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前置き。
ご面倒でしょうが、とりあえずお読みくださいませ。

*以下の前文に少しでも引っかかった方は、お戻り下さい*

拙作『華燭』の後の話。
師匠の過去捏造エピソードをぶち込んでおります。
いつも以上に話の筋はありません。
私設定満載の上、えちぃ話でもございません。

……よござんすか?









■灯明の陰


──ぼっちゃんはここに隠れて。何があっても出て来ちゃいけない。いいですか、何があってもだ。

 彼の言葉に頷き、物陰に隠れてじっと息を潜めていた。
 争う声、剣を切り結ぶ音、くぐもった呻きと、倒れる音。

──仕留めたか?
──ああ。一緒にいたガキは?
──逃げられた。確か息子がいるって話だったが。
──そいつに関しては特に指示はされていない。行くぞ。

 下町を見てみたいなどと言わなければ良かった。
 傭兵は知らぬうちに敵を作っているものだと聞かされていたのに。
 俺の武術指南役になったことで、金回りが良くなったと噂されていただろうに。
 俺のせいだ。俺のせいで彼は……。

 路地から男たちが去った後、息絶えたその体に近寄った。喉笛に正確な一太刀の傷。懐の財布には手も触れられていなかった。
 ようやく気づいた。
 彼を死なせたのは本当に俺だった。
 俺が彼に懐いたばかりに、一族の者に煙たがられ、始末されたのだと。



 目覚めると、冷たい汗をかいていた。震える指で傍らに眠る温かな体に触れた。穏やかな寝息。愛しい寝顔。

「そこに、いるのか?」

 覚えのある気配を感じとり、部屋の隅の暗がりに声を掛けると、男が一人歩み出て跪く。

「こいつに手出ししたら、ただではおかない。一族の誰の命令だとしてもだ。誰かに命じられたなら、必ず俺の耳に入れろ」
「御意」
「異国人の稚児を囲う程度で、よもや叔父貴殿も文句はあるまい?」
「御意に……存じます」

 眠る少年の頭を撫でる。
 こいつが目覚めないということは、殺気がないということ。男の言葉に嘘はないのだろう。

 男はあのときの刺客だった。数年かけて探し出し、倍の報酬で契約した。雇い主の情報を逐一こちらに知らせるようにと。
 普段は従者に紛れて邸内に潜んでいる。
 俺も隠れて震えているだけの子どもではない。

「もう良い。下がれ」
「は……」

 戦争が終わり正式に当主となった今でも、俺に自由など無い。断つことのできない血の軛に縛られている。

 身を屈め、あどけない寝顔に口づけた。
 これは、俺自身のただ一つの望み。手に入れることのできた、ただ一つの宝。

「ジョルジュさん……?」

 夢の中に届いたのか、寝言に俺の名を呼び微笑む口許。
 吸い寄せられるように唇を重ねた。祈りの言葉のように繰り返し幾度も。



  • 私設定てんこ盛りの過去話のチョイ出しです。他人に情を寄せることに後ろ向きな師匠のトラウマとか捏造しております。
20160725up


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