核融合科学研究所の日時計

The Sundial in the National Insutitute for Fusion Science


 東濃研究学園都市は岐阜県東濃地方の土岐、多治見、瑞浪の各市にまたがった広大な丘陵地域にあり、国や県の先端科学の研究所が点在している。その内のプラズマリサーチパークの一角に文部科学省核融合科学研究所がある。研究所より2003年7月に日時計制作の依頼を受け2004年3月に完成の運びとなった。研究所は中央自動車道多治見インターから東南東約6qの位置にある。日時計は道路に沿った正面玄関の前にあり、「地上の太陽」の実現を目指す研究所のシンボルである。4月始めのお披露目に先立ち3月29日内見させていただいた。

1.日時計の設計と素材
 日時計面のライン設計と日時計面中央の投影板(以下ノモンと称する)の形状設計は筆者が担当し、台座を含めた全体のデザインは小野行雄氏が担当した。日時計面の円盤は直径が1600oで10oのステンレス厚板を用い金属メッキ処理がされている。ノモンは同じく20oの厚板を用い特殊塗料処理が施されている。製作加工は、ステンレス厚板の精密加工技術を持つ研究所指定の業者に依頼した。台座は御影石製で、底面は幅×縦最長2000o×2500o。台座中央の高さは地表から約780o。南に向かって10度傾斜する設計とした。傾斜型は正面から見やすく、雨水の滞留を防ぐこともできる。

  
         研究所正面                               日時計全景

2.時刻ライン
 時刻ラインは、明石における地方視太陽時を示す設計とし、明石(東経135度0分)と当地(東経137度10分)の経度差補正を施した。均時差補正表は正面手前に取り付けてあり(一番下右の写真)、日時計の示す時刻に表から読み取った補正値を加減すると日本標準時を読みとることができる。日本標準時を示す8の字のライン(いわゆるアナレンマ)を日時計面上に描くことを当初予定していたが、このような板状ノモンの場合、当地経度ではノモンの取り付け部位で8の字が分断され、デザイン上好ましくないので今回は見送った。
 興味深いことに、太陽を天測した真南北線と、正面入り口の広場にあるタイル目地の南北ラインは角度で1分余程度の差であった。これは差がないに等しい。研究所の主要建物群も正しく南面しているようだが、その理由については不明である。

3.ノモンの形状とノーダス
 ノモン上部の直線は時刻の影を投影するもので、天の北極を指している。一方ノモンの下部は直線と曲線により構成されている。時刻を示す上部の直線と影の形状を明確に区別するため、ノモンの下部には何らかのテーマ性をもった装飾を施すのも興味深い。しかし周囲の建物との調和を考慮してこのような伝統的な形状を採用することとした。
 ノモン上部の直線上にある間隙は、ノーダス(Nodus)の一種である。ノーダスとは「日時計面上に、時または期日を表示する影を投ずるための点をいう」。この日時計の場合、間隙の影の中点によって季節情報を示し、円形のくりぬきにより間隙の位置を視覚的に明示している。日時計面上に冬至、秋分(春分)、夏至のラインが描かれており、それぞれの該当日にノモン上の間隙の影がそれぞれのライン上を通過して行くことになる。左下の写真は、2004年3月29日13時40分の撮影である。当日の均時差補正量の約5分を加えるとほぼ日本標準時と一致する。太陽赤緯は+3度30分程であり、その分だけ間隙の影が春秋分のラインから夏至の方向寄りにある。右下の写真は2004年6月22日、夏至の撮影。間隙の影が日時計面上の夏至線をまたいでいるのが分かる。

  
       2004年3月29日13時40分                      2004年6月22日

4.ローマ数字
 文字盤はローマ数字とした。4時を示すのに I を4個並べるのは、時計の時刻数字の伝統であり誤用ではない。それについては諸説がある。14世紀の頃フランスのシャルル5世が宮殿の塔に作った時計の文字盤を見て、時計師に「自分は5世である。文字盤の IV の字は V から I を引くので不吉であるから、IV の字は IIII にするように、」 命じたという逸話が伝わっているとされているようだが、根拠は不明である。アラビア数字が普及する前のヨーロッパ中世ではローマ数字として IIII は広く用いられており、このような逸話は後世における巷間の作り話の可能性が高い。時計の文字盤には、当時汎用されていたローマ数字の IIII が今に至るまで時計数字の伝統として用いられてきた、と考えるのが妥当であろうと思う。(→ローマ数字と時計数字)参照。 

  
        ローマ数字IIII                                 均時差表


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