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British Rock or Psyche Pop etc...
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THOUGHTS & WORDS THOUGHTS & WORDS

 元PANDAMONIUMの2人によるフォーク・デュオ。ジャケもいい雰囲気。バンド名(デュオ名)はBYRDSの「YOUNGER THAN YESTERDAY」収録曲から取ったとの事。

 ライナーにはメンバーの一人、BOB PONTONのインタビューがあり、INCREDIBLE STRING BANDが好きだったとか、FAIRPORT CONVENSIONと交流があった様子が書いてありますが、収録曲はどれもアシッド色やトラッドぽさがほとんど皆無で、泥臭さも無く、中性的ともとれるある種の清潔さを感じます。フォーキーでもありますが同時にポップな感触。ボーカルやコーラスの録り方、時折入るストリングスなど、アレンジとプロデュースをしたMIKE BATT色が強い。ライナーでも先のメンバーBOB PONTONが、THOUGHTS & WORDSとはMIKE BATTを含めた3人のグループと考えているとも書いてあります。

 全般的に地味ながら、曲としては、FADING YELLOW VOLUME 4の冒頭にも収録された、快活な「MORNING SKY」、ストリングスが麗しい「BACK IN 1939」、リコーダーが入る「LIFETIME」、まるでHONEYBUS一派のような、優雅なストリングス入りの「CHARLIE GATES」あたりが印象的。(2006/01/08)



HOLLYWOOD DREAM HOLLYWOOD DREAM / THUNDERCLAP NEWMAN

 ロック・クラシックの一つとなったヒット曲「SOMETHING IN THE AIR」(英1位)で知られる3人組。1969年発表の唯一のアルバム。WHOのPETE TOWNSHENDがプロデュースし、ベースも弾いている。オリジナルアルバムの曲順通りでなく、その「SOMETHING IN THE AIR」が先頭になっており、シングル曲6曲がボーナストラックとして収められている。

 ドラマーでボーカル、件のヒット曲も含めて殆どを作曲しているSPEEDY KEEN、ユーモラスな風貌でマルチプレイヤーでもあるANDY NEWMAN、後にPAUL McCARTNEY & WINGSの全盛期を支えることになる、このときはまだ16歳!だったというJIMMY McCULLOCHというなかなかキャラのはっきりしたトリオだったが、これ1枚だけだったのは残念。

 その「SOMETHING IN THE AIR」は「革命ロック」なんて邦題もついてしまったほどドラマチックな曲だが、アルバムを聴く限りそれが彼らの代表曲というには語弊がありそう。その他の収録曲はやや異なり、ノスタルジックかつイギリス風のくすんだ印象。その「SOMETHING IN THE AIR」も途中だらしないラグタイム調ピアノが挿入されるのが不思議ではありました。

 ともかく「HOLLYWOOD #1」で幕を開けるアルバム本体では、SPEEDY KEENの作った曲をANDY NEWMANが前述のラグタイム調ピアノやサックス、フルート、オーボエのみならず、グロッケンスピールやカズーまで使って盛り上げ、独自な雰囲気を作っている。5曲目「LOOK AROUND」は一瞬「I CAN'T EXPLAIN」を思わせるリフが面白い。6曲目「ACCIDENTS」は色んな展開をみせる9分にもおよぶ大作。10曲目「I DON'T KNOW」もドラマチックな佳作。12曲目「HOLLYWOOD #2」は「HOLLYWOOD #1」の華やかなリプライズ。久しぶりに聴いたけど、やはりいいアルバムです。

 3つあるシングルB面曲はどれもSPEEDY KEEN以外が作ったオリジナル曲。ANDY NEWMANによる「WILHEMINA」のとぼけ具合が面白い。いきなり切り込むJIMMY McCULLOCHの鋭角なギターもご愛敬。「STORMY PETREL」はピアノとカズーが大活躍する、ANDY NEWMANのソロ作品ともいえる曲。(2002/11/10)



THE DERAM ANTHOLOGY THE DERAM ANTHOLOGY / TIMEBOX

 その後TEMPESTやKEVIN AYERSのバックやRUTLESの裏方などで活躍するOLLIE HALSALLや、BOXERなどで活躍するMIKE PATTOが1967-1969にかけて活動したグループ。5枚ものシングルを残しながらアルバムを発表しなかったDERAM時代の音源集。これ以前にPICCADILLYで2枚のシングルを発表している。また、ロジャー・ディーンのコミカルなジャケットで有名なPATTOの前身。5人のメンバー中、KEY以外の4人がそのままPATTOへ移行する。

 5枚分のシングル曲も収められているので、いかにもヒット向けだったり、サイケ・ポップ風の曲もあります。しかし基本的にはモッズというかR&Bな曲をMIKE PATTOが熱唱し、OLLIE HALSALLによるギターorビブラフォンが装飾しているという曲が多い。また、後身のPATTOはVERTIGOレーベルらしく、くすんだ印象だったのに比べると、TIME BOXの方は商業的というか、程良くメロディアスで程良く聴きやすい。

 半分ぐらいの曲でOLLIE HALSALLはビブラフォンも演奏してますが、通常はギターやキーボード類が弾くようなリフをビブラフォンでやってしまうのが変。MIKE PATTOの叙情も感じられるボーカルとクールなビブラフォンの組み合わせも面白い。ギターオリエンティッドな曲では後身のPATTOをよりコンパクトにより聴きやすくしたような印象。

 1曲目「GONE IS A SAD MAN」は幾つかのコンピ盤にも収められているいわば彼らの代表曲。シングルのB面曲ですが、途中から切り込んでくるギターが格好良い。6曲目「YELLOW VAN」では華やかなブラスがいかにもシングル向けの佳曲。ビブラフォンの乱打が印象的なFOUR SEASONSのカバー9曲目「BEGGIN'」はライナーによれば38位まであがったという小ヒット曲。12曲目「STAY THERE」のリフは後のLED ZEPPELINの「DOWN BY THE SEA SIDE」にそっくり。14曲目「A WOMAN THAT'S WAITING」はなんとなくBEATLESの「I AM THE WALRUS」風。15曲目「EDDIE McHENRY」は可愛らしい小品。21曲目のシングル曲「WALKING THROUGH THE STREETS OF MY MIND」はかつてSEE FOR MILESから出た「THE BRITISH PSYCHEDELIC TRIP」シリーズにも収められてました。24曲目「MISTY」はビブラフォンを堪能できるジャジーなインスト。〆にふさわしい。

 中心人物だったMIKE PATTOとOLLIE HALSALL2人とも故人になってしまいました。個人的にはOLLIE HALSALLは、KEVIN AYERSの初来日公演での艶やかな音色の印象が強烈だったので、もうあのギターが聴けないのは残念です。ROBERT FRIPPにも激賞されたというし、彼はもっとギタリストとして評価されてもいいのではと思ってしまいます。(2000/12/10)



TINKERBELL'S FAIRYDUST TINKERBELL'S FAIRYDUST
NEW

 公式には1967-69年にかけてDECCAから3枚のシングルを残すのみ。だが、そのうち1枚は「誓いのフーガ」のタイトルで日本でのみヒットしたという意外な事実を持ち、さらに直前に発売中止となったアルバムのテストプレス盤が高値で取引されている、数奇な運命を持つグループ。

 これは2009年にCHERRY RED傘下のGRAPEFRUITから出たCDで、前述のアルバムに含まれない曲や前身のTOMMY BISHOP'S RICOCHETSやRUSHの音源を含むもの。

 個人的にはSEE FOR MILESから出たTHE BRITISH PSYCHEDELIC TRIPコンピでこのグループを知ったのですが、上記のような事実を後から知り驚いた記憶があります。

 サイケ・ポップというよりは、ハーモニー・ポップのグループと言えそうな彼ら。シングルになった「LAZY DAY」はオリジナルのSPANKY AND OUR GANGよりも瑞々しい出来と思います。「IN MY MAGIC GARDEN」もよくアレンジされているドリーミーな曲。ですがシングル曲以外の「アルバム」収録曲では有名曲のカバーが多く、コーラスは生かされているものの、粗いプロダクションで残念。その中では「YOU KEEP ME HANGIN' ON」はSTATUS QUOみたいなチープなオルガンの音が面白い。

 前身のTOMMY BISHOP'S RICOCHETSはマージービート風。RUSHはかなり厚めなコーラスを生かした演奏。TINKERBELL'S FAIRYDUSTとしての「アルバム」未収録曲の中にHONEY BUSのCOLIN HAREが書いた「WALKING MY BABY」やIDLE RACEのカバー「FOLLOW ME FOLLOW」がありますが、特筆することも無い平凡な仕上がりに思えます。それよりも、今回発掘された未発表曲「GOOD DAY」は1,2枚目のシングル曲と同じVIC SMITHプロデュースのためか、BEACH BOYS風コーラスを含め普及点の出来。

 「誓いのフーガ」の件ですが、「青い影」と同じクラシックのフレーズを流用するアプローチは英本国では食傷気味だったのかもしれませんが、日本では、オリコン最高位は1968/12/9付けで20位という記録が残ってます。大物を除けば、日本で最も成功した英サイケ・ポップ系グループといえるでしょう。このCDのライナーでは「日本でのインターナショナル・チャートで2位」と記載されてますが、どこのチャートのことでしょうか。さらに次のシングル「SHEILA'S BACK IN TOWN」も日本でTOP10に入ったと記載されてますが、このシングルが日本で発売されたという記録は見つかりませんでした。

 ともかく、「誓いのフーガ」の原題(TWENTY TEN)である2010年は、もうすぐになりました。サイケ・ポップ好きが2010年の最初に聴く曲は決まりですね。(2009/08/09)



TOMORROW TOMORROW

 YESのSTEVE HOWEや、TWINKが在籍していたサイケ・バンド。現在は「A TEENAGE OPERA」のMARK WIRTZがプロデュースした、またはKEITH WESTがフロントにいたグループ。といった方が通りがよさそうです。ただし、カラフルでポップな「A TEENAGE OPERA」に比べて、本盤は印象を大分異なります。

 ここでの収録曲のうち、「A TEENAGE OPERA」には「SHY BOY」がKIPPINGTON LODGEのカバーによって、「HALLUCINATIONS」はSTEVE FLYNNのカバーが収録されています。「A TEENAGE OPERA」での派手なバージョンに比べてここでのオリジナルはシンプルなアレンジでくすんで、たそがれた印象。

 各種コンピ盤によく収められている代表曲「MY WHITE BICYCLE」など、音の位相が異常な曲がいくつかあり、ヘッドホンで聴くと耳が詰まりそうです。2NDシングルだった「REVOLUTION」もそう。時代を象徴するようなタイトルです。間奏でフルートや弦楽器が出てくるとこは少々「A TEENAGE OPERA」風。

 STEVE HOWEの金属的な音色で細かいフレーズを連発するギターが印象的ですが、一方、KEITH WESTのもの憂げでたそがれた声も耳につきます。先の「SHY BOY」や「THE INCREDIBLE JOURNEY OF TIMOTHY CHASE」などはリリカルで哀愁を感じます。

 メロディアスだが音響的には混沌。カラフルというよりはススけた印象、そういう意味でモノトーンでイギリス臭いジャケットがよく似合ってると思います。

 私が持っているCDは1991年に出た全12曲のものですが、邦題が「スティーヴ・ハウ&トゥモロウ」でライナーノーツにはMARK WIRTZに一言も触れていません。CD発売当時と現在での認識のずれを感じさせます。現在はボーナストラック満載の再発盤があります。(2000/05/28)



TONY HAZZARD SINGS TONY HAZZARD TONY HAZZARD SINGS TONY HAZZARD / TONY HAZZARD

 サイケ・ポップ界にソングライターとして大貢献した彼の、1969年に発表したセルフカバー集アルバムに1968年と1966年のシングル曲をプラスしたCD。

 正直、このCDが出るまで知りませんでいたが、MANFRED MANNがヒットさせた「HA! HA! SAID THE CLOWN」「FOX ON THE RUN」、YARDBIRDSの「GOODNIGHT SWEET JOSEPHINE」、CHERRY SMASHの「FADE AWAY MAUREEN」、HERMAN'S HERMITSの「YOU WON'T LEAVING」などは彼の作によるもの。

 MIKE D'ABOと共通するような親しみやすい、やや甘めだが抑制の効いたメロディーを作るのに長けていたようです。また、「HA! HA! SAID THE CLOWN」などは途中で拍子が細かく変わるのですが、それが気にならないほどポップに仕上げているのはさすがです。後に彼は70年代にはSSWとしてブロンズ・レーベルに「ハートウォーミング」なアルバム2枚ほどを発表したそう。

 アルバム本編は1969年発表ながら、「YOU WON'T LEAVING」を除き、1967年あたりに作ったデモ・トラック(楽曲提供のために作ったもの?)にオーバーダビングを施したものだそうです。そのため、基本的にボーカルを中心としてますが、ペットが印象的な「THE SOUND OF THE CANDY'S TRUMPET」、ファズなギターが被さる「GOODNIGHT SWEET JOSEPHINE」、その他フルートやピッコロなどそれなりの装飾がされており、楽曲の質の高さもあり不足感は感じません。

 1968年と1966年のシングル曲も佳作。ライナーに書かれた、彼自身の各曲のコメントも興味深い。(2007/03/18)



MORNING WAY MORNING WAY / TRADER HORNE

 元THEM のJACKIE McAULEYと、元FAIRPORT CONVENTIONでKING CRIMSONの前身グループと「I TALK TO THE WIND」を録音したことで知られているJUDY DYBLEが結成したグループの唯一のアルバム。ブリテッシュ・フォークの世界では名盤とされている一枚。

 人形と粘土細工と書き割りのジャケットが印象的ですが、1989年に日本のみでCD化されたときはジャケットの縁が黄色でした。その後SEE FOR MILESからボーナストラック入りのも出ましたが、ジャケが違うので遠慮していたら、ようやく2000年にCATSLE(SANCTUARY)から、ボーナストラック付きでオリジナルジャケットのCDが出ました。こちらの縁はアイボリーに近いクリーム色。音質も1989年版より向上していると思えます。

 洗練されてるとは言えず、臭みもあるけど、イギリスものらしい翳りある曲調、JUDY DYBLEの高く震えるボーカル、曲間に入るチャーミングな間奏曲、それに前述のジャケットなどが人気の理由でしょうか。

 ストリングスが雰囲気を盛り上げて、JUDY DYBLEがせつせつと歌う、悲しげに美しい「GROWING MAN」や「IN MY LONELINESS」、同じフレーズを何回も繰り替し歌って盛り上げる「MORNING WAY」、それに続くJUDY DYBLEのアリアのような「VELVET TO ALONE」あたりがアルバムのハイライト。曲作りではJACKIE McAULEYの方が主導権を取っているようですが、「MORNING WAY」などを聴くともっとJUDY DYBLEの曲も聴きたいところです。

 SEも入れてスケールを大きくした「CHILDREN OF OARE」、その次に一息つくようにインストの「THREE RINGS FOR ELEVEN KINGS」が続くのは構成を考えてのことか。ボサ調の「BETTER THAN TODAY」やデビューシングルでもある快活な曲調の「SHEENA」はアルバム中では異色。

 シングル曲がボーナストラック。「GOODBYE MERCY KELLY」は少々アメリカっぽい。「HERE COMES THE RAIN」はやたらおしゃれな雰囲気で意外。これ聞いた後だとアルバム本編がちょっと野暮ったくも感じます。(2001/09/23)



MR FANTASY MR FANTASY/TRAFFIC

 STEVE WINWOODやDAVE MASONがいた著名グループの1ST。これは収録曲が異なるイギリス盤とアメリカ盤を2IN1で収めた徳用盤。今まで知られていたイギリス盤に比べて、アメリカ盤の方はシングル曲が収録されていたり、「HEAVEN IS IN YOUR MIND」や「GIVING TO ME」のアレンジが異なる。

 本作は英サイケの名盤として有名ですが、それだけでは片付けられない。そこから横溢する魅力に溢れていると思います。そのはみ出している部分が味わい深い。トラッド、フォーク、ボードビル、ジャズ、R&B、ソウルなど英米の音楽の素材がサイケなエッセンスとゴッタ煮になっており、濃厚で美味しい仕上がりです。

 また、DAVE MASONによる、本作でしか聞けないサイケでラーガな作品群も本盤の楽しみの一つ。まるで同じ時期のGEORGE HARRISONの曲をもっとメロディアスにしたような印象です。

 イギリス盤の1曲目「HEAVEN IS IN YOUR MIND」はいきなりニューオリンズを思わせるゆるいリズムだし、随所に土臭い部分があるし、JIMMY MILLERのプロデュース。2NDほどではないにしろ、ROLLING STONESのBEGGARS BANQUETやLET IT BLEEDとおなじ土俵で語られる作品かも知れません。

 1967年12月発表ですが、先のアーシーなとこやタイトル曲の長いギターソロなどはその後の流れを先取りしているようです。流行を装いながらも、先駆的なとこもある作品だといえるでしょう。(2000/02/12)



HERE COMES THE TREMELOES - THE 1967 SESSIONS HERE COMES THE TREMELOES - THE 1967 SESSIONS / THE TREMELOES

 DECCAのオーディションであのBEATLESを破ってレコードデビューした逸話も残るビート・グループ。これは、「HERE COMES MY BABY」「SILENCE IS GOLD」といったヒット曲を含む1967年に発表した作品を集めたCD。

 ティニー・ポッパー然した楽曲が多いが、叩き上げグループらしい骨太なビート感、FOUR SEASONSばりのコーラスなどそつのない(なさ過ぎる)演奏でライブでの実力も相当あったらしい。リード・シンガーに独立された後、アイドル顔の新人を入れて人気を盛り返し、70年代初頭までヒット曲を出すあたりも強かな業界臭いバンド。

 前出のヒット曲や甘口な曲以外で印象に残るのは、ファズギターで始まるが、無名時代のGILBERT O'SULLIVANが作った「YOU」のメロディアスさ。瑞々しいメロディーが疾走感溢れる演奏に乗っかる「LOVING YOU」「LET YOUR HAIR HANG DOWN」、彼等にとっては異色のサイケ・チューン「SUDDENLY WINTER」、JIMI HENDRIXに気持ちでは負けていないハードな「ON LOVE」など。(2003/11/03)



CELLOPHANE CELLOPHANE / THE TROGGS

 「ワイルド・シング」であまりにも有名で、現在も活動を続ける彼等の、1967年発表3枚目のアルバム。元祖パンクと持ち上げらたり、粗野でキッチュでヤラしくて、という彼等のイメージとは少々異なる、サイケなラッピングがされた作品群。

 殆どはメンバーのオリジナルで、REG PRESLEYのアクのある個性はそのままですが、どの曲も屈託なさや人なつっこさが感じられキャッチーでもあります。特に「LOVE IS ALL AROUND」はストリングスも麗しいヒット曲。彼等のイメージとは正反対な曲調が逆に新鮮だったのかも知れません。「IT'S SHOWING」も同路線にある曲。

 他に異色なのはメンバーのCHRIS BRITTON作による「BUTTERFLIES AND BEES」。爽やかなボサ風味でフォーキーでもある。後のソロ・アルバムの作風も偲ばせる。その他、「WHEN WILL THE RAIN COME」は硬質なリフが印象的だし、「HER EMOTION」はナナナナなコーラスがいいし、「COME THE DAY」も穏やかで聴きやすい。むしろオリジナルでない「TOO MUCH OF A GOOD THING」「SOMEWHERE MY GIRL IS WAITING」の方が「WILD THING」のイメージに近いのは皮肉にも感じます。

 ボーナス・トラックでは「CELLOPHANE」よりも後の時期になるが1969〜1970にかけてのシングルAB面の曲を収録。グラム・ロック風(こういうのはトライバル・ビートというのでしょうか)な作品が多く、考えてみればREG PRESLEYならばGARY GRITTERみたいなキャラクターを演じられたかも知れません。それに当てはまらないのは「LOVE IS ALL AROUND」の二番煎じな「EASY LOVING」と、「WILD THING」をLED ZEPPELIN風に演奏したような「COME NOW」。

 更にスペシャル・ボーナスと称してメンバーのRONNI BONDとREG PRESLEYのソロ・シングルAB面曲を最後に収録。どちらも発表年度がクレジットされてませんが、1969年ごろでしょう。RONNI BONDの方のA面曲「CAROLYN」はマーチ・バンドがついたイギリスらしいコミカル風な曲。そのB面の「ANYTHING FOR YOU」はうっとおしいストリングスがまとわりつくバラード。REG PRESLEYのA面曲「LUCINDA LEE」はTROGGSでの下品さを隠してタキシード着て歌っているようなバラード。B面の「WICHITA LINEMAN」はGLEN CAMPBELLがヒットさせたJIMMY WEBB作品のカバー。(2004/07/11)



STRANGE LIGHT FROM THE EAST STRANGE LIGHT FROM THE EAST / TUESDAY'S CHILDREN

 1966〜1968年にかけて、シングルのみ発表したグループ。その短い期間にCOLUMBIA、KING、PYE、MERCURYと4レーベルを渡り歩いている。プログレの範疇になるCZARというグループの前身でもある。

 最初のCOLUMBIA時代の楽曲はすべてメンバーのPHIL CORDELLによるオリジナル。純朴なメロディのハーモニー・ポップかつビート色もある、といった感触。次のKINGから本盤のタイトル曲が出るが、これはRUBBLESにも収められたことで比較的知られるオリエンタルなポップナンバー。海賊ラジオ局ではそれなりにプッシュされたとのこと。

 その後、作曲およびボーカルのPHIL CORDELLが抜けて、PYEに移籍し2枚のシングルを出しますが、半分はプロの作曲家によるゴージャスなアレンジ付きの曲で、それまでの素人臭さが一気に抜けている。うち「AIN'T YOU GOT A HEART」はRIPPLESシリーズでCD化済み。もう半分はメンバーのMICK WAREによるオリジナルで、メロディアスながらキーボードなどにはニュー・ロック/アート・ロック風味が漂っています。PYE時代の未発表曲2曲もMICK WARE作。これはどちらもバブルガム風ながら未発表には惜しい出来。本格志向となっていた彼らには発表をためらわれたのでしょうか。

 最後のシングルはMERCURYから。「SHE」はCIRCUS DAYSにも収録されてましたが、これはサイケ・ポップとしては彼ら随一の傑作。気高いペットや荘厳なチェロが印象的。B面の「BROWN EYED APPLES」も佳作。1969年録音の未発表曲2つは、片やサイケ・ポップ風、片や後にCZARでも録音したニュー・ロック/アート・ロック風の曲と見事に分かれています。

 先に脱退したPHIL CORDELLのソロ・シングルも収録されていますが、アーシーかつノスタルジックでSSW風でもある曲。彼は1970年代に入ってSPRINGWATER名義でヒット曲を飛ばしているとのこと。

 これだけマイナーなグループながら、詳細なヒストリーを載せたライナーは労作といえるもの。それによると、WARM SOUNDのメンバーがいたというのは誤った情報とのこと。またPYE時代の短期間に2人のサックス奏者が在籍していて、うちその1人はKINKSのRAY DAVISの従兄弟だったなど、ニッチなトリビアも楽しい。(2007/08/19)



THE FURTHER ADVENTURES OF FLOSSIE FILLETT THE FURTHER ADVENTURES OF FLOSSIE FILLETT / TURQUOISE

 1968年にDECCAから2枚のシングルを出しただけの無名グループながらも、サイケ・ポップ系オムニバス盤の常連(BRITISH PSYCHEDELIC TRIPシリーズでもトップを飾ってました)である彼らの、待望の単体CD化。しかもTHE COMPLETE RECORDINGSと銘打った発掘音源集。前身となったTHE BROOD時代の音源やメンバーによる曲解説もあり、音質的には厳しいところもありますが、GOOD JOBといえるもの。

 1曲目「TALES OF FLOSSIE FILLETT」はよくKINKS風とされますが、ライナーの冒頭を読んでみると、やはりKINKSと同郷、かつ家が200ヤードしか離れていない近所で、特にDAVE DAVISとよくつるんでいたとのこと。このCDにもDAVEの「MIDLESS CHILD OF MOTHERFOOD」をカバーがあります。「VILLAGE GREEN」はKINKSのとは同名異曲で、JOHN ENTWISSLEとKEITH MOONがプロデュースしたとのこと。KINKSとは違って、彼らには青臭いセンチメンタルなところが感じられます。

 2枚目のシングルA面にあたる「WOODSTOCK」も、JONI MITCHELLのとは同名異曲の、勢いを感じる曲ですが、BOB DYLANのマネが愛嬌。その次に収録された「STAND UP AND BE JUDGED」もBOB DYLAN風。

 その他、今回初めて聴いた中では「FLYING MACHINE」、1枚目シングルA面でオルガンが目立つ「53 SUMMER STREET」などが、甘酸っぱくもコマーシャルで疾走感も感じられるサイケ・ポップ。「LEANA」は「SAYNIA」のインスト・バージョンですが、個人的にはこの感傷的な曲を気に入っているので、嬉しい収録です。THE BROOD時代の2曲も捨てがたい。「YOU'RE JUST ANOTHER GIRL」はマージー・ビートの残滓が感じられ、「WRONG WAY」はギターリフがKINKSの「SEE MY FRIEND」のよう。最後は「THE TURQUIOSE 1968 CHRISTMAS RECORD」という珍品。こんなものもあったのですね。(2006/06/25)



THE DREAM OF MICHAELANGELO THE DREAM OF MICHAELANGELO / THE 23RD TURNOFF

 1967年にDERAMからシングル「MICHAEL ANGELO/LEAVE ME HERE」一枚のみ発表したLIVERPOOL出身のグループ。このCDはそのシングルAB面の曲以外に大量のデモ、および前身であるTHE KIRKBYS時代のシングル曲などをほぼ録音順で収録。後にソロになる、メンバーのJIMMY CAMPBELLが殆どの曲を書いてます。

 まずはTHE KIRKBYSのフィンランドだけで出たという1,2枚目のシングルとその未発表バージョン。1枚目のシングルはハーモニカ入りのビート・グループ風。2枚目のシングル曲はAB面ともフォーク・ロック路線で悪くない。3枚目のシングルでようやく英本国からの発売。そのA面「IT'S A CRIME」はサティスファクション風ファズ・ギターとKINKSの「SEE MY FRIEND」にも似たメロディーが混ざった妙味のある曲。B面の「I'VE NEVER BEEN SO MUCH IN LOVE」はBYRDSとHOLLIESの中間のような快活な曲。

 その後は1967年に計3ヶ所で録音されたデモ曲集。うち2曲はABBEY ROADスタジオであのGEORGE MARTINとGEOFF EMERICというスタッフだったが、残念ながら曲自体は平凡。それよりもBIRMINGHAMのスタジオで録られた7曲が、一気にサイケ・ポップな楽曲になり素晴らしい。さほどアレンジに凝っているわけではないが、トリップしながら疾走するようなギターリフ、うねるベースライン、瞑想的な歌い方でメロディも悪くない。後のシングル「MICHAEL ANGELO」のシンプルな初期バージョンも良し。ああ、これがデモでなく正規のレコーディングでまともな音質で聴けたら良かったのに。

 最後はDERAMから出たシングル曲。アシッドフォーク的な「LEAVE ME HERE」も悪くないが、「MICHAEL ANGELO」はやはり内省的メロディーが際立つ名曲。(2004/12/05)



OWN UP・THAT'S ALL OWN UP・THAT'S ALL/TWICE AS MUCH

 ROLLING STONESのマネージャーだったANDREW OLDHAMが設立したIMMEDIATEレーベルからデビューした2人組がTWICE AS MUCH。これは彼らが発表した2枚のLPを1枚にCD化したもの。

 彼らの残した作品を大雑把に言えば、1966年〜67年のスウィンギング・ロンドンの喧騒の片隅で、夕暮れ時に一人で黄昏ているような印象というとこでしょうか。

 BEATLESの「HELP」、「WE CAN WORK IT OUT」やSMALL FACESがヒットさせた「SHA LA LA LA LEE」等、当時のヒット曲をカバーしていますが、どれも彼らなりに料理して黄昏た曲になっているのが見事。あの「DO YOU WANNA DANCE」でさえもスローでメロウな曲にして、それが無理なくなじんでいます。

 また、オリジナル曲も聞くべきものが多い。映画「愛と幻想の一夜」(TONITE LET'S MAKE LOVE IN LONDON)のサントラ盤にも収録された「NIGHT TIME GIRL」。シングル曲でもある「YOU'RE SO GOOD FOR ME」、「TRUE STORY」、「STEP OUT OF LINE」のキャッチーさなどは彼らの才能を感じさせます。

 彼らの、幾つもの楽器を重ね合わせて、奥行きのある音を作るアレンジは恐らくPHIL SPECTORの強い影響を受けたのでしょう。RONETTESの曲「IS THIS WHAT I GET FOR LOVING YOU BABY?」もカバーしてます。まあ、彼らの親玉であるANDREW OLDHAM自身がイギリスのPHIL SPECTORを目指してIMMEDIATEレーベルを立ち上げた訳ですから。

 メンバーの片割れDAVID SKINNERはIMMEDIATEレーベルの他のアーティストにも曲を提供していて、P.P.ARNOLDのデビュー曲は彼とANDREW OLDHAMが共作した作品でした。

 「STEP OUT OF LINE」は1986年にアメリカのグループ、THREE O'CLOCKが「EVER AFTER」の中で華麗にカバーしていました。実は私が最初に聞いたTWICE AS MUCHの曲はそれでした。

 このCDは未発表曲も入ってますが、何故かデビューシングル「SITTING ON A FENCE」のB面「BABY I WANT YOU」が収録されていないのが大変残念。また「YOU'RE SO GOOD FOR ME」はシングルバージョンが存在するが、これも未収録。

 また、このCDはジャケットを変えて日本盤も出てますが、収録曲の表記が間違っていたり、「レコードコレクターズ」誌の新譜紹介でお門違いな評者に「聞いていて恥ずかしくなる」とレビューされたりと恵まれない境遇。ですが、KINKSなどの、当時のイギリスのちょっと軟弱なロックが好きな人には推薦します。あの当時のロンドンの空気が(もちろん行ったことはないのですが、)CDに真空パックされています。(1998/09/13)



GOLDEN LIGHTS GOLDEN LIGHTS / TWINKLE

 作曲もできるガール・シンガーのアンソロジー。彼女はMODSのライバルROCKER族のアイドルだったらしい。このRPM盤は1993年に出た同名CDに6曲追加しエンハンスド仕様にしジャケットも変えて2001年に出たもの。ただし、1993年盤のほうがジャケ写真は良かったと思う。

 構成は1964年から1966年までのDECCA在籍時のシングル曲と、3年のブランク後にIMMEDIATE傘下のINSTANTレーベルから出したシングル曲と当時の未発表曲に(1993年盤はここまで収録)、1970年代に未発表に終わったアルバムから復元できた音源および1980年代に発表したシングル曲からなる。

 元祖ウイスパー・ヴォイスというコピーがネット上にあったけど、彼女の場合音程がかなり不安定。特に1966年までのDecca在籍時の楽曲では危うい場面が多い。ヒットしたのはデビュー曲「TERRY」1曲のみだが、2枚目のシングルで本盤のタイトルにもなった「GOLDEN LIGHTS」はかつてTHE SMITHもカバーしていた。その他自作ではないが3枚目のシングル「TOMMY」も叙情を感じさせてくれる佳作。自作の「POOR OLD JOHNNY」は職場作曲家には思いつかないような、ユニークな展開が印象的。INSTANTレーベルから出たこれも自作の「MICKEY」はMIKE D'ABOプロデュースによる華やかな雰囲気。

 しかしシングルB面にあたる曲はプロデューサーが作曲した類型的な曲ばかりだし、「夢見るフランス人形」や、日本ではブレンダ・リーで知られる「世界の果てまで」といった有名曲のカバーもあり、当時のガールシンガーの枠に押し込められてしまった印象もあります。

 70年代の発掘音源はMIKE D'ABOのプロデュースでDUNCAN BROWNEも参加しているとのことだが、5曲しか復元できないくらいマスタの状態が悪いのは残念。

 エンハンスド部分では1965年当時のライヴ映像が観られます。NME誌のイベントで「TERRY」を歌ってます。白黒ながらギタリストの持ち方やアクションが当時ぽくて面白い。(2002/09/16)