彗星・星雲の画像の処理


2000年7月に地球に接近したリニア彗星1999S4に対する処理方法を公開します。実際には、彗星だけでなく、星雲に対しても大きな効果があります。

右の画像がオリジナルの彗星画像です。
レベルを調整すると、ある程度は特徴が見えてきますが、はっきりと表現することが出来ません。
こういう時は、アンシャープマスクをかけるのが普通ですが、淡い部分が表現できる様に大きくぼかすと恒星の回りに黒い縁取りが出来てしまいます。




そこで右のような設定でスターシャープフィルタをかけます。
設定内容は、以下の項目です。
星像の大きさ=0
適用範囲   大
閾値      0
星の芯は残さない



するとどうでしょう、状態を見ながら3回ほどかけたところで、右の様に恒星が消えました。
ただ、恒星だけがきれいに消えたのではなく、画像上には、様々なノイズ(実際には存在しない模様)が出てきています。



そこで、画像に半径=5でガウスぼかしを3回かけてノイズを取り除きます。
これなら、アンシャープマスクとして使用することが出来ます。






オリジナル画像に2を乗算してから、上の画像を減算すると、右の画像の様になります。
尾の構造がはっきりしたでしょ?
でも、恒星の回りに黒い縁取りはありません。
これが、恒星を消して処理したことの利点です。



でも、まだ薄明の影響で淡い部分の表現が出来ていません。
そこで、ズルをします。周辺減光補正ツールで、その中心を明るくなっている部分にずらします。
そして、濃度が適当になるように調整します。







最後に表示範囲を調整すると右の画像の様になります。
はじめの画像と比べるとその違いがわかると思います。






スターシャープフィルタを使ったアンシャープマスク法は、星雲の描写を劇的に改善します。
下に、星雲の作例を示します。左は未処理画像、右がスターシャープフィルターを使ったアンシャープマスクをかけたものです。輝星があっても、その周辺は何ら問題ないことが判ると思います。





2001.01.29追記
M42を処理したところ、黒いスポットが生じた。これは、星雲の形状に凹形状が存在するため。
このような問題が生じた場合、マスクとして完成した画像をデジタル現像し、元の画像もデジタル現像した上でマスクを減算するとよい。



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