推理小説


○[英語が恐い]殺人事件(吉村達也)
 英語恐怖症(?)のサラリーマン福岡竜男は、ニューヨーク支店の転勤を命ぜられ、精神に異常をきたして帰国することになる。その後、ニューヨーク時代に彼をバカにしたプロレスラーが日本で殺害される。体重270キロもあるレスラーが無抵抗で殺されており、一体どうやって殺害したのか、誰が犯人なのか不明のまま、レスラーと交際していた女性も無抵抗のまま殺害されてしまう。挙動不振な福岡に警察は疑惑の目を向けるのだが・・・。
 福岡の息子とその英語の家庭教師の会話で、「英語を文法通り正確に訳さないと試験でバツになる」という話が出て来る。あまり砕け過ぎても良くないが、キチッと訳し過ぎるのはどうかと思う。また、「マイ・カー」という言い方はダメ、というような勉強できる部分も少しだけあって楽しめた。推理小説としても良く出来ているし(ただし、無抵抗で殺した方法は微妙)、ユーモアもあるしなかなか面白かった。この人は真面目な小説もあればユーモアなものもあり、本当に多才だと思う。

○熊野に来た女(前田朋子)
 熊野を訪れた坂上静香と偶然出会った富沢芳雄は、彼女から「男に追われている」と告白され、自宅の離れにかくまう事にした。それを快く思わない妻と芳雄が外出をしている間に静香が何者かに殺されてしまう。犯人は静香を追っていた男か、それとも快く思っていない妻か・・・・・?
 これはお馴染みの犬姫シリーズではない。そのせいか文章も内容も大人向け(?)という感じで、個人的には非常に好きだったりする。
 朋子センセーの小説はどれもタイトルが内容に一致しており、そういう意味でも非常に感心するのだが、今回も「ああ、そいうことか」とつい思わされてしまうところがニクイ。
 この文庫にはもう1つ「透明な氷」という小説も入っており、こちらのタイトルも内容にピッタリだ。中盤で「冷たい氷」の意味が解ったと思ったら、最後にもう1つの意味が隠されていて、とても面白かった。お奨めの1冊である。

○推理小説(秦建日子)
 TVドラマ「アンフェア」の原作。
 初めに会社員と女子高生、続いて編集者が殺される。無差別殺人のようでそうでないような不思議な事件。その事件を小説化したものが警察や新聞社に届けられる。次いで犯人は「次の事件を防ぎたければ、小説の続きを落札せよ」という声明を発表する。結局は誰も落札せず、次の事件が起こり・・・。
 犯人(の思想)は個性的なので、犯人のキャラを登場人物のキャラに重ね合わせて行けば、最後まで読まなくても犯人はわかるはず。そういう意味では”フェア”な小説かも。
 ただ、オークションに出したら身元なんてすぐに割れちゃうんじゃないの?ということと、犯人がよくあそこまで未来を予測したなぁ、というのが少々不思議ではあるが、それは小説の世界なので、まぁいいか。

○誰か(宮部みゆき)
 この本を読み終えてまず感じたのは、「宮部さんん、一体どうしちゃったんだろう?」ということ。ストーリー自体はとても良いのだが、主人公がひとりごちる部分が何となく余分で少々鼻に付く。このおかげで、それまでスムーズに呼んでいたのがいきなり止められてしまう感じ。
 物語は主人公の杉村三郎が、今田コンツェルンの会長である義父から、「事故で亡くなった専属運転手の娘(姉妹)から、父親の伝記を書きたいと相談され方ら手伝ってやってくれ」と依頼されたことから始まる。実際に姉妹に会った杉村は、妹が積極的なのに対し姉が消極的なことに疑問を覚え、調査を始める。
 この小説で最も自分の印象に残ったのは、姉の婚約者と妹の関係がろうか。要はその婚約者と妹が不倫(?)していたのである。その関係を問いつめられて開き直る婚約者は最低だな。

○時の密室(芦辺 拓)
 刑事弁護士で探偵である森江春策は、不可解な殺人事件の容疑者の弁護を引受ける。その事件は、「被害者が透明人間と争っているように苦しみ出した」と証言する容疑者と、「容疑者と同じ茶色の服を着た人が被害者を殺害した」という目撃証言で食い違っていた。この謎及び殺人の背景を調べるうち、明治時代に起こった”エッセルさんの不思議”事件、博覧会の爆破未遂事件、昭和40年代の学生殺害事件と絡み、更には関係者の家に保管されている絵を身代金ならぬ身代絵(?)として要求される事件まで発生。過去の事件と現在の事件はどう関係しているのか?
 正直言って、この小説を読んでいて疲れてしまった。その理由は、まずは難しい(読めない)漢字の多用。それから、個人的には無駄な部分が多いと思ったこと。エッセル氏の事件にしても雑誌の記事だけで十分だし、当時の警官の部分も不要。それに、街の背景(明治何年に何がどう、とか)も細かく描かれている部分があって、それはもしかしたら読者に対するフェアー精神なのかもしれないが、個人的には不要と思った。
 そういう部分でフェアーにするなら、現在の事件の真相についてもっと納得できる結果にして欲しい。具体的に言うと、真犯人がどうやって青酸系薬物や(爆発するための)火薬を手に入れたのか教えて欲しいっす。

○仮面(ペルソナ)(山田正紀)
 この小説は少しだけ変わっている。普通は事件を時系列で描くのが普通なのだが、これはまず、殺人の舞台となる場所に到着した人々を描写したと思ったら、いきなり次は惨劇が終わった朝、探偵の風水火那子がトリックを解説し出す。しかも「犯人は自分だ」と自供する人もいたりして。事件については、火那子の回想と、火那子に頼まれたヒロシの手記によって語られて行く。
 閉店したレストランに、仮装した店主とその仲間、出張コックと助手の計9人が集まった。最初の乾杯で1人が死亡。やけになって、毒が入っていないと思われたウィスキーを飲んだ者が死亡。毒を混入した疑いをかけられた者が小部屋に閉じ込められ、そこで死亡。一夜あけて警察に自供した精神科医の磯崎は、火那子を付け狙う。本当に彼が犯人なのか、それとも誰かをかばっているのか?
 人が仮面(仮装)を選び、仮面が人を選ぶ、という言い回しが何度も出てくるが、それがちょっとしつこいかな、と思った。それはいいとして、ついうっかり毒を持ってくる、なんてことがあるんですかねぇ?それに、塗る時も挙動が不自然になるだろうし。

○ifの迷宮(柄刀 一)
 何度か書店で手に取っては棚に戻していたのだが、他に良さそうな物もなかったので購入した。読んだ感想としては、買って良かったかな?
 近未来、遺伝子の研究が進み、どの配列の遺伝子がどのような病気になりやすいかが判明して、胎児の遺伝子を調べ、問題があるようなら堕胎する、という世界。
 その先駆者である宗門家で殺人事件が起こる。更に数日後、事故の起こった研究所内でも新たな殺人事件が起こるのだが、残された犯人の遺伝子は、数日前に殺された被害者の物と一致。果たして死者が蘇ったのか・・・・・?
 この小説の前半は、はっきり言って「難しい」である。遺伝子の話しにしても、それ以外にしても。
 密室のトリックや遺伝子の謎も、解ってしまえば「な〜んだ」という感じではあるが、なかなか良く出来ていると思う。
 しかし、障害者となることが解っている子に対して「生まれて来ない方があなたのためだから」と堕胎するのが普通になり、障害者(身体にしても知的にしても)に対して冷たい世の中が描かれている。将来本当にそういう世の中になったら本当に恐ろしいことだ。
 ただ、物語の一番最後にSOMONグループ(宗門家の会社)の社員の心に変化が訪れる描写は、社会全体が変わって行く前触れを表現しているようで、希望をもって物語は終わるところが良い。そういうこともあって、この小説の中で自分が一番好きな場面はここかな。
 しかし、末恐ろしい・・・・・。(意味深)

○アイルランドの薔薇(石持浅海)
 まず読み始めて思ったのは、「久々のちゃんとした推理小説」ということ。もちろん他にもちゃんとした推理小説はあるけれど、クリスティとかクイーンとか、そういう臭いを、この小説から感じ取ることができたのだ。
 そしてこの本を読み進めていくうちに思ったのは、これは舞台で演劇として上演しても非常に面白いのではないか、ということ。基本的に宿の中という限られた場所で進んで行くので、色々工夫をすれば(たとえば、殺し屋の正体をどうやってバレないようにするか、など)可能なんじゃないかな。
 基本的にこの話しは、アイルランド(南アイルランド)にあるB.B(日本で言うペンションのようなもの?)の中で進んで行く。
 1997年、NCF(テロ組織)は、英国政府との平和交渉を控え、NCF内の平和反対者であるダグラスを、殺し屋を雇って抹殺しようとしていた。ダグを含めた3人のNCF工作員が泊まっている宿に、何人かが偶然泊まる事になってしまう。そして、次の朝ダグの死体が発見され、それまで身分を偽っていたNCF工作員の要求で、警察を呼ばずに事件解決に協力することになった宿泊客たち。その中の1人、日本人科学者のフジが事件を推理していく・・・・・。
 推理は殆ど状況証拠をもとに進められていく。そういうのは基本的に無理があったり、作者に都合良く進められたりするのであまり好きではないのだが、これはそんなことは全くなく、読者も納得できるのではなかろうか。また、まんまと作者に騙された部分があるが、それもまた心地よかったりした。
 エピローグとして事件が解決して4年後の、それぞれのメンバーのその後について少し書かれているのだが、それがかなり、特に最後の1行は非常に感動的。この作家の他の本も読んでみたいと思う作品だった。

○倒錯の帰結(折原 一)
 この小説は、「首吊り島」と「監禁者」の長編2編が収録されている。この本の変わった所は、「首吊り島」を読み終えたらそのまま本を引っくり返し「監禁者」を読むようになっているところだ。もちろんどちらを先に読んでもかまわないが、著者の言う通り「首吊り島」を先に読んだ方が良いだろう。
 「首吊り島」のストーリーは、同じアパートに住む女性の故郷である孤島”魚釣り島”、別名”首吊り島”に同行することになった小説家が、奇怪な密室殺人に遭遇し、謎を解決して欲しいと依頼され、謎を解く合間に”監禁される小説家”という設定で小説を書くという話し。
 「監禁者」は、自分の住んでいるアパートの他の部屋に監禁され、小説を書くことを強要され、「孤島で起こった密室殺人事件に巻き込まれた小説家」という内容で執筆する、という内容。
 この2つの小説は、片方が終わったらもう一方に続く、というように無限ループに陥る内容になっているのだ。
 では永遠に終わらないかというとそうでもなく、2つの小説がぶつかる部分に袋とじがあり、これを読んで終結ということになっている。
 この袋とじでとりあえず解決になっているが、一番最後のページでもう1人監禁されている人物が登場する。そのペンネームどこかで聞いたことあるな、と思ったのだが、なるほどそういうことだったのね。理解できない部分も少しあるが話しは面白かったし、永遠にめぐる、という趣向も面白かったが、この一番最後のジョークが個人的には一番好きかな。(笑)

○名探偵で行こう(日本推理作家協会)
 総勢13人の作家の短編を1冊にまとめたもの。こういう本を読むのは初めてなのだが、小さな字で「日本ベストミステリー選集31」とあるということは、このテの本が31冊も出ているということになる。
 これを読んでふと思ったのは、各作家はこういう本に自分の自信作を出しているのか、そうでないのか、ということである。他の作家の作品も入るということはライバル意識も多少あるだろうし、あまり出来の良くない作品を載せて読者に「この人の作品ってあまり面白くないんだなー」なんて思われるのも得策ではないだろうし。
 だからかどうかはわからないが、結構面白い作品が多かった。が、もちろん例外も存在する。
 もっともひどかったのは、一番最初の作品(作家名は伏せる)。ストーリーはイマイチ。まぁそれは許すとしても、文章があまりに稚雑。後半に現れる人物の登場のさせ方も非常に唐突だと思ったら、その直後にまるでその人物が居ないかのように会話が進む。真剣に「乱丁でページが飛んでるのか?」と悩んでしまったほど。正直言って、素人の自分の方がもっとまともな文章書けるよ。いや、実際に書けるかどうかはわからないが、素人にそう思われる事自体が問題だと思う。
 あと不思議だったのは、7番目の作品。これはジョーク小説と思って良いのか?とれとも真剣に書かれたものなのか?内容(登場人物の会話等)はジョーダン系なのだが、主人公や小説自体の文体が真面目なので読んでいても笑えない。そのせいか読後感がすっきりしない。この作家はわざとそれを狙ったのだろうか・・・・・?

○白銀荘の殺人鬼(愛川晶&二階堂黎人)
 多重人格者の立脇順一。その女性人格である美奈子と晴代。物語は美奈子の視点で進められて行く。
 順一は妻と娘と3人で山奥の雪深いペンションにスキー旅行に行く計画をしていた。そしてそれを利用して、美奈子は晴代と共謀して順一の肉体を自分達のものにしようと企んでいた。ペンションで妻を殺害し、目くらましのために他の利用客も数人殺害しよう、というのだ。計画は様々なアクシデントがあるものの、順調に進んで行くのだが・・・・・・。
 殺人者の視点で話が進むため、当然殺人のシーンもしっかり描かれている。そういうのは自分の好みではないので、少々げんなりした気分になってしまった。
 ただ、物語全体としては良く出来ており、無駄が無く洗練されていうような印象を受ける。残虐シーンに耐えられる人にはお勧めだと思う。

○仮面舞踏会(栗本 薫)
 帰って来た伊集院大介シリーズ。
 設定として、天狼星の事件が終わった後、姿を消した伊集院大介が帰って来て事件に遭遇、というもの。(ちなみに天狼星は最初の1冊しか読んでません。だってグロいんだもん)
 まだパソコンがあまり普及しておらず、インターネットよりはパソコン通信が大主流だった頃。ハンドルネーム”アトム”こと滝沢稔の友人姫野は、”姫”というハンドルでネットオカマ(今ではネカマっていうの?)としてチャットルームに出入りしていた。周囲の姫ファンの強い要望によりとうとうオフ会に顔を出すはめになってしまう。そこで姫野は友人の女性に身代わりを頼むが、オフ会の場所でその女性が刺殺されてしまう。犯人は姫ファンの中にいるのか?それとも・・・・。
 滝沢青年と伊集院大介の2人を除けば、事件関係者との会話は全てチャットで行われるというのが珍しく、そして面白くもある。栗本氏がパソコンやチャットにどの程度精通しているのかはわからないけれど、結構確信を突いてる文章もあったりして、なかなか勉強されているようだ。
 この本を読み終わった時、「久し振りにどこかチャットにでも参加しようかなぁ〜」と思った。それは登場人物のキャラクタが個性的だし、色魔(笑)な人物が実際にチャットすると実は良い人物だったりと、温かいものを感じたせいかもしれない。

○カレーライスは知っていた(愛川 晶)
 美少女探偵根津愛が登場する短編集。
 謎解きに関してはどれを読んでみても”都合が良い”という印象だったのが残念。最初から答えが分かってる人がその答えを披露する、という感じなのだ。文庫のタイトルでもある「カレーライス・・・」にしたって、にんじんが生であるのは本の中の登場人物じゃないとわからないし、それが犯人にどう繋がっていくかも、読んでいてよくわからなかった。
 ただ、料理や食べ物から推理していくというのは、ちょっと変わっていてそういう意味では面白かったかな。

○有限と微小のパン(森 博嗣)
 S&Mシリーズの最終作。だからなのかわからないが、シリーズのなかで一番ページ数が多く、860ページにも及ぶ。そして最終作にふさわしい登場人物。なにせ、1作目に登場した真賀田四季を始めとする人物が多く出てくるのだから。逆に普段出てくる登場人物が出て来ないのはちょっと寂しいかもしれないが、まぁ仕方ない。
 事件のトリックとしてはかなり『はぁ?」っと思ってしまうものだったが、テーマが”バーチャルリアリティ”なので、こういうのもアリなんだろう・・・・なぁ?
 ところで、森氏の小説には沢山の「天才」もしくは「天才的な人」という人物が登場する。その人たちの言動を見ていると、「そうそう、頭良くてちょっと変わってるヤツってそんな感じだよ」と言いたくなってしまう。描写が上手いのだ。
 逆にちょっとズレてる(頭が悪いという意味ではなく)人を描写するのも上手い。頭のよろしくない人は頭の良い人を描写することはできないけど、頭の良い人はそうでない人を描写できるのは可能だろうから、森氏は頭の良い人なんだろうなぁ、とつくづく思う。

○今はもうない(森 博嗣)
 S&Mシリーズの8作目。1作目がら読んで、とうとうここまでたどり着いたか、という実感。シリーズの最終まであと2作。
 今までこのシリーズを全てここで紹介したわけでばないのに、この「今はもうない」を紹介したのには理由がある。まず、今までの7作品は全て犀川と西之園萌絵の視線から書かれていた。言うなれば、彼等が主人公である。しかし、この「今はもうない」は、その2人以外の、第三者の視線で書かれている。それが斬新で良かったのだ。
 物語は、ある別荘に招かれた笹木氏の語りで進む。彼が訪れた夜にタレントの姉妹の死体が発見される。1人は娯楽室、もう1人はその隣の映写室で、どちらも密室状態であった。彼女らは自殺したのか?あるいは殺害されたのか?笹木氏は西之園譲と推理をはじめるが・・・・。
 正直言うと、事件の真相(トリック含む)はあまり面白くなかった。多少疑問も残るし。ただ、それ以上に笹木氏と西之園譲のやりとりが面白く、最後には「ああ、そういうことだったのか」と思わされる。この8作目は、実はそれがメインのミステリーとして書かれているのかもしれない。

○再会そして復讐(前田朋子)
 妖怪探偵犬姫シリーズの第3弾。
 10年振りに再会し、笠松宏美の家に遊びに行った高校の同級生ら5人。その中の1人が不倫を告白した直後に起こる殺人事件。ひょんなことから宏美の家に遊びに行っていた俊明、犬姫、明恵和尚を巻き込んで起こる第2の事件。犯人は5人の中の一人なのか?それとも・・・・?
 読み終わった感想は、「面白かったけどつまらなかった」である。まず面白かった理由は、ストーリーがすっきりしていて読み易かったし、トリックも良い意味で簡単で理解しやすかった。つまらないと思った理由は、一言で言うとすぐに読み終わってしまった(いつも通勤電車の中で読んでいるが、1往復で読破してしまった)から。この事件を木の幹とすると、枝葉が最低限必要な部分を残して、バッサリとカットされているような印象を受けたし、だからストーリーがすっきりしていると感じたのかもしれない。寝る前の会話や食事中の様子など、事件とは関係ない部分ももう少し組み込んであると良かったと思う。
 また、第2弾に比べて軽さが無くなったと感じたが、それは主人公(語り手)が半分は宏美という大人の女性になったからかもしれない。
 簡単な(理解しやすい、という意)推理小説がが好きな方には、超おすすめの作品だし、良い意味で2時間ドラマにいいかも。(犬の役が大変?)

○どちらかが彼女を殺した(東野圭吾)
 東野氏の作品の中では、結構古いものを今さらながらに読んでみた。
 和泉園子が自殺を装って殺され、刑事である兄の和泉康正が犯人に復讐しようと、単独で調査を開始した。佃潤一と弓場佳世子のどちらかであるという所までわかったが、どちらが犯人かがわからない。和泉の復讐を阻止しようと加賀刑事も捜査を行うが、やはり捜査に行き詰まる。果たしてどちらが犯人を殺したのか?
 これは、ここでは紹介していないが、以前読んだ「私が彼を殺した」と同じように、最後になっても犯人の名は明かされない。いわゆる「読者への挑戦」である。
 犯人の名が明かされない代わりに、袋とじで推理の手引きがついている。それには「○○(犯人の特徴)である○○(犯人の名)が犯人」と書いてあり、その「○」に入る言葉、犯人の名は埋められるのだが、○○(特徴)=犯人の理由がよくわからない。それについてもう少し詳しく書いてあると読後感がもう少しすっきりしたと思う。
 内容は面白かったし、このテの企画も好きなので、東野氏はもう少しこういうのを書いてくれたら嬉しいなぁ。

○そして二人だけになった(森 博嗣)
 以前紹介したVシリーズでもS&Mシリーズでもない、単発の作品。
 目の見えない勅使河原潤の弟と、森島有佳の双子の妹が、それぞれ兄と姉の影武者として”バルブ”と呼ばれる建物の生活実験に参加することになった。集まったのはその建物の関係者、合計6名。プログラムの暴走(バグが、予め仕組まれていたのか?)によって唯一の出口が閉鎖された中で連続殺人が起こり、残ったのは勅使河原(の弟)と森島(の妹)だけだった。果たしてどちらかが犯人なのか?
 小説は勅使河原の視点と森島の視点で交互に描かれている。その内容からすると、どちらも犯人であるとは思えない。だからといって、誰かが本当は生きていて、ということも考えられない。一体最後はどういう展開になるんだろう?と思ったけれど、正直言って狐につままれたような気持ちになってしまった。事件の後に登場する宮原という人物から語られる内容がその原因なのだが、それをちゃんと理解(納得)するのは、もう1回この小説を最初からちゃんと読み直さないとダメなようだ。ちょっと難しい作品かもしれない。

○幻想運河(有栖川有栖)
 正直言うと、これはあまり面白くなかった。ドラッグの話が出て来たり、変な美術品が出て来たり。ただ、そういう意味ではタイトルと内容はマッチしているかもしれない。
 良くも悪くも、今まで読んだ有栖川有栖氏の作品とは系統がかなり違うような気がする。(ちなみに、これは作者と同姓同名の登場人物が出てくる話ではない)

○本陣殺人事件(横溝正史)
 横溝氏の小説を読むのは初めてかもしれない。今まで多くの作品がTVドラマや映画化されているので、読みたいと思う気持ちが湧かなかったからだろう。
 それなのにこれを読んだのは、知らない作品だったし、氏の作品はトリックが凝っているからである。これは文庫本のタイトルである中編の小説1編と短編が2編収録されている。
 メインの「本陣殺人事件」は密室、いや、殺人が起こった離れ自体が内側から鍵がかかっていたので蜜建物?の中で、結婚したばかりの夫婦が式の夜に何者かに惨殺されてしまう、という事件で、そのうえ降り積もった雪の上に犯人らしき人物の足跡が無いという、まさに自分好み(笑)の小説。ただ、結末はなんだかちょと肩すかしだった。
 3つの作品のなかで一番横溝氏の感じがでていたのは「黒猫亭事件」かな。改装中の酒場「黒猫」の裏庭から女性の遺体が発見された。腐乱のため顔がわからず、身元がわからない。その「黒猫」の経営者夫婦の行方がわからないことから、彼等が犯人と思われたのだが・・・、という話。これが一番横溝氏っぽかったけど、小物などを使ったトリックが一番凝っていたのは「本陣殺人事件」、という印象。
 たまにはこういう古い作品を読むのもいいけど、言葉使いが少々難しいのが難点と言えば難点であろうか。

○プリズム(貫井徳郎)
 小学校の女教師が殺された。睡眠薬入りのチョコレートを食べ、意識が朦朧となった所を置き時計で殴られたと思われるが、何かの反動で落ちて来た時計が不運にも頭に当たった事故とも考えられる。しかし、窓がガラス切りで開けられていたこため、殺人事件の可能性が濃い、という状況。
 この小説は4つの章に別れていて、それぞれの主人公が異なって推理を進め、バトンタッチをするかのように話は進んで行く。1章はその女教師の教え子の小学生、2章は同僚の女教師、という具合である。
 ネタばれになってしまうが、結果的にこの事件は”真の犯人”は解明されない。そういう意味で本格好きの自分にとっては全く不完全燃焼であったが、この作品の趣旨が「真相は読者にゆだねる」というものであるので仕方ないだろう。
 ただ、1つの事件を色々な人の視点で見るということは、それぞれの考え方の違いで犯人を推理することになるし、殺された女教師に対する見方も違ってくるので、そういう部分を楽しむと良いかもしれない。

○青の時代(栗本 薫)
 とても久し振り・・・って程でもないけど、そこそこ久し振りに読んだ栗本氏の小説。伊集院大介の大学時代の話。
 舞台界の有名女優、花村恵麻。もう中年といっていいような彼女が、過去を回想する形で物語は始まる。
 劇団ペガサスに入団した恵麻は、劇団の借金の返済のために喫茶店で働く。が、ある日喫茶店のママが毒殺されてしまう。容疑者にされた恵麻は伊集院大介に相談するが、第2の殺人が起こり・・・・・。
 主人公の花村恵麻の独白というか、思考が書かれている部分が多くある。思考なので会話が全くないわけだが、その部分を読むのがちょっと辛かったかな。
 この小説は女優が過去を振り返るという形で書かれているけれど、実は作者が昔を振り返って懐かしんでいる小説なのかもしれないと思ったし、実際にあとがきにそのようなことが書かれている。エピローグ1で書かれている昔の友人や恋人を懐かしむのは、誰にでもあることだし、だから少し胸がキュンとした気分になる。

○怪文書殺人事件(吉村達也)
 この小説では始めから犯人が2人に絞られている。犯人は夫か妻か?
 警視庁を退職した烏丸ひろみのもとに1通の脅迫状が届けられる。それは半紙に筆で書かれたものだった。精神分析医の氷室に相談するが、実際に殺人事件が起きてしまう。が、被害者は烏丸ひろみではなかった。一体誰が(いや、どちらが)犯人か?
 精神分析医が登場するだけあって、思いっきり心理的な面から犯人を突き止める。それはまぁそれで面白いのだが、「それは人それぞれなんじゃない?」と思うような面も1つのパターンしかないように書かれているので、少々都合の良いような感じを受ける箇所もある。それに、心理的な面だけで犯人を突き止めるというのは少々無理があるような気がする。これは好みの問題かもしれないけど、物的証拠やからくりを解明して犯人を割り出す方が説得力があるような気がする。精神面だけで説かれると疲れちゃうしね。
 というわけで、結構面白かったけど自分好みではないな、と言う感じかな。

○すべてがFになる(森 博嗣)
 以前紹介した森氏の「黒猫の三角」とはちがうシリーズのもので、これはS&Mシリーズの第1冊目。このS&Mというのは、別にそういうシュミを意味しているのではなく、登場人物の名前(犀川という助教授と富豪の娘の萌絵)である。
 これはストーリーを紹介するのがとても大変だな・・・簡単に言うと、思いっきりコンピュータで制御されている建物。その中に1部屋だけ、誰も入ることのできない部屋があり、その中で15年間一歩も部屋から出ずに暮らしている女性がいた。要は監禁状態というやつである。で、その女性が殺され、更にそのコンピュータの暴走(?)で死体が部屋の外に運び出される。一体どうやって犯人は部屋に入り、どうやって殺人を犯し、どうやって外に出たのか?更にはどうやってコンピュータを暴走させたのか・・・・。
 結構コンピュータ用語が出てくので、少しばかりとっつきにくい面もあるかもしれないが、トリック自体はコンピュータに頼っていない(トリックを仕掛けるのは人間だし)ので、コンピュータに精通していない方でも楽しめるのではないだろうか。
 ちなみに、自分は暴走の原因は見破ったけど、犯人や部屋の出入りのトリック、なぜ殺人を犯したかなどについてはわからなかった。
 このS&Mシリーズは本書を含めて10冊あるらしい。全部読んでみようか・・・な?

○どんどん橋、落ちた(綾辻行人)
 久し振りに読んだ綾辻氏の作品。5編から短編集なのだが、どれも色々な意味で笑える。最初の2つは推理小説の中では限りなくアンフェアに近いので、もしこれが普通に推理小説として書かれていたらすごく腹が立っただろうと思うが、読者にそう感じさせないように工夫されている所が良い。
 この5編のなかで僕が一番気に入ったのは「伊園家の崩壊」かな。母の常(ツネ)が発狂して死んでから伊園(いぞの)家がおかしくなった。笹枝(ササエ)は麻薬中毒になり、息子の樽夫(タルオ)は学校でいじめに遭う毎日。そして弟の和男(カズオ)はヤンキーになり、妹の若菜(ワカナ)は交通事故で両足切断、車椅子での生活を送っていた。そんなある日、家の2階で笹枝の血まみれの死体が発見されて・・・・・。
 名前から連想する家族は幸せそうなんだけど、その家族とは関係ないという著者の注意書きがあるので、関係ないんでしょう。(笑)

○頼子のために(法月綸太郎)
 この作品は、以前法月氏が書いた中編を、そのままのプロットで長編に書き換えたものらしい。言ってみれば「手を抜いて」長編を書くつもりだたらしいのだが、かなり苦労したそうで、全然手抜きができなかったとか。
 1人娘で高校生の頼子を殺した真犯人を突き止めて殺害し、自分も毒を飲んで自殺する・・・・。という西村悠史の遺書がみつかる。遺書には、犯人は頼子の通っていた高校の教師の名前が書かれていた。
 頼子が通っていたのは名門女子高校であったため、スキャンダルを恐れた理事長は警察に手をまわして遺書には裏があるように見せかける。その手伝いをさせられることになった法月綸太郎は、嫌々ながら事件の捜査をするうちに、様々な事実を発見して・・・・・。
 基本的にはそれほど中身の濃い物語ではないけれど、遺書に書かれた内容の事実関係を調べるというのもなかなか面白い。ただ、終わり方は救いがないような感じであるのがちょっと残念。でも、あれしか方法がなかったんだろうなぁ。

○麦酒(ばくしゅ)の家の冒険(西澤保彦)
 登場人物は基本的に4人なのだけれど、4人とも以前紹介した「スコッチ・ゲーム」に登場する。ただし、「スコッチ・ゲーム」では主人公(語り手)はタカチだったが、今回はタックである。
 高原旅行を満喫した4人は、帰り道でのアクシデントによって、1軒の所有者不明の別荘にたどり着く。1階にはベットが1つ、2階にはクローゼットの中に隠された冷蔵庫があり、その中には冷やされたビールとジョッキがあるだけだった。誰が何の目的でベットとビールだけを置いておいたのか?4人はビールを飲みながら推理していく。
 別に誰かが殺されたりする話ではないのだけれど、こういった特殊な状況下での推理の過程が面白いし、4人の会話も自然な感じなのが良い。
 これを読んでふと思ったのは、小説って、こういうふうに状況を設定して、それにつじつまを合わせるように書いて行くのかな?それがすべてじゃないだろうけど、そういう書き方(作り方)もあるかもしれない。
 そういえば西澤氏ってビール党だったんだよね。だからこういうタイトルの小説書いたのかな?

○魔球(東野圭吾)
 これは確か初期の小説だったと思うけれど、数ページ読み進んだだけで「東野氏ってすごいなぁ・・・・」と改めて思ってしまった作品。
 東西電気株式会社のトイレに”永遠に爆発しない時限爆弾”が仕掛けられる。犯人はなぜ爆発しない爆弾を仕掛けたのか?その数日後、高校球児の捕手、北岡とその愛犬の刺殺死体が発見される。なぜ犯人は先に犬を殺し、その後に北岡を殺したのか?そして更に1ヶ月後、1千万円を持った東西電気の社長が誘拐されるという事件が発生するが、その日のうちに社長は家に帰される。犯人はなぜ金も奪わず社長を家に返したのか?そして、今度は北岡と同じ高校球児の有名投手、須田武志が殺されてしまう・・・・・。
 会社のトイレに仕掛けられた爆弾と、高校球児の殺人事件がどこでどう繋がるのかがまず大きな謎。小さな謎を紐解きながら大きな謎を解明させていくストーリーは圧巻。また、刑事が登場する話であるにもかかわらず”2時間ドラマには丁度いいんじゃない?”的な内容ではないこともgood!
 「約束」の章と「右腕」の章はとても悲しい話でやりきれなさが残る。「約束」の最後の章で刑事がある人物に「あなたが犯した罪は、やはり深かったと思いますよ」と言うシーンがあるが、その真意が小説を読み終わるまで、いや、読み終わってもしばらくわからなかった。でもハッと気が付いてみると、うん、確かにその通り。その人物の犯した罪は深いよ、うん。だってもし・・・おっと、これ以上はネタバレの恐れがあるからナイショ。(^^;

○黒猫の三角(森 博嗣)
 1年に1度、ゾロ目の日にゾロ目の年齢の女性が殺害される事件が発生。6月6日に44歳の誕生日を迎える小田原静子のもとに脅迫状が届き、何でも屋の保呂草は警護を依頼する。が、その甲斐なく密室で殺されてしまう。捜査を進める保呂草とその仲間達。しかし、次ぎなる殺人と、現場に居合わせた仲間の紫子が襲われて・・・・・。
 犯人は、最初の密室殺人が起こった時の状況と、その状況を説明する関係者の証言を十分検討すれば、だいたいの目星はつくのではないだろうか。ただ、自分は騙されたので、真犯人告発時の”あなたを疑いはじめたきっかけ”の部分を読んで「くそー、そう言われればそうだ!」とちょっと悔しかった。登場人物のキャラクターも、話の進め方も面白くてとても良かったのだが、密室のトリック(実際には、密室と錯覚させた)がちょっと苦しかったのが残念。
 また、過去にもその手の本があったが、この本にも「殺人の動機なんてどうでもいい」というようなディスカッションが出てくる。今までの中では、この本の解説が一番納得できたかな?
 この「黒猫の三角」は、Vシリーズ(氏の作品には他にS&Mシリーズというのがある)だそうで、この「黒猫」がそのシリーズの一番初め。だからなのかもしれないが、このシリーズの続きが読みたい、と思わせるような終わり方をしているのがニクイ。

○殺人理想郷(太田蘭三)
 刑事物の小説ってどうしてこうなんだろう。これも感想は「まぁ、2時間ドラマには丁度いいんじゃないの?」っていう程度。シリーズものらしいから尚更丁度いいじゃん、ってな感じ。刑事物はどうしても”敷かれたレールの上をただ歩く”感が強いので仕方ないんだろうな。まぁ、買う時に予想していたことではあるけれど。
 では、なぜ予想していたのに買ったか?それは第一の事件の舞台が”国立”だからだ。しかも、どうやら家から結構近いようだ。当然国立だけでなく立川や国分寺なども出てくる。
 その第一の事件は、国立のとある公園内の1本の木で、3人の首つり死体が発見された、というもの。うち1人は他殺を偽証するために”吊られた”ようである。調べていくうちに、過去の詐欺事件と結びつき、更にはその詐欺事件の容疑者の命が狙われて・・・・。
 最初、3人の首つり死体の関係に興味を持ったのだが、結局はあまり関係がなかったようで、ちょっと肩すかし。また、所々にちりばめられているジョーク(なのかなぁ?)が古いというか、ご高齢の方が好みそうというか、要は自分にはよくわからなかった。それから、タイトルもイマイチ。確かに物語の終盤で房総の風光明美な場所が出てくるが、どうもピンとこない。物語に色々な要素を詰め込み過ぎたからか?
 とまあ、あまり良くないことばかりだと悪いので、少しほめておかないと。そうだねぇ、お色気あり、グルメありだし、そういう意味でも2時間ドラマには丁度いいんじゃない?

○ハサミ男(殊能将之)
 女子高生を殺害し、首にハサミを突き立てる猟奇的殺人者の”ハサミ男”。そのハサミ男が第3の獲物を狙い、彼女の身辺を調査している時、偶然にもハサミ男の殺害方法を真似て殺害された彼女の死体の第一発見者になってしまう。一体誰が何のために彼女を殺害したのか?ハサミ男は調査をはじめる。
 この小説のトリックというか、真相というか、読者をだますネタに(読んでいる途中で)気が付く人は結構いるようだ。自分も途中で気が付いたのだが、それは作者の誘導の仕方が上手かったのか、フェアじゃなかったからか、結局その考えは捨てて読み進めたら、なんだ、やぱりそうだったんじゃないか、という感じ。いや、もちろん「騙された〜」とは思ったけれど。
 では、どういう所に対して「フェアじゃない」と感じたか。それを書くとネタバレになってしまうので書けないけれど、そうだな、太ってる人に対するイメージって、人それぞれなんだな、とだけ言っておこう。(笑)

○スコッチ・ゲーム(西澤保彦)
 う〜ん、残念。謎の作り方やストーリーはとても面白い。ただ、犯人当てがちょっと強引というか、その人以外に犯人は有り得ないという推理が弱いような気がするし、動機も「そんなんで人殺しちゃうの?」という感じ。著者もそう感じるのか、頻繁に「そういう動機で人を殺そうと思うヤツもいる」という話しが出てくる。でもまあ、それはいいのだが、この小説が色褪せて感じ、そして残念と思ったことが2つあった。
 1つは「○○(人の名)は、後になってそう知ることとなる」というように、事前にその後の話しの内容を暗示する説明文のようなものが書かれてしいること。流石にミステリーの内容に触れることは無かったけれど、やはり面白さが半減してしまう。また、このような説明的文章もそうだが、それ以外にも現在進行形で書かれている部分が何カ所かあり、それが余計に説明的に感じられ、それまでちゃんと流れていたストーリーが、その1行で止まってしまったのがとても残念だった。
 主人公(♀)が高校卒業直後に、恋人であり女子寮の同室者の女子生徒(要は同性愛ってやつですね)が殺され、その後に次々起こる殺人事件に巻き込まれるが、未解決のまま地方の大学に進学する。大学2年になった彼女が、そこでの友人に推理してもらう、という内容。言い換えると、大学2年の主人公が過去の事件を仲間に話し事件を解決する、という時間設定になっているのは、この小説より先に、同主人公が大学生になってからの話しを書いてしまったからなのだろう。
 タイトルのスコッチはお酒のスコッチのことで、当然話の中にスコッチが出て来るのだが、タイトルにする程重要かな?自分はもっと良いのがありそうな気がするが、著者の西澤氏は大の酒(ビール)好きらしいので、あえてこのようなタイトルにしたのかも?

○名探偵の掟(東野圭吾)
 あっはっは、これサイコー!とにかくひたすらパロディーで、読んでいるとつい口元が緩んでしまう。
 短編小説なのだが、お決まりのように名探偵と警部が出て来る。基本的にこのペアは各小説同じ(あくまでも”基本的に”である)。そして、このペアが殺人事件を調べるのだが、密室あり、アリバイ崩しあり、消えた凶器あり、閉鎖された空間あり、意外な犯人ありで、殆どの推理小説のパターンを網羅しつつ、それらのネタをおちょくっている。これらの中で一番気に入ったのは、ダイイングメッセージの話しかな。うん、かなり笑える。(笑)
 主役2人が小説の世界を離れて「大体この作者にはキャラを書き分ける能力なんてないんだから」「アリバイ崩しものなんて、犯人や動機当ての愉しみがない」(←激しく同意)「こんなトリックなんて何の独創性もない」と作家を批判していたと思えば、「大体『○○邸見取り図』なんてマトモに見る読者はおらん」「マトモに推理しないくせに、登場人物全員を怪しいと思ってるんだから、最後に誰が犯人でも『あ、やっぱりね。そうだろうと思ってたんだよなぁ』なんて平気で言う」など、読者に対する非難もあり、読者側の不満と作家側の不満が書かれているのが楽しい。続編(こちらは長編)もあるので、読んでみようかな。
 しかし、こんな本を書いちゃって、他の作家先生からの風当たりは大丈夫なのか、なんて心配してしまった。

○札幌源氏香殺人事件(木谷恭介)
 なんか・・・・・。期待外れだった。木谷氏は100册以上も推理小説を書いているので、それはそれで凄いことだけど、ネタが尽きたのか?という感じ。
 お香の教室に通っている女性が主人公。その同じ教室に通っていた友人がホテルで殺害される。彼女は教室の先生と不倫の関係にあり、その関係のもつれで先制が殺したのか?しかし、その先生も遺体でみつかり、連続殺人へと発展するのか?
 主人公、警視庁に勤める友人、その部下(実体は上司?)などはまあまあキャラが書かれているが、それ以外の登場人物に存在感が無く、そういう意味でだれが犯人か見当がつかない。適当な理由を付けてしまえば、だれが犯人であってもおかしくないのだ。また、お香のマークがダイイングメッセージとして使われる。本来の意味を隠すため、犯人が線を加えて別の文字に偽装したというのだが、別人によって線が書き加えられたのか、だとしたら元々何の記号だったのかの鑑定も待たずに「○○と書かれていたに違い無い」と決めつけている。恋愛の話の挿入も強引。更には、題名が「札幌」なのに、舞台は基本的に東京。ということで、色々な意味で”御都合主義的”な小説であったのが残念・・・・・。
 ただ、お香についてしっかり調べてあるのは感心したし、2時間ドラマとしては適当なんじゃないかな?

○王を探せ(鮎川哲也)
 鮎川氏の小説を読むのは、多分初めてである。
 物語は犯人が評論家を殺す場面から始まる。その時に犯人の名前は明らかになっている。ってことは、刑事コロンボ風の内容なのか?と思いきや、そうではない。死体が発見されてすぐに犯人の名前が警察によって調べられるが、被害者との関係がわからない。そこで、関東に住む加害者との同姓同名の人物を4人(途中で1人増えて5人になる)探して取り調べるが、全員にアリバイがる。一体誰が犯人なのか?
 この小説自体は大分前に書かれたもののようで、携帯電話がでてこないどころか、JRが国鉄とかかれている。でもこの”犯人の名前だけが分かっている”という設定が珍しくて読んでみることにした。
 途中まで読み進んでもタイトルの意味が分からなかった。「なんで”王”なんだろう?」って。もちろん、途中でタイトルの理由がわかるのだが、”王の謎”が簡単に解明されるので、そう言う意味では小説の内容(王の部分)をもう少し凝ったものにすればタイトルも引き立ったんじゃないかな。
 トラベルミステリーなので自分の好みにはあまり合わなかったが、良い作品だと思うので、好きな方にはお薦めです。

○顔をなくした女(前田朋子)
 これは、妖怪探偵犬姫シリーズの第2弾。
 高校生の俊明は、犬の姿にされて780年生きている犬姫、そして腐れ縁(?)の和尚である明恵と出かけた和歌浦の温泉で、殺人事件に巻き込まれる。同じホテルに泊まっていた団体客が殺されたのだ。暫く前に起こった事故死に関係があるのか?犬姫が冴えた推理で謎を解いていく。
 小説は軽いタッチで書かれているし、登場人物のキャラクターも個性がありとても読み易い。ただ、トリックに疑問が残ってしまう所があるので、それが少々残念。でも、分かりやすく書かれているので、「推理小説は難しいから」とあまり読まない人でも十分楽しめるはず。
 これからも楽しい作品を期待してま〜す。

○双頭の悪魔(有栖川有栖)
 有栖川有栖2連発ぅ〜♪
 これは、「孤島パズル」から約3ヶ月後の話し。
 家出をしたマリアを連れ戻しに、ミステリー研のアリス、江神、望月、織田の4人が向かった夏森村。更にその奥の木更村にマリアはいるという。マリアと接触しようとする4人だが、木更村の住人・八木沢に追い返されてしまう。
 夜、木更村と行き来できる唯一の橋を渡って侵入を試みるが、江神だけがマリアとの接触に成功、あとの3人は捕まって再度夏森村へ帰される。
 次の日、またまた木更村に向かうアリス達だが、大雨のせいで木更村へ通ずる橋が流され、電話も通じず、一切の交信が途絶えてしまう。そんな中、木更村、夏森村の両方で殺人事件が起こる。これらの殺人事件は無関係なのか、それとも・・・・?
 これはかなりの長編で、約680ページ。読みごたえ十分。
 有栖川氏の作品は大きく2つに分けられる。アリスが学生の時のものと、卒業後のもの。で、なぜそう分けられるかというと、前者の探偵役は江神で、後者の探偵役は火村とう人物で、主要登場人物が違うからだ。2人とも推理はキレるし、キャラもそんなには違わないけど、自分は前者のシリーズが好き。
 その理由は、話しの内容が分かりやすい(納得しやすい)というのもあるかもしれないが、それよりも登場人物のキャラが良い。特に望月・織田の漫才入ったやり取りには、思わずニヤリとさせられる部分もある。
 今は作者のお歳のせいか火村の方しか執筆されていないようだが、いずれまたアリス、江神、望月、織田、マリアの5人を再会させて話を作って欲しいと切に願う。
 話はまたこの小説に戻るが、マリアの家出は↓で紹介した「孤島パズル」から繋がっている。内容自体は全く別の話しなので、そういう意味ではどちらを先に読んでも構わないのだが、「孤島パズル」を先に読んだ方がマリアの心情が分かりやすくて良いかと思う。

○孤島パズル(有栖川有栖)
 今まで1作しか紹介していなかったけれど、有栖川氏の作品は結構読んでいる。これは「月光ゲーム」同様、主人公である有栖川有栖の大学生の時の話で、有栖川有栖氏(作家の方)の2作目の小説。
 ミステリー研の新入部員有馬麻里亜の叔父が所有している別荘に、先輩である江神と3人で遊びに行く。別荘は嘉敷島というU字型をした孤島にあり、片方の先端に麻里亜の叔父の別荘、もう片方の先端に、ある画家の別荘が建っている。
 別荘に招かれたのはアリス達を含めて十数人。そんな中で次々と殺人事件が起こって・・・・・。
 事件の解決のきっかけとなるのは、道に落ちていた”自転車のタイヤの跡が付いた島の地図”である。なぜそんなもので解決できるのか?は、江神の理論的な推理で大納得。

○雪密室(法月綸太郎)
 またこのテの本を買ってしまった。どうもこういうタイトルを見ると読みたくなってしまうらしい。
 ただ、この小説が他と違うのは連続殺人ではなく、殺されるのは1人だけであるということ。殺人が起こったのは雪が振り止んだ時間にも関わらず、建物の外には犯人の足跡が残されていなかった、というのがタイトルの由来だろう。
 法月氏の小説を読むのは初めてだけれど、結構硬派な印象を受けた。話し的には面白かったけれど、事件とはあまり関係のない部分で釈然としない内容があって、それについては少々不完全燃焼。これ以後の作品ではっきり書かれているのだろうか?
 これはあとがきに書いてあったことだけれど、氏はこの作品を書く前に、それまで勤めていた会社を退職したそうである。この小説には似たような登場人物がいて、「後で読み返して気が付いたのだが、その人物を登場させることによって、自分(が会社を退職したこと)を正当化しようとしていた」らしく、「書いていた時は全く意識していなかったのが恥ずかしい」と思ったそうだ。こういうふうに、作家のメンタル的な部分が作品に現れたりするんだなぁ。
 そうそう、この小説には、ほんの少しだけであるが、法月綸太郎という探偵が登場する。どこかでこういう設定を聞いたことがあるような・・・・?(笑)

○ある閉ざされた雪の山荘で(東野圭吾)
 雪に閉ざされた山荘ものというのは多くあって、このタイトルをみてもまたそのたぐいだろう、と思ってしまうのだが、ちょっと違う。
 ある劇団のオーディションに合格した男女7人が、指導者からの通達により、ある山荘にやってくる。その通達は、次回の舞台はミステリーものにするので、その演技の訓練のため、山荘に集まってもらった、というのだ。設定は雪に閉ざされた山荘で、次々に殺人事件が起る、というもの。
 実際には晴れて雪の全くない山荘で、夜毎に人が消え、「死体の状況」と書かれた紙が発見されて・・・・。
 これは本当に演技の訓練なのか?実際に殺人が起っているのか?
 東野氏の小説は斬新な設定が多い上、ラストで読者を「え?」っと言わせるものも多いが、これはその代表的なものだろう。

○月光ゲーム(有栖川有栖)
 最初に読んだ有栖川氏の小説は「朱色の研究」という本で、文庫としてはわりと最近出たものだと思う。その本は正直いうとイマイチだった。というのも、犯行の動機が納得できるものではなかったから。
 では、今回紹介する「月光ゲーム」だが、こちらの方も動機設定に少々無理があるような気がするが、それ以上に推理が見事だった。読者にも十分推理する材料を与えておきながら、読者の思いつかない方法で推理していく。
 ストーリーの方は、大学1年の有栖川有栖(有栖川氏は、自身と同姓同名の主人公を持ちいたシリーズを売りとしているは)が入部したミステリー研究会で、休火山にキャンプをしに行くことになった。そこには他の大学からもキャンプに来ているグループがあり、それぞれが打ち解けて眠りにつくが、突然山が噴火し、崩れた土砂によって下山の道を断たれてしまう。そして、その中で連続殺人が起る。
 いわゆる密閉された空間もの。状況証拠ではなく、物的証拠で推理しているのが良い。

○佐渡ヶ島殺人旅情(中町信)
 感想を一言で言うと、”2時間枠のサスペンスドラマみたい”である。良く言えばとっつきやすい、悪く言えば深みがない、といった感じ。
 最初に読んだ時は、登場人物同士の会話がすっきりせず、少し読みづらかった。読んでいて引っかかるというか、スピード感がないというか・・・。ただ、それも読み進むうちに馴れたせいか、文章が変わったせいか、さほど気にはならなくなったが。
 定価で買っていたら「なんじゃこりゃ〜!」と思っている所だが、在庫処分で3分の1くらいの値段で買ったので、まあよしとしよう。
 ストーリーは、主人公の夫婦が佐渡に旅行をし、その行く先々で殺人事件に遭遇する、というもの。主人公の旦那の方は推理作家という設定だが、モデルは作者本人か?(笑)

○卒業−雪月花殺人ゲーム(東野圭吾)
 7人の大学生が主人公である。最初の事件は密室で、自殺か他殺か分からない状況で死んでいるのを発見される。次は茶道の遊び(?)である雪月花之式の最中に、青酸の入った茶を飲んで死亡。これまた自殺か他殺かわからない。果たしてこの2つの事件は自殺なのか他殺なのか・・・・?
 人はいったい何に「卒業」するのか?この事件を通して、登場人物らが「卒業」していく姿を描く傑作。
 ちょっとセンチメンタルな感じもするが、爽やかな印象を受ける作品だと思う。

○そして誰もいなくなる(今邑彩)
 題名でピンと来る通り、これまたクリスティの「そして誰もいなくなった」を題材にしているが、他と大きく違う所がある。それは、閉ざされた空間での事件ではない、ということだ。
 とある女子高の創立100周年記念で演劇部によって上演された「そして誰もいなくなった」の最中に、最初に服毒死する役の生徒が本当に青酸を飲んで死亡してしまう。上演は中断されるが、それからも演劇部の生徒が、芝居の筋書通りに殺されてゆく・・・・。
 この小説の2/3で犯人は判明するが、残りの1/3に隠れた犯人の存在が浮き彫りにされてゆく。いわゆる”密秘の故意”というやつだ。
 すごく良く組み立てられたストーリーだが、あまり面白いと思わなかったのは、主人公が女子高生だからか、文章もしくはストーリーが好みでなかったからか・・・・・?

○時計館の殺人(綾辻行人)
 著者は、中村青司という建築家が建てた館で起る殺人事件をシリーズ化して文庫本で6冊出していて、この「時計館」はその5作品目に当たる。(ちなみに、1〜4の作品も全て読んだ。6作品目はまだ)
 このシリーズは必ずある1人の探偵役とも言うべき人物が登場する。彼が事件を解き明かすこともあれば、そうでないこともあるのだが・・・。
 また、もう1つこのシリーズで登場する”中村青司の館”には、共通するある秘密が隠されている。作品を読む前にこの秘密を知っていてもなんら影響が無いのでばらしてしまうと、必ず秘密の通路や隠し部屋が存在し、犯人はそれを使って部屋に忍び込み凶行を行う、というパターンが多い。
 さて、肝心のこの”時計館”のストーリーだが、大学のミステリー研究会(と言っても推理小説ではなく、超常現象の方)の学生数人と雑誌記者、霊能者が、時計館に出没するという幽霊の降霊を行うため、時計館旧館に閉じこもる。窓も無く、館の外に出るにも鍵が必要である旧館の中で、次々と殺人が起って・・・・。
 なぜ旧館には窓もなく、鍵が無ければ外に出られない作りになっていたのか。10年前に起きた悲劇に謎が隠されていた・・・・。
 本格推理が好きな方にはお薦めの1冊です。

○雪 殺人事件(スジャータ・マッシー)
 最近外国作家の本を読んでいないなぁと思い、日本が舞台になっているということで手にしたのがこれ。
 タイトルからして、ユキ(雪)という女性が殺されるのだろうかと想像していた。確かに「雪」という名の女性は登場するが、ほんのチョイ役で物語とは殆ど関係が無かった・・・。
 主人公のハーフの女性は、なにかにつけてすぐイライラして、「あの人は気に食わない」と思ってばかりいるし、宿泊した旅館の女将の態度は悪いしで、感情移入して読むことができなかった。もっと心にグッとくる作品かと思っていたのに、期待外れだったのが残念。

○夏と冬の奏鳴曲(ソナタ)(麻耶雄嵩)
 正直言ってこれは今まで読んだ推理小説の中で、ワースト3に入るでしょう。
 殺人事件が起こって、その犯人が誰かということに関しては「そういうのもアリかな」と思うし、真夏に雪が降るという設定もまあ許そう。しかしその雪の中に死体が放置されたにもかかわらず、周囲に足跡が無かったいわゆる”密室”の理由、映画の中味がなんでああだったのか、墓を掘り起こしたりブレーカーを落として停電させた人物の登場は、はっきり言って読者をナメてるとしか思えない。この本は人から譲り受けたものだからいいけど、もし自分で買ってたら「金返せ!」と言いたいところだ。

○致死海流(森村誠一)
 推理小説には最初に登場人物が全員現われ、その中で事件が起って主人公が解決していくものと、最初に事件が起って、捜査をしていくうちに色々な人物が浮かび上がる、という2つのパターンに大体分かれる。
 これ後者の方で、典型的とも言えるだろう。実はこのパターンはちょっと苦手なのであるが、それは前半の半分くらいで、後半の半分は本ボシとにらんだ人物のアリバイ崩しやトリックの解明が主体で進むので結構楽しめる。
 ストーリーは、銚子沖で発見された女性の死体と、三宅島で発見された女性の死体が同一人物に殺害された可能性もあり、捜査を進めていくうちに犯人と思われる男性も密室で死体となって発見される。この密室トリックは解けてしまえば「な〜んだ」というシンプルなものだが、なかなか面白い。

○7人の証人(西村京太郎)
 おなじみ、十津川警部が登場するが、トラベルミステリーではない。
 十津川警部が何者かに襲われ、無人島に連れ去られる。そこには同じ用に連れ去られた7人の人間、そして彼等を襲った老人がいた。
 老人は、1年前に起った殺人事件で有罪になった息子の無実を証明するため、その時の裁判で証言した7人の人間を無人島に連れてきたのである。
 老人が少しずつ息子の無罪を証明して行くにつれ、その無人島で新たな殺人事件が起る。はたして犯人はその老人か、別の人間の仕業か?
 老人が息子の無実を晴らして行く理論は脱帽もの。

○殺しの双曲線(西村京太郎)
 「これは、双子を使ったトリックである」と冒頭に作者が明言している通り、双子を使ったトリックなのだが、そう思って読んでいても最後には「やられた〜」と思ってしまう。
 道を閉ざされた山荘で次々と殺人が起き、ついには全員が死んでしまう。またそれと平行して東京で立て続けに強盗事件が起る。その2つの事件がやがて交差するのだが・・・・・。
 アガザ・クリスティの「そして誰もいなくなった」を彷彿とさせる作品。

○そして誰かいなくなった(夏樹静子)
 タイトルからも分かる通り、これも「そして誰もいなくなった」を題材としている。
 豪華ヨットに招待された主人公、桶谷遥。無線に故障をきたしたヨットの中で次々と殺人が起り、最後には遥一人が残って・・・・。
 夏樹静子の小説には、見事な”どんでん返し”が多いが、この作品も例外ではない。



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