地裁八王子支部(提供:亜細亜大学法学部町村ゼミ生による写真)


追悼・辻内鏡人 1954-2000

 辻内さん傷害致死事件 裁判の記録

東京地裁八王子支部

初公判(2001.2.26)
第2回(2001.3.14)  
第3回(2001.5.16)  
第4回(2001.5.23)  
第5回(2001.6.7)  
第6回(2001.6.27)  
第7回(2001.8.22)  
第8回(2001.9.12)  
第9回(2001.10.17)  
第10回(2001.11.14)  
第11回(2001.12.5)  
第12回(2001.12.12) 論告求刑・最終弁論  
第13回公判(2002.1.21)  判決 懲役7年

控訴審(日程未定)

 

2001年9月12日 第8回公判

地裁八王子支部305号法廷 13時34分開廷

冒頭、弁護人が実況検分合意書面を提出した。立証主旨は、現場の見通し状況について。被告が被害者を発見したとする位置から5カ所で、前照灯をつけたとき、つけないときなどで照度を測定。結果は0.36ルクスから3.25ルクスとのこと。


次に、検事は小坂みつとし証人(平成13年6月20日に警察が行った実況検分調書の作成担当者)を申請。小坂証人の出廷に伴い、本日、証言予定の松田証人(被告からの110番通報を受信した警察官)は一時、退廷した。


小坂証人は宣誓後、検事の質問に答えておおむね次の通り証言した。同検分では、明暗の状況について、@みふじ幼稚園の前の停車地点から自転車が見えるか、A幾通りかの経路を被害者が通った場合の見え方、B衝突地点およびその直前の明るさを確認した。検分は午後8時から9時30分まで、周囲の家にも電気を消してもらい完全に暗くなった状態で行った。被害者の自転車は壊れていて乗れなかったので、サドルの横に人間(同行した警察官)を立たせるかたちで視認の状態を再現した。その結果どの地点からも被害者がよく見え、最大30メートル離れたところでも、自転車後部の反射板もあってよく確認できたこと、スポーツ自転車独特のドロップハンドルであったことも区別できた。

これに対して反対尋問に立った弁護人は、サドルの横に立たせた人間はスポーツ車に通常乗るように屈んではおらず、実際に被害者が乗っていた状態で検分したわけではないこと、着衣の色などが分かるかどうかも検分していないことを確認しようとした。
次に右陪席判事(男性)が補充質問を行い、検分の目的と主旨(みふじ幼稚園前の停止位置から自転車がどう見えるか、衝突地点の明るさ、走行路を変えたときどう見えるかの検分であったこと)を再確認し、検分のときに傷害事件であることを証人が知っていたこと、被告の弁明内容もある程度知っていたことを確認した。証人はさらに、被告が被害者を発見したと主張する衝突地点の5.5メートル手前の地点よりも前で、被告が十分に被害者を視認し得ると述べた。

この証言に伴い、検事は刑事訴訟法323条3項にもとづき、同日の実況検分調を甲35号証として採用するように申請した。弁護人は異議を申し立てたが、裁判長は異議を却下して、甲35号証を採用した。

次に、弁護人は松田よう証人(事件当夜110番を受信した警視庁通信司令本部勤務の警察官)を申請した。なお、110番の聴取記録(テープ)については、通常、3、4日で消去され保存されていないとの警視庁からの回答が報告された。

松田証人は宣誓後、弁護人の質問に答えておおむね次のように証言した。事件当日、12月4日は「泊まり」勤務(午後3時から翌朝10時まで)で、通常、100件から150件を受信する。当該事件については、受信の時点で電話を受けながら受理用紙に記載したほかに、事件の翌朝、小金井署より当該事件についての連絡があったので個人的なメモを作成し、12月16日に上司に110番聴取状況報告書の作成を命じられたので、受理用紙、メモと記憶を頼りにして報告書を作成、この際にメモをシュレッダーにかけたと述べた。さらに松田証人は、事件当時の受信の状況(8時22分から26分まで)について、「男に追われている」というようなことを被告が通報したが、すぐにノイズのような雑音が入り、切断されたような状態になったので何度も再信ボタン(自動的にコールバックする機能をもつ)を押して呼びかけたが応答がなく呼びかけ続けたこと、しばらくしてつながったときに、被告が追いかけてきたので「ぶつかった」というようなことを言っていたと報告書には記入したが、今は詳細について記憶がないと述べた。また被告は当時、自分のいる場所をはっきり言えず、「国立市光町」と誤って言っていたこと、「光町」という地名についても誰かに場所を聞いている様子だったこと、これを聞いた松田証人が場所を探して無線指令を要請したこと、記録にある8時27分は、無線指令の終了時刻であることを証言した。

このあと、弁護側の要請により被告の母親の証人尋問が行われる予定だったが、これに先立って被告人に対する尋問を行う必要があると弁護人が申請し、なおかつ被告が体調不良を訴えたために、今回の公判はここで終了とすることになった。閉廷は午後3時40分頃。
次回公判は10月17日(水曜日)、午後1時30分から、被告人および被告人の母親に対する尋問が行われることになった。また、次次回公判は11月14日(水曜日)、午後1時30分から行われることになった。