第三回 竜一忌

 今年のテーマは「上野英信と松下竜一」


 松下竜一の作品から彼の生き方に触れる竜一忌も今年で3年目を迎えました。今年は松下さんの文学の師である上野英信さんとの関わりです。 上野さんの一人息子・朱さんは講演の中で「父はとにかく強い人になれでした。それは自分よりもっと過酷な状況におかれている人のために闘うには、強くあらねばならないからだ」という理由だったそうです。上野さんと松下さんの共通点は、この闘うやさしさだと思いました。
 今年も企画の内容を楽しみに、100人近い方々が全国から集まって驚かされました。 第一回のテーマは「豆腐屋の四季の頃」、第二回は「作家宣言」でした。私が松下さんと出会ったのは72年、「中津公害学習教室」(中津の自然を守る会の中の青年部学習会)の中でした。都会志向だった私は、松下さんから自分の町の自然こそが最大の宝物であることを教わりました。大学4年で肺結核となり、就職できずに失意のどん底で東京から帰省した私にとっては、この町で生きる希望の光を示してくれた人生の師、それが松下竜一さんです。「この町の変化に疎い、住みよい、安定した静かな沈滞を愛する。ゆたかさとは何をもってゆたかと感じるかの問題。家の中に物が 溢れているからといってゆ たかということにはなるまい。たとえ中央の半分の所得でも私達は美しい空の下に住み、遠浅の海で貝堀も楽しめる。そんな豊かな生き方があるだろうか。誰かの健康を害してしか成りたたぬ文化生活であるならば、その文化生活をこそ問い直 さねばならぬ」
 これが34年前の反公害住民の論理・松下竜一の「暗闇の思想」です。今はスローライフといういい方で全国に広がり、夏至には環境省もすすめるキャンドルナイトとなっています。すぐれた先見性は、いつも根源的に考える人だったからこそでしょう。
 川崎市の大気汚染被害を扱った児童小説『いつか虹をあおぎたい』が中国語(台湾)で出版されました。『豆腐屋の四季』のハングル版も近く出版されることになっています。故人となっても、著書が海外で翻訳出版され、大活躍しています。