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小ネタTOPにもどる ■つながる縁 晩秋のある朝、ぼくは師匠の元へと旅立った。かねてからの約束通り、彼の教えを受けるために。 王子じきじきの口添えもあったからか、新しくその任に就いた気難しそうな騎士団長は、行ってこい、とだけ言った。 そして笑顔にはほど遠いながらも少し表情を緩めて、絆を大切にしろ、と言い添えた。 先の戦争でも共に戦ったその人は、他国の騎士団に所属していたこともあるらしく、あっという間に新たな王宮騎士団をまとめあげつつある。 今は前線から退いた前任の老騎士や、ぼくたち古参組の意見にも耳を傾けてくれて、その生真面目で誠実な人柄に不安はない。 当人は不本意かもしれないけど、“無愛想”が我が騎士団の長の条件なのだろうかと、親しみをもって噂されている。 なにせぼくらは、“厳めしい騎士団長”には慣れっこだったから。 旅に出る際、そこそこの金子を持たされたが、ほとんど手つかずのままだ。 国璽を押した特別な手形を与えられていたため、それぞれの地方の郵便馬車を無料で利用できたからだ。宿泊にも各地の役人の宿舎や警備砦を利用できるので、路銀はほとんど必要なかった。 何より復興の最中の故国を思えば、安易に自分のために使う気にはなれない。 先の戦争で名が知られていたようで、郵便馬車に郵送物の警護のために乗り合わせていた武装兵士たちにも歓待された。 件の戦争についても様々な視点からの体験談を耳にして、その乗り心地も含めて実に貴重な経験となった。 盗賊の襲撃を警戒しつつ悪路を行く郵便馬車に揺られながら。 警備砦の戦時下さながらに張りつめた空気の夜のしじまに。 繰り返し思い浮かんだのは“絆”という言葉。 道中で見聞きする、多くの人のありふれた、でもとても大切な日常の営み。 頭の中にあった地図が、現実の人々や景色で塗り替えられていく。 一つひとつが、切り離すことのできない絆で繋がっている。 そう考えることで、世界が広がっていくように感じられた。 あの人とぼくの間にも、確かに絆が結ばれている。 その幸運を、出会えた奇跡を思うたび、胸が震えた。 ──あと数日で、あの人にまた会える──
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