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小ネタ2 TOPにもどる/小ネタTOPにもどる 前置き。 ご面倒でしょうが、とりあえずお読みくださいませ。 *以下の前文に少しでも引っかかった方は、お戻り下さい* 弟子の過去に関して、捏造トラウマ設定が混入してます。 自分的には最初っからこの前提で書いていたのですが、 「なんかガッカリ」とか、 「統一感が無くない?」とか、 今まで気にせず読んでいたテキストに対してマイナスな印象を持たれる可能性があります。 あと、ちょっとだけ、戦時下の話題がございます。 ……よござんすか? ↓ ↓ ↓ ■夜明け前・未だ昏く 薄暗がりのなか目を覚ますと、全身にびっしょりと汗をかいていた。 喘ぐように息を吐くが、胸が詰まってうまく空気が吸えない。 苦しさに身を起こすと、隣の寝台で眠る人の整った顔が目に入った。 穏やかで美しい面差し。 その静かな寝息に促されるように、ゆっくりと自分の呼吸を取り戻していく。 ──ぼくが初めて戦場で奪った命は、敵のものではなかった。 生きて捕虜となったのは、彼女にとっては不運でしかなかった。 弓を引けないよう利き手の指を切り落とされ、逃亡できないよう足の骨を折られ、傷からくる熱に震える体は、数日に亘り敵兵たちに蹂躙されていた。ある晩、牢に戻された彼女の切なる願いを、ぼくは拒むことはできなかった。 王が斃れ国の主力軍が壊滅した現状に、誰も希望など抱けなかった。 戦場で安らかな死を乞われ、それを与えることは間違いではない。彼女自身が望んだことだし、徒に苦痛を引き伸ばすよりは善い決断だろう。 そう自分に言い聞かせようとしたけど、納得できるわけがない。その後、友軍に救出されたぼくは、こうして生きている。 諦めさえしなければ、彼女にも未来があったのかもしれない。ぼくが手を下さなければ、ここにいたのは彼女だったかもしれない。僅かな希望を完全に打ち消したのは、ぼくの手だ。 すべてはぼくが弱いから……状況を打開する力を持たず、彼女を励まし支える心の強さもなかったからだ。 ただ悔しかったのは、自分の無力さ。悲しかったのは、最期にありがとうと告げた彼女の穏やかな笑み。 あの日の記憶は薄れることがなく、繰り返し見る夢では、手に残る彼女の頸の感触さえそのままに甦る── もしも、また同じ状況に陥ったら、ぼくはどうするのだろうと考える。 傍らのきれいな寝顔を見る。 例えばこの人が死を渇望する局面に窮したとして、ぼくは言われるがままにそれを与えることができるのだろうかと。 ぼくは、この人に生きていて欲しい。 たとえどれだけ心や体が損なわれたとしても、それでも。 苦痛だけの生──果たしてそれは、生きていると言えるのだろうか。 自分の身に起きたなら、間違いなく死を望むだろうけど、それでもぼくは、この人を手にかけられない。 あまりにも利己的な考えに、自己嫌悪から身震いがする。 強くなりたい。 まだ起こってもいない悲観的な仮定を思い煩うよりも、前に進まなくては。 自分が正しいと思うことをやり遂げる強い心と、美しいと感じるものを守る力を得るために。 この人に出会って、ようやく見えた風景がある。 自分の足元から延びる一本の道と、それを導いてくれる一つ星。 見失うことがないよう、大切に心に抱いて歩いていこう。 この人を想う自分を、ぼくは誇りに思いたいから。
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