「ふーん、やっぱり『7番』かぁ」
希理子は澤村が持って帰ってきた白ベースのユニフォームを広げながらその数字を確認した。そし
て何処か遠くを見るようなそんな目をしながらあらためてつぶやく。
「それにしても早いもんさね。ハナったれのガキだったあんた達が今日からバスケ部を率いていくん
だもんね」
その言葉に澤村は苦笑めいた笑みを浮かべながら手にしていたマグカップを差し出した。
「何ババくせぇこと言ってンだよ。テメェらの代が引退してからまだたったの丸1年だぜ?そもそも
お前、感傷にひたるようなタマかよ」
「ふん!」
入れたてのコーヒーの薫りを楽しむようにそのカップを受け取りながら希理子は毒づいた。
「どうせあたしはあんたより2つも年上のババァですよ!あんたがランドセル背負ってた時にはセー
ラー服着て歩いてた、ね!」
「このぉ!」
希理子のその言葉に澤村はむすっと顔をしかめた。
「今は『1つ違い』だって何度言わせる気だ?!」
そう言っていささか乱暴に希理子の身体を自分の方に引き寄せるとコツンと自分の頭で希理子の頭
を小さく小突いた。
「へいへい」
そんな澤村を希理子は面白そうに笑う。
仕方がないと言えば仕方がないことなのだが、澤村は自分が希理子より2つも年下のことをかなり
気にしていた。
高校を卒業してから美容系の専門学校に進学した希理子は高校の時にはまったくしていなかった化
粧を周囲の影響でほんの少しだけするようになっていた。するともともと大人っぽかった印象がまさ
に『大人の女』のそれに変わってしまった。
どちらもがバイトと学校の掛け持ちで時間に追われ、その微かな隙間を縫うように2人はデートと
いうか、会ってお茶をするだけというようなことを繰り返していた。そうなると忙しい澤村は着替え
るヒマが惜しいわけで制服で会うことになる。
すると容姿がずば抜けているこの2人の2ショットは周囲の注目を集めるわけなのだが、その視線
の中にハッキリいえば『大人の女と若いツバメ』を見るような視線が含まれていることが多々あるよ
うになってきたのだ。
それが澤村には悔しい。クダラナイことだとはわかっていても『お前じゃその女につり合っていな
い』といわれているようでそれが気に喰わないのだ。
だが言いかえれば希理子の方だって澤村に目を付けている現役女子高生から言わせると『ババァが
調子のってんじゃないわよ!』ってな感じになるわけで、希理子もひそやかにそれを気にしてはいた
のだが、普段クールに徹している自分の恋人がつまらないことを気にしている様子を見て嬉しくなっ
て、自分のことなど忘れて澤村をからかうことを楽しんでいた。
「うん、でもさ、やっとこれでマトモになったじゃん?」
「?」
だがさすがにこれ以上突いたら可哀想だと思った希理子は話題を元に戻した。
「『背番号』。───桜井のバカが勝手言ってたせいでウチの部フツウのとことは違ってただろ?そ
の割り振り」
「ん、そう言えばそうだな」
希理子の口から別の男の名が出たことにいささかムッとしながら、だけど希理子のした指摘に思い
を巡らせ納得した。
普通というか一般的に中学、高校のバスケ部の背番号は野球やサッカー程厳密ではないのだが『こ
の番号はこのポジション』という風な割り振りがあった。
通常『4』はそのチームの主将、そして『5』はそのチーム内でエースとされる人間が身につける
ことが普通だった。そして大体どこのチームでも主将はゲームメイクの中心となり、一番実力がある
人間がつくポジションであるポイントがードが務めることが多く、そして同じ理屈で『5』はおのず
とシュート回数が多くなるスモールフォワードが身に付けるケースが通例だった。
残りのレギュラーナンバーはポジション順に割り当てられパワーフォワードが『6』、シューティ
ングガードが『7』、そしてセンターが『8』といった感じだ。
でもやはり例外もあって主将がポイントガードでないケースもある。そういう場合には主将が4番
を身に付けて、残りの番号をやはり先述のポジション順に番号を割り振るのが暗黙のルールとなって
いた。
しかし上南では桜井の代ではキャプテンでもないのに桜井が4番を身に付けていた。そして本来は
キャプテンである馬呉がポジション番号的にもおかしい『7』番を身に付けていたのだ。
そして小林の代になって4が主将は他の学校と同じになったが、レギュラーである澤村と成瀬が1
年であった為、若い番号を2年に振り当ててしまっていた為におかしな順番になってしまっていたの
だ。
だがこうやってインターハイが終了し、小林のあとを成瀬が継いで新体制がスタートした上南では
主将がポイントガードでないということ以外はすべてその原則に乗っ取り、他校と同じような番号順
に変更された。
「まっ、番号なんざ別にどうでもいいと思うけどねぇ、要は実力だろ、実力」
澤村は別に自分の背番号に何の感慨もないようで肩をすくめてそう締めくくった。
だが希理子はその『7』というのが気にいったらしく、懐かしむように話を始めた。
「あたしね、現役だったとき、2年で『7番』だったんだよ!中学の監督が結構いい加減でさ、好き
な番号取っていいって言ったから『ラッキー7』でこの番号にしたんだ」
「ふーん、ダッセー!」
希理子のその言葉に澤村は笑った。
「今どきそんなこというヤツいやしねぇよ!結構乙女チックだったんじゃん!」
「うるさいっ!」
自分をからかうその言葉に希理子は軽く先程澤村が自分にしたように自分の頭で澤村を攻撃した。
そして何を思ったか澤村の腕の中からするりと抜け出して立ち上がって澤村の新しいユニフォーム
を広げた。
「懐かしい、着てみる!」
そう宣言すると希理子は思いっきりよく自分の着ていたTシャツを脱ぎさった。
9月に入ったとはいえ残暑が厳しいので希理子はブラジャーをしただけで素肌に半そでのTシャツ
を着ていただけだった。希理子はそのほとんど裸同然の素肌の上にするりと背番号7のユニフォーム
を纏うとその裾の部分をぴらりと広げて澤村に向かって見せつけた。
「どう、似合う?」
いくら希理子が長身とはいえ大柄なバスケ部員の体型に合わせて作られたそのユニフォームは希理
子が身に着けるとミニのワンピースのような長さになっていた。しかも横幅がかなり細身の為ぶかぶ
かである。
「まっ、そんなもんだろ」
「それだけ?」
恋人のつれないその反応に希理子はプクリと頬をふくらませた。だがそんな希理子の様子を小さく
笑うと希理子の手を掴んでぐいっと引っ張った。
「わっ、何すンだ──────!!」
勢いよく引っ張り倒され苦情を言おうとした希理子の口唇を澤村は自分のそれで塞いでしまった。
そしてたっぷり、じっくりと心おきなくその感触を楽しむと、その濃厚な口付けで頬を微かに紅潮さ
せた希理子に向かって笑いかけた。
「だって言葉なんか必要ねぇんだろ?お前は俺を『誘う』為にそれを着たんだろうからさ」
そう言ってニヤリと笑う。
「バレた?」
「わからいでか」
いたずらが失敗した子供のようにぺろりと小さく舌を出した希理子の頬を澤村はつんと突いた。
「お前は俺の女なんだからな」
そう言って希理子の口唇に再び自分のそれを重ね合わせた。そして深く深くその感触を楽しみなが
ら希理子をその場に押し倒し、着ている衣服を剥ぎ取っていく。
「……もうっ、待って、ここじゃ……あんっ」
その激しさに希理子は澤村を押しとどめる。
「却下」
だがそれを澤村は即座に拒絶した。
「お前が誘ったんだろう?それで後からガタガタぬかすな」
そう言ってもう一度口付けると今度は希理子の白く肌理の細かい肌の上にその唇を滑らせていく。
「……で、でもこんな格好で……」
希理子は少しだけ解放された身体を恥ずかしそうに覆い隠した。だがそれも澤村は即座に却下す
る。
「せっかく『お前からのお誘い』なんだ、『お誘いどおり』に楽しむってのがスジってもんだろ
う?」
そう言った澤村の躯の下で希理子は下着は全部剥ぎ取られているのにユニフォームだけは残された
奇妙な格好で愛撫され続けていた。
細身の希理子には大きすぎるそれは左肩は完全に引き降ろされ、本当なら襟刳りにあたる部分から
腕を通した格好でその白い乳房も片側だけさらけだされる格好にされ、そして裾の部分は腰の辺りま
で完全にめくりあげられて余った布をたるませられていた。
まさに『半分だけ着て半分だけ脱がされた』希理子のその格好は、澤村の愛撫によって熱を帯び、
かすかにピンク色を帯び始めた希理子の滑らかな肌を際立たせ、下手に全部脱がせるより淫猥でセク
シーなものだった。
その恋人の乱れた姿を澤村はたっぷりと視姦すると満足そうに宣言した。
「今夜は寝かさないからな、覚悟しとけ」
澤村のその言葉に希理子は真っ赤になって逃げようとする。
「えっ、ヤだ、ウソッ!!」
だがそれを澤村は笑って否定した。
「嘘じゃない」
その言葉と共に澤村は自分の一部を希理子の中に沈み込ませた。
「ああんっ!!」
希理子は自分の一番神聖な部分───澤村にだけ触れることを赦し、そして澤村だけを受け入れる
場所にその確かな存在が割ってきたその快感に身をよじらせながら反論した。
「……ああん、もう、まだ真っ昼間だよ?!……くぅ」
澤村の激しすぎるその行為に希理子は快楽の悲鳴をあげる。拒む言葉もその仕種も澤村をあおるだ
けだということを知っていても、それをとめることなど出来ないほどに澤村に愛されなれた躯は正直
にそれを待ちわびている。
そんな2つ年上の恋人の素直じゃない素直な反応に澤村はほくそ笑む。
自分だけが知っている───自分以外の誰にも知られるわけにはいかない恋人の乱れた姿が澤村を
ますます興奮させる。
「ホントに絶対寝かせない」
その言葉と共に希理子を攻めるその動きをますます激しくさせる。それに合わせて希理子は甘い息
を漏らし、ますます己を乱れさせる。
その繰り返される無言の誘惑に澤村もそして希理子自身も溺れ込んでいく。
その後、本当に希理子が『寝かせてもらえなかった』のかどうかは今後澤村が身に着けてプレイし
ていくことになる背番号7番のユニフォームだけが知っている。
Fin.
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