menu

5次元世界の冒険
おはなし;行方不明になった科学者の父親を探しに、弟とともに5次元世界へと旅立つ
少女メイ。異世界の住人(ビースト)たちの助けをかりて、辿り着いたのは惑星カマゾツ。彼女は父と、そして邪悪な意思に支配されてしまった弟を助けることができるだろうか・・・
ふー;主人公、メグのひねくれ具合が、とても素敵。外見はチビで、丸顔で、めがねと、まるで私自身を見ているよう。友達はいないし、両親が科学者で、あまり世間とは関わりを持たない人たちなので、御近所からも変な一家とみられている。素直でないことこの上なく、意地っ張りでいじわる、さらに臆病、引っ込み思案。ここでメグに感情移入してしまったら、作者のねらいにはまったのだろうか。

 友達のいないメイに、隣の家に住んでいる、三人のおば様たちが、メイに助言をしてくれる。「あなたのその性格が、いちばんの武器になるわ。頑固で意地っ張りでいなさい。」と、今まで散々、欠点として言われてきたことを、逆に長所として認められるのだ。

 超天才だけど、周囲からは気持ち悪いやつとしか見られない弟を、メグは溺愛していて、その弟を救うために追いつめられていく。まさにその時、このおば様たちの言葉が、メイを支えることになる。

 ラストでメイはビーストおばさん達に「ありがとう。」という言葉をつぶやく。あるがままの自分を受け入れて、そこからまた前に進むことができる・・・うん、とても前向きなお話である。
わたしの好きなところ;
 惑星カマゾツで洗脳されている人々の描写の中で、気に入ったシーンがあります。団地みたいな建物の近くで、こどもたちが一斉にまりをついているんですが、それが全く同じリズムなのです。そんな中ひとりの子がまりを落としてしまいます。その途端に団地のドアが開き、母親がこどもの手をとり、家の中に引き込んでしまいます。そのドアが閉じるのも同時なんです。
 その後で、メイは、まりを落とした子が、再教育されているところをモニターで見かけるんですが、その子は白い壁の小さな部屋の中で、泣きながらまりをつく練習をさせられているんです。初めて読んだ小3の時、とっても怖かったので、強い印象が残っています。
 先日インターネットで、この本が手に入らないかと捜していたら、小学校1〜2年生の時この作品を読んだ方が、やっぱり、ちょうどこの部分で強い印象を受けたと書かれていました。その人は、全く別の悪夢を見たときに、その夢の中で、自分が洗脳されてしまわないよう、同じリズムにならないように、心の中で必死に歌を唱えていたと書いていました。これは、5次元世界の冒険の中で、その世界を支配するものから逃れるために使った方法です。みんな、それぞれ影響を受けているんだなと思いました。
5次元世界の冒険/レングル・マデレイン;作 渡辺茂男訳/あかね書房
 残念ながら、現在この本は入手できません。出版が1965年なので無理もないですが。わたしも小学校の図書館で、借りて見たので、手元にありません。
 すももさんが調べてくれたところでは、このお話しは<時間と空間の冒険>(原題はリンクル・イン・タイムー時間のしわ)3部作の第1話で、<時間と空間の冒険>は1982年にサンリオから出版されているそうです。インターネットの古書店で探してもらいましたが、見つかりませんでした。でも、負けません。もっともっと捜すぞー、おーっ。

menu