Terrible Booing Soccer

アルビレックス新潟に軸足を置いてサッカーを論じる、時にブーイングを放つサイト。



●アルビレックス・ゲームレポート2008
第9節 vs東京ヴェルディ(HOME) 2008/4/29


(文:オヤジ 2008/5/8)


 3連勝は逃したとはいえ、4月は負けなしで日程を終わることができ、ほっとすると共に、チームの総合力が昨年には遠く及ばないことに苛立ちを感じる。この試合も負けなくて良かったと感じる、それしか内容の無い試合だった。


両チームとも守備「だけ」は功を奏した試合

 東京Vは前節の名古屋戦からトレスボランチに切り替えて、守備の安定を図っているが(名古屋戦も勝利)、この試合でも十分に機能した。

 トレスボランチを務める選手は富澤・菅原・大野の3人(名古屋戦は富澤ではなく福西)。
 富澤はCBが本職の選手で一対一と空中戦が強い。菅原は危険を察知する能力が高く、的確な潰しが出来る。昨年J2にいた東京Vが連敗を脱出し、昇格へ向かって猛チャージを始めたきっかけは、この菅原を中盤の守備の中心に据えたことだ。地味だが、敵に回すと非常に嫌味のある選手である。
 大野はかつて柏でトップ下の司令塔として名を馳せた選手であるが、現在はそのパスセンスを存分に活かし、中盤の底で司令塔の役割を務めている。

 このようにトレスボランチを見ると個々の特徴が上手く組み合わされたバランスの良い形になっていることがわかる。バックラインも土屋・服部のベテランと那須・和田の若手、とこちらもバランス良く組み合わされている。フッキに目が行きがちな東京Vであるが、いつの間にか守備のチームに変貌していた。私は開幕前に東京Vの守備は崩壊すると予測していたが、見事に外れた。



 さて、アルビはこの堅いトレスボランチ+4バックを崩す方策を全く持たなかった。アルビはいつものように貴章に当て、SBからクロスを入れるなどの単調な攻撃が多く、松下などは奮闘したものの、監督から東京Vの守備を崩すための動きの指示が無かった(ように見える)ため、周りの選手が連動できなかった。
 前節、名古屋をゼロ封した東京Vの守備陣からすればこの試合もゼロ封する事はそれほど難しいことではなかったに違いない。

 この試合の鈴木監督の無策ぶりには憤りを覚える。東京Vの守備は布陣がセットされた状態ではバイタルエリアとバックラインにスペースがほとんど無く、力技で崩す事は相当に難しい。だが、アルビは単調に遅攻を繰り返すばかりであった。高速なカウンターを仕掛けることが出来れば光明が見えると私は考えていたが、アルビにその動きは無かった。残念でならない。

 東京Vは堅守を作り上げることには成功したが、攻撃に関してはフッキを中心とする外国人に頼るのみで、しかも外国人同士にコンビネーションがほとんど無かった。名古屋戦ではフッキの不在を飯尾が前線の潤滑油になることで見事に埋めたが、この試合ではフッキは自らが得点することにこだわり過ぎ、その結果、フッキへのパスは彼の足元へのパスが多くなり、千代反田も千葉もセットした状態でフッキと相対することが出来た。千代反田と千葉の奮闘も素晴らしかったが、東京Vの拙攻にも助けられた。

 外国人3人に攻撃を依存する形は2004年、2005年のアルビを想起させる。この形にコンビネーションと役割分担が備わり、そして日本人が効果的に絡むことができれば、東京Vの残留は容易なものとなるだろう。

 新潟の守備は前述の千代反田と千葉の奮闘振りに加え、内田、松尾の両SBも守備面で踏ん張りが効くようになった。特に松尾はガンバ戦以降、一対一で負けない印象さえある。体も切れているのだろう。その調子のよさが札幌戦でのゴールを呼び込んだとも見てとれる。アルビの4バックはここに来て安定感が出てきている。

 しかし、中盤の守備はどうだろうか。貴章と4バックの奮闘振りに比べ、中盤4人の守備が目立たない。マルシオはまだ本調子でなく、木暮はまだJ1のスピード・パワー・テクニックに慣れていない。奮起を期待したい寺川であるが、この試合でもポジショニングのミスと詰めて欲しいところを詰められない、もどかしさを感じた。

 以上を考慮すれば、マルシオを起用する場合の左SHは松下か亜土夢だろう。彼らは運動量も多く、労を惜しまない。ダヴィでは攻撃面ではともかく、守備面での不安が大きい。マルシオをベンチスタートさせる場合は、左右はもちろん松下と亜土夢で決まりだ。彼らならば昨年レベルの守備まで近付けられるはずだ。

 この試合は高い位置でボールを奪ってからの素早い攻撃が全く出来なかったが、それは中盤の守備に原因がある。
 我々は下位チームである。守備には他チーム以上に考え抜きたい。


おわりに

 この試合の入場者は35788人。久々の大入りだ。しかし、この中には無料配布券で見ている方々も相当に多いと聞く。
 無料配布券は実に賛否両論で、観客水増し以外にメリットなぞ無いという意見もある。私自身はサッカーそのものとアルビを新潟の人に広く見てもらう導入の意味としてはこれ以上の策は無かったと思っている。
 しかし、現状を考えるとこの策に頼るだけの時期はそろそろ終わり、または限界に来ていると感じる。
 
 サッカーだけでなく、広くエンターテインメントと呼ばれるものは次々と新しいものを生み出していかねばならない。最初の作戦は大当たりだった。次は?その「次」が出せなくなったときにこのクラブは低迷期に入る。今はその入り口だ。



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