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小ネタTOPにもどる ■星の数だけ その胸に抱かれ、ゆっくりとした鼓動を聞く。見上げると、穏やかな笑顔が浮かべられていて、ぼくも知らず頬が緩む。 目を閉じて、そっと唇を重ね合う。柔らかく甘噛みし、舌先を触れ合わせ、軽く吸うだけの口づけ。互いの背に回した手は、ただ慈しむように添えられる。 唇を離し、息をつく。再び見上げると、変わらぬ温かな眼差しがぼくを捉える。胸がいっぱいになり、涙が出そうになるのを堪えながら、ぼくはまた彼の胸に顔を埋める。 想いを告げたあの冬の日から、数えきれないほど繰り返された、優しい抱擁と口づけ。 体を重ねるようになっても、始まりと終わりは、いつも同じで、そのひとときがぼくは何より好きだった。 時には激しく求め合うこともあるけれど、徒に快楽を追うよりは、ゆるやかに愛し合うことを互いに望んでいた。 それはとても満ち足りた交歓で。 時間をかけゆっくりと高め合っていくうちに、頭の奥が痺れるような心地好さは、波のように幾度もやってくる。 やがて深く繋がりながら、それでも決して激しくは求めず、相手の熱を感じながらそっと互いの体に触れる。 絡めた指先に口づけ、零れる吐息を聞き、視線を交わし、互いの名を囁く。それだけで体は震え、涙が溢れる。 愛しい人の存在を感じるだけで、こんなにもすべてが満たされる。心は蕩け、ひとつになる。 彼は嘘をつかない。だから永遠の愛も、小さな心の動きも言葉にしない。その代わり、口づけで応えてくれる。ぼくにはそれこそが、何よりも嬉しい。偽りのない確かな温もりが、二人を繋いでいると思えるから。 行為のあと浴槽で互いの体を浄めながら交わす口づけの甘やかさ、眠りにつく前の口づけの穏やかさ、目覚める前の寝顔に祈りとともに触れる口づけの切なさ──それらすべてが、ぼくには大切な記憶。 冬至祭を前にして、何か欲しい物はないかと問われたとき、たくさんの口づけをねだってみた。星の数だけくださいと。 あれから何年も経つけれど、彼はときどき思い出したように、あと何回くらいかと聞いてくる。まだまだですよと答えると、困ったものだと溜め息をつきながら、とびきり甘い口づけをくれる。 夏の夜空に掛かる道が、遠眼鏡で覗くと星の集まりなのだと告げたら、あの人はどんな顔をするだろうか。 ぼくは密かに楽しみにしている。
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