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British Rock or Psyche Pop etc...
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NO PRESENT FOR ME NO PRESENT FOR ME... SINGLES & RARITIES / PANDAMONIUM

 1966,1967,1968年に一枚ずつPYEレーベルからシングルを出したグループのシングル曲と未発表曲集。

 やはり6曲からなるシングル曲が聴きもので、デビュー曲でDONOVANのカバー「SEASON OF THE WITCH」はまあまあだが、そのB面「TODAY I'M HAPPY」はソフト・ロック/ハーモニー・ポップ好きにも受けそうな佳作。LOVIN' SPOONFUL風でもある。

 2枚目のシングルにして本CDのタイトル曲「NO PRESENT FOR ME」が一番の出来。ギター・オリエンティッドなガレージ/サイケ寄りの傑作。BEATLESのREVOLVERあたりを思わせる、ディストーション、テープ逆回転も効果的。NUGGETSのVOL2にも収録されていました。「THE SUN SHINES FROM HIS EYES」は「NO PRESENT FOR ME」ほどではないが、これもギター・オリエンティッドな演奏。

 最後のシングルとなった「CHOCOLATE BUSTER DAN」はホーン類が入ったサイケ・ポップ調の佳作、突如挿入される早急でコミカルなパートも良い。「FLY WITH ME FOREVER」も疾走感ある演奏に好感が持てる。

 未発表曲は1966,1967年に録られたアセテート盤からの曲と、1971-1973年に録音された曲からなる。アセテート盤の曲はやはりプロダクションが貧弱で同時期のシングル曲にかなり劣るのはいたしかたないか。1971-1973年のパートではその当時らしい、たおやかなポップ作品集。「DISCRIMINATION」がまあまあ。(2005/07/10)



SCENERY SCENERY / PAPER BUBBLE

 STRAWBS絡みの一枚。DAVE COUSINSとTONY HOOPERがプロデュースした他、バックはRICK WAKEMAN含む後のSTRAWBSのメンバー達。サイケ・ポップとしても聴ける、との前評判で購入。

 ヒッピー風によれながらも元気で明るいボーカル&コーラスが目立ち、時にアシッド風でもあり、ドリーミーな印象。本作をサイケ・ポップ寄りにしている要素はストリングスのアレンジがREVOLVERやSERGENT PEPPER'S風でもあること。その他、フルート、クラリネットも効果的に配した折り目正しいもの。アレンジャーのPHIL DENNYSはBEE GEESの1STのアレンジも担当したとのことで納得。このような指向の違うボーカル&コーラスとアレンジが同居し、曲によりその配合が異なるのが、本作の妙味。

 また、ラスト一つ前の曲では、未来のSTRAWBSメンバーによる、本作で唯一アグレッシブな演奏が聴ける。(2008/05/18)



THE BEST OF PAUL AND BARRY RYAN THE BEST OF / PAUL AND BARRY RYAN

 80年代にDAMNEDがカバーヒットさせた「ELOISE」のヒットで知られるBARRY RYANと、その前にやってた双子の兄とのデュオPAUL AND BARRY RYANのシングル曲を収めた2枚組ベスト。双子デュオでアイドル的な活動をしてから、裏方に回った兄PAULが書いた曲を弟BARRYが歌い成功した、という構図が面白い。

 1枚めはPAUL AND BARRY RYAN時代。シングル曲を発表順に収めたもので、評価が高いというオリジナルアルバム「TWO OF A KIND」収録曲は入っていない。その前半は若干モッズぽい英歌謡曲という内容。13曲め「KEEP IT OUT OF SIGHT」はCAT STEVENS作曲。いかにもCAT STEVENSらしい曲だが、作者自身は録音していないので貴重。

 1枚め後半で3曲ほど、アイドルぽくもかわいいともいえる傑出したサイケ・ポップが出てくる。スローで物憂げな18曲め「NIGHT TIME」、シタールとストリングスで始まる夢幻な19曲め「PICTURE OF TODAY」、そして20曲め「MADRIGAL」は最もキャッチーで個人的にはフェイバリット。21曲目からは1973-1974年にPAUL AND BARRY RYAN名義で録音・発表した音源なので、落差に面食らう。

 2枚めはBARRY RYANソロ。いきなりハイライト「ELOISE」で始まる。構成にも凝ったドラマチックな楽曲を、分厚いバックを配してBARRY RYANがROD STEWARTにも似たソウルフルな声で歌い上げる。その後も「ELOISE」風な曲が続き、良く言えばシアトリカル。悪く言えば大袈裟でワンパターンな世界が展開される。個人的には直後のグラム・ロックで活躍するSPARKSを思い出しました。(2002/06/16)



TWO OF A KIND TWO OF A KIND / PAUL AND BARRY RYAN

 1967年発表の彼らのファーストアルバム。すぐ上にあるベスト盤「THE BEST OF / PAUL AND BARRY RYAN」ではこのアルバムの楽曲が未収録だったこともあり、待望のCD化。

 発表時期の割には、サイケな装飾はほとんどありませんが、ホーン類を交えた厚めの演奏と二人の力唱が躍動感と昂揚感を感じさせてくれます。なんとなくP.P.ARNOLDのアルバムを思い出しました。これもスウィンギング・ロンドンの一面を真空パックしたような一枚といえるでしょう。

 BUDDY HOLYにYARDBIRDSにHOLLIES、SAM&DAVEのカバーやプロデューサーの書いた曲など、選曲は結構バラけて、しかもプロデューサーとして5人も名前が載っているのに、アルバムで見るとアレンジに統一感があるのが不思議。R&B/SOUL系の曲が多いですが、アコースティックな「FIFI THE FLEA」、ささやくように歌うエヴァリ・ブラザーズ風な「COMEDY GIRL」が効果的なアクセントになっている。

 ボーナストラックはありませんが、不足感は感じません。むしろ、統一感保ちつつ流れを持たせた、良く出来たアルバムを聴いたな、という印象を持たせます。また、ライナーによると、この翌年にMGMから出た次のアルバム「PAUL AND BARRY RYAN」も、本盤と同じREV-OLAからCD発売予定とあります。MGMからのシングルはサイケ・ポップだったこともあり、楽しみです。(2008/12/07)



THE PAUL JONES COLLECTION VOLUME ONE MY WAY THE PAUL JONES COLLECTION VOLUME ONE MY WAY / PAUL JONES

 MANFRED MANN出身の彼の1966年ファーストソロ「MY WAY」に同時期録音のボーナストラックを付けたもの。1996年にRPMから出ていたCDで、THE PAUL JONES COLLECTIONというシリーズの第1弾という形態になっている。

 で、このファーストソロは、残念ながら彼のこの時期に残したアルバムの中で、サイケ・ポップ的に一番面白みを感じない作品。楽曲は「PRETTY FLAMINGO」を意識したようなポピュラー路線。バックの演奏より、ボーカルのミックスが大きめで、彼のそんなに上手いとは思えない声が強調。アレンジもビート感は薄く、手堅いが保守的。

 彼が抜けた後の、MIKE D'ABOを看板にしたMANFRED MANNが商業的にも成功しつつクールでヒップな作品を残したのに比べると、俳優業もこなしたPAUL JONESの方はショウビズ、芸能界の匂いが濃厚です。ライナーによるとプロデューサーJOHN BURGESSの権限が強かったようですが、当時のPAUL JONESのフェイバリットはMARVIN GAYEの「HELLO BROADWAY」がだったともあり、彼の嗜好でもあったようです。

 アルバム本編よりボートラ部分の方が面白く聞けます。EP「PRIVILEGE」からのシアトリカルで大げさな「PRIVILEGE」「FREE ME」、シングル曲らしいのカラッとした「I'VE BEEN A BAD, BAD BOY」「THINKING AIN'T FOR ME」、JACK BRUCE参加のブルース「SONNY BOY WILLIAMSON」などカラーがハッキリしている。BILLY NICHOLSが取り上げた「WOULD YOU BELIEVE」のPAUL JONES版も興味深く聴けたし。同じ未発表の「OUCH!」も佳作。

 蛇足ながら、THE PAUL JONES COLLECTIONシリーズとして、VERTIGOレーベル!から出た4枚めソロ「CRUCIFIX IN A HORSESHOE」もライナー等で予告されていましたが、発売されなかった模様です。あのVERTIGOとPAUL JONESの組み合わせが気になるアルバムですが、1991年に一度CD化されてからはリイシューされていないようで少々残念。(2009/05/17)



THE PAUL JONES COLLECTION VOLUME TWO LOVE ME, LOVE MY FRIENDS THE PAUL JONES COLLECTION VOLUME TWO LOVE ME, LOVE MY FRIENDS / PAUL JONES

 1967年セカンドソロ「LOVE ME, LOVE MY FRIENDS」に同時期録音のボーナストラックを付けたもの。THE PAUL JONES COLLECTIONシリーズの第2弾として、1996年にRPMから発売されたCD。

 このセカンドは、映画「PRIVILEGE」の影に隠れた作品、という評が多いですが、このファーストソロ「MY WAY」よりもメリハリのきいたアレンジだし、楽曲の質は良いように思えるし、当時の彼らしいシアトリカルな仕掛けもある一枚。

 本編ですが、まず冒頭の「LOVE ME」がスマートなストリングスのアレンジでピースフル。ホーン・ストリングスと語りのみの「SONG ABOUT MARY」から演劇ぽい「ALONG CAME JONES」への流れも、歌手と俳優を両立していた彼だから許されそうな作風。「BONEY MORONIE」の冒頭のアレンジも前曲までの流れを意識したのでしょうか。インドぽい「LITTLE SADIE」、ディランのカバー「THE LONESOME DEATH OF HATTIE CARROLL」、有名キャラクターや人物を歌いこんだ「TARZAN ETC.」も印象的。

 ボーナストラックでは、シングルA面になったシリアスな「SON & LOVERS」も良いですが、そのB面の「THREE SISTERS」が管と弦を使い分けた美しいチャーミングな小品で一番の収穫でした。未発表曲の中では、ライチャス・ブラザース張りの荘厳さを持つ「AFTER ALL IS SAID AND DONE」、胸を締め付けられるような「ALL THE TIME IN TTHE WORLD」は佳品。

 このシリーズのジャケットは彼のポートレート加工で統一されてますが、ここは動物の少々不気味なお面に囲まれたオリジナルのジャケットにして欲しいところ。(2009/06/14)



THE PAUL JONES COLLECTION VOLUME THREE COME INTO MY MUSIC BOX THE PAUL JONES COLLECTION VOLUME THREE COME INTO MY MUSIC BOX / PAUL JONES

 1969年サードソロ「COME INTO MY MUSIC BOX」に同時期のシングル曲等のボーナストラックを付けたもの。THE PAUL JONES COLLECTIONシリーズの第3弾として、1998年にRPMから発売されたCD。1968年から1970年初頭にかけて、複数プロデューサーのもとで録音されたマテリアルを集めた形となっている。

 「AQUARIUS」に代表されるコマーシャルなカバー曲が多く目立つ中、いくつかはスターの立場を生かしたりアーティストとしてこだわった曲もあるといった、当時の彼のポジションが見えてくるような構成です。聴きどころとなるのはやはり後者。

 アルバム本編で注目はやはり、PINK FLOYDも参加した映画のテーマソングでもあった「THE COMMITTEE」。この曲はPAUL JONESのオリジナルで、シリアスなメロディにホーン中心のアレンジがサイケ・ポップとしても十分佳作レベルにある曲。演奏にPINK FLOYDは関係していないようですが、ライナーにSYD BARRETT等との当時のエピソードが記載されており興味深い。

 また、タイトル曲「COME INTO MY MUSIC BOX」もボーカルのエフェクトはやり過ぎだが、端正なポップソング。セカンドのボートラにもあったが「I'M HERE TO NUDGE YOUR MIND」、THE BANDを意識した「THE FLOAT」といったPAUL JONES自作曲も意外と出来が良い。

 ボーナストラック部分では、PAUL McCARTNEYがドラム、JEFF BECKがギター、PAUL SAMUEL-SMITHがベースという「THE DOG PRESIDES」がラフでお遊び風な作りながらもJEFFのギターが活躍する作品。これはシングルB面曲ですが、A面曲「AND THE SUN WILL SHINE」はBEE GEESのカバーなので同じメンツながら、その必然性を感じられない。このあたり、当時の彼の優雅な交友関係とアーティストとしての限界を象徴的に表しているような気がします。

 その他、耳をひいた曲をあげておきます。「WHEN I WAS SIX YEARS OLD」はCHARLIE PARKERの演奏をサンプリング的に使ったり、当時にしては人工的な作りがするシングル曲。PAUL JONES作のコンガとハープによるエスニックなインスト「NOT BEFORE TIME」は意外な珍品。

 スウェーデンだけで発売されたシングル曲も収録されています。当地での人気は非常に高かったとのこと。そのシングル曲では、陽気なマーチバンド風の「MY ADVICE TO YOU」がGULBERT O'SULLIVAN作なのが興味を引きます。

 本シリーズで予告はされていた、VERTIGOから出た4枚めソロ「CRUCIFIX IN A HORSESHOE」のリイシューをどこかでやってくれないものでしょうか。(2009/07/05)



MAZY THE SECRET WORLD OF MAZY THE SECRET WORLD OF / THE PEEP SHOW

 1967年にシングル2枚を出したのみながら、1枚目のB面曲「MAZY」が幾つかのサイケ・ポップのコンピ盤に収録された事、1998年にTENTH PLANETから未発表曲含むLPが出たことで、斯界に知られているグループ。この2007年に出たCDは、先のTENTH PLANETのLP収録曲に加え、そこにも未収録曲だったものやホームデモを含め全27曲収録されています。

 先の「MAZY」は力の抜けた歌い方やベースのスライドも印象的な、眠たそうなサイケ・ポップの佳作。ただし、その他の曲はメランコリックで地味な曲が多い。夢見心地というには少々暗くて陰鬱な印象。時折フォーキーぽいとこやKINKS風にコミカルなところも見え隠れしてます。

 全部聴きとおすには、少々寛容さを要求されますが、ミュージックホール的でもある「SILVER QUEEN OF THE SCREEN」は面白く聴けるし、1枚目シングルのA面曲「YOUR SERVANT STEPHEN」の、未発表だったストリングス付バージョンは、何でこちらを出さなかったのかが不思議なほどの、曲調によくマッチした優雅で見事なサイケ・ポップ曲。(2007/11/18)



INTO YOUR EARS ...PLUS INTO YOUR EARS ...PLUS / PETE DELLO AND FRIENDS

 HONEYBUSで1968年に「I CAN'T LET MAGGIE GO」をヒットさせたPETE DELLOが、HONEYBUS脱退後の1971年に発表したソロアルバム。これはSEE FOR MILESから1989年に出たボーナストラック付CD。プロデュースは彼自身ですが、アレンジでHONEYBUS時代の仲間、RAY CANEの名前もあります。

 複数名義で出した音源を集めたそうですが、内容は見事に統一されてます。HONEYBUS時代から変わらない彼のあくまでもソフトなボーカルに、穏やかな泣き節とも言える心和ませるメロディー。弾き語りを主体として時に室内楽を思わせる優雅なストリングスがつきますが、なんとなくカントリーぽい叙情さも感じられます。

 楽曲として印象に残るのは、まず5曲目、「I CAN'T LET MAGGIE GO」よりも他アーティストから取り上げられることが多い、HONEYBUSの「DO I STILL FIGURE IN YOUR LIFE」のセルフカバー。比較的賑やかな2曲目「THERE'S NOTHING THAT I CAN DO FOR YOU」。リリカルなピアノが印象的な4曲目「HARRY THE EARWIG」に10曲目「ON A TIME SAID SYLVIE」。比較的湿っぽさが少ない12曲目「IT'S THE WAY」。ボーナストラックのうち最後の16曲目「MADAME CHAIRMAN OF THE COMMITTEE」は歌ってるのは別人か?録音時期も、アルバム本体よりかなり後のようにも思えます。

 このアルバム発表直後、彼はHONEYBUSをオリジナルメンバーで再結成させ、シングルを一枚のみ出してます。そのときアルバム一枚分の録音をしたが発売を拒否されたとか。ぜひ聴いてみたい気もします。(2002/07/07)



CAN I PLAY YOU SOMETHING? CAN I PLAY YOU SOMETHING? / PETER BANKS (featuring track by THE DEVIL'S DISCIPLES, SYN, MABEL GREER'S TOYSHOP)

 YESの初代ギタリスト(正確には彼の前にもう一人いたそうなので2代目らしいが)PETER BANKSの、YES加入前の音源を集めたCD。彼自身が編集したらしく、自身によるライナーは回顧録的に面白いが、書き文字なので大変読みにくい。当時のギターを持ちシャツを着た現在の彼の姿には時の流れの無情さを感じます。

 1980年録音のクラブで盛り上がってますという感じな「PETER GUNN」から始まり、現在の彼のギターによる短いインストをジングル代わりに随所に挿入しながら、彼が60年代に加入していたTHE DEVIL'S DISCIPLES, SYN, MABEL GREER'S TOYSHOPの曲が収録されている。サイケ・ポップ的には、その後に加入していたTHE NEAT CHANGEの曲も入れて欲しかった。(THE NEAT CHANGEの「I LIED TO AUNTIE MAY」は傑作です)

 THE DEVIL'S DISCIPLESの曲はマージービートの習作としか言えないが、SYNの曲はどれも一聴の価値があり、個人的には本盤のハイライト。最初のシングルA面曲だった「CREATED BY CLIVE」はティニー・ポッパー的で、この曲を押しつけられたメンバーはいやがったそうですが。B面の「GROUNDED」はモッズバンドだった彼らの本領を発揮した曲でかっこいい。次のシングルA面曲「FLOWERMAN」はタイトル通りフラワー・ソングってやつで、「TEENAGE OPERA」のようにこの曲を使ったロック・オペラも計画されたいたそうな。B面「14 HOUR TECHNICOLOUR DREAM」は他のコンピ盤(DECCA/DERAM音源の「THE PSYCHEDELIC SCENE」等)にも収められているSYNの代表曲で、青臭くも躍動感が感じられる。BASSはYESのCHRIS SQUIREで、そんなに目立たないが確かにゴリゴリとしたベース音が聞こえる。

 MABEL GREER'S TOYSHOPはSYNよりコマーシャルなところが少なく、アンダーグラウンドというか混沌としたところが感じられる。演奏だけ聴くと70年代初頭のVERTIGOレーベルあたりの音を思わせる。「BEYOND AND BEFORE」は後にYESの1STでもとりあげたオリジナル。それもあってYESの前身バンドと言われてるようですが、どうにもボーカルが弱い。(2003/03/16)



THE NORTH WIND BLEW SOUTH THE NORTH WIND BLEW SOUTH / PHILAMORE LINCOLN

 MARY HOPKINの「夢見る港」の作者でもあるシンガー・ソングライターの唯一のアルバム。またJIMMY PAGE在籍時のYARDBIRDSがバックを務めているとの噂でも知られる作品。ロビン・フッドの舞台で有名なシャーウッドの森で撮ったというジャケがいい雰囲気を出してます。逆光のジャケットは珍しいと思います。

 収録曲はDONOVAN調のまどろむような曲とR&B風の曲が混在してますが、やはり前者の方が魅力的。タイトル曲「THE NORTH WIND BLEW SOUTH」、転調を繰り返す「EARLY SHERWOOD」、ボサノバ調でトロピカルな「TEMMA HARBOUR」(夢見る港)、空を飛ぶ夢をみているような「THE PLAINS OF DELIGHT」、キャッチーな「WHEN YOU WERE LOOKING MY WAY」などは繊細で幻想的で美しい。

 後者のタイプではベースがうねる「RAINY DAY」、最後のインスト「BLEW THROUGH」がなかなかグルーヴィ。「THE COUNTY JAIL BAND」はなんとなくBEATLESの「BIRTHDAY」や「EVERYBODY'S GOT SOMETHING TO HIDE EXCEPT ME AND MY MONKEY」を思い起こさせる。また裏ジャケの彼のポートレイトを見る限りはこちらのタイプの曲が彼のルックスにあっている気もします。

 本作はなぜか本国のイギリスでは未発売。PHILAMORE LINCOLN自身の活動歴が知られていないし、制作時期もはっきししない(おそらく1968年らしいが)。作者自身およびアルバムの制作経緯がミステリアスで、ジャケットも内容も幻想的という、後世のリスナーを惹きつけるのにはお膳立てバッチリな作品。ライナーも気合い入ってます。

 ただ、音がこもって悪いのが残念。また1968年に出たシングル曲も収録して欲しかったとこです。(2001/07/22)



THE HUGE WORLD OF EMILY SMALL THE HUGE WORLD OF EMILY SMALL / PICADILLY LINE

 EDWARDS HANDの前身。CBSから1967年に発売された彼ら唯一のアルバム。以前からCD化が予定されていましたが、何度も延期され、2006年にやっと発売されました。セカンドアルバム用に録音された音源4曲、1968年に出たシングルから4曲、デモ2曲といったボーナストラックが付き、コンプリートとも言える内容。

 大手から出た割には埋もれていたアルバムであり、その印象的なジャケットも含め「失われたサイケ・ポップ名盤」という風格が漂ってます。期待に胸膨らませ聴いてみると、アルバム曲はやや前時代的な音で、サイケ・ポップやスウィンギング・ロンドンといったタームで括るには意外と地味。でもそこがまたいじらしくも愛すべき内容です。

 アルバムA面アタマに当たるタイトル曲はサイケ・ポップにふさわしい曲だし、B面アタマにあたる「GONE,GONE,GONE」はホーンやオルガンが入るグルーヴな演奏。BOB DYLANを思わせる6分の長い「HOW COLD YOU SAY YOU'RE LEAVING ME」もありますが、全体的には穏健かつ純朴で上品そうなハーモニーを聴かせる、フォーク/フォーク・ロック風の楽曲が多い。そこにフルート、リコーダーなどの典雅なアレンジを添えているが、あくまでも主役はふたりのボーカル。まるでCHAD&JEREMYをもっとお行儀良くしたかのようでもあり、AL STEWARTのファーストにも近い音世界です。

 その後のセカンドアルバム用音源の方が、サイケな仕掛けも感じられ、よりアレンジが華やかになって、こちらの方がよりサイケ・ポップ。音質は良くないですが、よくぞ発掘してくれました。セカンドアルバムが予定通り発売されていたらファースト以上の名盤だったかもしれません。

 1968年に出たシングル曲はさすがにコマーシャル。それまでの曲に比べるとややショウビズの匂いが感じられます。「YELLOW RAINBOW」はROCK'N BERRYSも取り上げてましたが、GRAHAM NASH作とのこと。その他の曲も佳作です。最後の2曲は1967年のデモ。アコギと二人のボーカルのみの静かな曲で締め。個人的には待った甲斐のあるCDでした。(2006/10/15)



PIPER AT THE GATE OF DAWN PIPER AT THE GATE OF DAWN/PINK FLOYD

 PINK FLOYDのデビューアルバム。邦題「夜明けの口笛吹き」発売当時は「サイケデリックの新鋭」。SYD BARRETのリーダーシップによる彼ら唯一の作品としても有名。

 本作は、当時のライブでの彼らの姿をよく捕らえていないとの批判もありますが、この特異なサウンドをレコードに残しただけでも大した功績だと思います。

 サイケでスペイシーな曲とポップでかわいらしい曲が混在してますが、ステレオ盤での過激なパン操作、過剰なまでのエコー感、やたらシャリシャリした高音、そして御伽噺をラリりながら呟くようなSYDのボーカルが耳に残ります。最終曲「BIKE」では最後に彼の頭が弾けて中にあったガラクタが飛び出してきたようです。意外にもメロトロンなしなので、彼らの作品の中では最もガレージな印象を与えています。

 確かにSYD色が強いですが、他のメンバーではRICHARD WRIGHTのオルガンが主導権を取る場面が多い。当時のポートレートをみると、ROGERが一番自身なさげな顔で、この後リーダーになるとはとても思えません。

 日本盤LPでは「SEE EMILY PLAY」が最後に収録されていましたが、CDではどうなっているのでしょうか。(2000/02/27)



EARLY SINGLES EARLY SINGLES/THE PINK FLOYD

 反則技です。これは彼らのボックスセットのおまけについてた初期シングル曲集。10曲中5曲は「ピンクフロイドの道」に、1曲が「夜明けの口笛吹き」に収められてますが、他の4曲は正規にはCD化されていない筈です。ビックネームなのに未CD化曲があるというのも不思議です。是非この形で通常のCDとして発売して欲しいところです。

 発表順にAB面を並べただけですが、最初の5曲はSYD BARRETによるもの、途中RICHARD WRIGHTの過渡期的な2曲を挟み、ROGER WATERSとDAVID GILMOURのクレジットが出てきて、最後は「ユージン、斧に気をつけろ」と、作者の変遷で彼らの歩みが良くわかります。

 彼らの、アルバム曲とはまた違った、珠玉ともいえるポップサイケが堪能できます。「CANDY AND A CURRANT BUN」は間奏の展開にUFOクラブでの様子が伺える曲。A面だった「ARNOLD LAYNE」より彼ららしさが出てると思います。「IT WOULD BE SO NICE」なんて、とてもPINK FLOYDとは思えないかわいいコーラス入りの能天気な曲です。「POINT ME AT THE SKY」は彼ららしいタイトルの傑作。

 また、SYD BARRETのスペイシーなスライドギター、RICHARD WRIGHTのほわーんとしたオルガンにあっさりと弾くピアノ、ROGER WATERSのオクターブを多用したベースのリフ、NICK MASONのズンドコとしたドラム等、彼らは当時としてはかなり個性的なプレイヤー揃いだったんだと実感できます。(1999/05/29)



[その後のPINK FLOYDをサイケ・ポップとして聴く]

 プログレの代名詞であった彼等も、「THE DARK SIDE OF THE MOON」以前は、アルバム中にメロディアスな小品がいくつかあり、長い曲や実験的な曲に混じって異彩を放っていました。インナー・トリップ的で陶酔感もある曲ばかりですが、その一方牧歌的でもあり気品も感じられ、奇形のポップ・ソングともいえるかも知れません。あくまでもそういった曲を目当てに、以降のアルバムを聴いてみます。 (2003/09/21)


A SAUCERFUL OF SECRETS A SAUCERFUL OF SECRETS / PINK FLOYD

 SYD BARRETT脱退とDAVID GILMOUR加入前後の音源がある、過渡期の寄せ集め的アルバム。「LET THERE BE MORE LIGHT」「SET THE CONTROLS FOR THE HEART OF THE SUN」「A SAUCERFUL OF SECRETS」あたりが本来の重要曲。RICHARD RIGHT作の2曲がなかなか味わい深く、たそがれたようなメロディーとひ弱で優しげな彼の声との相性も良い。「REMEMBER A DAY」はファースト・アルバムのボツ曲らしく、SYDと思われるスライドも目立つ。「SEE-SAW」はメロトロンやマリンバを交えて厚いがのっぺりした音が印象的。「CORPORAL CLEGG」はヤケに陽気。PINK FLOYDにおけるSYDの最終作品「JUGBAND BLUES」はダウナーな出だしからブラスバンドが入って盛り上がったと思ったら、フリーフォームになり、その演奏がブッタ切られ、SYDの物憂げな歌と終わるという、構成の奇妙さがこの当時の彼等らしい。 (2003/09/21)


MORE MORE / PINK FLOYD

 「CIRRUS MINOR」は「JULIA DREAM」「POINT ME AT THE SKY」をやや大袈裟に展開したような作品。「GREEN IS THE COLOUR」はリコーダが心安らぐ牧歌的な作品。続く「CYMBALINE」は軽い瞑想感とポップさが同居したような作品。後半のRICHARD WRIGHTによる不安げなキーボードも出色で、アルバム自体は短期間で急造したらしいがこの曲のみは素晴らしい出来合い。 (2003/09/21)


UMMAGUMMA UMMAGUMMA / PINK FLOYD

 ライブ+実験的ソロ作品集という、最も取っつきにくい作品ですが、ROGER WATERSの「GRANTCHESTER MEADOWS」は優しげで牧歌的なフォーク作品。安心して次の曲を聴いてしまうと大変なことになります。DAVID GILMOURの「THE NARROW WAY」は彼の泣き節メロがもう発露しています。本人はこの曲を気に入ってないようですが。 (2003/09/21)



ATOM HEART MOTHER ATOM HEART MOTHER / PINK FLOYD

 このアルバムは、プログレシヴ・ロックというのを定着させたA面ではなく、B面の小品3曲につきる。ROGER WATERSの「IF」は史上最も痛々しいラブ・ソング。RICHARD WRIGHTの「SUMMER'68」は彼の最高傑作。高揚感溢れる間奏のアレンジが最高。歌詞の内容は最初に聞いたときにはよく判りませんでした。RICHARDの作る曲はなぜか性愛がテーマの曲が多い。DAVID GILMOURの「FAT OLD SUN」も夏の夕暮れが思い浮かぶような、場面描写にすぐれた作品。後半のギター・ソロはこの時点での彼のベスト・プレイだと思う。 (2003/09/21)


RELICS RELICS / PINK FLOYD

 中途半端な、煮え切らない選曲の初期ベスト盤。唯一の未発表曲「BIDING MY TIME」が救い。アンニュイな出だしだが、ハードな演奏にシフトする構成が彼等にしては珍しい。トロンボーンをRICHARD WRIGHTが演奏しているとの説もあり。 (2003/09/21)




MEDDLE MEDDLE / PINK FLOYD

 「ONE OF THESE DAYS」と「ECHOES」で有名な作品だが、A面に3曲あるポップ作品が白眉。それ以前の混沌としたとこは無くなり、クリアな音像になった。まるで情事の後のような気怠さと浮遊感ある「A PILLOW OF WINDS」、寓話的な「FEARLESS」も良いが、「SAN TROPEZ」がベスト。シャッフルのリズムとダブル・トラックのボーカル、あっさりながら上品なピアノが異様に垢抜けた印象をもたらせている。まるでロジャ・ニコあたりのソフト・ロックのようにも聞こえる。といったら言い過ぎか。 (2003/09/21)


OBSCURED BY CLOUD OBSCURED BY CLOUD / PINK FLOYD

 「MEDDLE」と「THE DARK SIDE OF THE MOON」に挟まれて目立たないし、しかも「MORE」と同じように急造サントラ作品で粗いプロダクション。だがボーカル入り曲はどれもポップ・ソングとしても聴ける曲ばかり。あまりにも明るい「FREE FOUR」には唖然だが、DAVID GILMOURらしい渋い「CHILDHOOD'S END」、陶酔感ある「BURNING BRIDGES」、泣きメロ「STAY」、穏やかな「WOT'S.. UH THE DEAL」など、気楽に聴けば意外に楽しめるアルバム。 (2003/09/21)




THE BEST OF AND RARITIES THE BEST OF AND RARITIES / PLASTIC PENNY

 1967年に「EVERYTHING I AM」をヒットさせたグループ。最近アルバム2枚目が紙ジャケで再発されましたが、これはベスト盤。シングルA面曲発表順〜B面曲発表順〜A面曲言語違い2曲〜アルバム収録曲からの選曲という構成。

 まずシングルA面曲集を聴いてみると、最初の2曲(枚)はPROCOL HARUMのGARY BROOKERみたいなリードシンガーが、1曲目「EVERYTHING I AM」は優雅なストリングスを、2曲目「NOBODY KNOWS IT」はハモンドを大フューチャーし、泣きぽいメロディーを渋く歌い上げている。しかし3曲目(3枚目)からはそのシンガーが抜け、それ以降はインストルメンタルが強調され、アート・ロック/ニュー・ロックな路線になったようだ。アルバム曲もこのメンツでレコーディングされたらしい。キーボードはハードロック/プログレを思わせる箇所も幾つかあるし、ドラムソロもあったりと、演奏自体は上手。メンバーはその後それなりのバンドを渡り歩いた事も納得。

 でも3枚目「YOUR WAY TO TELL ME GO」はメロディー自体には叙情的なところがまだ残り、かつタイトな演奏が印象的。しかしサイケ・ポップとして許容できるのはここらまでで、4枚目、5枚目はハードロック的。

 B面曲はすべてメンバーのオリジナルだが、A面だった曲に対応したスタイルになっている。6曲目「NO PLEASURE WITHOUT PAIN」、7曲目「HAPPY JUST TO BE WITH YOU」あたりはサビがいまいちだが、まあまあな出来。10曲目「GENEVIEVE」はGODS〜URIAH HEEPのような安げでドラマチックな曲。

 アルバム曲からは、STEVE WINWOOD風ボーカルで結構ポップな17曲目「IT'S A GOOD THING」、ちょっとTOMORROW風な18曲目「GIVE ME MONEY」はともに疾走感ある演奏がカッコ良い。20曲目「CELEBRITY BALL」も悪くない。カバーものでは「MACARTHUR PARK」は原曲の良さの割には意外と盛り上がらない。「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」はシンバルが騒がしいカバー、最後「HELLO GOODBYE」のフレーズを入れているのは工夫。(2004/03/15)



THE FIRST LADY OF IMMEDIATE THE FIRST LADY OF IMMEDIATE / P.P.ARNOLD

 イミディエイトの歌姫のファースト。以前からよく2NDとの2in1仕様のCDが何種類も出てましたが、2000年に紙ジャケで2NDと同時にCD化されました。また、ROD STEWARTとのデュエット曲を含むボーナストラックがあるのが嬉しい。

 他アーティストの有名ヒット曲のカバーが多い2NDに比べて、この1STはイミディエイト人脈から提供された曲が多いし、SMALL FACESの参加やMICK JAGGARの一部プロデュースなど、当時のイミディエイトの熱気が感じる事も出来る作品群。彼女の小柄そうな容姿とこのパワフルな歌声のアンマッチが妙。

 SMALL FACESをバックにした「(IF YOU THINK YOU'RE) GROOVY」やスペクターもの「BORN TO BE TOGETHER」、ROD STEWARTとの「COME HOME BABY」の高揚感は見事。彼女のオリジナル曲は出身グループを思わせます。BILLY NICHOLSで有名な「WOULD YOU BELIEVE」は室内楽的なアレンジ。

 ヒットした「THE FIRST CUT IS THE DEEPEST」はプロモフィルムが残ってますが、白黒ながら彼女のチャーミングさやイミディエイトのサークル的雰囲気を味わう事が出来ます。(2001/03/18)



KAFUNTA KAFUNTA / P.P.ARNOLD

 彼女のイミディエイトでのセカンドにしてファイナル。その美しいジャケットでオリジナル盤はとても高価なのだそうです。このセカンドではファーストで感じられた狂騒は収まり、祭りの後の寂しさというか、落ち着いたダウナーな雰囲気を感じます。

 有名曲のカバーが多いのにはちょっと落胆しますが、その中ではドラマチックな「GOD ONLY KNOWS」とゴスペル風「ELEANOR RIGBY」が聴き物。その他「WILD THING」と同じ作者による似たようなベースラインの「ANGEL OF THE MORNING」が良い。(2001/04/01)



EMOTIONS EMOTIONS / THE PRETTY THINGS

 1967年5月に発表された3作目のアルバム。これは8曲のボーナストラックを含む、2004年に出た日本盤紙ジャケCD。

 この頃は、彼らにとってはR&Bとサイケの過渡期にあたり、またFONTANAとの契約履行のために出したという、中途半端な、いわばニッチな作品。しかもメンバーの意向に反して、ビッグバンド風のブラス・セクションがアフレコされ、なんとなくCAT STEVENSのファースト辺りの雰囲気も感じます。ちなみにそれを指示したプロデューサーは、THE FAMILY DOGGの中心人物のひとりであり、HERDやDAVE DEEグループのプロデューサーでもあるSTEVE ROWLANDとのこと。

 という事で、ガレージ/フリークビートを好む人には、いまいち納得できない出来かもしれませんが、このアルバムが出た経緯や背景を知っていれば、当時のショウビズやその舞台裏の雰囲気を演奏から感じることは出来るかもしれません。

 サイケ・ポップとしては、バラード「THE SUN」、ハープやチェロも入った優美な「HOUSE OF TEN」、これも穏やかな「GROWING IN MY MIND」、快活でホーン類が華を添える「BRIGHT LIGHTS OF THE CITY」あたりが聴きもの。

 シングル曲でKINKSカバー「HOUSE IN THE COUNTRY」も悪くない出来だと思う。アルバム最終曲「MY TIME」は彼らの押さえ込まれた欲求不満が爆発できずに顔をのぞかせるようなような曲だ。バンドのみのオルタネイト・バージョンでは後半のベースのノリが良い。(2006/02/26)



S.F.SORROW S.F.SORROW/PRETTY THINGS

 1968年に発表されたPRETTY THINGSの4作目。ロック・オペラ作品の先駆けとして知られてます。また、レコード会社がろくにプロモートしなかったために商業的に成功しなかったとか、経済的な理由でこのツアーが遅れ、またアメリカでの発売も遅れたために後発のTHE WHOの「TOMMY」の二番煎じ扱いを受けた悲運の名作扱いもされています。

 でもそんな悪条件がなくて好環境だったとしても「TOMMY」と地位が逆転していたとは思えません。なにしろ暗くて重苦しい雰囲気だし、曲の出来も「TOMMY」にはかなわない。超二流グループによる意欲作といったとこでしょう。

 ただ、暗いながらもイギリス臭くて幻想的でイマジティヴなストーリーが魅力的な作品ではあります。英文学やイギリスの風俗に詳しい人なら、元ネタやモチーフになったものを指摘できると思います。曲調も荒くれてネチッこいなかにもフォークぽい部分もあったりするのが面白い。

 聴きものはアコギが耳を惹きつける1曲目「S.F.SORROW IS BORN」、悪魔的なボーカルで始まってサンバぽいパーカッションのソロから短調なリフになりメロトロンの主旋律に戻る凝った「BARON SATURDAY」、THE ELECTRIC BANANA名義でも録音している、BEE GEESの「I CAN SEE NOBODY」をパクった「I SEE YOU」、最もキャッチーなメロディーで歌詞も泣かせる「TRUST」。

 「WELL OF DESTINY」や「BARON SATURDAY」の一部分はまるで、ちょっと後の作品ですがKEVIN AYERSの2NDを思わせる、当時でいうところの前衛を思い起こさせます。終盤あたりは曲やストーリーが弱いのが残念。(2000/06/25)



PARACHUTE PARACHUTE / PRETTY THINGS

 1970年発表の5作目。その年のローリングストーン誌アルバム・オブ・ジ・イヤーだったのは意外な気がしますが、ジャケを含め、ダークで堂々たるB級臭さを放つ一枚。私が持っているのはEDSELから出た古いCDで音質もイマイチですが、2007年にボーナストラック付きの紙ジャケCDが出ています。

 A面にあたる部分がメドレーになってますが、彼らにしてはアコースティックなとこや力みの少ないコーラスもあり、また曲のつなげ方も上手い。このあたりはNORMAN SMITHプロデュースのABBEY ROAD録音によるものと思われます。

 B面の部分では、彼ら本来の持ち味である、アンダーグラウンドで攻撃的な曲と叙情的な曲で緩急をつけている。「GRASS」での叙情的な曲調とそれにぴたりとマッチする後半のメロトロンは素晴らしいし、続く「SICKLE CLOWNS」ではねちっこく反復するリズムはファンク手前。「WHAT'S THE USE」〜「PARACHUTE」という終わりの流れも良く練られていて、彼らには似合わない筈である美しさも感じます。(2007/10/08)



PRETTY THINGS 1967-1971 PRETTY THINGS 1967-1971

 彼らのEMI時代のシングル曲を集めたもの。1989年にSEE FOR MILESから発売されたもので、ALSO AVAILABLE ON LPという文句に発売当時を感じます。現在、これらシングル曲は各オリジナルアルバムのCDのボーナストラックとして収録されてますが、ここではまとめて聴けて便利な一枚。

 聴きものはやはり前半か。S.F.SORROWやPARACHUTEを製作し、伝説の奇人TWINK在籍時で、サイケ時期の楽曲を堪能できます。といっても彼らの場合には上品さは皆無で、おサイケではない、ヤバそうな雰囲気の荒くれ者達がトリップやらストーンしているという印象です。音質がクリアでなく、暗く重くねちっこく、埃くさい。ただし、シングル曲のため、メロディアスでコーラスもふんだん。また、彼ら独特の力んだコーラスが耳につきますが、上手いんだか下手なんだか良く判りません。

 出だしの「DEFECTING GRAY」は3曲分の素材をモザイク状に構成した事で有名。「TALKING ABOUT THE GOOD TIMES」はシタールとメロトロンの組み合わせがTRAFFICの「HOLE IN MY SHOE」を思わせる。間奏などは団子状になった音塊が初期のキング・クリムゾンばりにヘヴィネスを倍増してます。おそらく4チャンネルで音を重ねまくったためであろう。いい加減そうな彼らにしては、シングルではB面だった曲達も佳曲ばかりなのが意外。

 後半、1970年以降のシングル曲になると時代を反映してサイケ度なし。ハードロック仕様の、割と乾いたギター・オリエンティッドな曲が多い。70年代のブリティッシュハードが好きな人むきでしょう。アメリカ志向な印象もあります。前半のくぐもった音質に比べて、クリア。まるで煙がたなびくスタジオから屋外に出たよう。最終曲に至っては、グラムロック風な手拍子入り。

 STONESと元バンドが同じだったり、BEATLESのエンジニア上がりのNORMAN SMITHがプロデューサーだったり、WHOより先にロックオペラを制作していたり、ZEPPELINのSWANSONGレーベルに下宿してたりと、英ロック界のビックネーム達と何かと縁がある人達です。(2000/02/27)



A WHITER SHADE OF PALE A WHITER SHADE OF PALE / PROCOL HARUM

 世間的にはチークタイムにこの曲が流れれば女の子を落とせるという伝説を生んだ曲、「青い影」で知られたグループ。アルバムとしては後の「A SALTY DOG」「GRAND HOTEL」の評価が高いが、多分一番有名なのは「青い影」の入ったこのファースト。

 例の曲の大ヒットで急遽わずか3日間で録られたというがこのアルバム。耳タコの例の曲は飛ばして聴いてみると、GARY BROOKERの声およびピアノとMATTHEW FISHERのオルガンの絡み合いは気品高さと、泥臭い叙情さを同時に感じます。気品高さの方はその後「GRAND HOTEL」で大成し、泥臭い叙情さはTHE BANDに影響を与えたという事になってます。4曲目「SOMETHING FOLLOWING ME」、9曲目「SALAD DAYS」あたりはそんな雰囲気です。

 例外は6曲目DONOVANの「SEASON OF THE WITCH」をブルージーにしたような「CERDES」。唯一のインストで唯一のMATTHEW FISHER作品である荘厳な「REPENT WALPURGIS」では、後にソロで有名になるROBIN TROWERの欲求不満が爆発したような曲。その他、5曲目「MABEL」や10曲目「GOOD CAPTAIN CLACK」といったラグタイム調でミュージック・ホール的な曲はいかにも場面変換前の息抜きという感じですね。ボーナストラックとして収められたシングル曲「HOMBURG」もPROCOL HARUMのパブリック・イメージに沿った佳作。

 余談ですが、数年前私がロンドン旅行時に立ち寄ったピザ屋で偶然「青い影」が流れていて、ああ当地では懐メロなんだろうなと思いつつピザを食ってたら、次にMOODY BLUESの「サテンの夜」がかかり、これって日本でいえば「ブルー・シャトー」と「思い出の渚」が立て続けにかかったようなものかと思いました。(2002/05/12)



SHINE ON BRIGHTLY SHINE ON BRIGHTLY / PROCOL HARUM

 1968年発表の2作目。急造だった1作目とは異なり、当時にしては期間をかけて作成したそうです。1作目の路線を拡大再生産し、インストルメンタル部分を強化したような内容で、バラエティが出てくる3作目に比べると、作風が統一された作品。荘厳なオルガンに、感情を吐き出すような迫力のゲイリー・ブルッカーのボーカル、それに1作目より前に出ていている印象のあるロビン・トロワーの泣きのブルース風ギターの、これら3者がせめぎあい、結構荒々しい音です。英米で異なるジャケはどちらも薄気味悪いし、B面に組曲があったりと、彼らの中ではアンダーグラウンド色やプログレ色が強いように思えます。

 しかし、彼らは個性的ではありますが、プログレぽいところもハード・ロックぽいところも、スワンプなところもそれなりにあり、「青い影」のパブリック・イメージが強かったり、アルバムごとに作風が変わっていたり、今から見るとカテゴライズが難しいグループかもしれません。 (2005/05/29)



A SALTY DOG A SALTY DOG / PROCOL HARUM

 1969年発表の3作目。前作が例えばゴシックなモノクロ映画だとすると、本作はテクニカラー作品のようです。この3枚目が、彼らの作品の中では、もっともサイケ・ポップ寄りかと思います。まず音がクリア。ABBEY ROADスタジオを使用したとのことで、SEの使い方やミキシング、使用楽器の多さもこれまでと異なっています。このアルバムは日本で特に人気が高いようですが、おそらくBEATLESの影を感じるからでしょう。プロデュースがメンバーのマシュー・フィシャーで、彼の叙情的なポップさも表面に出てきていると思います。

 収録曲もそのマシュー・フィシャーやロビン・トロワーの作品や彼らが歌う曲が多くなり、前作までのゲイリー・ブルッカーのボーカル一辺倒とは異なってます。この後に本作での中心人物マシュー・フィシャーが抜けるなど、バンド内部では大変な状態だったのでしょうが、それが逆に作品の質に結実したと思います。

 B面にあたる部分の流れがよく出来ていて、モロなブルース曲「JUICY JOHN PINK」から一転ドラマチックな「WRECK OF THE HESPERUS」に切り替わるところは特に印象的。次の「ALL THIS AND MORE」はこの曲だけ前作ぽいタイプの曲ですが、1曲だけあると荘厳さが際立ちます。スローでブルージーな3拍子「CRUCIFICTION LANE」をはさんで、ちょっと「青い影」ぽいですが、穏やかな佳曲でエンディングのアレンジにも凝った「PILGRIM'S PROGRESS」で終わるのも見事な〆です。

 蛇足ながら、私が80年代に購入した日本盤LP(恐らく70年代末に出たと思われる)では、松任谷由美が解説文を寄せ(ただし雑誌からの転載)、松本隆が解説文と対訳(ただしタイトル曲のみ)という豪華なライナー・ノーツでした。その松本隆の解説によると、SALTYは船乗りの、という形容詞で、DOGはGODの綴りを逆にしたスラング、ゆえに「A SALTY DOG」とは「船乗りの神」という意味だとのことです。(2005/05/29)



PUSSY PLAYS PUSSY PLAYS / PUSSY

 MORGAN BLUE TOWNレーベルから1969年に出ていた一枚。猫の泣き声が最初と最後についているのが特徴。アナログ盤はウルトラ・レアで有名だそうです。5人いるメンバー名も全員判明したのは最近らしい。

 こけおどしなジャケットと受け狙いの邦題は軽く受け流して、音の方を聴いてみると、最初の2曲「COME BACK JUNE」「ALL OF MY LIFE」はガレージ風。一転して3曲目「WE BUILT THE SUN」はテンポを落として、ドラッグでトリップしているような曲調。

 その次の4曲目と5曲目のインストが個人的にはハイライト。4曲目「COMETS」は牛の声(?)で始まりテルミンが大活躍するアグレッシブな曲、5曲目「TRAGEDY IN F MINOR」はメロトロンで始まり、ピアノとスパニッシュ風ギターが交互にリードをとる、ゆったりとして幻想的なインスト。その他では6曲目「THE OPEN GROUND」は語りが入ったり、途中3連になったりする比較的キャッチーな曲。

 荒っぽいギターとハモンドはハードロックの原型ぽいが、流暢なピアノと良くはねるベースがなかなか良い。ドラムは少々バタバタしているが、シンバルの使い方はジャズ風。ただし、ボーカルが弱いのが残念。また、ピアノの残響が、同じMORGAN BLUE TOWNスタジオで録音されたBOBAK,JONS,MALONEの「MOTHER LIGHT」を思わせます。(2002/02/24)