません。
「SUNDAY MORNING」のセルフカバーはちょっと泥臭い。ジャズっぽい3拍子の「DON'T GO AWAY」はJOHN SIMONらしい当時の洗練された、ハイブローなアレンジ。アルバム最後の曲「LOVE」はあまりもの大袈裟なアレンジで、彼女の声とのミスマッチさに笑ってしまいます。アートロック/ニューロックの影響を受けたと思しき、1968年らしい野心作ではあります。「SOMEONE I KNOW」はPAUL SIMONの当時の方法論に影響されたのでしょうか。
そんな革新的な楽曲群の一方、保守的ともいえるシンプルでシンガーソングライター然とした曲も魅力的に聞こえます。2曲めの「SUN」、ハープのようなギター(ガットギター?)のアルペジオで始まる3曲めの「LOVE SONG」、ガラス細工のように繊細なタイトル曲「TAKE A PICTURE」などは耳がとろけてしまいそうです。箱庭な世界。
ボーナス曲はウイスパーな歌い方でないのが殆ど。デモばかりだし。「CALIFORNIA SHAKE」は知的な人間のつまらないユーモア。そんな中でCLOUDINEに送った「I DON'T INTEND TO SPEND CHRISTMAS WITHOUT YOU」のデモは比較的聴きものです。(2000/07/08)
ソフト・ロックの隠れた名盤として有名な作品が、やっとCD化。アナログ盤はかなりレアだったそうなので、嬉しい限りです。「ALL SUMMER LONG」風ジャケとBRIAN WILSON風の声、いかにものBEACH BOYSというかBRIAN WILSONフォロワー。
でも、よく見るとジャケの写真はあまりMIDSUMMERぽくないし、声もBRIAN WILSON風といっても最近のBRIANに似ている、コーラスも頑張ってるが本家には及ばない、といったバチ物臭さもあります。
しかしバラード曲での感傷的なメロディーは一級品。ミディアムの曲で目立つソウルっぽい演奏とBRIAN風メロディーの組み合わせも悪くない。ホーンやバイブを生かしたアレンジも良い。特に4曲目「WHERE DO THE GIRLS OF THE SUMMER GO?」バイブ中心のアレンジからストリングスに変わる箇所が美しい。6曲目「TAKE ME WITH YOU」、8曲目「DON'T CRY OVER ME」あたりは特に白昼夢的で、BILLY NICHOLLSの「WOULD YOU BELIEVE」も想起させる。ボーナス・トラックではBEACH BOYSぽいコーラスも入る「PLACE FOR THE SUMMER」、ゆったりとしたバラード「BUILD YOUR DREAM」が良い。
1969年の発売当時はまったく評判にならなかったのですが、当時のBEACH BOYSの評価を考えればイギリスでプッシュすれば売れたかもしれませんね。(2003/01/12)
ソフトロックの代表的名盤のひとつでもあり、ソフト・ロック界VIPのひとりであるCURT BOETCHERの主要な仕事の一つでもある。
ビートルズですら4トラック録音だった頃に最先端16トラックの録音。1曲目「PRELUDE」の冒頭、この時代とは思えないびっくりするほど抜けの良いドラムはそのせいか。エコー感満載で奥深いコーラス、SEもふんだん。このあたりはストーンズの「サタニック・マジェスティーズ」にも通じる音の玉手箱の世界。
実に瑞々しい繊細なコーラス、メロディー。「ISLAND」や「THERE IS NOTHING MORE TO SAY」が白眉。デビュー作ならではの意気込みも感じます。現実逃避的でエキゾチックな面も覗く。細野晴臣氏の70年代のソロ作にも通じると思います。
ジャケットも印象的ですが、最初にCD化された時はなぜか右上の一画の部分だけでした。
レコード会社がろくにプロモートしなかった為に売れなかったそうですが、この奥ゆかしく美しい作品にはヒットチャートで躍進しバカスカ売れるのではなく、ひっそりと咲き発見された「影の名盤」という存在がよりふさわしいと思います。(1999/05/01)
イギリスのハーモニー・ポップグループ。1964年から1969年にかけて、ピカデリー〜パイレーベルに残した、当時アルバムは発表しなかった彼らのシングル曲および未発表曲を収めたもの。
1STシングル曲はまるで日本のGS、491(フォー・ナイン・エース)を思わせる純朴なマージービート。2NDシングル「THAT'S WHEN HAPPINESS BEGAN」はライナーによると「凶暴なフリークビート」と書いてあるのがおかしい。気合の入った演奏で私には好感が持てるが、確かにソフトロックファンには耐えがたい曲であろう。
その後トニー・ハッチがプロデューサーになってからの作品が聞き物。アメリカではヒットチャートでそこそこの成績を残したそうです。確かに当時のアメリカものに比べて遜色のない出来です。本国イギリスでは売れなかったそうです。イギリスでは、BEACH BOYSが1966年以降、アメリカでの人気と反比例するように盛り上がっていたのに、自国のハーモニーグループには冷たかったみたいですね。
パイでの最後のシングルはトニー・ハッチを離れてセルフ・プロデュースだが、ニュー・ロック的なアレンジにメンバーの自立しようという意気込みが伺える。
未発表曲集のなかではやはり「LET'S RIDE」が目を引く。当時ROGER NICHOLSの曲を選ぶとは相当のセンス。ただし小さな友達サークルが放っていたマジックには程遠い出来。(1998/08/30)