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太陽光発電システムの雷保護対策

本稿は富士電機テクニカ(株)さんのホームページ情報を基に、加えて(株)雷保護テック・タケタニさんの情報を自宅の設置状況を加味して検討したものである。

1. 雷の種類
(1).直撃雷
 日本における落雷の確率は年間雷雨日数分布図(IKLマップ:Isokeraunic Level Map)にて見ることが出来る。

これによると、関東北部、岐阜県、琵琶湖周辺、日本海沿岸、九州南部などで、年間35日におよぶところがある。

ある地域への落雷数を示す値としては、大地雷撃密度(回/平方キロメートル/年)を用い
大地雷撃密度(Ng)=0.1×年間雷雨日数(Td)
(注)Ng:1年間に、1平方キロメートルに落雷する回数。
で表せる。

ここで 落雷が多めの値 IKL;35 を使って計算すると

  Ng=0.1×35=3.5(回)となる。
すなわち我が横浜市の1平方キロメートルに落雷する回数
は3.5回程度を想定していれば間違いないことが判る。

 ここで太陽光パネルに落雷する回数を等価受雷面積(受雷部の高さを考慮して補正した面積)を計算すると
Ae=L・W+6H・(L+W)+9πH平方
  =1.32×1.0+6×5×(1.32+1.0)+9×3.14×5×5 
  =809.1平方メートル
     (L,W;太陽光パネル縦横、H;設置高さ)
従って 落雷回数は
  3.5×809.1×0.000001=0.00283185(回)
すなわち 353年に1回の確率で直撃雷が落ちることになる。

この確率から直撃雷は考慮しないこととする。
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(2). 誘導雷
 これは難物で 一説によると数キロ先から誘導雷はやってくるとのこと。雷が建物や近所の配電線に落ちると、直接落雷していない送電線や電話線に、瞬間的に500〜1000アンペアにも達する大きな電流が発生し、これがアースや電線、電話線などを伝わって建物の中に進入てくる。
 落雷回数は数キロの範囲では年に数回あるので、これに伴う誘導雷の発生はかなりの頻度でおこることになる。
従ってこの誘導雷の防御が必要である。

 落雷による誘導雷サージは、落雷箇所周辺の金属部分に発生します。(左図参照)

 電源線/信号線/通信線/接地線のように抵抗の低い良導体(銅線)に発生したサージは、進行波となって遠方の電気設備へ侵入して行き(津波が押し寄せていくような感じ)、更に「電気機器」へと侵入して行きます。(サージは、ガス管や水道管にも発生します。

 今回、設備投資額の大きい太陽光発電システムの雷保護対策をメインに検討する。

我が家ではガス管無し、通信線はFTTHのため④も無し。
②の通信線はNTTの保安器で一応サージ対策をしている。

従って問題は電源線からの誘導雷サージである。これを入口にSPD(Surge Protective Device) / アレスタ
を挿入して家庭内機器をバイパスさせ、電子機器を誘導雷サージによる破損から保護する。

誘導雷サージの説明
1 落雷発生時、雷電流(2kA~200kA程度)が大地に放流される。
2 この空中を流れる雷電流により、近傍にあるケーブル類には数kV~20kV程度の誘導雷サージが発生する。
3 また、同時に大地に放流された雷電流により、大地の電位が上昇し、近傍の大地に接地している電気設備は、その接地部分の電位上昇の結果、電位上昇によるサージ(過電圧)が設備の接地部分から侵入することになる。
4 これらのサージが、個別または複合化して、電気(電子)設備にケーブル及び接地等から侵入することになる。
5 このように落雷時には、設備へケーブルおよび接地からサージ(過電圧)が侵入し、電気設備(機器)の絶縁を破壊し、損傷させることになる。
なお、これらの過電圧は、いずれもケーブルと接地間の電圧(対地間電圧)である。
6 侵入したサージ(過電圧)に対して、ケーブルと接地間に接続したアレスタは、サージ侵入時のみインピーダンスを小さくして、過電圧をサージ電流として通過させるとともに、アレスタ端子間の電圧をある一定の電圧(機器の絶縁破壊を起こさないレベルの電圧)までに制限する。
(侵入サージの侵入方向には関係無し)












雷サージの説明

2 雷対策
家庭用の雷対策として誘導雷を前提に考える。

 我が家では上記の通り、アンテナは存在しないのでこの方面からのサージは考えなくて良い。通信線に関してもNTTの FTTH の取り込み口に保安器(アレスタ)が取り付けられているのでこれも良しとする。

 ところが配電系に関しては 日本では主に電力会社の柱状高圧配電線に対策が施され、低圧配電線では通常雷対策はとられていない。

 そこで100V/200Vの低圧配電線に対して雷対策を施すことにする。

電源線からのサージに対する保護素子については

a) 線間にサージ保護素子を挿入する(SPD1)
商用電源の線間に印加するサージを抑圧させることで通信機器の電源回路を保護する。
  この場合のサージ流出経路は商用電源の線間をバイパスする。

b) 接地―商用電源線間に保護素子を挿入する(SPD2) (クラスⅠ又はクラス0Ⅰ機器) 
  この場合は通信機器の電源回路を接地へサージをバイパスする。

このサージ保護素子のガードすべき過電圧は
 "規格では商用電源線から侵入する過電圧は定格100V においてはコンセントで1.5 kV 以下と定められている"
ので 機器製造メーカーは少なくともこの能力を持っているはずである。

 従ってサージ保護素子はこの1.5KV以上の過電圧を 入り口にて各種電子機器からバイバスしてアースに逃がす性能を有すればよい。


この電子機器の代表として太陽光発電システムの場合で詳細検討する。

 誘導雷は上記したように柱状変圧器を介して電源線から屋内分電盤、太陽光発電システムへと流れる。

システムを保護するために変圧器の後に交流用SPD(クラスⅡ)を、さらには高価な太陽光パネル、パワーコンディショナーをガードするために直流用SPD(クラスⅡ)を設置するのが望ましい。

なお、今回採用したS社製太陽光発電システムにはパワーコンディショナーのAC側、太陽電池アレイのDC側ともに470Vの保護素子が挿入されている。

またそれぞれのアースはしっかりと等電位ボンディングする必要がある。 

 
 従って、電力会社のメーターを通った後で 交流用SPDを挿入することにより、自宅内電子機器のすべてについて雷サージを保護することが望ましい。


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