相反則不軌


天体写真を撮る人なら必ずこの言葉を聞いたことがあるでしょう。

露光時に光の強さが倍になったとき(絞りを1段開けたとき)
露光時間を半分にすれば(シャッター速度を半分にすれば)、
フィルム上で同じ濃度が得られる(適性露出が得られる)関係を「相反則」と言います。

ところがこの関係は、あまりにも強い光や弱い光での撮影時には成立しなくなります。
この関係が成立するのは、だいたいシャッタースピードにすると、1/10000秒〜数秒の間の話です。
その露光領域以外では、相反則が成立しない「相反則不軌」が起こります。

強い光での撮影時に起こるのを高照度不軌、弱い光の時に起こるのを低照度不軌といいますが、
天体撮影時には、もろに後者の低照度不軌が起こって、想定されている感度が得られません。

たとえはISO400のフィルムであっても、弱い光で数十分露光すると、感度は10位にしかならないようです。
また変化するのは感度だけでなく階調も変わり、しかも各感光層の乳剤でその挙動が異なるために、
カラーフィルムの場合にはカラーバランスの崩れという、やっかいな問題も起こりえます。
天体撮影はメーカー側が想定している露光領域外を使うので、やむを得ないところもあるのですが・・・。

ユーザーとしては、なるべく低照度不軌による感度低下やカラーバランスの崩れの少ないフィルムを使うか、
明るい光学系で短時間露光にするか、
低照度不軌を抑制するために冷却カメラや水素増感という技を使うかしかなさそうです。


あとこれは私感ですが、
一般に超高感度フィルムは、それがウリである夜に使われる機会が多くなります。
夜の撮影ではストロボを使われるシーンが多く、ストロボのような強い光での撮影では、
逆に高照度不軌の問題が起こってきがちです。
このため、超高感度フィルムは一般に低感度フィルムよりも高照度不軌を優先させていたりします。
お解りかもしれませんが、低照度不軌と高照度不軌の特性のチューニングは大抵ジレンマにあり・・・。
いくらISO感度が高くても低照度不軌による減感が大きくては、天体撮影時には意味がないわけです。

もちろん各フィルムや撮影対象や撮影条件によりますが、
個人的には低感度フィルムの増感現像処理の方が、良い結果が得られるような気がします。