その2  大和田 彰一

  早いもので、西表のシーカヤックツアーから2ヶ月弱がっ経ってしまいましたが、微かに残る肌の黒さと、拾ってきた星の砂を眺めつつ、記憶を蘇らせて行きたいと思います。

 東京から約2000キロ、半日掛けて、ようやく目的地の西表入り。港で先発隊と西表の太陽と青空に出向えてもらい、今晩の宿泊地、星砂キャンプ場へ。
 初めて沖縄方面の旅行でもあるが、普通の観光旅行とも違って楽しみである。

  シーカヤックに関しては、ちょっとの不安を抱きつつ、また、フィッシャーな自分としては、釣りでは未知なる大物への期待を抱きつつ。でも、実際にそんなのに出会ったらちょっと大変。って、程度のタックルしか用意して行かなかったので。果たして結果は如何に。

 さて、一休みして送っておいたキャンプ道具を開き、今夜の寝床の準備を済ませ、夕飯までは自由時間。目の前の浜辺を散策しに出て見る。星砂という地名であることからも解るように、サンドベージュの砂浜の砂には無数の星の砂。実際には、探さないと見つからないものかと思っていたのだが、そんな事はなく、ちょっと掬えば幾らでも見て取れる。ただ、濡れた足で歩くと、砂が纏わりついてチクチクして痛いのが難点である。
 星の砂と言えば、小柳ルミ子の「なちゃら、なんちゃら、星の砂ァ〜」って歌を思い出してしまったのは自分だけだろうか?

 しばらくすると、ダイバーズの面々が疲れた顔をして戻って来る。カヌーツアーは思いのほか大変だったようで、津田さんは、「明日からのツアーはもういいや」などと言っているとこを見ると相当大変だったのだろう。そんなことを聞くと、果たして自分は明日からのツアーは大丈夫なのだろうかと少々不安になる。
 今日、西表を発つダイバーズの面々とは軽く挨拶や会話を交す程度で、ゆっくりとする間もなく、慌しく準備を済ませ別れたのであった。

 さて、ツアーはと言えば、伊藤さんと仲村さんが、明日からの予定を確認していると、仲村さんが5日間の予定を4日間かと勘違いしていて、「あれ、そうだったけ?」と言っている横から、池上君が突っ込みを入れる一幕もあったりしたものの、無事(?)予定通りと言うことで。
 そんなこんなで、遅い夕暮れを迎え、キャンプ場に併設されている食堂で沈む夕日を見ながらの夕飯。ツアーに出たらしばらくお預けになるであろうビールで乾杯をしてツアーの無事を祈るのであったが…。
 食後は、本場のハッピーアワーを囲んでの語らいとなり、空を見上げれば今度は空一面の夏の星空。あれが何座で、あっちは何座、あの星は何とかと言う名の星でと、正座、じゃなくて、星座の鑑賞会が始まる。これが基でか、毎晩、星を見ては、星の名前の復習会が行なわれたのであった。

 夜も更けて、昼間の暑さとは裏腹に、涼しくて快適である。次第に一人、また、一人と、明日に備えて寝床に向かうのであったが、この先、ひとつ屋根、いや、タープの下で過ごすことになる、津田さんと坂本君は、病院繋がりで話しが盛り上がっていたようで、夜遅くまでのお喋りに伊藤さんの一喝が入るのであった。以降のツアー中、五月蝿いから寝床はちょっと離したとこにしてよ。などといわれてしまう2人なのであった。
 寝静まって静かになったかと思えば、今度は何処からともなく、スターウォーズのダースベータが登場する場面で流れる曲の鼻歌がしてきたらしい(このころには、自分は熟睡して聞きそこなってしまったのだが)。それは隣で寝ている村瀬から発せられたものだったらしく、それに気付いて起きた面々に寄って、翌朝だけでなく、ことある事に語られていた。
 夜の涼しさは、時間が過ぎるに連れて寒さへと。バスタオル一枚腹にかけて寝ていたものの耐え切れず、用意して行ったシーツ地の寝袋に潜り込むことになるのだがそれでも寒い。こんなに涼しくなるとは誰も予想もしてなく、寒さを凌ぐ用意もないままで、ツアー中の夜は寒くて参りました。
 寒さもあって、夜明け前には目を覚ます。時計を見れば6時前、でも辺りは、あれ?って思うくらいにまだ暗い。寝床を抜け出して朝日でも見て来ようかと浜辺へ朝の散歩に。6時30分を過ぎたころにようやく水平線に架かる雲の上に朝日が顔を出す。さすがに日本の西の果て。これで東京などと同じ時間なのだなと思うと、ちょっと不思議である。

 さて、だいぶ前置きも長くなってしまい、このままでは、臼井さん執筆の「沖縄・おきなわ・オキナワ三昧紀行」のような長編になってしまいそうなので、ここらで本題のツアー編へと駒を進めて行くこととしましょう。

 では、今回の参加メンバー。伊藤さん、臼井さん、平野さん、畔上、村瀬、坂本君、津田さん、そして、酔水会に勧誘中の加藤さん。に、自分の9名。ガイドはお馴染み、カヤックセンターの仲村さん、池上君、に、この夏から見習の一ノ瀬君で総勢12名。
 キャンプサイトの撤収を済ませ、カヤックを浜へまで運び、荷物を積み込んで出発の準備完了。
 伊藤さん・仲村さん、平野さん・臼井さん、村瀬・畔上、津田さん・池上君、坂本君・一ノ瀬君、そして、自分は加藤さんとペアを組んで出発! 星砂の浜を後にして、西に進路を取る。ちょっとの間浅瀬を進む、その海の中に目をやると、鮮やかなコバルトブルーのスズメダイがあちらこちらで泳いでいるのが見え綺麗である。人が立てるくらいの浅瀬から、リーフエッジを一度超えると、一気に深さが増し、深い青をした海原へと漕ぎ出して行くのであった。

 リーフエッジを越える時、初めてリーフエッジ沿いをシュノーケリングした時のことを思い出す。その時は、足の付かない不安と引き摺り混まれそうな深さにエッジの外へと出て行くのを躊躇したものだが、今回はカヤックの上、「お〜、深け〜」って感じで見下ろす。
 沖へ出ると、2mくらいのウネリ、谷間に入ると周りの艇が見えないほどである。ウネリもあり、こんな中、カヤックで大丈夫なのだろうかと思ったが、荷物の重さと自分の重さ(?)もあってか、思いのほか安定していて、、乗り心地もなかなか悪くない。ただ、胸から下は、艇内に水が入らないように乗り口をカバーしているので、腰から下は蒸れ蒸れでちょっと気持ちが悪い。
 一方、パドリングはといえば、慣れない運動で、結構キツイ! と思ったのは、始めは腕だけで漕いでいてしまったようで、後に乗る加藤さんから、あれこれアドバイスをしてもらい、徐々に慣れては行ったものの、ヤッパ、1日それなりの距離を漕ぐのはキツイっすね。時折通るモーターボートがちょっと羨ましかったっす。これではパドラーズへの道はまだまだ遠いか。
 昼近くになり、一先ず岸に上がって休憩しようかということになると、渾身力を出して我先にと岸を目指すのであった。岸に着いてカヤックから降りると、足元がヘロヘロって感じで、カヤックを漕ぐことは、全身運動なのだなと実感する。そして、ライフベストを付けたまま海に飛び込みクールダウン。ライフベストを付けたまま水に入ったことがなかったので、その効果をこれまた実感。身体の力を抜いて、波間を漂っているのは気持ちが良い。が、そんなリラックスムードもハブクラゲの出現によって水をさされてしまう。

 軽い食事を摂って、一頻り休憩したら、今夜の宿泊地を求めて出発。パドルに力を込める。1時間ほど漕いで、目的地の浜が見えてきた。が、無人島のはずなのにそこには男の人影が。人の身なりまで識別出来るほど近づいてはないが、「あの人、なんか変わった色したパンツ履いてない?」「えっ、パンツかな? 履いないんじゃない?」などと会話を交わしながら進むと、島の奥へと消えてしまったのであった。浜に上がってしばらくすると、その男は長めのTシャツを着て様子を覗いに来たが、やはりさっきはパンツを履いてなかったのだなということがその身なりから確認出来るのであった。
 一休みして、寝床の準備を済ますと、さあ、ようやくお待ちかねのフィッシングタイム。カヤックを漕ぎながら海の様子を見てきた感じでは、ちょっと場所的には期待薄かなと。でも、何が出るかは解らないので始めてみたが、やはりという感じで、この日は竿を振るだけで終わってしまう。明日以降に期待である。
 食事を終え、辺りが暗くなり星が出てくると、今夜も星の鑑賞会の始まりである。この浜からは蠍座が目の前に見える、なかなかのロケーションである。そして、今晩もまたちょっと肌寒い夜なのであった。

 さて、翌朝。辺りが明るくなるころには目を覚ます。朝夕の釣りのゴールデンタイムを釣らずしては居られないととばかりに竿を振り始める。場所を代えながら竿を振りつづけると、幸運な事に魚がヒット! 魚の引きを楽しみつつも、これを逃しちゃならないと慎重に魚を寄せてくる。上がって来たのは20cmほどのコトヒキである。この魚はなかなか美味しいよと聞いていたので、早速、自慢げに皆の所へ魚を持って戻る。じゃとばかりに、加藤さんが魚を捌いてくれて、刺身となり、あっ、と言う間に皆の胃の中に滑り込んで行った。魚を捌いている間に、村瀬も魚(ダツ)を釣ったようであるが、「それ、美味しくないから」とあっさりと逃がされてしまった。結局、後にも先にも、今回のツアー中に釣れたのは、この一匹だけなのでした。ガックシ。

 なんだか、あれこれと長くなってしまって、なかなか話しが先に進みませんが、この辺で次にバトンタッチとしましょうか。
 さて、次回は運命(?)の2日目。村瀬から直々に伝えてもらいましょうか。



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