Terrible Booing Soccer

アルビレックス新潟に軸足を置いてサッカーを論じる、時にブーイングを放つサイト。



●アルビレックス・ゲームレポート2008
第11節 vs清水エスパルス(HOME) 2008/5/6


(文:オヤジ 2008/6/20)


 この試合に敗れればボトム3に定着しかねない中、順位を争う清水を撃破した。3日前の悪夢を払拭する勝利に思わず「やれば出来る」と快哉を叫んだ。


「やれば出来る」

 試合前、私は嫌な予感がしていた。大分戦はトップ下の金崎のポジションを大分側が巧みに使い大勝を収めた。
 清水にもフェルナンジーニョという良いトップ下がいる。清水にしてみれば、大分のようにアルビを陥れたいところであり、アルビは何としてもフェルナンジーニョにやられるわけには行かないだろう。
 この試合のポイントはフェルナンジーニョに対する守備であろうと私は考えていた。

 蓋を開けてみるとアルビの守備は前節からやや変わっていた。
 無理やり前からボールを取りに行こうとするのではなく、相手の速攻に対するために素早く守備陣形を整えることを第一に考える守備へ変更した。もちろんボール奪取が可能な場面であれば積極的に前に出るが、基本はリトリートする。これがアルビの出したフェルナンジーニョ対策だったが、これが思いのほか機能した。

 この試合のフェルナンジーニョは窮屈そうにプレーしていた。基本的には千葉がフェルナンジーニョのマンマークに行き、他の選手は素早く守備陣形を整える。この試合のフェルナンジーニョがボールをもらう位置は時間が経つにつれて低くなっていった。それだけアルビの守備が奏功していたのである。

 清水の2トップの矢島と原がフェルナンジーニョをサポートするアイディアに乏しかったこともアルビには追い風になった。
 清水のFWは岡崎も含め、ガムシャラに体を張ってゴールに向かってくるが、相手を出し抜くための駆け引きや味方を活かすアイディアに乏しい面がある。この試合もそのような面が如実に現れてしまった。ボールポゼッションは清水のほうが勝っていたにもかかわらず、清水が無得点に終わった原因はこの2トップのアイディアの無さにある。矢島も原も運動能力や身体能力が低いFWではない。この試合の矢島と原は日本人FW全体の課題を浮き彫りにしていたように見えた。

 見ていて全く怖さの無い矢島と原とは対照的にMFの藤本には心胆寒からしむるものがあった。フェルナンジーニョとのコンビネーションから再三アルビゴールへ襲い掛かった。特に前半28分の攻撃は目を覆いたくなるほど崩されたが、結果的にシュートミスに助けられた。
 藤本にチャンスを作られるあたりはまだまだ頼りないが、アルビの守備はこの試合では復調を見せた。前節と同じ失敗を繰り返さないことが重要。選手と監督を素直に褒めたい。やれば出来るのだ。これからも意気に感じる戦いを期待したい。


今季初の3得点 松下とアレッサンドロの凄味

 さてなんと言っても、この試合は今季初の大量得点だった。殊勲賞は松下とアレッサンドロの二人。この試合の彼らには凄味があった。

 まずは松下について。松下は一昨年期限付き移籍し、2006年後半を支えた選手だった。決して大柄ではないが運動量が豊富で労を惜しまず、パスが正確な選手である。昨年は坂本とマルシオの加入でポジションを失い、輝きも失いかけたが、今年は再び輝きを取り戻すどころか、一昨年を上回る勢いを見せている。
 この試合の2分(千代反田)と61分(アレッサンドロ)のゴールは松下の正確なフリーキックから生まれた。どちらのフリーキックもレーザービームのような美しい弾道だった。
 またこの試合では松下は持ち前の運動量で縦横無尽に動き回り、チャンスを量産した。一対一を外してしまうなどフィニッシュにはまだ難があるが、成長を期待したいところである。松下がこのパフォーマンスをシーズンを通して出来るのであれば、大枚をはたいてでも完全移籍をさせねばならないだろう。ましてや、同じポジションのアウグストを獲得する意図が全く理解できない。

 もうひとり凄味を見せるのはアレッサンドロ。この試合も2ゴールとスコアリングマシーンとして本領を発揮し始めている。「損切り」と発言してしまった私は自らの不明を詫びねばならない。
 しかしながらアレッサンドロは私自身よくわからない。とりわけスピードがあるわけでもなく、身体能力に優れているわけでもない。大柄でもなく、パワーもさして無い。ポストプレーのトラップは大きく、今もってどのようなプレーが得意なのかはよくわからない。
 しかし、点を取るのである。チームにフィットしているのかも良く判断できないが、徐々にボールを呼び込めるようになっている事は確か。この試合も随所にチャンスに絡んでいる。そして日本人には無いシュートの正確性がある。本人はヘディングは得意でないと語っているようだが、その得意でないヘディングで得点を量産しているのだから恐ろしい。性格も真面目なのか、Jリーグの特徴でもあるFWの積極的なプレスへも順応し始めている。
 何はともあれ、今後も得点を量産し続けることを切に願いたい。アレッサンドロが15点獲れば残留も叶うだろう。


おわりに

 この試合から1ヵ月後、フェルナンジーニョは京都に期限付き移籍となる。2007年の清水の躍進を支えた選手であることは明白だが、ここに来て放出する意図に疑問を禁じ得ない。
 今シーズンの清水の不振はフェルナンジーニョに原因があるわけではなく、チョ・ジェジンの後釜となる大柄且つパワフルなストライカーの獲得が出来なかったことに原因がある。チョ・ジェジンの後釜が小柄なマルコス・アウレリオで、そのアウレリオがほとんど出場していないとなれば、不振の原因をフェルナンジーニョに転嫁する事はできないはずである。清水フロントには全く賛同できない。 

 清水のように伝統のあるクラブであり、しかも昨年は4位であっても、一貫性の無い補強を行えば瞬く間に下位に低迷する。Jリーグはスリルのあるリーグになった。ましてやアルビは伝統もネームバリューも無い。アルビは今シーズンの清水の凋落を他山の石としなければならない。



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