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画像処理によるコロナの再現


コロナの写真を撮ったことのある方はご承知でしょうが、どんなフィルムやカメラや機材を使っても、
「目で見たコロナ」の印象通りの写真を撮ることはできません。
それはコロナの輝度が中心部と外部で数千倍の差があり、しかもコントラストが低いために、
最もラチチュードが広いと言われる銀塩フィルムの表現能力さえも超えているためだそうです。

ところが人間の目のすごさと、頭の中の画像処理(?)が適当に働いて、
あの実に美しく繊細に羽毛のようにひろがる見事なコロナが見えているようです。

いわゆるよく見るコロナの写真とは、露出が合ったコロナの一部が写った写真でしかありません。
それでも充分綺麗なのですが、実際にコロナを見て撮った人は出来上がりを見てガッカリせずにはいられません。
そこで画像処理技術を使って、目で見たコロナを再現しようという試みが最近盛んに行われています。


では本ページでのコロナ再現の処理方法を少し説明いたします。
まずは友人のSHIVA氏が撮影した1999年8月11日ヨーロッパ日食
露出違いのコロナの写真6コマからスタートです。
所詮は画像処理ですので、すべてはオリジナルの原画の優秀さが全てなわけです。
従ってSHIVA氏の素晴らしい写真があってこそです。

まずは生のポジ(リバーサル)フィルム画像をフィルムスキャナーで読み込みます。
スキャニング原稿としては、やはりポジ画像の方が有利です。この点でも原画としては言うことがありません。

望遠鏡:タカハシ FC-60 + バリエクステンダー 800mm F=13.3
カメラ:Nikon New FM-2 /フィルム:富士カラーPROVIA 400
撮影地:トルコ SIVAS ジェムフリエット大学サッカー場
日時:1998.8.11 14:31'30"〜14:32'30" 頃 (現地時間) /撮影者:柴田治氏 (Shiva)

露出 1/1000秒 露出 1/250秒
露出 1/60秒 露出 1/15秒
露出 1/4秒 露出 1秒

コロナの画像処理による再現方法としては、塩田和生氏の回転アンシャープマスク法が有名で有効です。
(天文ガイド別冊「INTERACTIVE ASTRONOMY」,Vol.3, 1995, p62 を参照)
PIZさんがHP上で実際にこの手法を解りやすく解説してくれていますので、
興味のある方は参考にはなると思います。

とは言っても画像処理について、それなりの知識とかなりの工数が必要です。
一方、星仲間のhabu氏が、これを実に簡単に行えるPhotoShopのプラグインソフトを開発してくれましたので、
Kuroはこのソフトを用いてコロナの流線強調を行いました。このソフトにより、数十秒で同等以上の効果が得られます。

ちなみにこのソフトは、天文ガイド1999年7月号に「コニカPC暗室」として紹介されました。
(まだ発売されておりませんが)


まずは各露出のコマをこのソフトを用いて適度に流線強調しました。
例えば、露出 1/250秒や1/4秒の画像はこのようになります。

お解りのように、強調されたコロナ流線が現れるのは、
適性露出になって元もとの階調が残っているコロナの一部だけです。
そこで、露出違いのコマを合わせて、内部コロナから外部まで流線を繋げる必要があるわけです。

また流線が強調される分、粒状が目立つザラザラの画像になりますが、
多くの画像を重ねる次のコンポジット処理により、この粒状の荒れは目立たなくなります。

露出 1/250秒を処理 露出 1/4秒を処理

流線を強調した各画像を、Photoshopのレイヤーで重ね、レイヤーの透明度を調整してコンポジット合成します。
各画像のコロナの流線の美しい階調がある部分を繋げていく作業です。
その後、色調や階調を適度に調整すると、以下のようなコロナの画像が得られます。

最後に彩度を失って埋もれてしまったプロミネンスや滲んだ月のフチを、1/1000露出のコマから取り出し重ね、
適当にトリミングしたら出来上がりです。

さらに流線強調時に強調の度合いを大きめにして処理してみました。また印象が違ってきます。
また肉眼でみると背景の空は青空のままなので、背景を青空調にしてみました。(作品として好みの分かれるところ?)


露出違いで撮影された画像さえあれば、同じ様な方法でコロナの再現性を向上させることができます。
コンポジットする画像の質が良く、かつ数が多い方が階調豊かで滑らかな仕上がりになります。

1988年小笠原皆既日食
Kuro撮影の露出違い3コマから合成。
同じ日食をインドネシアで撮影された
PIZさんHPの2画像から合成。
1995年インド皆既日食
PIZさん撮影の4画像から合成。

興味のある方は、是非挑戦してみましょう!
2001年6月のアフリカ日食では、どのような作品が撮られるのか楽しみですね。
(Kuroはまた遠征断念しましたが・・・)

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