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小ネタ2 TOPにもどる/小ネタTOPにもどる 前置き。 面倒でしょうが、とりあえずお読みくださいませ。 *以下の前文に少しでも引っかかった方は、お戻り下さい* 当サイトお馴染みのむずがゆい会話です。 いつも以上に話の筋はありません。 ……よござんすか? ↓ ↓ ↓ ■愚者の選択 「……ご立腹ですか?」 「いいや」 自室の長椅子で寛ぎながら素っ気なく返したつもりの言葉には、あからさまに不機嫌が滲んでいて、我ながら大人気ないと心中で舌打ちした。 この時期は仕事が薄い。 冬至の休暇以来、日を置かずに夜を共に過ごしていたので習慣づいてしまい、今日も一人寝をするつもりなどなかった。 夕食後、なかなか部屋に戻らないこいつの様子を見に階下に降りると、書庫で仕事をしていた。 会計記録として帳簿にまとめた後の一次資料は数人の監査を経た後に処分されるが、その前に目を通しておくのが、こいつのこだわりだった。数字として把握するのではなく、人と物の動いた過程を記憶に留めるためだそうだ。 それらは公的に開示されるものであり、閲覧することに問題はない。ただ、本来は事務方の担当業務にあたり、こいつの通常の職務には含まれないため、あくまでも自主的なこととして夜間や休養日に作業する形をとっていた。 その熱心な仕事ぶりに組織の長としては感謝すべきなのだろうが……こいつを慕う奴と二人きりでいたというのが癪に障った。 「お気に召さないことをしてしまったのなら、謝罪いたしますから……」 床に片膝をつき、こちらの顔を見上げてくる。 「せめて御手に触れることをお許しくださいませんか?」 仏頂面を崩さぬまま手を差し出せば、その手をとり、まるで姫君にでもするように恭しく口づける。そして、先ほどと同様に、指先を舌でちろりと舐めた。 その上目づかいは……わざとか。 観念して空いた方の手で膝をぽんぽんと叩くと、笑みをこぼしながら膝の上に乗ってきた。 「どこでそういう事を覚えてくる?」 眼前の笑顔に苦々しい思いで問えば、あなたですよ、と返された。 「ぼくがあなたしか見ていないって、ご存知でしょう?」 「こんな状況を俺が望んでいるとでも?」 「はい、気をきかせたつもりでしたが……」 くすくすと笑いながら顔を寄せ、耳許で囁く。 「……ぼく、明日は休日なんです」 「手加減は無用と言うことか」 「どうぞ、この身はご随意に。お気に召されないことがあったのでしたら、何なりと罰をお与えください」 「罰?」 肩を抱き寄せ、少し乱暴に口づける。いきなりのことに相手は腕の中で一瞬身を強張らせたが、貪るように口中の感触を堪能していると、次第に甘い吐息が漏れはじめる。 やがて唇を離し、繋がる銀の糸を舐めとりながら表情を窺うと、蕩けた瞳が切なげに続きを乞うている。 「悦ばせては、罰にならんな」 呟いた俺は、どんな顔をしていたのか。 腕の中で嬉しそうにぶるりと相手の体が震えた。 ああ、まったく、こいつは救いようのないばかだ。 ──いいや、俺もか。 「精勤への見返りが罰とあっては、騎士団長の面目がない。褒美を与えてやろう。望みを言え」 俺の言葉にこくんと頷き、自ら上衣を脱ぎ棄てる。その肌には、数日来の交歓の痕が残っている。一つひとつが、言葉の代わりの想いの証。 「あなたで満たしてください。もっと、いっぱいに」 「……承知した」 手始めに、再びその唇を塞ぐと、さらに深い繋がりを乞うように、腕が絡み体が擦り寄せられる。 沸々と湧く、昂揚。 肌が触れあうだけで満ちてくる、他の誰とも違う、安らぎと多幸感。 おまえが、ばかで良かった。 俺の元にいることを選んでくれたのだから。
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