ZRX1200 新車の納車整備(足回り編の一部)
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と〜っても乗りやすいリッターバイク ZRX1200 が今回の教材です。作業内容は「走り始める前にやっとかないといけない納車整備
をする」の足回り編のごく一部です。
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入庫状態です。とはいっても新車、ぴっかぴかです。
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フロントホイルを画像のように外して、アクスルシャフト・ナット・ホイルカラー・メーターギア・キャリパーボルト・フロントフォーク下端
のピンチボルトなど全部取り外します。特にアクスルシャフト(ナット)はかっちかっちに締まっているので、このような納車整備まで
しない場合でも、ホイルベアリングやディスタンスカラーを傷めてしまわないうちに、一度緩めておいた方がいいでしょう。
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画像でもわかりますね、グリスっ気がほとんどないのが。コストダウンはわかりますが、もう少し何とかならないものかなあといつも
思います。これではすぐに錆びてしまいます。
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アクスルシャフト・ナット・ボルトなど全部掃除・脱脂して、グリス類を塗っていきます。スムーズにスライドして、サビも防ぎたいところ
には赤い方のグリス、ネジ山部分にはスレッドコンパウンド(茶色)を今回は使いました。
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ネジ山部分にはスレッドコンパウンドを塗って、かじりや固着防止と同時に、潤滑することで不要な抵抗を減らして、締め付けトルク
の適正化を狙います。当然サビ防止にもなります。
アクスルシャフトの a の部分が、フロントフォークアウターパイプのクランプ部の中で自由にスライドしないと、ホイルのセンターを
出してフロントエンドをちゃんと組むことができないので、ここにもグリスを塗っておきます。反対側でクランプするナットの外周にも
同じことをします。整備済みの車両でも、ここにはグリスっ気がないことがとても多いので、忘れないようにしましょう。
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フロントフォークのアウターパイプがアクスルシャフトをクランプする
a の部分にも、グリスを塗ります。これで、アクスルシャフトは
中で自由にスライドするでしょう。ホイルベアリングやダストシールにもグリスを塗って、潤滑と防水を狙います。
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この機種では、フロントアクスルシャフトは、ボルト・ナットを締める形でホイル・メーターギア・ホイルカラーと一体になって、フロント
フォークアウターパイプのクランプ部の中で左右にスライドして、ホイルとディスクを最適の位置にもってくる調整ができるような構造
になっています。このアクスルシャフトフルフローティングタイプは、きちんと組んでやるとお見事にホイルはくるくる回って、ブレーキ
はきゅっと効いて、サスはスコッとストロークして、全てに抵抗感がなくなって気持ちいいことこの上ないですが、ちょっとでも組み方
が悪いと全部がぐだぐだになって、何もかも引きずりまくりの最悪なことになります。両刃の剣というやつですな。
ホイル・ディスク位置が決まったら、a のピンチボルトを締めて固定します。新車ではまあないですが、フォークが曲がっていたり、
フォークブラケットがひねっていたりすると、当然きちんと組むことはできません。トップブリッジやアンダーブラケットのクランプ部の
ピンチボルトの締め方だけでも、フォークアウターパイプの左右クランプ部間の距離はかなり変わります。それだけでもディスクは
引きずったりします。フロントエンドをきちんと組むには、こういったもの全部を系統立てて組んでいくことが必要なので、それなりの
習熟度は必要かもしれません。
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リア回りも同じように外して、フロント回りと同じ作業をして組み直します。やっぱりほとんどグリスっ気がないです。
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リアホイルの整列は、離れたところから見て、リアタイヤのセンターの延長線が車体中央からステアリングステムナットのセンター
を通っていれば正解です。駆動されたリアホイルが車体のセンターをまっすぐ押して、車体はぶれずにまっすぐ前に進む、といった
感覚です。もっと下から覗き込んで前後ホイルの整列を見るという方法や、まっすぐな長い棒をリアタイヤの側面に当ててフロント
タイヤの横まで持ってきて、前後ホイルの整列を見るという方法などもあります。どんな方法にしても、チェーン引き調整のエキセン
トリックカラーの目盛りを左右同じ位置に合わせるということをしてはいけません。(新車以外は)
走れば走るほど、スイングアームは、チェーンのある入力側のアームが上に曲がっていきます。あたりまえです、馬何十頭分という
とんでもない力で、リアスプロケットの「上側」をチェーンが加速のたびに引っ張っているんですから。当然このアームは前に縮んで
もいきます。いわゆる経年変化というやつです。片方のアームが多少曲がったり縮んだりしても、リアホイルがまっすぐ進むように
調整するためにあるのがエキセントリックカラー(=チェーン引き調整機構)で、そのときの左右の位置のズレの目安になるのが、
カラーにある目盛りだと考えなくてはいけません。
このエキセントリックカラータイプは、一度きちんと調整すると、スイングアームの経年変化が再び進むまでは、アクスルシャフトを
緩めることなしにチェーン引き調整ができる便利さがありますが、カラーを動かしたときの車高変化が少し大きいのが難点といえば
難点ですかね。通常、問題にはならんと思いますが。
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前後ホイル回り以外にも、いろんなところを分解・グリスアップしてきちんと組み直すということをやりますが、絶対にやらないといけ
ないのが、このスイングアームピボットシャフトです。画像でもわかると思いますが、ここはまったくといっていいほど、グリスっ気が
ないことがとても多いです。なぜなんでしょうね?ホイルのアクスルシャフトなどと違って、よほどのことがない限り、ここは分解する
ことがないので、一度水が浸入するとまず乾くことなく中をサッビサビにしてくれます。サビで固着して抜けなくなったピボットシャフト
はと〜っても多いので、新車のうちに絶対に手を打っておくべきです。
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