ファゴットについて

 自分が今やっている楽器は「ファゴット」である。この「ファゴット」という名前を聞いて、どんな楽器か思い浮かべられる方は非常に少ないと思う。
 ということで、ここでは「ファゴット」とはどんな楽器か、等々をお話ししたいと思う。

名称について
 「ファゴット(Fagotto)」というのはドイツ語圏での呼び名である。では英語圏では何と言うかというと、「バスーン(Bassoon)」という。自分が使う名称は「ファゴット」の方が断然多い。何故かと言うと、人に「バスーン」と言うと、「バス(Bass)」と間違えられる事があるからである。「バス」になると、全く違う楽器になってしまう・・・・。

音色について
 木管楽器の低音部を担当するこの楽器の音色は何とも言えず、ほのぼのとした音がする。牧歌的とでも言うか、とても美しい音色である。これは、”ダブルリード”という楽器の特徴かもしれない。
 低音部を担当していると言っても音域は広く、3オクターブ半の音域が出る(自分はまだ3オクターブ余しか出せないが・・・・・)。

形について
 低音を担当するだけあって、楽器は結構大きい。というより、細長いという感じ。色は茶色が多いが、たまに黒や赤っぽいのもある。

ファゴットを吹くSSG

指使いについて
 フルート以外の木管楽器は全て経験しているが、ファゴットの指使いが一番難しいと思う。はっきり言ってメチャクチャである。普通は半音階を行うと大体規則性(上がる場合は音の低いキーを押さえている指から、高い方の指に動きが移っていく、というような)があるが、ファゴットの場合はそんなの関係無しで、バラバラである。
 しかも、ファゴット以外の木管楽器は(特殊なバス・クラを除き)キーを押さえるのに使う指は右手の親指を除く9本である。が、ファゴットの場合10本の指を全て使う。もちろん、右手の親指は頻繁に使うし、左の親指に至っては、キーが10種類近くもあり(他の木管楽器は2つくらい)、ファゴット奏者にとって左手の親指は、永遠の課題である・・・。
 指使いがどれくらい大変かを分かり易く実例を挙げてしまうと、過去に「ファゴットが吹きたい」と言って来た人(管楽器経験者)にまず指使いを教えると、「こんなワケわからない指使いは覚えられない」と言われるのだ・・・・・。

雑感
 さて、上記まではファゴットという楽器の、言ってみれば”外見的”特徴についてお話ししたが、ここではもう少し内面的というか、吹奏楽や管弦楽におけるファゴットの役割的な事を、全くの個人的観点でお話ししたいと思う。
 管弦楽でもファゴット奏者は少ないが、吹奏楽では特に少ない。これは、楽器が高価である、というのが原因と指摘する方もいらっしゃるようだが、自分はそれ以外に大きな要因があると思う。
 吹奏楽をやっていると、色々な楽譜に出会う。オリジナルでは「・・・・。これ、チューバの楽譜?」と言いたくなるのが多いし、オケのアレンジでは本当ならファゴットのソロなのに、それをわざわざ他の楽器に移して、ファゴットにはチェロのパートが回ってくる、なんて言う事が平気である。こんなだから吹奏楽のファゴット吹きは浮かばれない思いをするし、楽器に興味を持って新しく始めようと思う人も、ファゴットはその選択肢には入らないのだ。
 では、管弦楽ではどうだろう。
 実を言うと、自分はオケで吹いたことは殆どない。あるのは、練習に何度かお邪魔をして吹かせて頂いただけ。たったそれだけだが「オケって良いな」と思った。上手く言えないが、ファゴットという楽器が、ちゃんとその楽器に合った役割を与えられているからなのだと思う。

ファゴットのソロのある曲
 自分はあまり勉強家ではないので、どういう曲にファゴットのソロがあるのか良く知らないが、自分の知っている曲を挙げて見たい。これらの曲を聞いて頂いて、「ああ、ファゴットって、こういう楽器なんだ」と少しでも理解して頂けたら幸いである。
 ○オリジナル
  ☆祝典の為の音楽(P.スパーク)
    2楽章の入りと中間部に長〜いソロあり。
  ☆ドラゴンの年(P.スパーク)
    3楽章にデュエットのソロあり。
  ☆吹奏楽の為の交響曲第3番(J.バーンズ)
    3楽章の最後に、デュエットのソロあり。
 ○管弦楽
  ☆交響組曲「シェエラザード」(リムスキー=コルサコフ)
    2楽章に恐ろしく難しい、長〜いソロあり。
  ☆歌劇「カルメン」(ビゼー)
    「アルカラの竜騎兵」のソロは有名、のはず・・・・。(^^;;
  ☆春の祭典(ストラビンスキー)
    冒頭のソロは有名。でも、実は自分は良く知らない・・・。
  ☆火の鳥(ストラビンスキー)
    「こもり歌」の部分にも特徴的なソロあり。



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