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Soft Rock
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THE CARNIVAL THE CARNIVAL

 元セルジオ・メンデス&ブラジル66のメンバーなどからなる彼らの唯一のアルバム。ボーンズ・ハウのプロデュースなので、「SOFTROCK A to Z」等でも書かれているようにセルジオ・メンデス&ブラジル66とFIFTH DIMENTIONを足して2で割ったよう。

 もっともラテンな薫りがするのは1曲目のインストと2曲めぐらい。この2曲はグループ名にぴったりです。他の曲はリム・ショットが若干それ風なだけで、あとは手堅いA&Mプロダクション作品。

 よく通る女性ボーカルにゴージャスなコーラス、リズムセクションはハル・ブレインやジョー・オズボーンなどのお馴染みだし、カバー曲はバカラックなどの定番商品でアレンジも手堅い。保守王道な作りというか、安心して聴けるソフトロック作品。ライナーに「ラスベカス的な感覚に近いポップアルバム」と書かれてますが、裏ジャケットにあるステージの写真もいかにもラスベカスのショウ的です。

 ROGER NICHOLSの「LOVE SO FINE」はTHE FOUR KING COUSINSと同じようにサビでテンポを変えてシャッフル調になるアレンジ。「TURN,TURN,TURN」はプロテスト・フォークの曲とは思えない程きらびやかな仕上がり。だが最後の曲、BEATLESのカバー「THE WORD」はマイナー調でつまらない。有名曲以外では、いかにもソフトロックな「HOPE」や徐々に盛り上がり朝もやのように爽やかな「A FAMOUS MYTH」が聴きもの。

 バック(ザ・グループ・ビハインド・ザ・グループ)が盛り立て過ぎて、グループとしての個性には欠けると思いますが、上質な作品である事は確かです。(2000/04/16)



DISTINT SHORES DISTINT SHORES / CHAD & JEREMY

 アメリカでより成功を収めたイギリス出身のデュオ。1966年の発表で、フラワー・ムーヴメントとかサイケとかコンセプトアルバムが流行る直前のアルバム。GARY USHERとはまだ関係なかった頃で、時期的にも流行りであったフォーク・ロック調。陰影のあるハーモニー、さりげなく感傷的なメロディー、俗ぽくない上品なアレンジ、と聴きこむほど味の出る作品集。後の「OF CABBAGES AND KINGS」「THE ARK」といったコンセプト風アルバムよりも純朴さが感じられる。アメリカで売れていたとはいえ、英国上流階級出身らしい端正さも目立ちます。それがアメリカ市場での売りだったのでしょうけども。

 後の大プロデューサJAMES WILLIAM GUERCIOが作ったタイトル曲、ややバカラック調のアレンジながらも繊細さが際だつ「WHEN YOUR LOVE HAS GONE」。何ともノーブルな雰囲気漂うサビを持つ「MORNINNG」。エコーの深いパーカスが印象的な「EVERYONE'S GONE TO THE MOON」。アコギもいい雰囲気な「I WON'T CRY」が特に印象的です。SIMON&GARFUNKELの「HOMEWARD BOUND」もカバーしてます。彼等が有名になる前に「発見」したのはさすがですが、すぐに人気が逆転されてしまったのは皮肉ですね。

 アルバム本編は色合いが見事に統一されてますが、ボーナストラックの方はティニー・ポッパー調の明るめな曲が多い。彼等もアイドル的なとこがあったようですね。(2004/01/11)



OF CABBAGES AND KINGS OF CABBAGES AND KINGS / CHAD & JEREMY

 イギリス出身ながらアメリカで商業的成功を収めたデュオが、1967年に発表したコンセプトアルバム。待望のCD化、しかもボーナストラック付き。アルバムタイトルは「鏡の国のアリス」中の詩「The Walrus and the Carpenter」(セイウチと大工)の一節から取られているらしい。

 もとは貴公子然としたフォーク・デュオだが、ここでは弾き語りに、時にはラーガ風時には室内楽なアレンジが施されており、GARY USHERプロデュースらしい内省的な音世界が展開されている。何よりもサイケな衣装を着たジャケット、SEやセリフの多用、そしてコンセプトアルバムと、BEATLESの「SGT. PEPPER'S...」と共通性を持つアルバム。本作の方が発表が後だったが、インナーによると1967年の初頭に大部分が録音されており、「SGT. PEPPER'S...」に追随したわけではなく、全く同時期の制作だったらしい。ただし、収録曲中もっとも「前衛的な」作品で8分を超える「FALL」のみ1967年の6月おしまい頃に録音されており、同じ月の初頭に出た「SGT. PEPPER'S...」を聴いてから取りかかったのかも。いずれにしてもソフト・ロックで括るにはやや無理ある作品。

 いきなり語りから入り、SEとリズムが重なって演奏が始まる1曲目「REST IN PEACE」をはじめ、気品と翳りのある曲が多い。アメリカ人からみると暗い印象を持たれたかもしれません。それまでの作品に比べてチャート成績がひどく悪いのは、そのせいかも。LP時代はB面すべてを占めていた「THE PROGRESS SUITE - MOVEMENT 1 THRU 5」、後にプログレ勢が片面1曲というのをよくやってましたが、この時期にしては実に先進的。ただし今聴くとボーカル入りの部分は出来が良いけど、コラージュ部分が長すぎ全体的に冗漫。やりすぎた、先走りすぎたという事でしょうか。

 ボーナストラックでは1966年録音の「MANNERS MAKETH MAN」「THE GENTLE COLD OF DAWN」と、その後の作品では落差を感じます。次作「THE ARK」に収録されていた「PAINTED DAYGLOW SMILE」のシングルバージョンや凝ったイントロ部分が編集されてしまった「REST IN PEACE」のシングルバージョンが興味深い。(2002/08/11)



THE ARK THE ARK / CHAD & JEREMY

 本国イギリスよりアメリカで商業的成功を収めたデュオ。ハーモニー主体の音作りやGARY USHERのプロデュースなどでソフト・ロックに分類されてます。しかし、明るさや爽やかさに著しく欠ける、この内気な暗さを感じさせる音を聴くとソフト・サイケ、さらに書くと、ポップやサイケな展開もあるトラッド色の薄いブリティッシュ・フォークと表現した方が適切に思えます。

 陰影のあるメロディーとボーカルは実にイギリス臭い。だが、当時のBYRDSやMILLENNIUMをたやすく連想できる判りやすく霞がかった音はいかにもGARY USHERプロデュース作品。イギリスとカリフォルニアが同居している作品ともいえるでしょう。

 1曲目「THE EMANCIPATION OF MR.X」からしてブリティッシュ・フォークを思わせます。サビは明るめなのが妙。タイトル曲「THE ARK」の中盤での展開や、「PAINTED DAYGLOW SMILE」の後半のコーラスは聴きもの。フォービートな「TRANSATLANTIC TRAUMA 1966」も良い。前述の、「PAINTED DAYGLOW SMILE」の前半での歌声はPAUL McCARTNEYにそっくり。また曲の並べ方も上手く、暗い「THE RAVEN」から「IMAGINATION」へ、ギターとリコーダーによるインスト「PANTHEISTIC STUDY FOR GUITAR AND LARGE BIRD」から「PAXTON QUIGLEY'S HAD THE COURSE」への場面展開は聴きもの。最後はBYRDSにならってかノヴェルティな曲。

 曲がほぼ繋がってますが、地味だが良質なメロディーがあちこちに転がってます。まあ、この誉め言葉もブリティッシュ・フォークでよく使われる表現ですが。じっくり聴かせるアルバムですが、売ってやろうという色気があまり感じられません。チャートに入らなかったのは当然でしょう。

 長門芳郎氏のライナー・ノーツによると1968年9月発表なのに、帯や裏ジャケットには1970年と記されているのが不思議。音を聞く限り1970年にはとても思えません。(2000/07/23)



CHAMAELEON CHURCH CHAMAELEON CHURCH

 人脈的にはSTEELY DANやVELVET UNDERGROUNDとも繋がるという米東海岸出身4人組が1968年に発表した唯一の作品。紙ジャケ仕様によるCD化。メンバーの一人CHEVY CHASEはどこかで名前を聞いたことがあるなと思ったら、その後コメディアンとして成功した人らしい。

 ソフトロックというよりはソフト・サイケ、あるいはサイケ・ポップよりな作品。ガレージ臭はない。イギリスものに比べると気品に欠ける。また、あまり上手くないボーカルがB級ぽさを強めていが、バンド名(あの爬虫類とは綴りを変えている)やジャケット通りのカラフルな作品。

 1曲め「COME INTO YOUR LIFE」管楽器を取り入れたアレンジが良い。スローな「CAMILLIA IS CHANGEING」や3拍子「SPRING THIS YEAR」はいい気分でトリップをたのしんでいるよう。他にはストリングスがドラマチックな「REMEMBERING'S ALL I CAN DO」、フルート入りの気だるい「TOMPKINS SQUARE PARK」、シタール入りテープ逆回転ありの「OFF WITH THE OLD」などが聴きどころ。(2000/12/24)



THE BEST OF DENNIS YOST AND THE CLASSICS IV THE BEST OF DENNIS YOST AND THE / CLASSICS IV

 「SPOOKY」や「TRACES」のヒットを持ち、ATLANTA RHYTHM SECTIONの前身としても知られるグループ。オリジナルアルバムのCD化が遅れているそうですが、LEGENDARY MASTER SERIESのベスト盤CDが出ました。

 若干のアルバム曲をはさみつつ、発表順にシングル曲を収めた内容。初期のFOUR SEASONSもどきというか、オールディーズ然とした曲には直後の「SPOOKY」と比べるとえらく落差を感じます。その試行錯誤期の最後、6曲目「NOTHING TO LOSE」はTHE RIGHTEOUS BROTHERES風ながら、メロディーはその後を思わせる完成度。

 その後売れてからは大まかに言って「SPOOKY」タイプと「TRACES」タイプの曲があります。「SPOOKY」タイプの方はソフト・ロックぽくないと感じられます。都会的でブルーとよく評されてますが、全体の感触はとてもクールだし、ファンキーなギターフレーズに哀愁のサックス、とソフト・ロック的にはあまり使われない方法(禁じ手か?)を使っているからです。

 「TRACES」がヒットしてからはこちらのタイプの曲が多くなる。ファンキーさは抑えて、さほどポップではないが、異様に洗練されたメロウなメロディーをストリングス系とサックスがくるむ。ともかく、南部アトランタ出身で当地で録音されたというのがちょっと信じられないぐらいのプロダクションです。(2002/06/30)



DIGITALLY REMASTERED BEST DIGITALLY REMASTERED BEST/CLAUDINE LONGET

 ソフトロック〜70年代ポップスの名門の一つ、A&Mレコードのささやき(ウイスパーリング)歌姫であるクローディーヌ・ロンジェのリマスターベスト盤

 彼女のウイスパリング・ボイスはリンジー・ディー・ポールのような色気はなく、あどけなさを感じます。フランス人が喋る舌足らずの英語のためでしょうが、当時2人の子持ちだったとは想像できません。ついでに彼女は服役中(夫の愛人を撃った)という現在の境遇もこれら楽曲群からまったく想像つきません。

 ニック・デカロのアレンジは過剰にならずツボを押さえた職人芸で見事。HARPERS BIZARREも取り上げた「SMALL TALK」やボサノバ「A MAN AND WOMAN」、BEATLESの「HERE THERE AND EVERYWHERE」など、彼女に歌って欲しい曲を取り上げているような選曲センスはさすが。特に初期は間奏で「ささやき語り」が入るのが定番のようです。(1998/08/30)



THE CLIQUE THE CLIQUE

 1969年夏に「SUGAR ON SUNDAY」をヒット(全米22位)させたグループの唯一のアルバムにシングル曲をプラスしたコンプリート盤。ただこのグループは実体がなかったようで、シングルの一部以外をすべてプロデュースしたGARY ZEKLEYのプロジェクトともいえる作品集。

 彼はソフト・ロック界のV.I.P.の一人ですが、彼の以前のソフト・ロックな仕事に比べてソウルフルな曲が多いし、WHITE WHALEレーベルらしくちょっと中道なポップロック路線。

 GARY ZEKLEYが作曲にクレジットされている「MY DARKEST HOUR」、「HALLELUJAH!」、「JUDY JUDY JUDY」、「(THERE AIN'T) NO SUCH THING AS LOVE」は躍動感もあり良い出来。PARADEのFRED ROBERTSが作者に名を連ねる「SOUL MATES」も聴きもの。ただし、BEE GEESのカバー「HOLIDAY」、「I'LL HOLD OUT MY HAND」、「SHADOW OF YOUR LOVE」は泣きのメロディーがうっとおしい。代表曲「SUGAR ON SUNDAY」の主旋もそうなのですが。

 また後にREMがカバーした「SUPERMAN」も収録されてますが、本盤を買うまでCLIQUEがオリジナルだったとは知らず、意外でした。なぜか「ゴジラ」の1シーンから始まるREMのバージョンもスピード感があり爽快でしたが、オリジナルの方は素朴な仕上がり。BEATLESの「SGT. PEPPER'S...」のギター・リフがネタ元だったそうですが、イントロ聴くと頷けます。(2001/01/21)



THE BEST OF THE COWSILLS THE BEST OF / THE COWSILLS

 母親と息子達、その後末娘も加入するファミリー・グループの、これは安易なジャケのベストCD。 芸能界臭さも感じますか、活動当時を知らない新世代によって、ソフトロックとして高い評価を得ているグループ。懐メロ的には「THE RAIN, THE PARK AND OTHER THINGS」のヒットで有名ですが、「WE CAN FLY」の方がよりソフト・ロック的で、つきぬけた明るさを持つ傑作。

 よく地味と評されてますがメンバーのオリジナルも魅力です。時折ちょっと暗めながらしっとりとしたメロディーと爽やかなコーラスが包んでいます。中では6曲目「CAPTAIN SAD AND HIS SHIP OF FOOLS」が個人的にはベスト。その他のオリジナルも出来は良く、もっと評価されて欲しいと思います。なんとなくアメリカぽくない、イギリス風な抒情やスマートさも感じます。その流れでは、ファンキーな8曲目「INDIAN LAKE」、有名ミュージカルのテーマ曲を営業的に歌った14曲目「HAIR」は余計に感じます。

 日本でも当時「THE RAIN, THE PARK AND OTHER THINGS」(邦題「雨に消えた初恋」)は大ヒットし、その頃流布したキャッチコピー 「牛も知ってるカウシルズ」は、大橋巨泉が作ったらしい(異説あり)。これは当時でもお寒い駄洒落だったそうで。(2002/06/22)



MISTY MIRAGE MISTY MIRAGE/CURT BOETTCHER

 ソフト・ロックのVIPのひとりであるCURT BOETTCHERの、1969年前後に録音されたマテリアルからなる未発表音源集。「PREPARING FOR THE MILLENNIUM/THE BALLROOM」に続く発掘音源集の第2弾ともいえるでしょう。時期としてはMILLENNIUM以降でエレクトラからのソロ以前のTOGETHERレコード時代。2曲のみ当時シングルとして発表済みであとは今回初出。CM用ジングルありオケのみもありと、まさに倉庫をくまなく探してテープをかき集めましたというとこでしょうか。

 「かき集め」だけに彼の持ち味をいろいろ楽しむ事が出来ます。彼の甘酸っぱい声によるトロピカルでエキゾチックな曲ある一方、低いキーのボーカルによる、彼のエレクトラからのソロにつながるレイドバックした曲もあり、ソロ作品への連続性を伺わせます。

 いくつかある繊細で少々湿っぽいバラードは、ソフトロックという範疇からは外れるかもしれません。でも「ANOTHER TIME」などは瑞々しくも美しい曲だと思います。彼は曲作りが不得意だったと言われてますが、職業作曲家が書くような曲が書けなかっただけで、実は個性的なシンガー・ソングライターだったんじゃないかと思わせてくれます。(2000/04/29)



THERE'S AN INNOCENT FACE THERE'S AN INNOCENT FACE/CURT BOETCHER

 ソフト・ロックのVIPのひとり、CURT BOETCHER唯一のソロアルバム。

 純白に包まれて遠い目でかすかに微笑むジャケット、タイトル「THERE'S AN INNOCENT FACE」と来るなんて、まるで心理セミナー帰りの人のような佇まい。

 VANDA誌からはCURT BOETCHERのコンプリートを目指す人だけ買えば良いなんて書かれていますが、確かに以前彼が関わったMILLENNIAMやASSOCIATIONのようなめくるめくコーラス満載のソフトロックを期待すると驚くことになります。まるで憑き物が取れたようなさわやかさ。ボーカル処理やコーラスアレンジに往時の彼を忍ばせる瞬間もありますが、彼の強烈な個性が薄まってしまい世間並みの普通の人になってしまったようです。30歳近くになり丸くなったのでしょうか。

 ソロデビューアルバムということで、心機一転、余分な装飾を排してありのままの自分から再出発するつもりだったのでしょうか。ジャケットはそんな心意気が伺えるような気がします。

 ただ、彼の前歴を考えなければ結構楽しめる一枚です。曲の粒もそろっているし、アレンジも派手すぎず地味すぎてもいない程よさ。1973年の作品ですが不思議に古さを感じません。カリフォルニアの爽やかさを充分に感じられ、彼がリラックスしているのがよく伝わってきます。

 一曲目の「I LOVE YOU MORE EACH DAY」を当時シングルカットしたそうですが、間奏の厚いストリングスがその後彼がハマるディスコぽさを感じます。(1998/09/27)



RED RUBBER BALL (A COLLECTION) RED RUBBER BALL (A COLLECTION) / THE CYRKLE

 JOHN LENNONがグループ名をつけたといわれ(怪しいらしいが)、PAUL SIMONが曲を書き下ろし、JOHN SIMONプロデュースという恵まれたデビューを飾った彼らのベスト盤。JOHN LENNONが名付け親の件は、CYRCLEのマネージャーがBRIAN EPSTEINと知り合いだったからとのこと。

 PAUL SIMONによる「RED RUBBER BALL」と、「TURN DOWN DAY」のヒットで有名ですが、他の曲もJOHN SIMONらしい適度に凝って適度に革新的で聴きやすいプロダクション。メンバーによる地味で単調なオリジナル曲でもそれなりの仕上がりなのはさすが。

 ファーストアルバムからの曲は、「HOW CAN I LEAVE HER」「PLEASE DON'T EVER LEAVE ME」など青臭くも甘酸っぱい青春路線という印象。セカンドではメンバーのオリジナル「DON'T CRY, NO FEARS, NO TEARS COMIN' YOUR WAY」での力強い盛り上がり、朝もやのような「I WISH YOU COULD BE HERE」での美しさ、ボサの「THE VISIT」など、成熟した印象。先の「DON'T CRY〜」でのシタールやイントロがインド音階のような「WE HAD A GOOD THING GOIN'」などもけしてやりすぎではなく、彼らのパブリックイメージの範疇にとどまっている。

 ただソフト・ロックというよりはファッションも含めてそれ以前のスタイル、フォーク・ロック+コーラスという印象です。これだけ上質な作品を連発しても1967年以降セールスが伸び悩むのは、彼らのお上品で端正なイメージが当時のヒップな風潮の中では派手さに欠けて地味な印象を与えていたからだと思います。

 後期はCHARLIE CALELLOがプロデュースしてますが、その中では16曲目の「READING HER PAPER」は彼がその後手がけるLAURA NYROやAL KOOPERを思わせる透明感あるアレンジです。

 また、解散後になぜかCYRKLE名義で出たエッチ映画のサントラ「MINX」が実はSOFT ROCK的には彼らの最高傑作として名高いのですが、このベスト盤のライナーノーツでは全く触れられていません。彼らのオフィシャルサイトでも無視されているところを見ると、タブーになっているようですね。「なかったこと」状態では「MINX」のオフィシャルCD化は遠そうです。(2001/08/19)



THE MINX ORIGINAL MOTION PICTURE SOUND TRACK THE MINX ORIGINAL MOTION PICTURE SOUND TRACK / THE CYRKLE

 ブート盤LPまで出回っていたソフト・ロック幻の名盤が遂にCD化。JOHN LENNONがグループ名をつけ(たといわれ)PAUL SIMONが書き下ろした「RED RUBBER BALL」が全米2位に上がるというデビューを飾った彼等が、どんどん落ちぶれていった先にとうとうソフトポルノのサントラを担当し、しかもそれも一度オクラ入りになって3年後にひっそりレコードが出ていたなんて因果な話です。

 全曲オリジナルでセルフ・プロデュースなのも、かつての優秀なスタッフに去られてしまった感もあるし、サントラなのでインストが多いですが、幻の名盤とされただけあって、ボーカル曲はどれも耳を惹きつけさせます。1曲目「SQUEEZE PLAY」は彼ららしくコーラスもたっぷり。2曲目「THE MINX」は優雅なボサで、ASSOCIATIONの「CHERISH」も思わせます。3曲目「MURRAY THE WHY」はMONKEESの「I'M A BELIEVER」風のリフが飛び出す。7曲目「IT'S A LOVELY GAME LOUISE」も映像が映えるようなアンニュイなボサ。ちろっと入るピアノが最高。9曲目「SOMETHING SPECIAL」はシャッフルに乗ったせつないメロディーが印象的で、個人的にはフェイバリット。このアルバムがCYRKLEの最高作と言われると少々疑問もありますが、自分たちだけでこれだけの曲が作れたのは大した事です。

 ボーナストラックではタイトル曲の変形13曲目「TERRY'S THEME」、SIMON DUPREE AND THE BIG SOUNDのヒット曲をサントラのインストとして料理した15曲目「KITES」がまあまあ。最後に映画の予告編らしき音声が収録されてます。(2003/04/27)