Terrible Booing Soccer

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●アルビレックス・ゲームレポート2008
第14節 vs川崎フロンターレ(HOME) 2008/6/28


(文:オヤジ 2008/7/7)


 川崎のサポーターには辛い試合となってしまったことだろう。ジュニーニョの不在と誤審でのPK献上、我那覇のPK失敗、10人の相手を30分以上攻め立てたにもかかわらず、1点止まりで終わったこと…。しかしこの試合は川崎の不運として片付けるわけにはいかない。川崎が招いた因果なのだから。


私は我那覇の極めて自分勝手なPKが許せない

 この試合の川崎の唯一の得点は63分の我那覇のゴールであった。メディアの論調では「PK失敗を帳消しにした」ということになるだろう。
 しかし、あえて私は主張したい。この試合の戦犯は我那覇であると。

 確かにこの試合に賭ける我那覇の思いは並々ならぬものがあっただろう。「にんにく注射問題」からも解き放たれ、ナビスコカップでは結果を残したものの、リーグ戦ではサポーターに歓喜を届けていない。この試合で完全復活をアピールしたいところであっただろう。

 我那覇自身、気持ちが逸っていただけではなく、この試合のパフォーマンスはすこぶる良かった。中野を退場に追い込んだ場面もシステム変更にアルビが戸惑いを見せた瞬間に右サイド(アルビ側から見れば中野の左サイド)に流れながら、抜群の飛び出しを見せた。ここまでは素晴らしい。しかし、彼自身の理由だけでPKを蹴ることに私は納得がいかない。

 私が主張するまでも無く、PKは結果が全てだ。だからこそ私はPKというものはチームで一番決める確率の高い選手に蹴って欲しいと思っている。もし、ピッチ上にPKがより上手い選手がいれば、その選手に譲るべきだ。その理由は繰り返すが、PKは結果が全てだからだ。サポーターは主審がペナルティスポットを指した瞬間に得点を途轍もなく期待する。そのような状況下で「譲るべきときは譲る」ことができてこそプロだろうと私は思う。プロは結果(勝利)のために最大限に努力し、且つ最良の選択をすべきだ。

 ところで、我那覇はPKが上手いのであろうか。私にはそのようには思えない。あのPKに関してボールスピードはあったが、キーパーを騙すようなタイミングでもなければ、フェイントもない。コースも極めて甘く、下手なPKの典型例のようなキックだった。これまでも我那覇にPKが上手い印象は無かったが、私の記憶はどうやら確信に変えても良さそうである。

 全てのプロサッカー選手の方々にお願いしたいが、自身のPKが上手いか否かくらいは認識して欲しい。そして下手ならば、どうかしゃしゃり出ないで欲しい。サポーターにとっては極めて迷惑な行為だ。

 ちなみに、私は6月22日のW杯3次予選バーレーン戦の中村俊輔のPK失敗にも怒りを覚えている。彼もPKが下手だ。しかし、どうやら彼は自身のPKが下手であることは察知できないらしい(※筆者注)。

 話が逸れたが、この試合で我那覇はPKを蹴るべきではなかった。私はアルビサポーターであるので、我那覇の極めて愚かで自分勝手な行為で歓喜を得た人間のひとりだが、我那覇和樹という人間には失望した。


その他の気になること

・中野洋司について
 私はこの試合の中野のパフォーマンスはそれほど悪いものではなかったと思っている。チョン・テセや我那覇の空中戦には苦戦したが、松下の守備負担をかなり減らしていた。またロングパスも彼にしては冴えており、松下の好みの配球を掴んできたような印象さえある。

 松下がこの試合で縦横無尽にピッチを駆け回ることができた要因に中野の守備と配球を挙げることができる。退場するまでのパフォーマンスは松尾以上であったのではないか。

 ただ、この試合の唯一に近いミスが我那覇を倒し一発退場になった点だ。チームとしても個人としてもシステム変更に対応できなかったことが悔やまれる。しかし貴重なバックアッパーに成長した事はアルビにとって福音となるはずだ。

・アルビのサイド攻撃について
 この試合のアルビは川崎が3バックで臨んでいる間は攻守にかなり良質な動きを見せていた。3バック攻略の定石でもある「サイドのスペースを突く」ことを徹底し、貴章・アレッサンドロ・マルシオ・松下の前線が、3バックを収縮させる役割とサイドを突く役割を代わる代わる務め、川崎にボディーブローを打ち続けた事は大変に評価できる。
 この攻撃をさらに高めて浦和を屠るまでに成長して欲しい。

・中村憲剛への守備の対応について
 この試合で出来が悪かった点の一つが、中村への守備の対応のまずさだ。

 この試合でアルビは決定的なものからそうでないものまで、中村に数多くのパスを通された。
 特に目に付いた点は中村がボールを持つと飛び込むでも粘り強く付くわけでもなく、ズルズルと下がってしまう守り方だ。確かに中村はキープ力もあり、ドリブルも巧いので迂闊には飛び込めない。しかし、中村に対してハードワーク出来ないことでチャンスは量産される。この試合では本間と千葉で受け渡す形で見ようとしていたが、上手く行ったとはいえない。

 Jリーグには中村のような司令塔が多い。この川崎戦をモデルケースにして、ボランチポジションの司令塔へのマークのパターンを確立する必要がある。本間または千葉のすっぽんマンマークはシステムとして厳しいので、受け渡す形になるが、受け渡し方が現状では上手くない。改善を望みたい。

・この試合のアルビの守備面全体について
 この試合のもうひとつ出来の悪かった点としては、システム変更に柔軟に対応できなかった点にある。
 3バックから2バック気味の4バックへ川崎がシステム変更を行った際に、中村・大橋と司令塔タイプのパサーが二人になり、この二人へのマークがかなり曖昧になった。その代わりバナで見事にやられてしまった。
 ようやく守備が安定した観はあるが、「相手のシステム変更にも柔軟に対応する」という新たな課題が見つかった。監督の采配も含め柔軟な対応力を鍛える必要がある。


おわりに

 今シーズンのアルビは勝ち点がシビアなためか、守りに徹する采配を見せることがある。4月19日の京都戦は選手の意思がバラバラで京都に思わぬ反撃を食らったが、5月10日磐田戦、5月18日神戸戦、そしてこの川崎戦と守りを固めて逃げ切ることに成功している(神戸戦は勝ったわけではないが引き分けを確保するために守備を徹底させた)。
 サッカーはいつでも攻撃的である必要は無い。守り切ることも一つの技術であり、一つのチーム戦術である。アルビもそれができるようになってきた。喜ばしいことである。


(※筆者注)
 中村俊輔には「察知力」という著書があるが、そのようなどうでもいい内容の本を執筆する暇があるのならば一本でも多くのPKを練習して欲しい。



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