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British Rock or Psyche Pop etc...
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CHILDREN OF THE SUN CHILDREN OF THE SUN / THE SALLYANGIE

 その後「チューブラ・ベルズ」で大有名になるMIKE OLDFIELDとその姉SALLYのデュオが1968年に発表したアルバム。当時SALLYは20歳、MIKEは15歳という若さには驚き。大量の未発表曲入りオリジナルジャケットの2枚組CDも出ているようですが、これは1996年に日本のMSIから出たCD。

 アコギとフルートに導かれ、短めな「STRANGERS」で始まる。その他の曲もアコギとフルートが目立つくらいで非常に簡素な演奏。ペンタングルのバート・ヤンシュの後押しでデビューしたそうですが、SALLYの声質もあって、トラッド臭のあまりないお上品かつシンプルな純フォーク作品という趣がある。このアルバムからMIKE OLDFIELDのその後の姿はあまり見えてこないが、ときどき声変わり直後と思われる低い声が聴かれ、10曲目「CHANGING COLOURS」と12曲目「MILK BOTTLE」は彼によると思われるギターソロの小品。15歳にしてはやたら上手い。

 その他曲として印象に残るのは、子守歌のようなメロディだが最後なぜかアラビア風になる7曲目「BALLOONS」。突如ストリングス類が入る8曲目「MIDSUMMER NIGHT'S HAPPENING」。当時のシングル曲「TWO SHIPS」「COLOUR OF THE WORLD」はアルバム本編とうって変わって、あまりにもウィズ・ストリングスな、後のSALLYのソロ作品みたいな曲。(2003/06/28)



THE VERY BEST OF THE SCAFFOLD THE VERY BEST OF/THE SCAFFOLD

 PAUL McCARTNEYの実弟MIKE McGEARが在籍していたグループのお手軽なベスト盤。彼らはその後身ともいえるGRIMMSでBONZO DOG BANDとも人脈的につながるので有名ですね。

 初期のシングル曲はあまりにもイギリス人にしか解らない世界。彼らはもともと演劇主体のグループだったためか、ミュージックホール的とでもいうのでしょうか、何やらコントの劇中歌みたいな印象。歌詞がわからず、そもそも当時のイギリスの風俗を知らない私を含む大多数の日本人には実につまらないでしょう。

 「THANK U VERY MUCH」や「DO YOU REMEMBER」あたりになると、わかりやすいリフレインのフレーズだったり、「1-2-3」では盛り上がった後コーダ部分でシタールも聞かれたりと、やっと「普通」になってくるが、それでもロックの持つカタルシスや、ポップミュージックのキャッチーさには少々欠ける。アメリカで売れたという話は聞かないがそれも当然でしょう。

 1974年の「LIVERPOOL LOU」は兄PAULのプロデュースだが、同じようにPAULがプロデュースしWINGSのメンバーが全面参加したMIKE McGEARの2NDソロアルバム「McGEAR」に近い雰囲気。こちらの方が一般的には聞き易いでしょう。

 蛇足ですが、MIKE McGEARのボーカルはちょっと鼻から抜けたような声で、10CCのERIC STEWARTに少し似てます。(1998/09/13)



WITHOUT RESERVATIONS WITHOUT RESERVATIONS / SIMON DUPREE AND THE BIG SOUND

 「KITES」というサイケ・ポップなヒット曲をもつグループが1967年に出した唯一のオリジナル・アルバム。後の玄人受けプログレバンドGENTLE GIANTの前身でもある。GENTLE GIANTはプログレ嫌いだったミュージック・マガジン誌(当時はニュー・ミュージック・マガジン)で例外的にその諧謔性が高く評価されていたとか。

 それはともかく、このアルバムは件の「KITES」より前に出しており、このアルバムが出た時点ではサイケ・ポップ色は皆無で、R&B〜ソウル色濃厚なモッズ・バンド。何しろBEN E. KING やSAM&DAVEのカバーまである。実はサイケ・ポップといえるのはこのアルバムより後のことで、メロトロンを使用した「KITES」の成功から同路線のシングルを何枚かだしていた時期がそれにあたる。1993年に出たこの日本盤CDは「BRITISH PSYCHEDELIC REVOLUTION SERIES」と銘打った関係上か、申し訳なさそうにボーナス・トラックとして「KITES」とそのB面曲を収めている。

 GENTLE GIANTのファンからはこんなのもあります程度の認識だし、サイケ・ポップではないこのアルバムが退屈かというと、まったく違っており、気合い入りまくりのボーカルに、それにぶつかってゆくホーン、はねるベースにオルガンといった、硬派モッズ・サウンドは気持ちが良い。SMALL FACESが好きな人には是非聴いて評価して貰いたい程です。

 1曲目はいきなりメドレー。その後半の「A LOT OF LOVE」は「GIMME SOME LOVIN'」と同じリフが飛び出し、2曲目「LOVE」はTHEMの「GLORIA」風。5曲目「DAY TIME,NIGHT TIME」はMANFRED MANNの「EACH AND EVERY DAY」と同曲で3枚目のシングルでもある。彼らのためにMANFRED MANNのMIKE HUGGが書き下ろした曲なのかも知れません。MANFRED MANNに比べ、彼らのバージョンはオルガンが目立つせいか、ガレージ風。6曲目「I SEE THE LIGHT」は彼らのデビュー・シングル曲でもある猪突猛進な曲。アルバム本編最後になる11曲目「RESERVATION」は2枚目のシングル曲。3曲目「GOT OFF MY BACH」、8曲目「TEACHER,TEACHER」、10曲目「WHO CARES」あたりのオリジナル曲では、ポップでコミカルな面もある。

 ボーナストラックにある「KITES」はサイケ・ポップの有名曲だが、そのB面曲「LIKE THE SUN,LIKE THE FIRE」は3拍子やリコーダー、クラリネットが印象的な佳作。ちょっとだけGENTLE GIANTを思わせる。(2003/02/23)



PART OF MY PAST PART OF MY PAST / SIMON DUPREE AND THE BIG SOUND

 「KITES」というサイケ・ポップの有名ヒット曲を持ち、GENTLE GIANTの前身でもある彼等の2枚組アンソロジー。唯一のオリジナル・アルバム「WITHOUT RESERVATIONS」を加工したジャケで、EMIマークが何だか誇らしげです。本家EMIから出ただけあって(?)インナーやトレイ下にある写真もなかなかクリア。値段も2枚組なのに割安です。裏ジャケで「折り返し」を模している細かな技も嬉しい。

 1枚目はシングル、アルバム既発音源を「THE MOLES」名義分を含め発表順に並べている。ともかくシングル曲がまとめて聴けるのは便利。2枚目は未発表曲集と、アルバム「WITHOUT RESERVATIONS」のモノラル音源、という構成。

 まず1枚目、その前半がR&B/モッズな時期、ちょうど半分の15曲目「KITE」から一気にサイケ・ポップに、という路線変更がよく判ります。また前半は熱血路線だが、後半はバラードタイプが多くなる。17曲目「FOR WHOM THE BELL RING」は鐘の音とメロトロンが印象的だが、露骨に「KITE」の二番煎じでユルめな出来。CDタイトルにもなった19曲目「PART OF MY PAST」も同路線だが、「FOR WHOM THE BELL RING」よりも完成度は高い。イントロは「STRAWBERRY FOREVER」のようだ。22曲目「VELVET AND LACE」もメロトロン入りバラード。

 そのほか、20曲目「THIS STORY NEVER ENDS」はホーン入りで洗練された佳作。21曲目「THINKING ABOUT MY LIFE」はFONTANA期のMANFRED MANNのよう。25曲目「BROKEN HEARTED PIRATES」はまるでTONY MACAULAYが作ったのかと思うような勢いのある曲だ。27曲目「THE EAGLE FLIES TONIGHT」は70年代も近いせいか、サイケなベールは微塵もないクリアな音。

 サイケでくぐもった23曲目「WE ARE THE MOLES (PART 1)」はいくつかのコンピ盤に収められているが、そのPART2の方は対照的に意外にも肩の力が思いっきり抜けたような爽やかさがある。拍手の音などB面のお遊び曲らしい。

 2枚目の未発表曲集は、サイケ・ポップ期になってからのもの。特に期待せずに聴いたのだが、グレードの高い曲ばかりなのには驚き。1曲目から6曲目にかけては未発表に終わったアルバム用に録っていた音源と思われる。まず「STAINES GLASS WINDOW」のハープシコードとパッパラコーラスがチャーミング。柔らかなホーン入りの「PLEASE COME BACK」も良い。その他「LIGHT ON DARK WATER」「WHAT IN THIS WORLD」「DON'T MAKE IT SO HARD (ON ME BABY)」等総じて(シングル曲に比べれば)ダルでダウナーな曲が多いが、どれもロンドンの街のくすんだ外壁と、どんよりした空が思い浮かぶようだ。

 8曲目「CATSLE IN THE SKY」はBLONDE ON BLONDEもやっていた曲で突き抜けたようなコーラスとメロトロン、間奏のマリンバが印象的。10曲目から14曲目にかけては彼等のオリジナル曲が続く。華やかなコーラスやマーチバンド風ホーン付のコマーシャルなサイケ・ポップ曲ばかり。未発表曲集コーナーの最後2曲は意外。まずJAMES TAYLORがAPPLE時代に発表した「SOMETHING IN THE WAY SHE MOVES」の明るめなカバーとELTON JOHNが書いた「I'M GOING HOME」。(2004/04/04)



SKIP BIFFERTY SKIP BIFFERTY

 彼らが1968年に発表した唯一のアルバムにシングル曲を4曲ほどプラスしたもの。日本では初CD化。1994年に輸入盤CDが出ていたそうですが、失念していました。

 アルバムはサイケ・ポップの傑作との評判ですが、STEVE WINWOODとMIKE PATTOとROGER CHAPMANを足して3で割ったようなソウルフルなボーカルで、ストリングスやホーン類は入っていないので軽やかさやカラフルさは少々欠けている。ところどころ逆回転フレーズはあるけど。しかし楽曲の出来、ハイトーンなコーラス、厚みを感じさせるアレンジは1967-68年制作という事を考えると高水準です。

 アルバム曲では全曲オリジナルながら退屈な曲がほとんど無い。特にサビになる瞬間が美味な1曲目「MR. MONEY MAN」、湿っぽく盛り上がる5曲目「COME AROUND」、ささやくような9曲目「ORANGE LACE」、シングル向きな10曲目「PLANTING BAD SEEDS」が良い。7曲目「GAS BOARD UNDER DOG」のボーカルは女性ぽいけど、メンバーに女性はいない。誰が唄ってるのかな。

 ボーナストラックのシングル曲群はボーカルの声質のせいか、TIME BOXに似た感触をもつ曲が多い気がします。1STシングルのB面曲「COVER GIRL」はギターのカッティングがなかなかカッコいい。2NDシングルの「HAPPY LAND」はほぼ唯一ストリングスが入った曲。

 3RDシングルの「MAN IN BLACK」はSTEVE MARRIOTTアレンジ、RONNIE LANEプロデュース。イントロはSMALL FACESの「ROLLING OVER」を思わせる。SKIP BIFFERTYのマネージャーはデッカ時代のSMALL FACESを担当していたこともあった関係から実現したようです。このマネージャー氏は後にJETレコード社長になったという業界人だそう。本作の一番の売りだろうし、THE HERDにも似た勢いも感じられるけど、B面でアルバム1曲目でもある「MR. MONEY MAN」の方がキャッチーな出来だと思います。(2001/08/05)



SMALL FACES SMALL FACES

 通算3枚目、IMMEDIATE移籍後の1作目。私の持っているのはCHARLYから出ている紙ジャケで、ボーナストラックとして本編より粗いオルタネイト・バージョンやSTEVE MARRIOTTがいたTHE MOMENTSの音源を含む。

 アルバム本編にはシングル曲は含まれていないが、実に統一感があります。モッズぽいR&B路線から一歩踏み出し、フォーキーだったりメロトロンを使用していたり、彼らがいろんな要素を吸収して、かつ上り調子だということが判る各曲のクオリティの高さです。ドラッグ体験の影響もこのころからだが、長尺な演奏は無いし、サイケ色やマリオットが指向するねちっこいハードな部分は次の「OGDENS'...」ほどでなく、まだスパイス程度。

 また、躍動感と同時に、男の子ぽい叙情性というか、センチメンタリズムも感じます。JAMがカバーした「GET YOURSELF TOGETHER」はそれらが両立している作品。「FEELING LONELY」「BECOME LIKE YOU」「SHOW ME THE WAY」といった1分台〜2分少々の小品もとても粋。まるで着古したモッズ・ファッションで落ち葉が積もる、くすんだ煉瓦街を物憂げに踏みしめて、たそがれているような印象もあります。(2005/02/05)



OGDENS' NUT GONE FLAKE OGDENS' NUT GONE FLAKE / SMALL FACES

 紙巻きタバコ缶を真似た円形ジャケットと半コンセプトアルバムで知られる、1968年発表の彼ら4枚めのアルバム。解散前の最後のオリジナルアルバムでもある。昨年(2000年)に紙ジャケ仕様CDが再発されましたが、ライナーやディスク本体を挟んでいる紙も几帳面に丸いのが面白い。それ以前に紙ジャケでなく、缶ケース仕様になっているCDもありました。

 モッズ・バンドから出発し、音楽的な成長とともに色んな要素を取り込んで、一つのピークに達したのが本作。曲作り、スティーヴ・マリオットのシャウト、イアン・マクレガンのエレピ/ハモンドも磨きが掛かかっている。煮詰まる寸前の鍋のように濃く美味。雑多になって、しかもコンセプトアルバムなので、純モッズファンは敬遠しそうですが。

 後半は「月夜の晩に、月の出るところを探して旅に出る」ハピネス・スタンの物語がナレーション付きで展開される。出だしこそモジュレーターやらフェイザーを掛けた「HAPPINESS STAN」やら、マリオットらしい粘っこい「ROLLING OVER」がありますが、終盤はアコースティックな曲が続く。このあたり、プログレ的に盛り上がるドラマチックな構成じゃないのが彼ららしい。最後は酔いが回ってイイ気分にへべれけになって、千鳥足で肩組みながら歌ってるかのよう。

 当時の流行を彼らなりに粋に料理してますが、彼らの世界が当時のロンドンのイーストエンドあたりで完結しちゃっている。それが魅力であり、普遍的ではないという弱点でもある。だからアメリカではさほど売れなかったり、後のハードロック/プログレ全盛期にはこのアルバムは無視されていたのだと思います。本作は名盤というよりは好きな人に深く愛されてる作品という感じですね。私は深く大好きです。(2001/03/04)



THE AUTUMN STONE THE AUTUMN STONE / SMALL FACES

 解散後に発表された編集盤。シングル曲+ライブ+未発表曲を織り交ぜた内容。1969年11月発表ということはイミディエイト・レーベルとしては年末商戦向けの商品だったのかもしれません。渋いジャケットも印象的です。

 アンソロジー盤というには、流れにいまいちストーリー性が無くとっ散らかった印象。内容的には、落穂拾いながらも、素晴らしい素材があちこちにある、というイメージでしょうか。シングル曲はDECCA時代分も含まれているが、すべてではないのが残念。ライブは音質が悪さと不自然な歓声が興をそぐが、GEORGE FAMEのホーン隊を含む熱い内容だし、残されていたというだけでも貴重なドキュメント。でも「IN MEMORIAM」に収録されたものと併せて聴きたい。

 未発表曲では、タイトルになった「AUTUMN STONE」が淡々とフォーキーでベスト。その他の曲も録音時期はわかりませんが、「OGDENS' NUT GONE FLAKE」よりアーシーな雰囲気。インストである「COLLIBOSHER」「WIDE EYED GIRL ON THE WALL」はボーカルが入ればいい曲になったと思われるので残念。(2005/03/27)



MY FRIEND JACK MY FRIEND JACK/THE SMOKE

 タイトル曲は西ドイツでNO.1になっていたという彼等の、COLUMBIA、ISLAND、METRONOME、MORGAN BLUE TOWNからの音源をまとめたもの。ジャケ写がカッコ良い。シングル曲、西ドイツだけで出たアルバム「IT'S SMOKE TIME」からの曲、未発表音源やライブ等を収録。1970年以降に発表された曲は収録されていないため、コンピ盤「CIRCUS DAYS VOL.2」や「WE CAN FLY」に収録されてた曲はここには入ってません。

 彼等のトレードマークであるトレモロなファズに耳がいってしまい、それ以外にはあまり特徴の無いグループですが、ストリングスなしキーボードレスのすっぴんで蓮っ葉でガレージな演奏には好感が持てます。また、当時にしてはベースの音色が良い。グルーヴを感じさせてくれます。

 アルバム曲は最初と最後にあたる「YOU CAN'T CATCH ME」と「IT'S JUST YOUR WAY OF LOVIN'」以外はちょっと退屈ですが、シングル曲はなかなか。「IT COULD BE WONDERFUL」は妙な湿り気を帯びていて、なんとなく日本のGSを思い起こさせる瞬間も。「SYDNEY GIRL」「HAVE SOME MORE TEA」など当時の薫りがします。その中で未発表に終わったというシングル曲「UTTERLY SIMPLE」はなんと作者のDAVE MASONとJEFF BECKという意外なコンビのプロデュース!当時のBEATLESやPRETTY THINGSを思わせる音の蛸壺状態で、サイケなオーラを感じさせてくれます。

 同じくシングルとして予定されていながら未発表に終わった「THE GIRL IN THE PARK」はNIRVANAの「SECRET THEATER」に収録されていたものと同じ音源の模様。ラフな録音ですが、原曲の良さが分かります。アルバム曲の「WATERFALL」はもしかしたら、NIRVANAがJIMMY CLIFFに書いた曲かなと思ったら同名異曲でした。(2000/05/14)



TIME SELLER TIME SELLER / THE SPENCER DAVIS GROUP

 1968年発表のアルバム「WITH THEIR NEW FACE ON」に約50分のドキュメンタリー・フィルムを収めたCD-ROMを添付した2枚組CD。STEVE WINWOODとその兄MUFF WINWOODがいたことでしか語られないグループなので、WINWOOD兄弟脱退後のアルバム「WITH THEIR NEW FACE ON」など埋もれていた作品と言えるでしょうが、印象的なサイケ・ポップ曲も含まれています。

 1曲目「WITH THEIR NEW FACE ON」、9曲目「TIME SELLER」はともに鋭角的なストリングスがBEATLESの「I AM THE WALRUS」を思わせる傑作。ふにゃふにゃハーモニウム(?)が印象的な4曲目「SANITY INSPECTOR」、KINKS風コミカル/アルバム最終曲/途中語りありというROLLING STONESの「SOMETHING HAPPENED TO ME YESTERDAY」(BETWEEN THE BUTTONS収録)との共通点のある「STOP ME,I'M FALLING」も佳作。

 それ以外の、半数以上の曲はWINWOOD兄弟在籍時と同じモッズなR&B〜JAZZ路線。1968年では旧態依然と見られたことと思いますが、どれもグルーヴ感溢れる演奏です。ハモンドが盛り上げる2曲目「MR. SECOND CLASS」、ジャジーな3曲目「ALEC IN TRANSIT LAND」と7曲目「MOONSHINE」、ブルース風な5曲目「FEEL YOUR WAY」と8曲目「DON'T WANT YOU NO MORE」。6曲目「MORNING SUN」はあまりにも露骨な「I'M A MAN」の二番煎じで苦笑。(2003/07/27)



WITH THEIR NEW FACE ON WITH THEIR NEW FACE ON / THE SPENCER DAVIS GROUP

 1968年発表のアルバム。このアルバムにドキュメンタリーCD-ROMを添付した「TIME SELLER」もありますが、これは1997年に独REPERTOIREから出たCDでこちらにはボーナストラック8曲入り。本盤の存在に気がつかず、「TIME SELLER」の後に購入した次第。

 アルバム本編は「TIME SELLER」で説明してたので、ボーナストラックをご紹介。「AFTER TEA」は1968年のシングルA面曲でシタールで始まるサイケ・ポップの佳作。この曲の英サイケらしいタイトルに惹かれて本盤を購入しましたが、とりあえず満足。あとサイケ・ポップといえるのは「I'M LOST」で、ストリングス類を大フューチャーした「TIME SELLER」と同路線の曲。

 その他「AQUARIUS DER WASSERMANN」「LET THE SUNSHINE IN」は2曲にわかれているが、要はFIFTH DIMENTIONのヒット曲「輝く星座」のカバー。ドイツだけで出したシングルのA面とB面らしいが、A面のみドイツ語で歌った、中途半端な営業盤。「FEEL YOUR WAY」「MORNING SUN」はアルバム本編にあった曲の未発表バージョン。「POOLS WINNER」はモッズなR&B路線のインストだが主旋でリードをとる楽器がなく、ボーカルを入れる予定だったのかも。最後はSPENCER DAVISのインタビューが収められている。(2003/08/03)



SOMETHING FOR THE WEEKEND SOMETHING FOR THE WEEKEND/STACKRIDGE

 まさかの再結成。個人的には今年一番の驚きでした。1976年「MR MICK」以来というから実に23年ぶりの新作。トラッド、カントリー、ヴォードビル、プログレ、ビートルズ的なものをゴッタ煮にしていた彼らの、6作目にあたる作品です。

 メンバーはJAMES WARREN、CRUN WALTER、MIKE EVANSというオリジナルメンバー。リーダーだったANDY DAVISが参加していないのが本当に残念。そういえば3人ともSTACKRIDGEとしての3作目「THE MAN IN THE BOWLER HAT」発表後に脱退した人達。4作目「EXTRAVAGANZA」以降は主にプログレ人脈からメンバーを補充し、5作目「MR MICK」に至ってはトータルコンセプト風な作品でした。

 再結成したグループにありがちな往年の作品のリメイクがなく、すべて新曲で勝負しているのが実に潔い。ANDY DAVISがいないだけに、JAMES WARREN色が濃厚。殆どの作品で作曲/ボーカルを担当しています。特に「IT'S A FASCINATING WORLD」、練りに練った甘いメロディーに夢見るようなWARRENのボーカル。いきなり1曲目からかましてくれます。

 その他彼の得意とする端正なブリティッシュポップありセンチメンタルな曲あり、声質の似ているSQUEEZE風の曲ありと収録曲はバラエティに富んでますが、全般的にかつての狂躁的な部分は影を潜め、落ち着いた雰囲気。それがJAMES WARRENの個性でもありますが。プログレな仕掛けが多いグループでもありましたが、それもなし。

 1作目のインナーで描かれていた頭に大きな羽根をつけたキャラクターも再登場。とぼけたメンバー達のコメントもふくめて、実にイギリスな一枚。(1999/09/26)



PICTURESQUE MATCHSTICKABLE MESSAGES FROM THE PICTURESQUE MATCHSTICKABLE MESSAGES FROM THE / STATUS QUO

 2002年に新作も発表された長寿グループ。1973年にVERTIGOへ移籍してからブギー/ハード・ロックのスタイルで英本国にて庶民的な人気を獲得しますが、1968年のデビュー後数年はサイケ・ポップなグループでした。これは1968年のファーストアルバムと同じタイトルですが、1994年に日本で出た編集CDで、ファーストとセカンドアルバムからのチョイスにシングル曲をほぼ発表順に並べ、前身のスペクトルズ、トラフィック・ジャムのシングル曲を後ろにつけたもの。

 サイケ・ポップ期の代表曲でありデビュー曲でもある「PICTURES OF MATCHSTICK MAN」で始まり、まず3枚目シングルまでのAB面の計6曲が収録されている。セカンドシングルである3曲目「BLACK VEIL OF MELANCHOLY」はデビュー曲のあまりに露骨な二番煎じで、いかにもモンキー・ビジネス。サードシングルである「ICE IN THE SUN」はIDLE RACE風。

 7曲目から10曲目まではファーストアルバムから。メロディーはサイケ・ポップだが、演奏はストリングスなしギター・オリエンティッドでプレ・ハード・ロック。安っぽい音色のオルガンも後ろでピヨピヨ鳴ってたりして、ガレージ風でもある。タイトルが「ELIZABETH DREAMS」「TECHNICOLOUR DREAM」「SUNNY CELLOPHANE SKY」とサイケなターム満載でかっこいい。

 11曲目は4枚目のシングル曲「MAKE ME STAY A LITTLE BIT LONGER」はサイケ・ポップと”黒く塗れ”をあわせたような曲。13曲目から17曲目まではセカンドアルバムから。14曲目の「MR.MIND DETECTOR」がサイケなBEATLES風ストリングスが印象的。17曲目「ARE YOU GROWING TIRED OF MY LOVE」は5枚目のシングルでもあるそうですが、BEE GEES風泣きのバラードを出すなんていかにも過渡期。

 18曲目から23曲目まではスペクトルズおよびトラフィック・ジャム時代の音源。後のSTATUS QUOよりもオルガンが目立つのでガレージマニアは気に入るかも知れません。18曲目「I」はメロディーがやたら日本の歌謡曲に近い。20曲目「(WE AIN'T GOT) NOTHIN' YET 」はガレージものの有名曲でBLUES MAGOOSのカバー。DEEP PURPLEが「BLACK NIGHT」でパクったのでも有名ですが。オリジナルよりグルーヴを感じる(特にベース)逸品。(2002/12/15)



STEVE & STEVIE STEVE & STEVIE

 1968年に英のTOASTというレーベルから出たアルバムのCD化。某SOFT ROCK本で取り上げてた事もあり購入。

 このCD、プラケースのジャケがペラ一枚なのが驚き。この手のものでは詳細ライナー付きなのが常道なのに。ただ、オリジナル自体がTOASTという弱小レーベルで実質はきっとPRIVATE PRESSみたいなものだから、CDの装丁もそれに倣ったのではと好意的に解釈しています。

 内容としては男性デュオ形態のポピュラーミュージックな作品ですが、この時代らしい「尖った」オーケストラレーションがサイケ・ポップな側面を持たせ、曲もキラーチューンはないものの青臭さを残しつつ瑞々しいメロディーに時にやや意外なコード進行で高水準をキープ。これら音楽的野心が、ありきたりなPOPボーカル作品とは明らかに一線を画させています。メジャーなレーベルではここまでカラーが出なかったかもしれません。

 CDだけではプロフィールがさっぱり判らないのでネットやこの手のエンサイクロペディア本で調べてみると、彼らは豪出身で渡英し本作を作成、その後TIN TINというグループに発展してアルバム2枚を出しているようです。本作のプロデューサーNAT KIPNER はメンバーのSTEVE KIPNERの父親で(先の某SOFT ROCK本では実兄とありますが)、豪のSPINレーベルのオーナーでもあり、そこには渡英前のBEE GEESも在籍。豪時代のコネクションでMAURICE GIBBがTIN TINのアルバムプロデュースをしてます。本作のアレンジを担当しているJERRY SHURIなる人物については詳細不明。

 一番驚いたのが、メンバーSTEVE KIPNERのその後。80年代にCHERやOLIVIA NEWTON JOHN、CHICAGOにヒット曲を提供するなど、業界でキャリアを築いたとの事ですが、OLIVIAのヒット曲「PHYSICAL」の作者だったのですね。意外でした。(2008/12/14)



STRAWBS STRAWBS

 プログレとフォーク/トラッドを跨いだ活躍をする彼ら。これはA&Mから1969年に出た、彼らのファーストアルバム。これ以前にSANDY DENNYと録った音源もアルバム化されています。本作は、GUS DUDGEONがプロデュース、TONI VISCONTIが大半の曲をアレンジ、JOHN PAUL JONESやNICKY HOSKINSも参加。私の持っているのは、豪PROGRESSIBE LINEから2002年に出たCDで、色褪せたジャケットもブート臭い。

 このファーストでは、「THE MAN WHO CALLED HIMSELF JESUS」や「THE BATTLE」という、最初と最後に重そうなテーマの曲があり、その間には穏やかでフォーキーな曲を挟んでいる。まだプログレ的要素が無くて、弦楽器や管楽器等の装飾が実に室内楽的でもあり、清楚で端正な佇まいも感じられます。そんな一曲でもある、美麗な6曲目「OH HOW SHE CHANGED」がデビューシングル曲でもあったようです。

 そんな中では、ラーガ風な「TELL ME WHAT YHOU SEE IN ME」、クールなジャズ風ピアノが目立つ「WHERE IS THIS DREAM OF YOUR YOUTH?」が異色。前者は確認とれなかったですが、恐らくJOHN PAUL JONESが関わっているでしょうし、後者のピアノはNICKY HOSKINSとのことです。また、全体的に感じるのは、DAVE COUSINSの、陰りのある曲を作る才能や、独特のクセのあるボーカルはこのファーストで現れています。(2005/11/06)



STRING DRIVEN THING STRING DRIVEN THING

 1970年代CHARISMAレーベルでの諸作が比較的知られるグループ。これは1968年に出ていたファースト。14曲ものボーナストラックをつけ2008年に紙ジャケCD化。1980年代後半にプライベート・プレシングのブームで発掘されるまで、存在を知られていなかったとのこと。セカンドが同じ原題なので紛らわしいですが、4年もの間があいたから、というこでしょう。それで更に本盤が埋もれることになったのかと思います。今更ながら「英国フォークの新星」という邦題がついてるのが可笑しい。

 本編部分を聴いてみると、上記のエピソードの割にはきちんとしたプロダクションで意外でした。ママス&パパスを模したような楽曲に管楽器やメロトロンなどのサイケ・ポップな味付けをした曲が多め。すべて中心メンバーCHRIS ADAMSのオリジナルですが、それなりの作曲能力があるようです。また、ママス&パパスのような女声コーラスは彼の奥方PAULINEによるもの。個人的にはサイケ・ポップとして十分聴けますが、ハーモニー・ポップ/ソフト・ロックとして聴くには、やや湿り気を感じるとこやジャケ写の貧乏そうな服装などが障害となりそうです。

 ボーナストラック部分は1967年から1972年までのデモが時系列順に収められており、CHARISMAでの2作目を出すまでの彼らのアンソロジーのようです。1967年のホームデモはCHRIS ADAMSのほぼ弾き語りで、CHRISの奥方の声がないためか、あまり面白くない。1969年のDAVE COUSINSプロデュースによる録音(ライナーを読む限り1968年のファースト以前に録られたようですが)はファースト収録曲の簡素なプロダクション。1970年のデモから、一気にアンダーグラウンド感が高まり、落差を感じます。1972年デモからセカンドアルバム以降のポイントとなるバイオリンが入る。(2009/01/18)



SWEET THURSDAY SOUND OF SUNFOREST / SUNFOREST

 女性2名男性1名のトリオによる唯一のアルバム。DECCAレーベルの傘下NOVAレーベルから1969年に発表。発表時にはもう廃れていたはずのフラワー・チルドレン風の衣装をまとったジャケットも印象的。

 メンバーのTERRY TUCKERが音楽面で主導権をとっているようだが、彼女は正規の音楽教育を受けているアメリカ人ということも影響してか、室内楽調の曲もあり、フォーキーなところもあり、フラワー・ムーブメントの香りもあり、一方でソフト・ロック/ハーモニー・ポップにも通じる質感もあったりと、なかなか混然とした作品。

 本作は3つの局面からなります。クラシカルでバロックな「OVERTURE TO THE SUN」で始まり、6曲目ぐらいまでの序盤は端正なフィメール・フォークものとして聴ける。TUDOR LODGEなんかを思い起こさせます。7曲目からの中盤はコミカルでノベルティ風味の曲が続く。このあたりはFOOLにも通じるヒッピー的なヌルい陽気さを感じます。

 ベースがうねりホーンが絡む怪しげな「MAGICAIN IN THE MOUNTAIN」を挟んで、終盤12曲目「LOVELY DAY」からは一転、クラシカルで典雅な曲が続く。「GIVE ME ALL YOUR LOVING」「GARDEN RAG」での絡みあうコーラスが印象的。最終曲「ALL IN GOOD TIME」は宗教的なイメージも感じるコード進行。

 ちなみに映画「時計じかけのオレンジ」サントラのヨーロッパ盤のみ、本作に収められている「OVERTURE TO THE SUN」「LIGHTHOUSE KEEPER」の別バージョンが収録されているようです。(2005/01/16)



SWEET THURSDAY SWEET THURSDAY

 NICKY HOPKINS達によるグループが1969年に発表した唯一のアルバム。ライブをやったという話は聞かないし、NICKY HOPKINSが英米を股に掛けての人気セッションプレイヤーだった事から、たぶんレコーディングのみの単発プロジェクト。後にMARK=ALMONDでちょっと有名になるJON MARKなど、英ロック界の渋い脇役達が一晩(木曜に?)集まってセッションしましたというような作品。音も少々ラフな録音だし、ジャケットもまるで徹夜で一気にレコーディングした後にみんなで記念撮影したような代物。

 JON MARKの曲が半数以上を占めるが、男臭い叙情に溢れた曲ばかり。ベーシストのBRIAN ODGERSが2曲書いてますが、彼の曲の方が当時の英ロックの文脈を感じさせる。まず4曲目「COBWEBS」はハープシコードにリコーダにドコドコしたドラムで白昼夢な曲調。「MOLLY」もなかなかキャッチー。

 NICKY HOPKINSは曲を書いていないが、どの曲でも地味になりそうな曲調に彩りを入れている。5曲目「RESCUE ME」でのハモンド、8曲目「SIDE OF THE ROAD」のローリングするご機嫌なピアノが印象的。(2001/08/19)