フルスロットル

冬はバイクの代わりに..
   〜スキーでGを感じる〜

 5年前、年末の寒い中を紀伊半島にバイクでツーリングに行ったことがあった。その当時僕は、スキーなんて全く眼中になかった。学生の頃、先輩に半分無理矢理に苗場と舞子後楽園に連れていかれたことがあった。でも、当時はスキーが大ブームになっていて行き帰りの高速は止まっている時間の方が長い(関越トンネルの通過に真夜中だというのに1時間ちかくかかった)!ゲレンデに着けば今度はリフト待ちの長い行列、その上天気も悪く寒くてしょうがない。更にボーゲンもできない初心者の僕を中級コースに連れていって置いてきぼりにするような失礼な連中と一緒だったので、「もう2度と行くもんか!」と思ったのだった。

 数年前のある週末、会社の仲間とスキーに行った。その時は、みんなそんなに上手くなかったので、コースが簡単なところしか行かなかった。その上、天気がとても良かった。その時のあまりの楽しさ、気持ちよさが今の自分のスキーにのめり込むきっかけになったのだった。気持ちいいという点で、バイクとスキーは似ている点が多いと思う。体で風を切る感覚、カーブした時に体にかかる遠心力、板を自在にコントロールできた時の爽快な気分、......。最近は、整地された急斜面を一気に滑り降りるのが快感になっている。体を思いっきりを内側に傾けて横Gを板のエッジにどんどん荷重していくと、曲がる力に変わっていく...、ん?、バイクと同じじゃないか!、と言いつつバイクはスキーと同じようには上手くできない。なぜならスキーは転んでも怪我はほとんどないけど、バイクは怪我をするし壊れたバイクの修理にお金がかかるからなのだった。

と言うわけで、スキーにすっかりハマってしまった僕は5年前までは見向きもしなかった真っ白なゲレンデに冬の間は毎週立っているのだった。



プロスポーツはお金がかかるけど...
 オリンピック招致で多額の買収が行われていたことが発覚して、つい最近までニュースをにぎわせていた。'84年のロス大会からオリンピックはお金になるイベントに変わった。アマチュアリズムは影を潜め、プロ化がすすんだ。

 モータースポーツ、特に自動車のF1はプロスポーツとして成り立っている。というよりも、プロスポーツとしてしか成り立たないように思う。F1チームの1年間の運営費は数億にもなるので、スポンサー無しではなにもできないのである。

 一方でバイクの世界選手権は、完全にプロになっているとは思えない。特に市販のバイクを改造して行われているスーパーバイク世界選手権はメーカーお抱えのチーム、いわゆるワークスチームは別としてプライベートで参加しているチームがほとんどである。プライベート体制の典型的なチームとして、去年3位表彰台を2度獲得したG・ラビラのチームがある。彼のチームはライダーも含めて3人でその上バイクは1台しかないという、まさしくプライベートを地で行くようなチームだった。ちなみに、彼は3位表彰台の実績を買われて今年からカワサキワークスと契約した。

 日本ではプロスポーツというものが単なる企業の宣伝にしか過ぎないという事をバブルがはじけてから、はっきりと認識させられたと思う。儲からないから止めます、ではいつまで立ってもレベルは向上しないのである。その点でいつも不思議に思うのは、日本よりも景気の良くなさそうに見えるイタリアだ。イタリアのサッカーやバレーボールのプロリーグは世界最強であるし、日本の4大メーカよりも明らかに小さくて倒産の危機に瀕することもある小さなバイクメーカが世界選手権を席捲してしまう。一体どこからあんなお金が出てくるのだろう?きっと国民性もあるのであろうが、いい意味でのお金の無駄遣いができる国民なのだろうと思う。

 プロスポーツはお金がかかる。でも、企業の利益ばかりが優先して才能が埋もれてしまうことにならないか心配になる。スポーツの世界は資本主義そのものだから、強いものにお金が集まるような不平等なことになるのは仕方がないことだ。でも、せめてスタートラインだけは平等であって欲しいと思う。

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