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小ネタ2 TOPにもどる/小ネタTOPにもどる 前置き。 ご面倒でしょうが、とりあえずお読みくださいませ。 *以下の前文に少しでも引っかかった方は、お戻り下さい* ちょっと陰気な会話文。捏造過去エピソードを匂わせております。 2018年4月に行われたツイッター企画に投稿したものを、少し手直ししております。 ……よござんすか? ↓ ↓ ↓ ■熱 悪い夢の中でそれと気づき、目を醒まさなくてはと足掻いていた。 光が無いのではなく、闇が在る。石壁に囲まれた牢のなか、圧さえ感じる闇に包まれすべての感覚を遮られる。闇は呼吸のたびに胸の奥まで滲みてきて、体の内側から少しずつぼくを蝕んでいく。 これは過去の出来事に過ぎないと、今のぼくは知っている。それでもここから抜け出すことができない。 ぼくを導いてくれる、ただひとつの光。 呼ぶべき彼の名前を、このときのぼくはまだ知らないから。 「──大丈夫か?」 目覚めると彼の腕の中だった。その肌の温もりに安堵する。 「うなされていた」 「……へいき、です」 呼吸を整えようと深く息をつく。 ああ、この人の匂いだ。ふたりで湯を使った後、何もまとわず寝台に戻ったのだった。 その胸元に頬を擦り寄せると、額に彼の唇が触れた。もっと欲しい。目を瞑り顔を向けると、瞼や頬にも口づけが降る。 落ち着きを取り戻してくると、自分の体がひどく冷えて強張っているのが分かった。ほんの数刻前には、熔けるように熱かったというのに──。 起きあがって、寝台に横たわる彼を見た。 ぼくを導いてくれる、強くて正しいひと。 優美な見た目に反して、心の奥に激しさを秘めたひと。 その熱に、ぼくはどうしようもなく惹かれてしまう。 彼の肩口に残る古傷を、指先でなぞった。鍛え上げられた胸から腹にかけての線をたどる。そして、身を屈め、彼のものに口づけた。そのまま手を添え舌を這わせていく。 「どうした?」 「……怖い夢を見ました。慰めていただけませんか?」 「心得た」 程なく固さを得たそれに香油をまとわせ、彼に背を向け膝立ちで跨った。少しずつ腰を落とし、奥まで受け入れる。 彼はぼくの希いを察したようで、深くつながったまま背後からぎゅっと抱きしめてくれた。彼に愛されているという喜びと、体の奥底からの愉悦とで涙が零れる。 ぼくはきっと、あのときから何かが欠けたままなのだろう。それを埋めようとして、彼を求めているのかもしれない。でも、寒さに震える者が温もりを求めることが、そんなに悪いことだろうか。 「怒らずに聞いてくれるか?」 うなじに口づけを落としながら彼が言った。 「もしもお前の心に何の傷もなかったら、こういう形で求められることはなかったかもしれない。そう思うと、お前の傷が堪らなく愛おしい」 「……かわいそうと憐れむ気持ちと、愛しいと慈しむ気持ちはとても似ていますから、間違えてしまいがちなんですよ」 「同じことではないのか?」 「違うんですよ」 こんなときに謎かけか、と彼は薄く笑ってから、もう動いてもいいか、とぼくの耳許で囁いた。同意のしるしに口づけを返すと、ゆっくりとうつ伏せに寝台に押し倒される。伏せた体勢のまま自分の肩越しに彼に視線を送った。 どうか、あなたの熱で、ぼくを満たしてください。
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