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小ネタTOPにもどる ■かける ぱん!と、音をさせ自らの頬を震える両手で叩いた。 ────考えて! 護らなくてはならないものを。 自分の使命を。 一番大切なものは、何なのか。 ぼくがぼくでいられる、心の基は何なのかを。 自分にできることを、考えて。 自分のなすべきことを、考えて。 主君や仲間を護り戦いを勝利に導くため、力を尽くさなくてはならない。 でも、あの人を失ったら、きっと後悔する。 どちらを選んだとしても、もう片方を切り捨てたら、ぼくは、ぼくでなくなる。 国を、主君を愛する気持ちと、あの人を慕う気持ちを、天秤にかけることなどぼくにはできない。 ────ああ、できないんだ。 さあっと、心が和いだ。 不安気にぼくを見つめている弟の視線に気付き、微笑みを返す。 自分の主を、自分の師を、信じよう。 ぼくが賭けられるものは、ただひとつ。 ぼくが為すべきことは、ただひとつ。 いつか見えたと思った道は、今でも真っ直ぐ目の前にあるから、あの光に向かい駆けていこう。 「王子、お願いがあります」 自分でも驚くほど、声は静かに落ち着いていた。
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