真夜中は、誰でも振り返りたくなる。
そんな気持ちに僕はいつもさいなまれている。

 今日もいつもと変わらず、大時計が0時を指した。
 僕の目の前が変異し、いつものようにもうひとつの地球、パラレル地球へ僕のココロは飛ばされた。
 いつものように。大変な日々がまた始まった。

 今の生活が始まったのはいつのことだっただろうか。
 あのことが起きたときも今日の今のようなボタン雪が降る、もうじき0時になるかというときだった。


パラレル

第一章 とつぜんパラレル

作:starbow


 僕は、一人コンビニの帰り道を傘をさしながら歩いていた。雪が降り、傘を持っている手はかじかんでいる。
 ふー、とため息をついて、空を見上げた。

 そのとき、視界に何かが飛び込んできた。よく見ると人の形をしている。
 あっと言う間も無くそいつは影のようにふっと俺の体を横切っていった。

 「あのね、お願いがあるのですが」
 そいつは、僕のココロに話かけてきた。

 「いま、もうひとつの地球が魔法の暴走で危機的な状態になってしまっています。
 これを止められるのはもうひとつのわたしであるあなただけです。
 どうか、わたしの願いを聞き届けていただけますか?
 どうか。。。。。。
 どうか。。。
 どうか」

 声は、だんだん弱くなっていった。
 「おい、大丈夫なのかよ」
 僕は声に向かって叫んだ。
 「わたしのお願いを聞き届けていただけますか?」
 「あ、いいよ。OK。OK」
 「ありがとうございます。これで世界は救われます。
 本人のご了承が得られたということで、これから、あなたをこちらの世界と情報連結します」
 「えっ!」
 「なに?」
 「どういうこと」
 「情報連結するだけです。ご存知ないですか?」
 「そんなこと知らないぞ!」
 「えっ。うそ。しらなかった。この地球ではなかったのね。まあ、大丈夫だから。心配しないで。」
 「えーーー」

 あたりが急に明るくなったかと思うと、目の前がぐるぐる回りだした。
 そして、僕は気を失った。

 僕が気が付くとそこは、カプセルの中だった。
 あたりは、何も見えない。
 「おい。開けろよ」
 僕は声を荒げて叫んだ。
 すると、内から声が聞こえた。
 「いらっしゃい。こちらへ」
 その声は、あどけない少女の声に思えた。
 
 「現在のあなたの状態は、パラレル空間を情報連結したことで、
 あなたの情報だけがこちらの世界に来ていることになります。
 そのため、パラレル地球でのあなたの同一個体であるわたしに
 一時的にダウンロードされています。
 そのときは、あなたがわたしとなります。
 なお、パラレル地球は無限に存在していますし、時の流れもまちまちです。
 それでは、まず最初の地球に出発していただきます。
 よろしくね。」

 「姫様、姫様、目を開けてくだされ。もう3日も経っていますぞ。」
 「起きてくだされ。」
 僕がふと気が付くと、豪華な寝室に寝かされていることに気が付いた。
 目を開けると声が聞こえた。
 「ああ、姫様が気がつかれた」
 「え?」
 僕はうろたえた。姫様だって。


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