強震断層域面積11万平方km マグニチュード9.0に

 2012年3月31日、内閣府・南海トラフの巨大地震モデル検討会は、南海トラフ巨大地震の地震動について、11万平方qの強震断層域を伴うマグニチュード9.0の超巨大地震となり、2003年中央防災会議が示した三連動巨大地震の強震動予測に比べ、震度7に襲われる面積で10倍、市町村数は約5倍となると発表しました。

 今回の強震動予測は、内陸部深部におけるプレート境界のエネルギー蓄積も考慮して内陸側に想定震源域を広げつつ、震源域を4つの発生ケースに分けてそれぞれの地震波の伝わり方を地層データに基づき解析し、250mメッシュで各地の想定される震度を経験式で補正しながら明らかにしました。

 その結果、震度7が想定される地域は、10県153市町村。震度6強以上が想定される地域は、21府県395市町村。震度6弱以上が想定される地域は、24府県687市町村となり、2003年中央防災会議・三連動地震予測の震度7・6県35市町村、震度6強以上・9県120市町村、震度6弱以上・20県350市町村を大きく上回りました

 

 

  震度7は153市町村

 

南海トラフ想定震源域イラスト 超巨大津波震源域はトラフ沿いに南へ拡大

津波震源域は14万平方q最高津波高32m

 

 2012年8月29日、内閣府・南海トラフの巨大地震検討会は、強震断層域に津波断層域を加えた14万平方qが震源域となるマグニチュード9.1の超巨大地震が発災し、最大32mの超巨大津波が起こり、東海から九州にかけての太平洋岸で津波被害があると発表しました。最大浸水域は、1,015平方qとなり、東北地方太平洋沖地震での浸水域561平方qの1.8倍となると推計しています。

 東北地方太平洋沖地震では、震央の海底が東南東に24mすべり、3m隆起(海上保安庁観測)し、これまで動かないとされてきたプレート境界の陸側先端部では7〜10mの隆起と50mを超える超巨大すべり域を形成し、巨大地滑りが引き起こされたことが明らかになり(独立行政法人・海洋研究開発機構観測)、南海トラフにおいても同様な超巨大すべり域が発生するとして、2003年中央防災会議報告よりも沖合に想定震源域を拡大することになりました。その結果、超巨大津波を想定する震源域の面積は、東北地方太平洋沖地震の10万平方qを上回る14万平方kmとなりました。

 津波想定においても、大すべり域、超大すべり域それぞれ1つが動く5つの基本ケースと分岐断層が同時に動いたり、大すべり域、超大すべり域2つが動く派生的な検討6ケースを加えた11の発生ケースにわけて海底地形、湾岸部地形、発生時間の順番、ずれなどを10mメッシュで解析し、各沿岸部を襲う津波高、浸水域、到達時間などを予測しました。

 津波高2mを超えると木造家屋は全壊となることが東日本大震災の被災調査で明らかになり、満潮時などの条件次第では、中京地域や大阪湾沿岸、瀬戸内海も要注意となります。

 

 プレート境界で50mの超巨大すべり

 

 

 

 

 

 11の発生ケースを検証

 

新強震動域
南海トラフ強震動域拡大図解
分岐断層発見 プレート境界面強震域拡大

これまでは、(1)のプレート境界面が部分的に破壊されると考えられていました。観測の結果、(2)の30kmより深いところの破壊を示す微震動があり、内陸側に強震動域が拡がり、東北地方太平洋沖地震で(3)のプレート先端部が大きく動いたことが判明しました。(4)海洋研究開発機構の調査で熊野灘沖では、プレート境界から分かれた分岐断層が新たに発見されました。

南海トラフ津波高
津波5m痕跡 想定最大32m

 検討会では、地震考古学や沿岸地の池、湖沼の地層ボーリングによる研究・調査成果(高知大学など)が津波想定に反映されました。赤線で示された5〜10mの津波跡は、沿岸各地にあり、それに加えて東北地方太平洋沖地震観測の超巨大すべり域による超巨大津波発生メカニズムを加え、最大クラスの津波高を想定しました。想定で10mを超える津波は、各地で推計されています。

 

 高知大学は、大分県佐伯市龍神池、高知県須崎市ただす池、同土佐市蟹ヶ池、徳島県阿南市蒲生田大池、三重県尾鷲市須賀利大池においてそれぞれ詳細な地層サンプリング調査を行い3,500年から4,000年に遡る地層形生歴を明らかにし、モデル検討会に資料提供を行っています。

 この資料によれば、西暦1707年10月28日(宝永)、西暦684年11月26日(天武)といったこれまで知られていた宝永大地震(紀伊半島沖を震央とする三連動地震・49日後に富士山宝永大噴火)や白鳳地震(記録では四国土佐の田畑の海沈や道後温泉の異常など南海トラフ沿いでの地震と推定される)よりも1000年遡る2000年〜2200年前にこれらを上回る津波による堆積物の層が出ています。

 独立行政法人産業技術総合研究所、活断層・地震研究センターも伊豆半島から浜松、志摩半島、潮岬、足摺岬にかけての津波堆積物、地殻変動調査を行い、地殻の変動による隆起、沈降と津波堆積を合わせた報告を行っています。

  
田井ノ浜地層データ
 
南海トラフ最高津波高

最大津波高 〜20m

黒潮町、土佐清水市 34m 下田市 33m 四万十町、新島村31m 鳥羽市、大月町27m 志摩市、南伊豆町 26m 宿毛市、須崎市、神津島村 25m 室戸市、土佐市24m 四万十市、田原市、伊勢町 22m 伊方町 21m すさみ町、小笠原町 20m

 
5mで甚大被害

 東北太平洋沖地震の津波被害は、沿岸の都市、工業地帯、港湾施設で危険物が集積していたために、津波の中での火災発生という初めての厳しい災害経験となりました。

 沿岸都市部と工業地帯の想定される最大津波高は、5m以下でも甚大被害となります。

 

 19m 御前崎市、豊橋市

 17m 尾鷲市、熊野市、串間市

 16m 湖西市、御坊市、高知市、阿南市、宮崎市

 15m 日向市、佐伯市、

 14m 牧之原市、浜松市、掛川市、新宮市、延岡市、日南市

 12m 磐田市、田辺市

 11m 静岡市、焼津市

 10m 鎌倉市、伊東市、沼津市、袋井市、有田市

  9 m 逗子市、南あわじ市、伊勢市

  8 m 和歌山市、海南市

  7 m 藤沢市、津市、松阪市、徳島市、鳴門市

  6 m 横須賀市、三浦市、常滑市、蒲郡市、鈴鹿市、洲本市

  5 m 知多市、桑名市、四日市市、岸和田市、堺市、尼崎市、西宮市

御前崎には、浜岡原子力発電所があります。

 

 

第11回調査までの歩み

南海トラフ地震被害予測と対策のページ
第11回耐震調査都道府県結果

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10年で急速整備された日本の地震観測システム

深刻だった福島第一原発事故

 

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