地裁八王子支部(提供:亜細亜大学法学部町村ゼミ生による写真)


追悼・辻内鏡人 1954-2000

 辻内さん傷害致死事件 裁判の記録

東京地裁八王子支部

初公判(2001.2.26)
第2回(2001.3.14)  
第3回(2001.5.16)  
第4回(2001.5.23)  
第5回(2001.6.7)  
第6回(2001.6.27)  
第7回(2001.8.22)  
第8回(2001.9.12)  
第9回(2001.10.17)  
第10回(2001.11.14)  
第11回(2001.12.5)  
第12回(2001.12.12) 論告求刑・最終弁論  
第13回公判(2002.1.21)  判決 懲役7年

控訴審(日程未定)

2001年8月22日 第7回公判

(今回も、鈴木茂さんを中心に作成した詳細な報告をもとに、中野が概略を作成しました)

 8月22日、午後1時35分より、台風のなか、東京地方裁判所八王子支部刑事1部1係305号法廷において、辻内鏡人さん傷害致死事件の第6回公判が開かれた。


 今回は主に、左陪席裁判官(女性)、右陪席裁判官(男性)、裁判長の順で、被告人質問が行われた。まず、被告が取り調べ調書では故意を認めながら、裁判では否認している点について詳しく糺した左陪席裁判官に対して、被告人は、弁護人に対しても故意を否認しなかったことについては、自分が共産党員であり盗聴器もあるので怖くて言えなかったこと、「わざとぶつけた」と言い出したのは津田警部補(故人)であり、自分は、言うことを聞かないとひどい目に会うと思ったので、しぶしぶ、いやいやの思いで認めのだと主張した。


  次に、右陪席裁判官は、被告が事件現場に至る帰宅経路についてはよく記憶して話しているのに、事件直前の状況について記憶が曖昧な点を糺した。これに対して被告は、携帯電話の機種交換で一日三回くらい往復するが、当日も相模原から通常の帰宅経路を通っていたところ、右側からすごい剣幕で窓ガラスをたたかれたこと、顔はよく見ておらず、その後「大通りに出たかった」ので右折を繰り返したが、混乱していて自転車の男は視野になく、みふじ幼稚園前で対向車とお見合い状態になったという目撃証言についても「全然記憶がない」ことなどを主張した。  さらに裁判長が、警察での取り調べ調書に署名した経緯について確認したのに対して、被告は、おおむね従来の主張を繰り返し、どういう容疑での現行犯逮捕なのか分からなかったこと、最初の日については覚えておらず、2日目の取調べで「わざとぶつけた」と認めたこと、自分が犯した罪は過失であり普通の交通事故だと思っていたこと、津田警部補(故人)とのやり取りについては、最初は「前の方からやってきて、自転車にぶつかったのか」と聞かれ、「そうでない、後ろからぶつかった」といったところ「お前がわざとぶつけたんじゃないか」と言われ、そうじゃないと言ったが、津田警部補は現場検証を勝手に始めてしまったこと、自分の言い分については裁判の直前(1月末から2月半ばにかけて)決心して言うことにした、などと述べた。


  この後、検事が証拠採用を申請、甲31-33号(被害者が生前持っていた地図で、任意提出されてものなど)、34号(110番通報の事後報告書)などが採用され、35号の実況検分調書(弁護人不同意)については、検察官と弁護人で合意書面を作るよう裁判長から指示があった。この際、検事が読み上げた34号証の内容の概要は以下の通り。「12月4日、午後8時21分から26分。車を乱暴にたたく人がいる、なんだか変な男が追いかけてくる、など。途中で切れる。所番地を尋ねると、国立市・・・光町1丁目・・・追っかけて(きて)ぶつかったんです・・・至急救急車をお願いします」。


  一方、弁護人は110番受理者の松田警察官を証人として申請するとともに、110番記録(録音テープ)の証拠開示を申請した。存在しないとの検察の回答に対して、最初から録音されていなかったのか、後からなくなったのか。消去・廃棄したのかを文書で出してもらいたいと述べ、裁判所が職権で開示させないなら、異議申し立てをすると述べた。裁判長はこれを却下した。さらに弁護人は、被告人の供述調書に信用性がないという証拠物を検討中であると述べたうえで、母親を再度、証人と申請した。立証主旨について弁護人が情状一般で、被害弁償と遺族との交渉、本人の生活状況などについて質問すると述べたのに対して、裁判長は、傷害致死について裁判で争っている以上情状を聞くことはできない、現在の訴因である限りは「交通事故を起こしてすいませんと百万遍言ったって、情状酌量にはなりません」と述べた。
最後に裁判官による補足の被告人質問が行われ、弁護人に「不注意でぶつけた」と打ち明けたのが、第1回公判の前、おそらく1月半ばから2月にかけてであったこと、それまでは弁護人にも警察と同じことを言っていたことを確認した。次回は、9月12日午後1時30分から、同じ法廷で、松田警察官および母親の証人尋問が行われることになった。