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KNIGHT OF ROUNDS ホールの中央にひかれている長いレッドカーペット、壇上ににあがるための長い段、正面には大きなブリタニアの国旗が飾ってある。ホール内を見渡せば、これ見よがしに着飾っている貴族の群れ。ルルーシュはこれから始まる式典のことを思うと無意識にため息が出そうになった。 ナイトオブラウンズの叙任式に出るのはこれで三回目だった。 一回目はナイトオブスリー、ジノ・ヴァインベルグ。 二回目はナイトオブトゥエルブ、モニカ・クルシェフスキー。 そして今日、これで三回目だ。 こんな式典、本当はボイコットしてもよかった。出席なんてしたくもなかった。後ろ盾もなく皇位継承件も低い皇子だ、今までだったらどうせ出たところで中央にいる人間の姿が肉眼ではよく見えないぐらい、遠くに配置されていたはずだ。実際、一回目と二回目の時はそうだった。何がなんだかわからないうちに式典が始まって皇帝の演説が聞こえたと思ったらいつの間にか終わっていた。それなのに……。ルルーシュは奥歯を噛み締めた。 何で自分は最前列にいなければならないんだ。 こんなの出たくもない。欠席してやりたい。だが感情に対して冷静な理性がそれとは反対のことを訴えている。そうだわかっている。そんなことができないことは。厳しい状況下の中、自分の後見人になってくれたシュナイゼル兄上に恥をかかすわけにはいかない。ここで、兄上の隣で己は我慢して見なければならない。 スザクがナイトオブラウンズになるところを。 帝国最強の十二騎士の一人、ナイトオブセブンになることろを。 皇帝の騎士になるところを。 それを間近で目を逸らすことも許されず、ただじっと見届けなければならない。 会場内に微かなざわめきが満ちた。どうやらスザクが現れたようだった。ルルーシュは顔を中央に向けスザクが歩いてくるほうに視線を投げた。白いナイトオブラウンズの軍服、スザクのために選ばれた青いラウンズのマントは、光の加減で時折紫が混ざったような青に変化する。それが憎たらしいほどスザクに似合っていて、自然に眉間に皴がよる。 無事に皇帝による叙任式が終わり、壇上にいるスザクの視線がルルーシュに向かい、一瞬優しい笑顔が浮かんだ。いかにも、という笑顔ではない。口角をほんのちょっと上げただけの微かな笑みだ。いつも自分を見守ってくれていたときの柔らかい笑みだ。そんなスザクにルルーシュは同じような笑みを返すことはどうしてもできなかった。それどころか、恨みがましい表情を出さないようにするのが精一杯だった。 本当なら、あれは自分のものなのに。 あと数年で俺のものになるはずだったのに。 自分が公務に就くと同時にあれを自分の騎士にするつもりだったのに。 そんなことを思いながら、ルルーシュは一年前にテロによって亡くなった母親のことを思い出していた。彼女は確かにルルーシュに言ったのだ。 『いずれ時期がきたら「あれ」をあなたにあげるわ』 『きっと「あれ」はあなたを命がけて守ってくれるでしょうね』 『もうちょっと待ってね。あなたに相応しくなるまで、私がしっかり鍛えるから』 『それまでもうちょっと、待っててね』 何でだ。あれは俺のものだったはずなのに。 どうしてそんなところにいるんだ、スザク。 ルルーシュは俯いていた顔を上げて壇上を見上げた。そこにはスザクを後ろに従えた神聖ブリタニア帝国代九十八代皇帝シャルル・ジ・ブリタニアがいつも通り力強い演説をしていた。 今までルルーシュは、皇帝である父親に何の感情も抱いたことはなかった。ただ自分の遺伝子上の親だけであって、愛情も憎しみも何もなかった。だが、ルルーシュは今日初めて感情を抱いた。ルルーシュの好きなものを取り上げ己のものにすることができる皇帝という存在に、心の奥底から嫉妬したのだ。 あれは俺のものだ。 絶対に奪い返してやる。 ルルーシュは歯を食いしばった。 手を握り締め皮膚に食い込む爪の痛さで正気を保ち、体中に噴出す嫉妬を自制した。 いつかきっと奪い返してやる、そう決意し、今はだた壇上のスザクと皇帝を見つめたのだった。 END [2010/02/27] |