2008年りきの投げ釣りデブ〜戦
2008年2月10〜11日 中潮
りき 

その日の朝、りきは武者震いで目が覚めた。と思ったら単に寒くて尿意をもよおしただけだった。
いよいよ、2008年、平成20年子年、紀元2600有余年初の釣行である。
そう思ったのも無理はないであろう。

 

昨日の吹雪が嘘のように晴れている。恐らく根雪はそのうちすべて融けてしまうであろう。
愛車のシートに座りイグニッションにキーを差し込み前へ回す。ブオオォォ〜ンと4.5リッターツインターボが唸りをあげたように思ったが、あいにくその1/3以下の1300ccOHCエンジン。プルンプルンと立ち上がった。

 

HONDA FIT、ふん可愛い愛車よ…

 

冬に備えスタッドレスタイヤで完全武装した愛車は乾いたアスファルト路面を颯爽と走る。
やがて車は元漁師、いや、moto@漁師氏が待つアジトへ到着した。

 

今回の相棒は彼である。大物から小魚まで、釣りから料理まで何でもこなす頼れるヤツだ。
既に頭の先から足元まで完璧な対魚モードコスチュームだ。どこからでもかかってきやがれぃ!ってな雰囲気である。

 

 

まずはオレが操縦する番だ。鉄板色にカラーリングされた攻撃用FITの円形の操縦桿を握り、ルートNo,171(通称イナイチ)を時速50kmの制限速度でぶっ飛ばす。

 

恐ろしく早く3時間半程度で敵地近くまでやって来た。道中遭遇した敵らしいヤツはニホンザルが2匹…。

 

まずは食料や燃料の補給だ。最前線では鍋が常識だ。そいつに少量の酒があれば男達にはもう何も要らない。
とは言うものの念には念を入れ、焼き物とお茶と割り箸、お玉など仕入れた。まさに今から戦う男達そのものだ。

 

最前線到着時、辺りはまだ明るかった。

 

早速、敵が潜むであろう海の中の偵察だ。

全長4.05m、カーボンファイバーにウレタン塗装で身を纏ったフィッシングロッドは弓のようにしなり、仕掛けを敵めがけて投げつける。
二人で6門の装備を準備し、相手からのシグナルを待つ。さぁ、来い!!
思わず本日2度目の武者震い。取りあえず先に出すもんを出しておこう…。

moto@漁師の装備が早速相手を仕留めた。

パールピンクに輝く粋な彼女だ。巷の人々はそいつをキスと言うが、我々は敬意を込めて彼女という。相手がオスであろうがメスであろうがそんなの関係ねぇ! 若干下火になってきたが、まだまだ使えるギャグである。

その後、moto氏は次々と敵を仕留めるが、りきは音無の構えである。平素の大人しさが影響しているのであろうか、はたまた久しぶりの戦いに恐れおののいているのか…。

 

腹が減っては戦はできねぇ。
moto氏に指令を出し、ロッドから包丁へ持ち替えさせた。

 

 

 

まずはアルミニウム箔の上に魚介を置いて下から炭火で蒸し焼きに…まさにサバイバルゲームだ。
その後、鍋へと宴は進むが、二人の鋭い眼光は常にロッドに向けられていたのである。
目を合わすのが嫌だっただけかも知れないが…。

 

図らずもいい気分になったりきは、あろう事か車中で眠りに陥ってしまった。やはり敵を仕留められないいらだちか、久々の出陣による疲れからであろうか…。

 

それでも0400に目を覚まし、まだ明けやらぬ漆黒の水面に向かって仕掛けを投げ返した。

 

すっかり夜が明けた0630過ぎ、ついにその時がやってきた。
あらかじめ緩めておいたリールがけたたましく音を立て逆転を始めた。
「あ、当たりだ!!」
しばらくそのまま様子を見ると、またしてもジャ〜〜っと糸が出る。こいつは大物に間違いない。

 

ロッドを掴み大きくあわせを入れた瞬間、ギュイ〜〜ンとロッドがしなり満月状態だ!
慎重かつ相手の抵抗を楽しみつつリーリングする。ラインから奴の鼓動が伝わってくる。

いやぁ、嬉し楽し…。

 

 やがて水面に現れたのは紛れもなく彼女だ。それもなかなか長身で、柳沢可奈子までは行かないがかなりのふくよか体型。
最後の抵抗を見せる彼女を有無も言わず陸地にブリ抜いた。

 

 

バタバタと暴れる彼女に恐る恐るメジャーを当てると27cmを越えている。何とグラマラスな!
我々ギョーカイでは26cmを越えると大物と言ってヒットした数で表彰の対象となる。
いずれにしてもこの時期、なかなかの釣果である事は間違いない。

  

フッと一服、煙草に火を付けようとしたが、あいにくりきは煙草をやめた。

 

しかし、最後の最後で起死回生の一発だった。これがなかったらリハビリが叶わなかったかも知れない。
今年デビュー戦がホンマのデブー専だったかも…。

引き上げる車両の操縦はmoto氏に委ね、副操縦席でくつろぐ事に。

帰路、車窓に見える湖面越しの伊吹山は戦いが終わった男達の心を優しく癒してくれる。また比良の山並み、雪景色が美しかったのは言うまでもあるまい。

 

 

 

たっぷり3時間半かけて無事帰還したのはお昼過ぎであった。