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小ネタ2 TOPにもどる/小ネタTOPにもどる 前置き。 ご面倒でしょうが、とりあえずお読みくださいませ。 *以下の前文に少しでも引っかかった方は、お戻り下さい* 弟子の過去に関して、偏った私設定が混入してます。 自分的には最初っからこの前提で書いていたのですが、 「なんかガッカリ」とか、 「統一感が無くない?」とか、 今まで気にせず読んでいたテキストに対してマイナスな印象を持たれる可能性があります。 ……よござんすか? ↓ ↓ ↓ ■ただ星のように 近頃は夜遊びをしなくなった。多忙だということもあるが、以前のように楽しむことができなくなったからだ。 仕事を終えると自宅に戻り、夕食をとる。 寝支度を済ませ、寝室で寝酒をやりながら読書や考え事をする。 思い浮かぶのは、故郷へ戻って行った、幼さの残る弟子の顔。 元気にしているだろうか。 思春期ゆえの夢見がちな思考か、生真面目な性格からくる潔癖さだと思っていた。あるいは、戦場で垣間見た事象ゆえと。 薄々気づいてはいたが、俺自身がその事実を認めたくなかったのだろう。 愛情の伴わない欲に対する否定的な態度が、自身の体験からくる拒絶だということを。 きれいな身ではない、という表現が意味すること──愛情から生じたものではない、理不尽な暴力に晒されたことがあるのだと──それを告げたときの表情から、その経験が未だに傷となり残っていることが分かった。 過去を無かったことにはできないし、心の傷は当人の問題だ。他人がどうこうできるものではない。それでも、護ってやりたいと思った。せめてその傷が癒えるまでは、傍に置いてやろうと。 年若くはあるが、騎士としての資質は充分に備えており、すでに誰に頼ることなく自らの足で立っている。 理想と現実の端境で揺らぎながらも、妥協を是としない誠実な気性。物事を真っ直ぐに見つめ、真摯に臨もうとする姿勢は周囲を感化し、自然と組織の要の一つとなる。 そんな男を、年長者を気取って“護る”というのもおかしな話なのだが。 ほんのわずかのふれあいに、恥じらい、戸惑い、それでも精一杯の想いを滲ませる、いじらしい様。その頬の柔らかな温かさ。 ただ愛しくて……優しく触れてやりたくて……。 帰郷を控えたある夜、一度だけ体の繋がりを求められた。 過去を仄めかす打ち明け話もその折に聞いた。 もう会えないかもしれないのなら、せめて想い出が欲しいとでも考えたのだろう。あるいは、信頼できる相手に身を任せることで、過去の傷を覆いたかったのか。 自分から誘っておきながら、きつく目を閉じて震える様子を目の当たりにして、己の役目に気づかされた。 俺にできることは、見守ることだと。 いつの日か、痛みも怖れも越え、心から誰かを欲するようになるまで──。 大切に想う者を誰かに託すまでのあいだ見守ることは、幾度も繰り返してきたこと。 雛がいつかは空へ羽ばたくように、いずれ時が来れば俺の元を去って行く。 今までと少し違うのは、相手と師弟の関係にあるということ。雛を自らの懐に抱き込むのは、初めてだ。 師である俺を超え、さらなる高みを目指す力を、あいつは秘めている。巣立ちの時が訪れたなら、淋しく思うだろう。思慕の込められた眼差しの温もりを知ったこの身には、さぞや辛く感じられるに違いない。 夜気に触れたくなり、扉を開けて露台に出る。空には朧な春の月と星ぼし。 できることなら、斯くも静かに道を照らしてやりたい。 迷い見上げた空に、明かに光るしるべの星のように。 万に一つの話ではあるが、あいつが師を必要としなくなったとき、それでも俺に手を伸べたなら……。 触れてしまっても、良いのだろうか。そんなことが、許されるのだろうか。 自嘲し、軽く頭を振り、あり得ない仮定を払う。 空を仰げば、星はただ穏やかに輝く。 鎮まった心の奥に息づくのは、ただ一人への想い。 ──いま、何をしている? 誰を、想っている?
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