心配です 維新の会条例案

維新 格差拡大容認

 

子どもの学習権はどこへ?
  学校破壊する「維新案」

 「大阪維新の会」が大阪府議会に提出した教育基本条例案に対して、日々学校教育を担う学校長会、教育行政をすすめる教育委員会はじめ、広範な教育関係者ばかりか、大阪弁護士会、日本ペンクラブ、文化人から反対意見が出されています。
 「条例案」の内容は、○知事が公立学校の教育目標を決め、目標実現の責務を果たさない教育委員は知事が罷免できる ○教員をSABCDの5段階で相対評価し、2年連続Dとなった教員は分限処分の対象となる 必ず5%は最低のDランクにする となっています。


 条例案前文をみると、(前略)「
加速する昨今のグローバル社会に十分対応できる人材育成を実現する教育には、時代の変化への敏感な認識が不可欠である。大阪府の教育は、常に世界の動向を注視しつつ、激化する国際競争力に対応できるものでなければならない。」(後略)としています。条例案の内容とこの動機には、明らかに乖離があります。
 グローバル社会うんぬんは、多くの人が同意できるでしょうが、公教育へ向き合う地方自治体首長と地方議員の基本的スタンスは、日本国憲法、教育基本法、地方教育行政組織法をはじめとする諸法規を遵守し、全ての国民が有する学習権を実現するため、教育現場の多様な実情を踏まえた問題把握に努めた上で、教育を取り巻く条件整備を政治としてどのようにすべきかを特別行政組織である教育委員会と向かうことです。

  理想の教育モデルは
    サッチャー改革 ?

 条例案を練ったとされる維新の会所属、坂井良和・大阪市会議員は朝日新聞のインタビュー(2011年10月10日朝刊)で、以下のような質疑を行っています。
「……
質問 あなたの理想とする教育モデルは
 サッチャー改革。学力テストの結果公表や、教員評価への成果主義導入などで英国を再生させた。競争原理で切磋琢磨することが進歩につながる。米シリコンバレーからも、何か一つ抜きんでている人は成功し、平準化した人は成功しないと学んだ。日本にもそういう場所が必要だ。
質問 英国の改革は格差も拡大したといわれる。米国でもウォール街で失業中の若者らが抗議している。
 私は格差を生んでよいと思っている。税制や社会保障など、是正の制度は別にある。まずは格差を受け入れてでも、秀でた者を育てる必要がある。」

 職能への理解欠いた「案」

 学校を荒廃させ、被害は子に


 教育が抱える課題は、小学校から高等学校まで実に多種多様です。イジメ、不登校から大量の高校中退者まで学校は、家庭、地域と連携しながら個別対応を粘り強くしなければなりませんが、維新の会の案には、児童・生徒の成績問題だけにスポットをあて、学校が日々直面する諸問題を軽視しているとしか見えません。大阪府教育審議会答申(2008年7月)では多様な10年間の変化を見通して多様な取り組みの必要を明確にして、その一つとしてグローバル化もあげて、着実な改革案を提起してきました。すでに始まっている多くの改革策を当選したばかりの「維新の会」府会議員は知らないのでしょうか。
 そもそも、複雑な格付けしむち打てば良いとする教育者の職能への理解を全く欠いた、学校現場のあり方を取り返しできない荒廃に追い込むものであり、その被害は子どもたちが受けることになります。






 大阪府教育委員会の教育委員が、維新の会条例案に反対し、その抱える多くの問題点を指摘しています。
 私たちは、2000年12月から吹田の教育施設問題を市民と共に考えるべく、市民にはなかなか知ることが出来ない学校教育施設の問題を取り上げて、情報発信をしてきました。協力を得てきた学者、教員の皆さんの危機意識は、府教育委員と同じものであり、広義の教育環境の取り返しの付かない危機として条例案に反対します。


 

 

 急速に入れ替わる教職員の世代交代
 
    課題山積みの未体験の領域に

 下のグラフは、大阪府教育審議会が平成20年7月1日答申した「これからの大阪の教育がめざす方向についてー「学校力の向上をめざして」にある資料として添えられたものです。この内容を見ると、現在大量の教職員が退職し、世代交代が急速に進んでいることを示しています。
 世代交代が急速に進むことは、学校運営上で様々な問題が生じる可能性が指摘され、学校現場や専門家からは早くから採用枠を増やして新人教員の現場での教育・経験蓄積の必要性を求められてきました。
 教職員の職務遂行において、個人でも集団としても豊かな現場力は欠かせません。

 

1 人材確保 2 人材育成 3 管理職要員の確保4 多種の職能集団の協同 etc.これらいずれも大変な課題であり、容易な取り組みでは解決できるものではありません。
 人材確保だけをとっても、長期にわたる採用凍結時代のため大学における教員養成課程履修者数は減少を続け、大都市部での大量退職に十分に答える教員資格免許者が不足する学科が数年前から発生しています。理科系教科ではその傾向が顕著です。
 管理職である教頭、副校長、校長になる年齢層が絶対的不足も深刻です。

 
 
大阪府小学校教員年齢構成比率 平成20年4月 大阪府教育審議会 資料より
中学校、高等学校ではこの傾向は少し緩やかな形で数年遅れで退職者のピークが訪れます

 

  教育行政のあり方定めた
          教育基本法

 第十条 (教育行政) 教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。2 教育行政はこの自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。

 大阪府全国最低の教員給与
 

 
大阪府下公立学校の教職員の賃金は、2011年4月、全国最低水準となりました。昨年度は、岡山県と並んで最下位でしたが、岡山県が一時的減額を終えたため大阪府が単独で最下位となりました。新任から4年目の教員が初任給に戻るという「荒技」が橋下知事の下で行われ、同じ措置の延長が春に決まったためです。
 経験ある教員も4〜10%の減額が行われ、重責を問われる教頭職(副校長職)、校長職も9%、13%の減額措置が行われています。

 学習権は子どもに
       
  公教育が負う責務  最高裁判決

  

 
「……国民各自が、一個の人間として、また、一市民として、成長、発達し、自己の人格を完成、実現するために必要な学習をする固有の権利を有すること、特に、みずから学習することのできない子どもは、その学習要求を充足するための教育を自己の施することを大人一般に対して要求する権利を有するとの観念が存在していると考えられる。…」
 (1976年5月21日最高裁判決)
  旭川学力テスト事件

 

   
 
   
 
   
 

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