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物語は太古の世界につながりはじめた


第2宮家

第五章 オーラバリア

作:starbow


遺跡のなかに現れた謎の物体は、バリアに覆われていた。
どのような種類のバリアかは判別不可能であったが、現在の知識では到底開発できないようなものであった。

***

ここは、玉司宮の寝室。
カーテンや家具は、薄桃色一色の色調で統一されている。
窓は、出窓になっていて、そこに、アロエの鉢植えが置かれている。
また、東西南北の方角に銀の鈴が掛かっている。
スリッパは、ウサギの形をしている。
床には、月と太陽と星の結界が描かれている。

「うーん、うーん、あー。」
玉司宮は、ベッドの上に寝ているが、うなされているようで、額に汗がびっしょりとついていた。
玉司宮は、日の本の国がばらばらになる夢を見ていた。

複数の時代が重なり合いながら、目の前を通り過ぎていく。

不二の山が、不気味にうなり、噴煙を上げている。
南の火の山は、大噴火を起し、カルデラ内を一面溶岩で覆い尽くしている。
大地が、引き裂かれて、火の国、阿の国、中つ国、伊の国、東の国、北の国に分かれていく。
また、あるものは、深い海の底に沈んでいった。

それは、その昔、ラ・ムーの神官だったときに、国の滅びを予言したように。
そのときは、マントルのプリュームエネルギー反応炉の暴走でマントルの流れが分裂したため。

または、かの昔、ノアの時代にパンゲアがヤハウェイの接近で分裂したように。

未来は過去であり、過去は、未来である。
時空連続体は、スパイラル。
いつも。いつも。いつも同じことの繰り返し。。
どの時空でも。どの地球でも。。。。


すかさず、ヨウ君が気がついてベッドの脇に行き、玉司宮に声をかけた。
「大丈夫ですか。」
「うーーん。」
「目を覚ましてください。」
「えーん。」
玉司宮は、ヨウ君の呼びかけでやっと目を覚ました。
「どうしました。悲鳴をあげていましたよ。」
「あー、ヨウ君。いまこの世が破局を迎える夢をみていたの。」
「それは、カラーな夢でしたか?」
「そうよ。ものすごくリアルでカラフルだったわよ。」
「そうすると、それは、予知夢かもしれないし、太古の昔の記憶のフラッシュバックかもしれませんね。」
「なぜ、そう極端な時間スケールなの?」
「それは、遠い未来は、太古につながるからです。時間はスパイラルですから。」
「えーと。判らないことを言っているのではなくて、これを解決する手立てはないの。」
「ちょっと待っててください。判別する手立てを探してきますから。その間は、ベッドで横になっていてくださいね。ぜったいに。」
「判ったよ。」
ヨウ君は、トコトコと部屋から出て行った。
遠くからガラガラ、ドシャ、チャリンとありとあらゆる音がしてるのが聞こえてきた。
玉司宮は、ヨウ君が何をしているのか気になっていたが、先ほどの約束もあるので、静かに横になっていた。
そして、ヨウ君が戻ってきた。
「えーと。これを手にもってください。そうするとひとりでにイメージが浮かびますから。」
そういうと、玉司宮にコンパスを渡した。
玉司宮は、コンパスの柄を手に持つと、コンパスをくるくると回し始めた。
ちゃらちゃらりんといって、コンパスは、右に倒れた。
「右ですので、予知夢になります。また、倒れた方角によると、後1年ぐらいと出ています。」
「それは、本当に?こんないいかげんな方法でだいじょうぶなの?」
「それはいいすぎですよ。この道具はナイルの時代からの由緒正しいものなのですから。」
「そうですか。ほかに何か、伝えられている情報はないの?」
「特に、言い付けはうかがっていません。」
「そうですか。」
「あのー、Sさんから継承している情報はないのですか?」
「どうかしら。ちょっと待ってね。」
玉司宮は、BRCを含めて連想記憶検索をして、情報を探した。
「関係しそうな箇所はあるのだけれども、肝心なところが欠落しているようなの。」
「それは変ですね。記憶に欠落があるなんて。」
「他に、心当たりがあるかどうかですね。」
「後は、陛下に当たってみるしかないと思いますよ。」
「そうですね。陛下に伺ってみましょう。」
「お役に立てず申し訳ありません。」

玉司宮は、支度ができると、宮中にある「開かずの間」に転位した。

***

「開かずの間」は、以前と変らず薄桃色一色の色調で統一されていた。
「お見えになられたかな?」
そのとき、外から声がかかった。陛下の声であった。
玉司宮は、そっと戸をあけて陛下を中に通した。
陛下は、夏用の薄手の衣をまとっていた。
「調子は、いかがですか。慣れましたか?」
「はい。お蔭様で。」
「今日来られた用件はどのようなことかな?」
「今朝、予知夢があり、占った結果は、この世は後1年で破局を迎えるとのことでした。いろいろと手を尽くしましたが、どうすればいいかという情報は得られませんでした。
そこで、なにか、言い伝えられていることがないかと思いまして伺いました。」
「そうですか。もうそのような所までこの世はなってしまいましたか。」
「なにかご存知なのでしょうか?」
「言い伝えによりますと、この世を破局から救う唯一の鍵は、元伊勢にあるといいます。」
「え。」
「そして、その鍵は三つあります。隠されたる3種の神器というものです。これが、あなた様のオーラバリアを増幅し、この世を破局から救うと言い伝えられています。
しかし、鍵は、今は封印されていて隠されています。」
「どのようにすれは、封印は解けるのですか?」
「封印の解き方はわかりませんが、その鍵は元伊勢にある神社の空間記憶にあるといわれています。」
陛下は、静かに言った。
「そして、あなた様しか元伊勢の封印を解くことはできません。」
「それは何故でしょうか?」
「それは、あなた様が太古の昔にご自分で封印されたからです。」
「それは、前の存在がしたということですね。」
「そういうことです。」
「ありがとうございました。それでは、さっそく元伊勢に参ります。」
そういうと、玉司宮は、転位した。
あとに、陛下が一人佇んでいた。

***

玉司宮は、長官を呼び出し、急遽元伊勢にいくことを伝えた。
「陛下とお話をして、急で申し訳ないけど、元伊勢に行くことにしました。旅行の手配をお願いしますね。」
「はい、判りました。しかし、急なことですが、何かありましたのでしょうか。」
「何故かはを話すことはできません。ごめんなさい。」
「判りました。それでは、手配を行いますので、しばらくお待ちください。」
そういうと、長官はテキパキと手配を行っていった。
その間に、玉司宮は、控え室で女官達に手伝わせながら外出用の服装に着替えをしていた。
「宮様の肌は、すべすべでいい感じ。」
「くすぐったいよ。」
「髪は、細くてしなやかでうらやましい。」
「日ごろのヘアケアだけですよ。」
「指は、細く、白く、可愛い。」
「やめてくださいよ。」
はじめのころは、女の園のなかでの女主人という位置に戸惑いを覚えていた玉司宮であったが、
最近は女性的な感覚にも慣れ、女官達の戯れも上手くあしらうことができるようになってきていた。
また、女官達は、玉司宮をおねえさまイメージで慕っていた。これは、玉司宮のオーラによるものかもしれない。
「ところで、宮様、こんどはどちらまでいかれますのでしょうか。」
「天の橋立の近くまでいきますよ。」
「それでは、ぜひ、ぜひお土産を。」
「わかりましたよ。皆に買ってきますよ。その代わり、留守番をお願いしますよ。」
「はーい。」
女官達は、わいわいいいながら、玉司宮の着替えを行っていった。
しばらくして、長官が戻ってきた。
「準備が整いました。いつでも出発できます。」
「それでは、行きます。長官もついて来なさい。」
「はい。喜んでお供します。」

一行は、専用列車に乗り、一路元伊勢までの旅に出発した。
玉司宮は、列車に乗車するとすぐ寝入ってしまった。
きっと、日ごろの疲れがあったのだろう。
その横顔を見ながら長官は一人、宮様の寝顔を見つめていた。
「いつも元気な宮様がこんなにお疲れのご様子。いったいなにがあったのでしょう。宮様の身になにも起こらなければいいのですけれども。」
そう長官は、気になっていた。

***

ここは、元伊勢。伊勢神宮が表なら、ここは、裏の神宮があるところ。
玉司宮は、真っ白な巫女装束に身を包み、手に札を持っていた。
「長官、あなたは、境内の外で待っていなさい。中に入ると危険ですから。」
「はい。判りました。しかし、何を行われるのですか。」
「始めに、神社の境内に結界を張ります。」
「はい?」
「次に、神社が記憶している空間記憶の中に入ります。」
「??」
「それでは、中に入ります。長官はここで待機していてください。」
「はい。戻られるまでここでお待ちしております。」

玉司宮は、神社の中へと入って行った。
そして、人差し指と中指で空中に弧を描き、神社の空間が保持している記憶の中に入って行った。

しかし、そこは神々がまだ地上にいた太古の世界であった。


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