RGB合成時のカラーバランスのとり方


 雑誌に入選した画像で、微光星が緑色に着色していたり、マゼンタに発色したものを見たことがありませんか?
印刷上の問題でなければ、それはカラーバランスが崩れているからです。
また、あなたがRGBあるいはLRGB合成を行うときに同様のことは起きていませんか?

「雑誌などに発表されている方法通りだから、これで正しい.....」と思っているのではありませんか?

実は、雑誌などに書かれているカラーバランスのとり方では、不完全なのです。

RGBの画面上に表示される明るさYr,Yg,Ybは、輝度(画像データの値)をR,G,Bとすれば、
Yr=Kr*R+Sr
Yg=Kg*G+Sg
Yb=Kb*B+Sb
として表すことが出来ます。(K?,S?は、定数です)
簡単な直線の方程式ですね。
K?、S?は、ステライメージ3のレベル調整では表示レンジ、最小値と同じと考えて差し支えありません。

ここでは簡単の為に、Yr,Yg,Ybが等しいときに無彩色になると考えましょう。
そうすると、正しいカラーバランスの時は、直線Yr,Yg,Ybは一致している必要があります。

Sr,Sg,Sbは黒のレベルですから、CCDの分光感度特性に基づいた補正を行い、黒のレベルを調整すれば無彩色になるはずです。
そうすれば、あとはKr,Kg,Kbの3つのパラメータを一致させれば、上で示した式のグラフは一致して、良好なカラーバランスが得られることになります。

でも、本当にそうでしょうか?

質問 あなたは、望遠鏡の極限等級に近い光度のM型星の色を判断できますか?

無理でしょう?

この質問は、人間が暗い物体の色を判断できないことを表しています(いろいろな本に書いてありますよね)。
輝度が極端に低い部分は、その色が無着色であることをそのままの状態では判断できません。
ですから、あなたはカラーバランスを正しく合わせたつもりが、白の基準となる恒星の明るさでYr,Yg,Ybが交叉するように調整している可能性が高いのです。先ほどの式で考えれば、グラフの傾きがデタラメなのです。

あなたは、レベル調整の表示レンジ(最小値は動かさないこと)を調整して、黒レベルを明るい灰色になる状態にしても、その部分が無彩色になるように調整しなくてはいけないのです。
もし、ご自身で処理した画像がお手元にあるようでしたら確認してみてください。

この調整は、一度の調整では行えません。徐々に正しい状態に近似していくような調整が必要です。
詳細は、また時期をみて.....

2001.07.29追記


右のようなグレイスケールを考えましょう。この画像を3枚用意し、RGB合成を行っても、画像は無彩色のままです。
これは当たり前ですよね。
では、CCDの分光感度特性を加味して、Rを2倍、Gを1.5倍したものを合成してみましょう。結果は右の様になります。
レベルを調整していないので、これも当たり前ですよね。
表示の「レンジ」を各色ごとに調整することで正しい表示とすることができます。
では、その状態で光害によるバックグランドのかぶりを加味してみましょう。Gに100を、Bに50を加算すると右の様になります。
このような画像も表示の最小値を各色毎に調整することで正しいカラーバランスとすることができます。
ここで示した画像は、ガウス性のバラツキが加味されていないので、ヒストグラムを見ながら簡単にカラーバランスを調整することが出来ます。
しかし、実際の画像では、それぞれの画像にガウス性の成分が含まれているので話はより難しくなります。実際にガウス成分を付加した画像で試してみると、特に暗い部分の着色が顕著になります。
つづく....

2001.07.31記
実際に擬似的な画像を作って検証しましょう。
右は仮想的な恒星像、バックグランドノイズ、読出しノイズの画像です。

恒星像をコピーしてRGBの原画像を作ります。R,G,Bの感度比を5:4:2として、それぞれの画像に定数を乗算します。ここでは、Rが2560ADUを最大値とするように処理しました。

次に、バックグランドのレベルを2000:4000:5000として、そこで生じるノイズ√(n)倍してからバックグランドレベルを加算します。出来あがったバックグランドレベルの画像を恒星画像に加算します。

更に、読出しノイズを最大20ADU程度あるとして、画像のレベルを調整し、同じく恒星画像に加算します。
出来あがった画像の表示レベルを調整し(ここでは、自動調整としました)、RGB合成します。
出来あがった恒星画像が右の画像です。
判り辛いので画像の表示レベルの範囲を調整しています。
ちょっと、条件が良すぎたみたいですね....

この画像のFITSファイルは、右の画像をクリックすればダウンロードできます(LZH圧縮)
右は明るい星と暗い星のヒストグラムです。
暗い恒星の表示レベルがRGBとも同一になるように、表示レベルの最小値をRGBそれぞれについて調整してみます。
明るい恒星
暗い恒星
すると、右のヒストグラムの様に、明るい恒星のピークの部分に着色が生じてしまいます。
画像の端の方、すなわちバックグランドのレベルはRGBともに、ほぼ一定となっていますから、バックグランドは無彩色となっていることが判ります。
(上の画像ではばらついています)
このように、単に表示レベルの最小値を調整するだけでは、明るい部分のカラーバランスがずれてしまいます。
明るい部分に生じたカラーバランスを調整するには、表示レンジを調整する必要があります。
しかし、この調整によって、再び暗い部分のカラーバランスがずれてしまいますから、再び、表示レベルの最小値を調整しなければなりません。更に、これによって明るい部分の......。
ということで、徐々に正しいカラーバランスに追い込んで行く作業が、必要になるのです。



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