酔水日記1999年7月


以下の文章は、今年夏、私平野が属する研究団体「学校体育研究同志会」の全国大会において、平野と田尻が発表するものです。
 「子ども・スポーツ・社会」という分科会で検討してもらうことになっていますが、ここの分科会は、私達大人と子どもがどのように、社会でスポーツを媒介にして生きていくのかを考える場所でもあります。仲間と集えづらくなっている、そんなゆとりもない、その方法も知らない。そんな状況を考え、大人と子どもが地域で(つまり学校を出て)楽しい空間を作るためにどうしたらいいのかを考えるのです。そこで、今回酔水会をたたき台にしていただきました。田尻君の力作をお読みください。

会費制導入(酔水新聞98年11月号より抜粋)


酔水会が設立し6年がたちました。プールを出発点としわずか3名で発足したこの会も、ダイビング、カヌー、キャンプなど、翼を左右に広げ多くの仲間が増え、現在会員は100名を越えるに至りました。2年前、酔水会は会則問題を考え、時期尚早と導入を見送り、プール維持会費を集め、酔水新聞読者を会員と定義するに至りました。そして現在、会を運営するに当たっての基本理念を考えるとともに、その会を支える財政基盤をすべての会員から徴収するという会費制を導入することを提起し、新たに会費制導入を会員に訴えることになりました。アンケートを集計し意見を寄せていただき、改めて世話人会を開き次のような原案を提案することになりました。
 会費制の議論の根幹は会の基本理念の検討であり、これからの酔水会を展望する作業です。またそれは、おこがましいですが、私たち一人一人がどのように仲間と接し、仲間と生きていくのかの議論でもあります。私たちは社会の主人公です。誰もが幸せになる権利を有し、そのために守られる存在でもあります。またそれはそのためにはなにをしなくてはならないか、という自立というバックボーンを抱えながらの議論でもあります。
 酔水会は設立当初からゲスト主義、つまりお客様でいることを排してきました。誰もが主人公なのだから、誰もが骨を惜しまず働こうという基本理念が横たわっています。そのために酔水会が酔水会として運営していくための経費は会員皆で負担しようと言うことなのです。ただし、ここが一番の問題なのですが、会の何が必要な活動かの議論、つまり、どの部分までの経費を、会として負担するのかについては様々な意見が存在しています。ある会員はプールのみが酔水会であると考えているでしょうし、またある人は「クラブルーム」「うつけ」(福島県の山林に300坪の土地を借りている、キャンプの拠点)までも含んで会の活動と捉え、経費負担を求めるでしょう。この議論の根底は先に述べた酔水会の基本理念の検討が必要です。酔水会は何か。酔水会はなぜ存在しているのか。アンケート、みなさんのご意見からそれも少しずつ見えてきたようにも思えます。
 総会が会の最終的な方向を決める場所です。以下の提案をもう少し掘り下げて会費制についての提案をさせていただきます。
  1. 会費制を導入する。
  2. 会費は一人あたり年6000夫婦会員は実質的酔水新聞代を引いた二人で一万円とする。学生会員は5000。
  3. 会費の行き先は、酔水新聞代、プール維持費を中心とし(全額を負担する)、それ以外に3局(事務局・企画局・編集局)事務費と、ダイバーズなど総会で認められた部門の活動補助費(こちらははじめは部分的な負担)にあてる。なおクラブハウス費、うつけ維持費については、維持経費の一部を充てる。
  4. そのためにまず「クラブハウス」と「うつけ」を会の活動場所として総会で認められるように提案する。
  5. ダイバーズ・パドラーズ・フォトグラファーズ・ライダーズ・スキーヤーズ・を企画局付けにする。会の翼を広げる部門を企画局に位置付けるという事で、今まで自由に行っていたキャンプを酔水キャンパーズとして発足させる。
  6. 事務局内に全般を見渡す会計を置く、そして、企画局、編集局の会計担当を置き、会計部門を事務局内に位置付ける。
  7. 会員が何人になるのか不確定な今の段階では、確定した支出(酔水新聞代、プール維持費)を優先させ、それ以外の予算は会員確定した時点で補正予算を組む。今のところここに回すお金はずいぶんと低い。
  8. それぞれ(各局・ダイバーズなど)年間計画を作る

会費制問題


以上の記事は昨年酔水新聞11月号に掲載された会費制の提起である。約半年をかけて会費制についての会員の意見を集め、それを冊子にし、結果を基に意見を交流させ、世話人会がまとめた提起である。11月の総会を経て今年1月から導入され、現在に至っている。
高校の水泳部の卒業生を出発点としたこの会がどのような方向を進んでいるのか、どのような会と育ってきているのかを、この会費制問題から読み解いてもらいたい。

担い手

現在会員は76名、子ども会員8名、そして新聞購読者11名である。(5月現在)
いずれ会を次の世代に手渡していきたい。会の活動を広げるためにも円滑な会の運営のためにも若い世代は必要になる。そのための「担い手」を会で育て上げなければならない。
今回神戸大会実践提案に酔水会の若きホープ田尻一人君に原稿を寄せていただいた。
彼がどう酔水会を知り、酔水会に関わっていくのかを読み解くことが、地域スポーツが進むべき道の示唆を与えてくれることと確信する。以下、彼の報告である。(平野和弘)

『酔水会』との出会い

小学校4年から中学2年の終りまでスイミングに通っていた私は、蕨高校定時制に通学する事なりました。1年生の時に定時制の水泳の大会があるという事で、水泳経験のある私が体育の先生に頼まれ出場する事になりました。定時制は人数が少ない為、自分が入部をしている部活以外の試合にも参加する事も多いのです。その水泳の大会で酔水会代表の平野氏と出会い、偶然にも平野氏と自分の担任が大学時代に同じ水泳部に所属していたという話で盛り上がり自然と酔水会にはいりました。初対面の人によく解らない団体の話を聞かされてその日に『入らない?』と言われてどうしようかと思いましたが、別に入っても損をする事は無いと思ったのが正直な気持ちでした。それからは毎月発行されている、酔水会の会員の人がそれぞれ書きたい事を平野氏へ送りスペースがあれば順番に載せるという『酔水新聞』が送られてきました。しかし、平野氏の期待をことごとく裏切り約2年間全く酔水会の活動には参加する事はありませんでした。 
それから数年が経ち、定時制を卒業する4年となりました。定時制を卒業するといってもこれといってやりたい事は何もありませんでした。そこで私は、中学生の時の『スイミングのコーチ』という夢を思い出しました。そして図々しくも平野氏と酔水会の存在を思い出しました。すぐに平野氏に連絡を取り、進路の事を相談し、それがきっかけで酔水会のプールの活動にも参加する様になったのです。その時初めてYMCAという存在を知り、現在では東京YMCA社会体育専門学校に通学しています。

自分から見た『酔水会』

実際プールの活動に参加してみて感じた(思った)事は浦和西高校の水泳部出身の人が多い事でした。年齢が近い人でも6・7歳上なので、それだけでも酔水会に慣れるまで時間がかかるかなと思っていた時に、昔から知り合い同士の人達の中に一人だけぽつんといると、『自分がここにいていいのかな』という考えが自然とでてきます。避けられているとか嫌われているというわけではないのですが、時々その場にいて帰りたい、早く終わらないかなと思う回数が多くなり、学校から帰ってプールの時間が近付くてくると、行こうかどうかを迷う事も多くなって時には行かなった時もあります。自分からもそういう状況を変えようとプール以外の活動にも参加しようとは思うのですが、学生の私にとって、そう簡単にはお金のかかる活動には参加できないのが現実です。
先日プール後、飲みに行ったその場で私が普段感じている事を言う機会がありました。その場には一人でしたが、浦和西高校の卒業生がいて聞く耳を持ってくれたのです。こういう機会を自分自身で多くしていく事でこれから酔水会に入ってくる人にもどんどん自分の意見を言える様な状況にしていけたらなと思うと同時に私が普段連絡を取っている仲間達にも酔水会の存在を広めようかなと思っています。     

酔水会の会員制度導入について 

 酔水会を会員制にするかどうかとういう話に関しては正直に言うと今までのやり方と会員制を導入する事で何がどう変わるのかが理解できなかったです。だからその話には参加しなかったのが実状です。酔水会には自分を含め学生が数名いますが、その学生の立場から言える事は、学生は金銭的に限界があり、年間のプール代だけでも苦しい時があるのにそのプール代が黒字になった場合、他の活動に回っていいのかです。できればプール代をもっと安くして他の活動に参加したい人はそれぞれその時にお金を払うことにすればいいと思います。新聞を毎月読んでいて酔水会の活動には参加しない人に、酔水会を辞めてもらうかどうか、という事が問題になりましたが、私が個人的に考えている事は、活動に参加しない人または参加できない人には今後酔水会の活動に参加する意思があるかどうかをきちんとさせることが必要だと思います。
これは、今まで活動に参加しなかった人だけが悪いのではなく、活動に参加しなくても酔水会にいることができる、あるいは酔水新聞を毎月読めるという考えを持たせた酔水会全体にも多少は責任がある様に私は感じています。参加しない人達だけに責任があるわけではないと言うことなので、無理して辞めてもらう必要もないのかなと思います。
会費制導入の話を聞いていて、酔水会ができたきっかけがプールの活動なので『酔水会会員は必ずプールに顔をださなければならない』、来ることができない人は辞めてもらう、という意見が中心と私は受けとめました。これは普段プールに参加できる人がプール後に飲んでいる席で言っている都合のいい意見なのかなとも感じていました。現在はプール以外にも活発に活動する事が多いので別にプールだけにこだわることもないと思います。 
ここからは最近ちょっと気になってる事なのですが、プール以外の活動の中心人物のほとんどがプールの活動に参加している人という事実です。プールに参加する人がやれば打ち合わせも簡単にできるという理由だと思いますが、もう少しプールに参加できない人もお金を払っているのだから活発的になってのいいのではないかと思っています。私は定時制に通っていたので社会人がどれだけ大変かというのは多少理解しているつもりです。これ以上忙しくなりたくないという人もいると思います。プールに来ている人達の行動力はすごいです。でも泳がない人の中にも何かやろうとしている人・何かやって欲しいと発言しようとしている人達も中にはいるかもしれません。プールに来ている人達を見ていて、自分の周りにいる酔水会で知り合った仲間の事も考える事が大事なのではと感じています。
こういう考え方は、いままで知り合った仲間達に学んでYMCAのキャンプにスタッフとして参加させてもらう様になってから更に深まりました。周りにいる仲間達のひとりひとりの事を大事にしなければならないと思っています。この事とお金が絡む会員制の事とは話は違ってくると思いますが、プールに来ない人・参加できない人の意見を聞く回数を増やした方がいいのではないかと思っています。  
     

今後の酔水会の中での自分の立場と役割 


私は、プール以外の活動は三崎キャンプに一度しか参加していません。当然なにかの企画の中心にはなれません。前々からなにかを企画したいとは思っていた時に酔水新聞に『すいすいキッズ』発足の記事が載っていました。YMCAで小学生と一緒にキャンプに行った経験のある私にはぴったりの企画なので平野氏に相談したところ、私に任せると言ってくれたので喜ぶと同時にプレッシャーにもなりました。第一に頭に浮かんだのは、実際に自分が担当になった場合、日帰りか泊まりにするかどうかの問題でした。この二つのどちらかを選択したとしても集合場所と時間、行き先、泊まりの場合は泊まる場所などの問題がでてくるのです。もし、これらの問題が全てクリアできたとしても引率は自分ひとりで大丈夫なのかどうかという問題もでてきます。ひとりの場合は、10人前後は問題はありませんが10人以上になると安全面では自信はありません。経験はたいした事はありませんがYMCAでスタッフとしてキャンプ経験がある以上やはり怪我人はだしたくないのです。まだ完全に私が担当するとは決まってないのですが、もし決定した場合はもっと細かい事にも考え実行しなければならないと思うのでこれからどうなるかは不安でいっぱいです。

今年酔水会で成人式を迎えた私を含む三人に対してある時平野氏は『三人に期待をしている』ような事を言いました。正直に言えばこの時私は平野氏の発言を聞き流していました。どういう意味で期待をしているかをその時は別に考えていなかったのですが、後々考えてみればこの三人はその気になれば酔水会の中心になれるという意味と、もっと活発的になれという意味があったのではないかと気がつきました。確かに今までは、酔水会の中では年下という事もあるので言いたい事を言えない時もありました。そういう事を平野氏は気を使ってくれたのかなと思いました。
これからも酔水会には自分より年下の子が入ってくると思うのでそういう子がどんどん自分に意見を言える様な酔水会にしていけたらなと思っています。(田尻一人)   


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