調査の対象は、2階以上または延べ床面積が200を超える非木造建物129,559棟でした。調査の結果、58.6%にあたる75,912棟が耐震性があることが明らかになりましたが、増加は前年より1%多い3.9%の微増にとどまりました。しかしながら、耐震診断の実施率は、昨年の11.6%の倍近い21.5%となり、耐震診断実施率は、89.4%と急伸しました。
これまで5回の調査結果は、都道府県による大きな格差が問題となっていましたが、今回、耐震診断実施率は全国的に大きく改善し60%未満の県は解消しました。
調査は、都道府県教育委員会を通して全国の全ての公立小学校、中学校の学校にある建物の内で地震に対して危険性が大きい建物を指定し、学校施設を管理する市町村教育委員会に調査用紙を配付して行われました。
文部科学省は、前回の発表資料、都道府県別に各自治体の調査結果に加え数百万円の費用をかけた本格的な耐震診断(2次診断等)を行った19,343棟の診断判定結果の内訳を公表しました。(大阪府の各市町村別調査結果へ)
2007年4月
学校施設の耐震化調査
○ クリーム色は、昭和57年以降の保有水平耐力を持った建物の棟数。
○ 緑色は、耐震補強工事を完了したか耐震診断の結果Is値0.6以上の建物棟数。
○ 茶色は、56年以前の建物で耐震診断未実施か耐震補強工事未対応の建物の棟数。
文部科学省「平成19年4月・耐震改修状況調査」より
1995年1月の阪神・淡路大震災を受けて同年6月、政府は公共建物の耐震診断を急ぐ必要性を認め、「耐震改修促進法」を施行するとともに、「地震防災事業五箇年計画」を策定してそれまで特定地域に対して行っていた耐震工事事業への補助を全国対象に広げ、かつ耐震診断と耐力度調査の費用に対しても国庫補助を行うこととしました。
しかし、2002年5月実施された初めての全国調査では、震災から8年が経過したにもかかわらず、耐震診断すら大きく立ち後れていることが明らかになりました。
文部科学省は、この調査結果を受け2002年7月31日付けで「公立学校施設の耐震診断実施計画の策定について」において、都道府県教育委員会に公立学校の耐震性能の把握と耐震診断実施計画の策定を依頼し、全国的な取り組みの強化を図りました。17年度までに全ての公立学校施設の耐震診断を終えようとする3カ年計画を求めたものでした。
19年4月調査までの耐震診断実施の経過を示すグラフを見れば、3カ年計画のその後も文部科学省は粘り強く取り組みをすすめ一向に動かない市町村名の実情や本音まで明らかにし一気に89.4%と目標達成が見えてきました。
府県別で見ると実施率60%以下の県はゼロになり、70%台は青森・福島・茨城・長崎の4県、60%台にとどまる道県が北海道・鳥取・島根・佐賀など4道県ありました。
2006年1月施行された改正耐震改修促進法は、地方公共団体に対して耐震改修促進計画の立案を求め、とりわけ公共建築物については速やかな耐震診断、結果の公表、整備プログラム策定を求め指示等の対象に幼稚園、小中学校、老人ホーム等を追加しました。特定建築物の規模要件を強化し、地方公共団体の指示に従わない特定建築物を公表するという内容は、自ら保有する公立小中学校の耐震化を遅らせる口実がなくなったといえます。
2007年4月
学校施設の耐震診断実施についての全国調査
○ クリーム色は、昭和56年以前の建物で耐震診断未実施の棟数。
○ 茶色は、56年以前の建物で耐震診断実施建物の棟数。
前年の第5回全国調査に比べ、耐震診断は一気に加速して最終段階になったことが分かります。
耐震診断の多くが文部科学省の提起した優先度調査で行われたとは言え、実際にはコンクリートの抜き取り検査を省略して行われた自治体も多く、1棟あたり数百万円の費用がかかる2次診断等の本格的な耐震診断が急がれなければなりません。
学校施設の耐震化の遅れは、自治体での抜本的な取り組み強化と国のさらなる財政支援が欠かせません。 大都市周辺の衛星都市では、急速な住宅開発により開設された学校において老朽校舎が膨大な規模で集積してきました。先験的な一部の地方公共団体では、計画的な建て替え事業や大規模改造事業を通して耐震化を進めて来ましたが、財政状況の良好であった地方公共団体でも根本的な計画を欠いたために膨大な隠れた不良債権として学校施設が存在することになっています。
学校施設耐震化の遅れる市町村を現状の水準で放置したまま地方への財源移転が行われ、国が責任を負うべき義務教育施設の安全性は深刻な打撃を受けつつあります。
「三位一体の改革」が国と地方の「権限と財源」論に飲み込まれ、主権者である国民、住民の幸福、安全、健康を阻害する形で多くの問題を生みまれる中で、
全国平均下回るさいたま市、北九州市
財政基盤の強いはずの14の政令指定都市ですら、耐震化の平均値は70.3%です。17492棟の内、耐震化工事を終えたものや耐震性が確認されたのは、12299棟となりました。都道府県同様に、先進都市と遅れる都市の差はやはり大きくなっています。
最も耐震化が進んでいるのは、名古屋市で昨年よりも6ポイント伸ばし、97.2%に達しました。
昨年いろいろ問題にされた大阪市の耐震化は84.1%と大阪府全体の平均値(55.6%)を大きく上回っています。大きく出遅れているのは、さいたま市(37.3%)と北九州市(24.5%)の2市で、全国平均すら下回る有り様です。
2002年文部科学省が初めての全国調査を行い、児童生徒の安全に対して無責任とも言える状況が全国的に広がっていることが明らかになりましたが、今回の第6回調査では、ようやく耐震化の歩みが全国的なものになりつつあるといえます。
90%目前になった耐震診断実施率ですが、1棟当たり数百万円の費用がかかる本格的な耐震診断を2次診断以上のレベルで行い、建物の強度、粘り、形状、経年状況を判定し、明確な耐震指標を明らかにする必要があります。
これまで全国で耐震診断を終えたという72,167棟の内、2次診断等の明確な耐震指標が明らかになったのは、19,343棟(26.8%)でした。
大地震で倒壊の危険があるとされるIs値0.3以下の建物は、4,328棟(22%)倒壊の危険のないと判定されたIs値0.6以上の建物は、わずか2,671棟(14%)しかありませんでした。