日時計の楽しみ(1) 
 Delight in Sundials (1)


 思いつくままの日時計紹介です。ここで取り上げるのは、多様な日時計の世界のほんの一端に過ぎません。さらに興味をお持ちの方は、ホームのリンク集などをご覧になるとよいでしょう。

1.筆者の試作モデル
  垂直東西面型と水平面型の複合型、東面は午前、西面は午後、水平面は正午前後の時刻表示です。全て円で構成されまったく突起がないのが特長。この日時計では指時針(ノモン:gnomon)は棒の影の線や棒の影の先端ではなく、上方にある半円盤の三角の切り込みから通ってくる光の先端が指時針になります。写真は6月7日午後3時半頃。経度差・均時差が加わって視太陽時は午後3時40分頃を指しています。右側は夏至線、中央の直線は春秋分線、左側は冬至線です。このように日時計面に季節情報を盛り込むと見る人の日時計への興味が増します。夏至に近い頃なので光の先端が夏至線の近くにあることが分かります。

            
      1-1午後3時半頃、左下は磁石コンパス           1-2.西面を拡大

2.環境造形作家小野行雄氏の日時計
 2-1 はガラス製の南面垂直型。洒落たガラスの造形が日時計の機能も持ち合わせているのが楽しい。2-2 は複合型。ふくよかな柱を仰ぎ見るとその先に日時計が付いている。先端から斜めに突き出ているのが赤道型、指時針(ノモン)の影が映っているのを下から見る。もう一つは垂直南面で、写真でははっきりしないが中央にある細長い8の字状のものはいわゆるアナレンマ(analemma)。この日時計の場合アナレンマによって地方平均時正午を確認できる。

                  
           2-1.ガラスの日時計              2-2.柱の上に日時計2つ

3.江戸時代の紙日時計
 奈良の「時の資料館」で土産として売られている江戸時代の紙日時計のレプリカです。館長は日本日時計の会会長の後藤晶男氏。季節に合わせて紙片を立て太陽に向けて影の位置を見ると、大体の時刻を知ることができます。高度型日時計で、漢数字は江戸期の時刻表示です。この種のものとしては最もシンプルなタイプで、もっと表示の細かいものが国立科学博物館やセイコー時計資料館に所蔵されています。当時の不定時法制度のもと、各地方ではそれぞれの土地の視太陽時によって生活が営まれていました。日本の主要部は江戸から北九州まで東西に広がっていて緯度にそれほど差はなく、この種の日時計で広い地域にわたって概略の時刻を知るのに十分役立ったと思われます。単品で売られていたり、旅行案内書の付録だったようです。シーボルトの『江戸参府紀行』 (斉藤信訳 東洋文庫 平凡社)には次の様な記述があります。「日本では道路地図や旅行案内書は必要で欠くことのできない旅行用品の一つである。・・・・・紙捻 (こより) を立てるとでき上がる日時計まで付いている。」
 なお、江戸時代の不定時法では、基準となる明六つ・暮六つは日の出・日の入の時刻のことではありません。明六つ・暮六つは薄明の始まりと終わりとされており、日の出の2刻半前(約36分。一日百刻制の定時法で1刻は現在の時間で14.4分)と日の入の2刻半後と、江戸期の暦法上厳格に定義されていました。寛政暦以降は日の出前・日の入後の太陽が俯角7度21分40秒の位置にあるときと定義し直されました。この時刻制度のもとでは、春秋分でも昼夜等分ではなく昼間の時間の方が約1時間ほど長かったわけです。

                   
           3-1.左半分が日時計                3-2.表紙

4.精密日時計の上原秀夫氏の日時計
 岐阜県美並村フォレストパークの小高い山の上にあります。該当月の同心円のカラー帯に注目して、時刻を示す曲線の間にある指時針の影の位置から、日本標準時を読み取ることができます。指時針は子午線 (真南北線)上にあり真北を指していますが、45度の角度で立っており天の北極を指していません。均時差のために年周変化する標準時の曲線ラインを設置場所の経緯度に合わせて描いてあります。同様の時刻表示板を用いる方位型に似ていますが、方位型は垂直の指時針を用いており、これは上原氏独自の型式です。    

      
           4-1.全景              4-2. 2002年6月9日13時40分頃

5.ミュンヘンのドイツ博物館-日時計の庭 (Deutschen Museum, Sonnenuhrengarten)
 世界最大の科学博物館といわれています。イザール川にかかる橋を渡るとすぐ入り口の建物の壁に5-1の垂直型日時計があります。すぐ上に掲げられたラテンの銘は "HAEC DOMVS EX RVINIS RESTITVTA A.D.MDCCCCLI" 「1951年この建物は廃墟の中から再建された」 とまことに素っ気ないのですが、第二次大戦後の国土復興にかけたドイツの人々の意気込みが感じられます。博物館の上階のベランダに「日時計の庭」と称するスペースがあります。大理石板などを用いて作られた小型で精密な日時計のモデルが数多く展示してあり、日時計愛好者には興味深い所です。主にYves Opizzo氏の作品です。5-2はその内の一つ、底面を除いた25面にそれぞれラインを描いた多面体型(Polyhedron)です。

         
          5-1. ドイツ博物館入り口           5-2.多面体型日時計

6.グリニヂの海事博物館のイルカ日時計(National Maritime Museum, Dolphin Sundial)
 赤道環型で2匹のイルカの尾の下側先端の間隙が指時針の役割をします。日時計面の金属板は年2回夏至と冬至のときに入れ替えます。訪れたときはあいにく雨天で写真では分かり難いのですが、表示板には全面に半年分のアナレンマが入っていて、直読式で標準時を読み取ることができます。通年のアナレンマを全面に入れた場合は読み取りが難しい。そこでこのように日時計面を年2回入れ替えると読み取りが容易になります。最初から半年ごとのアナレンマの入った2面を用いる方法もあります。設計はイギリス日時計協会の重鎮クリストファー・ダニエル氏。精度は約1分とのこと。海事博物館にふさわしい海の守り神イルカをモチーフにしたエドウィン・ラッセル氏の青銅の彫像も素晴らしい。

                 
          6-1.後方は海事博物館               6-2.イルカと時刻表示板            


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