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小ネタTOPにもどる ■世界でいちばん小さな祈り どうして俺なんだ、と聞かれたことがある。 すぐに言葉を返せずただ黙ってその瞳を覗いていたら、自分らしくない台詞だったと気づいたようで苦笑していた。 特別に意図してのことではないから、気づいていないのだと思う。 ひとつひとつを覚えてすらいないのかもしれない。 何気なく発せられた言葉や振る舞いが、どれだけぼくの心に光をくれたのかということを。 雲をはらってくれた人。 道を示してくれた人。 誰よりも、大切な人。 ずっと傍にいられたら、と思う。 もらったものを少しでも返せれば、と。 傍にいると、ますますもらうものばかりが増えてしまって、返しきることはいっそう難しくなる。 それはとても幸せな、悩みの種。 どうかあなたに一つでも多く、幸いを届けられますように。 ■空の星をてのひらで ぼくでいいんですか、と問われたから、お前じゃないと意味がないと正直に答えたら、不思議そうな顔をされた。 その後ため息をひとつついてそっぽを向いた。からかわれたと思ったらしい。 どう言えば納得するのやら。 お前は特別なんだということを。 愛とか恋とか、そんな言葉にこの気持ちを当てはめるつもりはない。 白々しく月並みな台詞を口にしたところで、お前は納得しないだろう。 贈り物にでもしようと思ったか、何か欲しいものはありませんかと聞かれたときには、空の星を獲ってくれと返してみた。 そうだな、あれがいい、と、しるべの星を指さして。 ちゃんと獲ってくるまで俺の傍にいると約束しろ、と続けたら、困った人ですね、と嬉しそうな顔でため息をつかれた。 あれから何年か経ったが、星は未だ空に在り、旅人や船乗りが迷うこともない。 約束は依然守られている。 ちゃんと獲ってくるまでは、と言い含めたから、こいつは今も俺の傍らで共にしるべの星を見上げている。
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