地裁八王子支部(提供:亜細亜大学法学部町村ゼミ生による写真)


追悼・辻内鏡人 1954-2000

 辻内さん傷害致死事件 裁判の記録

東京地裁八王子支部

初公判(2001.2.26)
第2回(2001.3.14)  
第3回(2001.5.16)  
第4回(2001.5.23)  
第5回(2001.6.7)  
第6回(2001.6.27)  
第7回(2001.8.22)  
第8回(2001.9.12)  
第9回(2001.10.17)  
第10回(2001.11.14)  
第11回(2001.12.5)  
第12回(2001.12.12) 論告求刑・最終弁論  
第13回公判(2002.1.21)  判決 懲役7年

控訴審(日程未定)

 

2001.12.5
辻内さん傷害致死事件第11回公判のご報告

(荒木和華子さん・鈴木茂さんが作成した詳細な報告をもとに中野が概略を作成しました)
地裁八王子支部305号法廷 10時19分開廷(傍聴人27名、開廷時)

 今回は証人二名(大沼たかみち氏、小林けんじ氏)の証拠調べが行われました。二人とも小金井署勤務で、8時27分に通信指令本部からの連絡を受けて、事件直後に現場に到着し、最初に被告人に取り調べを行った警察官でした。両名の証言によれば、最初に現場に到着したのは、光町交番勤務の巡査大沼氏でした。大沼氏は、交通事故であるという通報を受けて現場に駆けつけ、被害者の様子を見たあと、被害者のそばにいた水野被告を見つけ、加害者であることを確認しました。その直後にパトカー乗務員の小林巡査部長とともに尋問を続けるうち、被告人が「私が車をぶつけました」と言ったので通常の交通事故ではないと感じて、くわしく問い質したところ、被告人は事件前に国立駅付近で被害者と交通上のトラブルがあったと述べたと証言しました。これに対して弁護人は反対尋問で、現行犯人逮捕手続き書の信用性を問題にして、被害者の服装の色や自転車との位置関係などについて、証人の記憶と手続き書の内容の食い違いを追及しましたが、反対尋問が主尋問の範囲を超えているとする裁判長との間で激しい議論の応酬になる場面がありました。


 次に二番目の証人となった小林氏は、現場に二番目に到着したパトカー勤務の警察官でした。小林氏は、最初、大沼巡査とパトカーの外で、それから被告人と二人きりになったパトカーの中で、被告人から「国立駅付近で停車していたら、自転車に乗った人が(表現は悪いが)因縁をつけてきて、それで恐くなって発進した。そしたら信号待ちで止まっていたら、車の窓ガラスをたたかれたので恐くなり、裏道へ入った。それでも後をついてくるから、それで自転車がクルマの前に出て曲がったらぶつけた」という主旨の話を聞いたと証言しました。そして、小林氏がパトカーの中で聞き出した「交通上のトラブル」とは、「国立駅付近」で起こったものであると被告人が話したと証言しました。弁護人は再び現行犯逮捕手続書の信用性に関して反対尋問を行いました。


 二人の警察官の証言は、本件の最初の新聞報道にあった「国立駅付近での交通トラブル」が、事件直後、被告人が両警察官に話した内容であったことを示しています。また、本裁判でこれまで被告は、事件現場交差点付近のシャンポール島田前がトラブルの起点であり、そこから連続して右折を繰り返したことを強調してきましたが、事件直後に被告人に接触した警察官は、そのような説明とは異なる証言を行ったことになります。


 証人尋問の後、弁護側から、事件直後の目撃者Mさんの、当時は普通の交通事故だと思っていた旨の証言調書が採用されました。最後に、裁判長から証拠調べが終了したことと、12月12日午後3時開廷の次回公判では辻内衣子さんの意見陳述と最終弁論、論告求刑が行われる旨が告げられ閉廷しました。