近年は「インプラント」という言葉も、かなり耳慣れた言葉になったのではないでしょうか。

実際にどのようなものか御存じなくても、「インプラント」 という言葉を聞いた事のある方は多いはずです。

それ故なのか、間違った知識をお持ちの方も多いようです。

例えば、「インプラントは恐ろしいらしい」「失敗すると大変なことになるらしい」・・・などなど、実際にお話をすると殆どが歯科医師以外の方から聞いた話である、といったたことが多いようです。

過去には様々なトラブルもあったようですが、現在のインプラント手術の成功率は95%以上といわれ、これは医療行為においてはむしろ非常に高い成功率なのではないかと考えます。


では、実際にどのような処置であるのか説明しましょう。

まず、インプラントとはどのような物なのか?

インプラントは日本語では「人工歯根」とも呼ばれます。つまり根の部分のみがインプラントです。




右側がインプラント。インプラントは骨の中に埋まる部分です。
左側はインプラントの上に取り付ける上部構造と呼ばれるものです。
これは歯茎より上に突き出す部分になります。









様々な太さ、長さのものがあり、埋め込む位置、周囲の組織の状況に応じて
最適なものを選択します。






















手術に先立ち、現在、歯のない部分に対して最終的にどのような歯を作っていくのか、型をとり模型上で計画を立案します。

























計画した歯の位置にインプラントが入るのかどうか、ステントと呼ばれる装置を作成し、X線写真を撮影し、周囲の組織との関係を入念にチェックします。

必要があれば、CT写真を撮影し重要器官との三次元的関係のチェックを行います。

チェックが完了したら手術日を決定します。当院では手術は水曜、土曜午後、日曜の他の患者様の治療のない日を選んで、ゆとりのある時間を設定し、インプラント手術を行います。





















手術においては局所麻酔にて行います。
「インプラントは痛そう」という話を患者様からよく耳にします。
実は骨の中には感覚はありません。骨の表面にある骨膜にしか感覚はありません。
骨膜に麻酔を効かせることは、虫歯の治療の際などのように、歯の神経に麻酔を効かせるより、ずっと簡単なことなのです。









インプラントが入ったところです。









開いた粘膜を元に戻し、縫合すれば、手術は完了です。
この後、インプラントと骨が完全に結合するまで数ヶ月を待ちます。固定期間と呼ばれます。
糸は約一週間後に除去しますので、その後はインプラントが入っている事はX線写真でみないと見ただけではわかりません。











固定期間が終了したら、インプラントに最初の構造を取り付けます。
























型をとり、模型の上で上部構造を作成、調整します。

調整が終わった上部構造をインプラントに取り付けます。

インプラントに取り付けられた上部構造の型をとり、それにあわせた歯を作成し口のなかに取り付けます。

















インプラントの応用範囲は非常に広く、総入れ歯を使用されている全く歯のない患者様でも、固定式のブリッジ装着したり、硬いものを噛んでも入れ歯が動かない入ればを入れることも出来ます。


















その他、矯正歯科の領域では、歯を動かす為だけに、固定源としてインプラントを用いるなど、インプラントの使用は非常に一般化しています。












インプラント治療の失敗とは?

インプラントの素材は生態親和性の高いチタンを主体としたものです。
整形外科の領域では、骨折などに対して、骨の固定をするためにあたりまえに用いられる材料なのです。ご家族の方が骨折された際「骨にチタンを入れるのはどうも・・・」と治療を拒否されることがあるでしょうか?

前述に95%以上の成功率と書きました。では失敗はどうなるのでしょうか。


私は基本的なインプラントの失敗=骨との結合の失敗、と考えています。
骨と結合できなければ、噛んでも痛く、どんどんグラグラのインプラントとなっていきます。

骨と結合できなかったインプラントの全体を取り囲むように、歯肉が骨との間に侵入してきます(図中央)。
その後生体によりやや押し出されるようにグラグラになります。
グラグラになったインプラントの除去は簡単です。ほとんど生体に付いていないため、出血も殆ど見られません。

私からすれば、「インプラントの失敗」よりも「歯石(細菌)だらけの歯」を何年も口に中に放置する事のほうが、全身への影響を考えても、よほど恐ろしい事だと思います。

その他、矯正歯科の領域では、歯を動かす為だけに、固定源としてインプラントを用いるなど、インプラントの使用は非常に一般化しています。




※ 古い「ブレード型」呼ばれるインプラントは、その形態から除去するのが非常に厄介でした。そのため、途中経過において周囲に感染が起こったため「インプラントの失敗は恐ろしい」という話が生まれたのかもしれません。