イタリアの日時計
  Sundials in Italy


 2002年3月15日〜27日イタリアを訪れました。ミラノ、ボローニア、フランスとの国境に近い北イタリアのフォッサーノと山間の村ベリーノ、ヴェリチェリからヴェルバニアイントラなどを、イタリアの日時計仲間の方々に案内いただきました。ここではその内のほんの一部をご紹介します。ベリーノはパラマウント映画の冒頭に出てくる荒々しい雪山モン・ヴィゾ(Monte Viso)に近い山間の村落です。

1. 春分の日
 左下から右上に向かっている直線が春秋分線です。訪れた3月20日はちょうど春分にあたります。指時針の途中に付いている球の影が春秋分線の上にあることがわかります。指時針は極向きで、指時針の影が時刻線に沿っています。春分の日はキリスト教会の重要な祝祭日である復活祭の日を決める基準として大切です。春分後の最初の満月のあとの日曜日がその日に当たるからです。

2.季節情報
 指時針は日時計面に垂直です。この場合、指時針の影の先端で季節情報と時刻を読み取ります。上と下の茶色の曲線は冬至線と夏至線。黒い線がヨーロッパ中央標準時との経度差補正をした視太陽時線、灰色の直線は日の入を一日の始まりとした定時法(イタリア時法)の線、中央の垂直の茶色の線は視正午すなわち視太陽南中線です。

           
       1.郊外の住宅、フォッサーノ(Fossano)           2.街路に面した壁、フォッサーノ

3.イタリア時法
 ヴェルバニアイントラ(Verbania Intra)に向かう途中の街。日時計面に垂直な指時針が付いていますが、茶色の時刻線は経度差補正がなく地方視太陽時を示しています。黒い線は日の入を一日の始まりとした定時法(イタリア時法)、垂直の線は視正午、斜めの一本の直線は春秋分の線を示しています。上方の水平の線と時刻線との交点が視太陽時の日の出・日の入時刻になります。左上方の線の交わっているところを見てください。春分の日は、視太陽時の朝6時、イタリア時法で日の入後第12時が日の出の時刻であることを示しています。春秋分の日には三種の線が交わっています。その日には日の入を基準として一日を24等分するイタリア時法の時刻線と、太陽南中を基準として一日を24等分する視太陽時の時刻線が一致するからです。

4.指時針は垂直
 3と同じ型式です。ここでもイタリア時法の線がよく目立ちます。北イタリアの街中では日時計面に垂直な指時針をもつ日時計が多く見られました。水平式でも同様な方法が可能であり、日本でももっと試みられてもよいのではないかと思います。

         
              3.邸宅の壁面                     4.街路に面して

 5.東面垂直型
 フォッサーノの街角。下から斜めに撮っていて、左下から右上の壁の境が垂直です。ほぼ東向きの垂直型です。右上方の青い帯との境が冬至、中央の線は春秋分線、左側の青い帯との境は夏至の線です。壁面の角を巧みに用いた素敵なデザインです。

 6. 正午計(Noon Mark)
 イタリア語では、もともと正午、子午線を意味する"Meridiana"が日時計の意味で用いられています。日本語と同じく「太陽の時計」を意味する"Orologio Solare" もありますが、あまり用いられていないようです。視太陽時正午・太陽南中の確認に日時計が重要な役割を担ったからだ思います。フォッサーノ郊外のワイン農家の中庭。左側は南面垂直型、右側は正午計です。正午計には均時差を示すアナレンマが描かれていますが標準時を示すための経度差補正はありません。5. と6. はいずれもフォッサーノを案内いただいたモッラ氏の作品です。

             
        5.狭い路地、フォッサーノ              6.日時計と正午計、フォッサーノ

 7. 8. 9.ベリーノ(Bellino)の日時計
 フランスとの国境に近い山岳地帯の村落で、ケルト(イタリア語ではチェルト)の人々が住んでいます。日時計制作は地域の伝統文化の一つだということですが、過疎化が進みケルトの伝統と文化を受け継ぐ若い人が少なくなっているとのことです。   
          
           7.家の壁面、ベリーノ                      8.ベリーノ

 10.ベリーノの教会
  ケルトの村の小さな教会の入り口正面に壁一杯に描かれています。村の人々は紀元前400年頃北イタリアに侵出したケルト人の末裔といわれています。ケルト文化の名残りである石頭の彫像が家の台座に逆さに埋め込まれているなど、ケルトの人々の苦難の歴史をうかがわせるような痕跡が村のあちこちに残されています。

            
            9.ベリーノ                            10.ベリーノ

11.アナレンマが2つ
 今回の総会の開催地ヴェルバニアイントラの街の中心の広場。右側のアナレンマが地方平均時正午、左側はヨーロッパ中央標準時正午を示します。3月23日の撮影で春分をわずかに過ぎただけです。円盤の影の中央が春秋分線上にあるのが分かります。

 12.ポルディ・ペッツォーリ美術館(Museo Poldi Pezzoli)の日時計
  ミラノのドゥオーモ(Duomo)に近い。個人の所蔵品がもとになっていて展示品は広範囲にわたっています。写真の下2段は象牙製の携帯型、上の少し大きいのは窓際などに置いて使われたといわれています。5面の展示ウインドウに、象牙製・真鍮製の携帯型をはじめとして多種多様な日時計が所狭しと並べられまことに壮観です。これほどすばらしいコレクションは他に見たことがありません。

             
     11.ヴェルバニアイントラ(Verbania Intra)           12.左右のうしろにも日時計


 3月22〜24日の日程で、スイス国境に近い湖畔の保養地ヴェルバニアイントラで開かれたイタリア日時計協会総会に出席しました。日本日時計の会の後藤晶男氏、小野行雄氏、筆者の3人です。イタリアのノモニスト(日時計愛好家)たちの歓迎を受けました。写真はかって修道院だったというホテルの中庭での記念撮影です。

           


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