正義のために
cross氏のHPに寄稿

人里離れた、山の中、ある一家が夕食を終えた。
正義感に富み、優しく聡明な我が子を見ながら目を細めている夫婦。
「ねぇ、お父さん。どうして、僕たちは、山から降りちゃいけないの?」
「危ないからだよ。」
「危険な場所なの? 怖い生き物がいるの?」
「うん、とても残酷な生き物がいるんだよ。」
「昔、わしらの王様も、やつらに殺されたんだ。」
「やつら?」
「そう、王様は一人だったんだけど、やつらは何人もで押しかけてきて…」
「卑怯だね。」
「そう、卑怯で残酷なやつらだ。」
「王様の家来は? 戦わなかったの?」
「戦ったさ…でも、彼らのほうが、いつも、数が多かったんだ。」
「ひどいね。僕が大きくなったら…」
母親が間に入った。
「馬鹿なことは考えないで、早く寝なさい。」
子供は素直にしたがって寝室へと行った。
「あなた、あの子は正義感が強いから刺激しちゃ駄目よ。」
「あぁ、そうだったな。気をつけよう。」
魔族の生き残りの夫婦は語らいを止めた。

勇者たちが、大魔王を倒してから数年後のことであった。