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小ネタ2 TOPにもどる/小ネタTOPにもどる 前置き。 ご面倒でしょうが、とりあえずお読みくださいませ。 *以下の前文に少しでも引っかかった方は、お戻り下さい* 出会う前なので、師匠の師の字も出てきません。 事実関係としては何もしていませんが、王子と家臣が仲良しです。 いつも以上に話の筋はありません。 ……よござんすか? ↓ ↓ ↓ ■まだ見ぬひと 「ねえ、きみは自分でしたりするの?」 「はい?」 はじめはてっきり掃除や洗濯や繕い物といった、身の回りの雑務の話かと思っていた。 寝台の隣に腰掛けた主は少し俯き、ためらいがちにぼくの膝に手を置いた。 「こういうこと……」 そう言いながら、ゆっくりと手を脚の付け根の方に滑らせる。 「お……王子!?」 動揺して、その手に自分の手を重ねて制止する。間近で絡んだ視線は互いに戸惑いを含んで、いつもと違う空気が漂う。 「興味を持っても可笑しくはない歳だろう?」 「は……はい……」 ぼくの過剰な反応に、拗ねたように呟く王子の色づいた頬を見て、つられて顔が熱くなる。 「その……王子には、想い人がおありですよね……」 「うん」 まだ確とした約束を結んではいないだろうけど、現在身を寄せている国の姫君と王子との間に温かな絆が育まれているのは、誰の目にも明らかだった。可憐で朗らかな姫君と、優しく凛とした我らが王子の、とてもお似合いな一対だ。 「私を相手にして練習をしたい、ということですか?」 「そういうことじゃなくてさ……」 罰が悪そうに苦笑して、ぼくの太股に置いた手に体重をかけ、顔を近づける。 「きみは、こういうことに興味はないのかなぁって思って……」 軽い気持ちでふざけているだけなんだと分かっている。それでも、耳元で囁かれる声にはいつもと違う熱がこもっていて、どきどきしてしまう。 「あの……ぼく……いいえ、私は……」 目線で続きを促されるが、照れてしまいなかなか言葉が出てこない。何度か咳払いをし、なんとか返事をする。 「……そういうことは、私には、まだ早いと思っています。それは単に年齢の問題ではなくて……あなたを支え、お護りし、祖国に帰還することが、自分の第一の役目だと思うからです……」 王子は身を離してから、ふわりとした笑顔を浮かべ、真面目な君をからかったりして悪かったね、と言った。 「でもね、こんな話、他の人相手では、なかなかできないだろう」 「ぼくみたいな子ども相手に話しても、それこそ意味がないでしょうに」 「じゃあ誰になら、有意義な助言をもらえそう?」 二人してしばらく押し黙り、異口同音に同じ騎士の名を挙げる。 「先輩方に対して失礼だとは思いますが……」 「消去法っていうのも悪いとは思うんだけど……」 再び口を結び沈黙したが、肩が震えてしまう。目が合うと、堪えきれず二人同時に大笑いした。 「ぼくでは良い相談相手にはならないかもしれないけど……」 滲む涙を指で拭いながら、主は言った。 「もしもきみが恋をしたら、教えてほしい。誰よりも先に“おめでとう”を伝えたいからね」 「恋をしても実るとは限らないじゃないですか」 「絶対に叶うさ。大丈夫」 きみが恋に落ちるほどの相手ならば、きみの良さに気付かないはずはないからね、と続ける。 その言葉は、きっと優しさからきているのであろうお世辞というか、気休めというか、そんなふうにしか考えられなくて苦笑していると、額を小突かれ目を瞑るよう言われた。 「こんなふうに考えてごらん。今まさに、まだ見ぬ誰かが、どこか遠くでくしゃみをしているんだ」 どきん、と、胸が鳴った。
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