Terrible Booing Soccer

アルビレックス新潟に軸足を置いてサッカーを論じる、時にブーイングを放つサイト。



●アルビレックス・ゲームレポート2008
第12節 vsジュビロ磐田(HOME) 2008/5/10


(文:オヤジ 2008/6/24)


 ジュビロのエース・ジウシーニョの不在が響いた観のあるこの試合。しかし最も響いたのはジュビロ・内山監督のスカウティング能力が鈴木監督をも下回っていたことであろう。
 内山監督はかつてのジュビロ・サッカーを取り戻したいと公言しているようだが、内山氏が監督を務めている間では実現は難しいだろうと思わせる試合内容だった。


内山監督は「5月3日トリニータvsアルビ」のビデオを研究し尽くしたか

 私はサッカーの監督を務めた経験は全く無いので「サッカーの監督」の日々の行動がどのようなものであるかは実はよく知らない。よく知らないが、前の試合から次の試合の間が3、4日しかないとはいえ、次の対戦相手のビデオを少なくとも近傍の数試合分くらいは擦り切れる(最近はHDDまたはDVDであろうから「擦り切れ」はしないだろうが)まで見ているであろうと思われる。
 しかし、内山監督はどう考えてもアルビのビデオをあまり見ていないのではないかと思えてしまう。

 ジュビロの布陣は大分と同じく3-4-1-2である。大分戦はドイスボランチのエジミウソンと根本、トップ下の金崎に見事にやられた。ジュビロのドイスボランチの上田と犬塚は大分の二人と同じくボールが持つことができ、またトップ下の西は金崎と同じくスピードのある選手だ。
 前節アルビは清水のフェルナンジーニョを抑えたとはいえ、私は試合前には不安を感じていた。清水戦では守備の修正はできたが、大分のように攻められるならば、今のアルビでは辛いものがある。そのような意味で内山監督の指示がこの試合は見ものであった。

 序盤のジュビロのプレーには焦りを感じた。FW・中山が積極的にアルビDFの裏を狙ってくる。もうひとりのFWの萬代とトップ下の西がこれに絡むような動きを見せたらマズイと思いながら見守っていたが、二人は中山が作ったスペースを突こうとしない。萬代はこの試合を通してほとんど有効な動きが無く、西も前半は低い位置でボールを受けるなど、アルビディフェンスが嫌な位置でプレーしようという意図がほとんど見られなかった。
 また守備面でも西は出来が悪かった。3-4-1-2のトップ下であれば、守備に回った場合は相手のボランチを見るケースが多いが、この試合のアルビのドイスボランチは守備を重視することが多かったため、判断を切り替えて別の選手(例えばボールサイドのSBなど)を見ても良かったのではないか。

 守備の判断が中途半端だったのは西だけではなく、上田・犬塚のドイスボランチも守備面での判断の出来が悪かった。判断の悪さが如実に現れたのが17分のアレッサンドロのゴールだった。
 内田がゆっくりとボールを持っているにもかかわらず、ジュビロは誰も内田をケアしない。西が行かないことに焦れるように村井が前に出てきたタイミングで内田はアレッサンドロにロングボールを入れる。この時点で西は自分のやや後方のマルシオの動きを掴んでおくべきであった。西は内田をケアするわけでもなく、マルシオに付いていくわけでもなく、ただボーっとアレッサンドロとマルシオのパス交換を見ているだけだった。
 ボーっとパス交換を眺めていたのは西だけではなく、上田と犬塚の二人も同様。アルビの布陣は4-4-2であるが、中盤の攻撃的なサイドの二人(松下とマルシオ)は外に開く、または中に入るなどかなり忙しく動き回る。この二人の動きと両SBの攻撃参加を3-4-1-2の布陣でどのようにケアするかということがジュビロは課題であったはずであるが、ほとんど対策なしで臨んでしまった。アレッサンドロ→マルシオ→貴章と繋いだパスは確かに美しいが、動きとしては基本通りであったように思う。

 西・犬塚・上田の3人は監督からの指示が無い結果、自分が掴むべき選手が理解できず、このパス交換をただ眺めているより他が無かったのである。指示が無ければ動けないのが日本人選手の欠点とはいえ、監督が出すべき指示を出していない事のほうが大変に問題である。
 「やべっちFC」はこの得点が生まれた要因として貴章のストライカー・ムーブの素晴らしさを挙げていたが、実際にこの得点が生まれた最大の要因は「内山監督が仕事をサボっていた(または分析ができないほど頭脳が劣っていた)」ことにあるのではないだろうか。



 実は私はこの試合の後、内山監督やジュビロの選手たちと遭遇している。
 試合翌日の新潟駅であった。新幹線を待っている間、内山監督と名波は話し込んでいたが、話題はどうやらこの失点(ジュビロ側から見て)場面についての話で「やべっちFC」同様、やはり貴章の動きがこの失点の直接の原因と捉えていたようだった。
 私はこの話を当人のそばで盗み聞きしていたわけだが、正直申し上げて「アンタはアホか!」と笑い出したくなることを押さえるのに必死だった。

 またNHKがこの試合を中継したが、その放送内のハーフタイムインタビューでもこの監督が如何にアルビに対して認識不足であったかが伺える。要約を以下に記す。

  1.アルビがサイドチェンジを交えてサイド攻撃することに対しては、
     DFラインを上げて中盤の距離を縮めることで対応したい。
  2.パスを出される前に動くのではなく、動く前に出し手を掴まえたい。
  3.アルビDFはジュビロ2トップに対してラインを下げてでも対応するので、
     下がったスペースに西を攻撃に参加させたい。

 以上3点であるが、これらがポイントになることは事前にビデオを見ていれば、その時点で気付くのではないだろうか。大分はこの3点に対して明確な答えを試合前から持っていたのでアルビに快勝したのではないか。ジュビロはこの一週間後に試合を行っているわけで、大分戦を参考にしない理由が私には理解できない。内山監督も一応S級ライセンス保持者だけはあるので、後半はこれらの点の改善を多少行ったがアルビゴールを割るには至らなかった。

 サッカーは同じ布陣で、選手の質にそれほどの差は無くとも(むしろジュビロのほうが大分より選手の質では上だろう)、監督次第でパフォーマンスに激しく差が現れてしまう。この試合でそれを改めて認識できた。そしてジュビロの再建も内山氏が監督である限り、実現は難しいということも…。


おわりに

 この試合は4-4-2のアルビが巧みに3-4-1-2のジュビロのサイド(3-4-1-2の布陣は手薄なサイドが弱点となる場合がある)を突いたが、この試合の結果から3-4-1-2が劣った布陣だ(または時代遅れだ)というつもりは全く無い。
 大分のように相手の布陣や自他の選手の特性を分析できれば、自分たちの布陣の弱点を隠しながら戦うことも可能であるし、分析を怠れば、どのような布陣であっても布陣や選手の特性を活かす事など出来ないのである。
 自軍の選手に合った布陣を選択し、対戦相手をきちんと分析し、その中で自軍の選手を自他の布陣の中でどのように攻守に動かすかが重要なのである。布陣ありきではなく、選手ありき、そして頭脳としての監督ありきなのである。

 私はそのような意味で杉山茂樹氏の布陣理論には全く賛同ができない(※)。誤った布陣理論が台頭する昨今であるが、そのような誤った観念を叩き潰すためにも是非ともジュビロにはかつての美しい3-4-1-2を再構築して頂きたいものである。


(※)…誤った布陣理論の代表格として杉山茂樹氏の「4-2-3-1」(光文社新書)があります。興味のある方は是非ともご一読ください。



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